ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/10/14 歌舞伎座十月昼の部③玉三郎×愛之助の「羽衣」

2007-11-02 23:59:42 | 観劇

歌舞伎座での玉三郎の舞踊。「鷺娘」以降は若手と組んでいる気がする。若手には玉三郎から多くを吸収できるいい機会になっていると思う。玉三郎の方も若手を相手に一人の時とは違った魅力を発揮してくれているので、それもまた嬉しい。
さて、今回組んだのは愛之助だ。
【羽衣(はごろも)】長唄囃子連中
「羽衣伝説」をもとに、能の風情も取り入れた、新たな振り付けによる舞台とのこと。
天女:玉三郎 伯竜:愛之助
舞台は駿河の国の三保の松原。大きな松が松の木に美しい衣がかかっている。そこに漁師伯竜が通りかかって衣に気がついて持ち帰ろうとする。するとその衣を返して欲しいという声が聞こえ、美しい天女が現れる。
伯竜は家宝にしたいからと断ると、天女は悲嘆にくれてしまう。その様子に心を奪われた伯竜は「衣を返せばすぐに天界に帰ってしまうのだろう」と聞く。天女は「衣を返してくれれば月宮殿での舞をみせよう」と約束する。伯竜がそれは嘘ではないかと疑うと「天界には嘘というものはない」と諭す。
伯竜が返した衣を身につけた天女は、約束通り月宮殿での舞をみせる。浜辺に伯竜ひとりを残して天界に登っていく天女・・・・・・幕。

愛之助の伯竜は「連獅子」の狂言師のような髪型(月代は青くてポニーテール状)。衣裳は大口袴なのが能衣裳らしい。細い釣竿を肩にしょっているのが漁師を象徴している。
あらわれた天女はピンク色のお着物姿が可愛らしい。髪型は結い上げて金色の簪をさし、何箇所か縛って長く下に垂らしている。月宮殿に出仕している若い女官といったところか。やはり玉三郎によって異界の存在感にうっとりする。こんな美しいものが嘆き悲しめば漁師でも心が動くというものだ。
とにかく能の風情の舞踊劇ということで、ふたりの「舞」はゆったりとした動きが鷹揚で美しい。長唄に傳左衛門社中の囃子がつくので笛や鼓の音も幻想的な雰囲気を盛り上げる。
衣を身につける間に愛之助の伯竜がひとりで舞うが、なんとも折り目正しくてゆかしい感じがした。玉三郎の期待にしっかり応えていると思えた。

さて、長絹のような透けた羽衣を身につけて登場した玉三郎の天女に溜息が出る。神々しさまで感じてしまう。髪型は下げ髪にして瓔珞をつけた黄金色の冠をつけている。羽衣は金色の鳳凰の羽のデザインが映えて神々しさをアップしている。

とにかく一挙手一投足に酔いしれてしまう。この「羽衣」を観る事ができただけで昼の部に来た甲斐があったと思えてしまう。
天女は天界に戻っていく。伯竜は頭の上に手をかざして見送る。愛之助のいる舞台中央のセリが下がっていき、天女が地上から遠ざかったことをあらわすという演出に感心。残念ながら3階B席では花道の玉三郎天女を最後まで追う事はかなわず。
それでも余韻に浸りながら最後まで玉三郎の天界ワールドをたゆたっていた。

写真は今回公演のポスターから玉三郎の天女をアップで撮影。後半のお姿だ。
10/14昼の部①「赤い陣羽織」
10/14昼の部②藤十郎の「恋飛脚大和往来」