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ぱたの関心空間

関心空間と徒然なるままに。

「福島が日本を超える日」(浜矩子・白井聡・藻谷浩介・大友良英・内田樹)

2017-08-14 22:19:22 | 読後感想など
なんと、大袈裟なタイトル、と思ったけれど、多分全然大袈裟ではない。読み終わってそう感じる。6年前にあの事故を通して考えられる事は、結局のところ今の日本を超えることになるのだと。

今一度思い出してみよう。内田樹さんも言っていたけれど、儂ら日本人の多くはあの原発事故の後、あぁこれで日本は変わるのだ、と思っていたはずだ。あの頃はただ漠然と感じられていただけで、何がどう具体的に問題で、どう考えてどう変わるべきか、なんて言葉にできる人は少なかったように思う。

忘れっぽい儂ら日本人は次第にあの感覚を薄れさせてしまったけれど、けれど6年という月日が経ってこんな風に具体的にどう「日本を超える」べきなのか、冷静に考える事が出来るようになったんじゃないのかな。

この本をお勧めしたいのは、5人の講演者が他で書いているもののエッセンスをぎゅっと凝縮したような感じで読めるところ。5人の著書を全部読めって言われたら大変でしょう。もちろん読めたら読んだ方がいいのだけれど。しかも、講演録なので読みやすいし。

もう日本なんて取り戻さんでええ、超えていこうや。

「阿武隈共和国独立宣言」(村雲司)

2014-06-25 14:35:05 | 読後感想など
最後はファンタジーになってしまって小説としては物足りなさを感じるけれど、考えさせられる事だらけ。一つのブレイクスルーの形のアイディアとして考えるのはあってもいい。実現は難しいとしても、日本人に突きつけられているものはそれだけ切羽詰まった物だ。

自分たちの生存と未来を守るために、「国」を棄てる、という発想は、今の日本ではかなりリアルな感覚だと思う。しかし、その為に自らは滅びの道を選ぶというのはなんとも悲しすぎる。でも、それ以上の解はやはり無いのだろうか?

そして、国のありよう。安全保障についてリアルに考える。本作中では否定的だけど、阿武隈共和国の安全保障策はありなんじゃないだろうか?無主物なんだし(笑)。

使わずに済むのであればちょっとしたブラックジョークで済む。が、ちょっとでも共和国に害をなさんとすればたちまち牙を剥く。でもその種を振りまいたのは他ならぬ日本国。なんという皮肉。おどけながらも相手に途轍もない抑止力を発揮する。虐げられた者に許される最高の安全保障。

そうだ、井上ひさしの吉里吉里人でも、この点で最終的にしくじったんだっけな。あれは金の隠し場所だったな。ここを考えると明らかになる国家の本質的な怖さ。

そんなに単純じゃないことは承知で言うが、究極的な民主主義の帰結は独立にあるのかもしれない。今、儂ら必要な事は「故郷の山河を棄てろと国が強要するなら、国を棄ててもいい(長老)」という覚悟なのかもしれない。

ヤバイな。危険思想だな(^^)。

「東北発の震災論」(山下祐介)

2013-10-30 20:12:02 | 読後感想など
頭を抱える。今の日本が突きつけられている問題の複雑さと難しさ。

周辺と中央という関係性のシステム。その中での東北という場所に押し付けられた役割。広域システムとして捉えた被災地の諸層。そしてシステム不全に陥っているにも拘らず、システム再強化の動きばかりが目立つ、日本の現状。

強く印象付けられるのは、震災の被害を受けた東北の事情は地域・レイヤー毎に全て異なり、とてつもなく複雑。個別に考えなくちゃいけない筈なのに、それに対し広域システムは有効な打開策を提示できない、逆に主体的な復興の妨げとなってしまう。

兎に角、事が簡単でないことだけは良く分かる。この本で書かれていることは今回の震災と東北を通して見られた、この国のシステムの問題であり、それは全くもって他人事では無い。

「東北発の震災論」(山下祐介)読了。
どうしたらいい?もっと知らなくちゃダメ、もっと考えなくちゃダメ、もっと想像力を働かせなくちゃダメ。自分たちの未来のために日本人に必要なこと。