ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

07/10/14 歌舞伎座十月昼の部①「赤い陣羽織」

2007-10-31 23:58:27 | 観劇
【赤い陣羽織】
木下順二の作品というが、「彦市ばなし」や「夕鶴」の原作者という以外にほとんどわからないので検索。
ウィキペディアの「木下順二」の項はこちら
なぁるほどシェイクスピアを専攻していたのか!今読んでいるちくま文庫『オセロー』の過去の上演史のところで木下順二訳での上演もあったのが納得。そういう人の脚本はしっかりしているはずだ。

今回の配役は以下の通り。上方の歌舞伎役者に錦之助が加わった顔ぶれ。
おやじ:錦之助 女房:孝太郎
お代官:翫雀  お代官の奥方:吉弥            
お代官の子分:亀鶴
あらすじは公式サイトをほぼ引用。          
「風采はあがらないが人のいい百姓のおやじと、美人で気だても頭もいい女房。不釣り合いながら仲のよい夫婦の前に、顔がおやじによく似た土地のお代官が現れ、おやじを捕らえると、その隙にかねてから岡惚れしていた女房をわがものにしようとします。
やっと逃げ出したおやじが家に戻ってきてみると、炉端に、いつもお代官が着ている赤い陣羽織が脱ぎ捨てられているではありませんか。ついに女房は…と思い込んだおやじは、今度は自分がこの赤い陣羽織を着てお代官になりすまし、その奥方を襲って復讐を遂げようとします。・・・・・・」

百姓屋の中に馬小屋があるというのは南部曲屋だけではないのかなと認識が低くて恐縮。子どももいない夫婦のくらしに農耕馬の孫太郎は家族同然の存在らしい。
芝居の中でも孫太郎が重要な役割を果たすような設定になっている。
錦之助のおやじと孝太郎の女房は喜劇味を頑張って出していた。ただし頑張って出しているようにまだ見えるので、もう少し軽妙さが出せるといいなぁと思った。錦之助のおやじでよかったのは、お代官の陣羽織を着こんで袴もめちゃくちゃな履き方をして屋敷に乗り込んだものの、結局は腰がひけて何もできなくなっているという情けない姿。錦之助は情けな~いキャラが似合う。こういうところに女房はほだされて惚れるているんじゃないかと思えてしまった。鋤でお代官を撃退できてしまうような逞しい女房にはぴったりなおやじだ。

翫雀は「NINAGAWA十二夜」の安藤英竹がよかったので、お代官も期待したのだが、まぁこんなもんかなぁという出来。百姓の女房が美人だから手を出そうという助平さが足りない気がした。
亀鶴の子分は○。吉弥のお代官の奥方は◎。腰元たちを従えて夫であるお代官にお灸をすえる趣向がカッコよく決まった!!

民話劇調ではあるが、スペインのアラルコンという作家の「三角帽子」の翻案で、「民衆が権力者をひっくり返す」というテーマに引かれて木下順二が笑劇に仕立てたのだという(どうやら「歌舞伎美人」の説明文は間違っているようだ)。新劇での上演ではそのテーマをくっきりさせているのだろうけれど、歌舞伎で上演する際はそういうテーマ性は薄くして喜劇として上演されてきたのではないかと推測。

歌舞伎座では昭和36年に先代の勘三郎のお代官で上演して以来というから、けっこう難しい芝居なのだと思う。先代の勘三郎では映画化もされたというし、やはりお代官の役者の強烈な個性が欲しい作品だ。
今回は10月の「芸術祭」とはいえぬ、「文化祭」といった感じの仕上がりだったような気がした。最後に辛口をきかせて恐縮至極(^^ゞ
写真は歌舞伎座前の垂れ幕。
10/14昼の部②藤十郎の「恋飛脚大和往来」
10/14昼の部③玉三郎×愛之助の「羽衣」


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