ぴか の観劇(芸術鑑賞)日記

宝塚から始まった観劇人生。ミュージカル、ストレートプレイ、歌舞伎、映画やTVドラマ等も書きます。

06/11/24 演舞場花形歌舞伎夜の部②菊之助の「船弁慶」

2006-12-01 23:58:42 | 観劇
夜の部の菊之助は「船弁慶」の二役。「船弁慶」は昨年12月歌舞伎座で玉三郎による杵勝三伝の内バージョンのものを観たのが初見。今回は九代目團十郎初演のバージョンで昨年9月に菊之助が厳島神社での上演の際の新聞記事も切り抜いて読んで期待していた。イヤホンガイドだけでなく河竹黙阿弥の戯曲を読んでから観たので睡魔に襲われる時間がずいぶんと減った。

2.『新歌舞伎十八番の内 船弁慶(ふなべんけい)』
能の『船弁慶』を踏まえた「松羽目物」の舞踊劇。
あらすじは以下の通り。
兄の頼朝に都を追われた義経は摂津国大物浦から船で九州へ落ちようとしている。ここまで義経を慕ってついてきた愛妾の静御前を都に返すことにして別れを惜しむ。そして弁慶らの家臣と共に船出をするが、静かだった海が突然荒れ始めた。平家の公達の亡霊が押し寄せる。中でも平知盛の霊が義経一行に襲いかかり、刀で応戦するが手強い。弁慶は数珠をもみ経文を唱えると亡霊の力は弱まり、海の彼方に消えていくのだった。
今回の配役は以下の通り(黙阿弥の原作とは舟人のあたりがちょっと違う)。
静御前/平知盛の霊=菊之助  武蔵坊弁慶=團蔵
源義経=梅枝  舟長三保太夫=亀蔵
舟人岩作=松也  舟人浪蔵=萬太郎

團蔵の弁慶がいい。語り出しからずっと渋い魅力で全体を仕切ってくれた。梅枝の義経は品があるのだが口元がもう少しきりっとするといいと思う。菊之助の静御前が出てくると客席がわく。美し~い。ポスターよりも顔の拵えもよくなっていたのもよい。ところが~.....。

すごいガラガラ声!昼の部の「勧進帳」のテンションがどんどん上がっていっているという情報あり。そのツケがこの静御前にきてしまったのだろう。そのおそれを感じてはいたが、声の美しさに惚れこんでいるだけに正直かなりガッカリ(T-T)染五郎の「鬼揃紅葉狩」よりも台詞が多いだけに興ざめしてしまった。そのへんのコントロールもこれから勉強していくのだろうが.....。

静の舞はまあまあよかったと思う。船の用意が出来たと亀蔵の舟長と松也と萬太郎の舟人登場。間狂言的な踊りを見せてくれる。
でもでも~、私の希望配役は松也の義経、舟人を梅枝・萬太郎の兄弟でというもの。その方が絶対にいいと思う。しかしながら御曹司の梅枝にもちゃんと大きい役をつけないといけないからなぁ。でも菊之助が女方の時の二枚目に松也をもっと使って欲しい。

さてさて後シテの平知盛の霊で菊之助が再登場。藍隈をしているものの顔が可愛い。少年知盛という感じ。隈取だと顔のつくりがけっこう素直に出てしまうのかなぁとか思いながら見ていた。台詞もないから雑念も入らないし、動きもキビキビしていてけっこう迫力もあって楽しめた。
團蔵の弁慶がとてもどっしりしていて少年知盛の相手ではないような感じがした。調伏の威力も大きそうだった。
最後の花道の引っ込みは今回は少しは見えた。玉三郎の時は全く見えなかったので、引っ込みにやたらと時間をかけるなぁくらいに思ってしまっていた。渦潮に飲み込まれていくという振りのために薙刀を振り回しながら花道を退場していく。私の三階の最後列の席からは最初の方しか見えなかったが、今回やっと締めくくりにも見所があるのがわかった(^^ゞ

家に帰って玉三郎の静の写真を取り出してじっと見てしまった。菊之助の唐織の装束の模様はけっこう大きめの菊模様だったが、玉三郎のそれはもう少し小さめの花模様。衣装は玉三郎の衣装の方が上品かな。玉三郎の「船弁慶」を観た時は大して印象に残らなかったのだが(舞踊の鑑賞も苦手だし)、今回の菊之助の「船弁慶」を観たら玉三郎の舞台がけっこうすごくよかったのだとあらためて思ってしまった。

菊之助も本公演では初めてだというし、これからもどんどん練り上げていってほしい。次に観る時は声をつぶさないように気をつけてもらって美しい静の声もともに堪能させてほしいものだ。
それとちょっと思いついたこと。團十郎系の「船弁慶」だし、海老蔵もやったりしないのだろうか。「藤娘」がけっこう綺麗だったので観てみたい気もするのだが、静の時の女方の高い声はやはり出せないかな。
写真は松竹の公式サイトより今公演のチラシ画像。
関連の感想記事はこちらm(_ _)m
11/4昼の部①ヒートアップの「勧進帳」
11/4昼の部②菊之助の「弁天小僧」
11/4昼の部③奴隷と主人の恋「番町皿屋敷」
11/24夜の部①「馬盥」で松緑を見直す
11/24夜の部③海老蔵の澤潟屋型「四の切」!