藤棚の下で、私と友人が話していると、声を聞きつけてヨウちゃんが登場。
ヨウちゃんは友人の奥さんである。無類の花好きであり、花作りに人一倍愛情を注ぐ人でもある。広い花畑に沢山の樹木や草花が立派に育てられている。
花好きな人は、花々を人と共に眺めて楽しむのも好きだし、花について語ることも喜びのようだ。
広い庭のあちこちにいざなわれ、五月の庭に咲いた花々の説明を聞いたり、両手に持ちきれないほど沢山の、切り花や苗をもらったりした。その上、バラの棘のとり方や花色についての常識や、かなり専門的な育成の仕方についての話なども聞いた。
花にそれほど関心のない友人の姿は、ヨウちゃんと私を残して、いつの間にか消えていた。
「これはオガタマの花。いい香りがしするのよ。今は花が少なくなってしまったけれど」
初めて見る樹木であり、花である。(写真)
オガタマというのは神社などに多い木だと、聞いたことがある。
改めて、樹木の本で調べたところ、
<関東以南に分布する暖地性の常緑高木で、高さ20㍍になる。オガタマというのは招霊(おきたま)の変化したもので、この木の枝を神前に供えて神霊を招くのに使ったところからでたとされる。>
と、記されていた。さらに花色は白であると。
友人宅のオガタマの背丈は、1メートルくらい。(まだ成長の段階かもしれないけれど。)花も白色ではなく、花びらの内側は濃い紅色で、裏側は少し薄紅色をしている。
果たしてオガタマ? と、疑問に思ったので、ネットで調べてみた。すると、「紅花オガタマ」というのがあった。園芸種らしい。やはり芳香を放つ花だという。
友人宅のは、神社などに自生する「オガタマ」ではなく、こちらの「紅花オガタマ」の可能性が強いだろう。
紹介した写真の花は、落花寸前の姿である。花の美しい盛りは、むしろ莟んだ状態から、花弁をやや半開きにするだけの、慎ましやかな花である。
蕾のついた枝をヨウちゃんからもらって帰り、今花瓶に挿してある。
芳香を漂わせながら、物静かな姿を、明日には見せてくれるだろう。