パンダ イン・マイ・ライフ

ようこそ panda in my lifeの部屋へ。
音楽と本、そしてちょっとグルメなナチュラルエッセイ

定年入門

2018-12-30 | book
2018年3月刊行。定年前の編集者の「定年ってなんでしょう」の声に、ノンフィクション作家の高橋秀実が、多くのインタビューを通し、定年をルポした「定年入門」を読んだ。副題が「イキイキしなくちゃダメですか」だ。

とかく男は定年を不安と孤立に感じてしまう。女性はネットワークもあり、平均寿命も長く、いきいきと過ごしている。

「定年は男の自立、一人の生き物として自立する旅立ち。これも定めなのだ」。内閣府の調査だと、65歳を超えても『働きたいという人は65.9%いるのだそうだ。ぶらぶらしているとみられるのが耐えられない。そんなプライドが見え隠れする。

スーパーは雇用の間口が広く、誰でも働ける。レジ陳列。
きょういくときょうよう。今日行くところがある、今日用事があることが大切。会社いると自然にスケジュールが埋まる。

会社、性格、家庭環境、既婚・未婚。多様な人々が多様な考えで、次のステップを歩んでいる。

待つことが一番時間をつぶせる。マルケスの短編「大佐に手紙は来ない」。

定年後の出勤先は、図書館とファミレス。定年後は自由だといわれるが、自由とは何か。松本清張の短編「駅路」。

銀行を定年、その時に培った人間関係で不動産会社へ就職。社会人のころからの合唱も続けている。

年を取ると時間が経つのが速いのは、動きの遅滞化によるもの。
退職金は残っていませんと64歳の元教諭。蓄えの不安はない。だって死んでしまうから。次々と仲間たちが亡くなっていく現実。
定年は平等。誰にでも来る。カルチャーセンターは、学生に戻ることで平等が味わえる場。期限付きが人気。何年で学べるなんとか。

定年後だった著作の数々。石川啄木の「一握の砂・悲しき玩具」。「平家物語」「徒然草」「方丈記」「五輪書」。そして武士道の聖典「葉隠」。40台で佐賀藩を退職した山本常朝の現役武士への批判書。一人を歌った山頭火、放哉、一茶。人は皆最後は一人。句作の秘訣は平凡な定年後。平凡こそが非凡で味わい深い。

65歳で介護付き有料老人ホームに入居。
やりたいことを30個列挙。
忘れているものは捨てる。思い出に耽らない。モノはなくなっても思い出は残る。
定年とは社会における還暦。一めぐりして赤ん坊に戻ること。

なんと人さまざまなことか。人生いろいろというが、まさに定年を迎えての感慨や考え、そして、次への生き方もさまざま。

定年後の生き方にこれが正解というものはないことがわかる。だからこのような本が書けるのだ。参考になったかといわれれば、今の自分にぴったしのものはない。体の衰えを如実に感じながら、日々を過ごしている。還暦で高校時代も約1割は亡くなった。今度は自分かもしれない。あと10年が勝負かな。生かされているという実感をほんとうに感じる還暦後。いつ生き方をインタビューされれば、それなりの答えはできる。定年とは、そういう気持ちを持ちながら過ごす起点なのだと思った。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする