平成7年(わ)第333号
被告人供述調書(第5回公判調書)平成8年1月18日
多胡邦夫
質問及び供述
田中弁護人
今の気持ちを率直に言っていただけますか。
申し訳ないことをしたというのが率直な気持ちで、この事件は社会に与えた影響が大変大きいものだと思ってます。まして公務員の地位を利用して、公務員の名誉を大きく傷つけ失墜させ、社会に対しての背信行為を深く反省してます。
要は、どんな処罰でも受けますと、そういうことですか。
はい。
今の率直な気持ちはね。
はい。
現在の気持ちはよく分かったんですけれども、かない長い間、横領したり、又は詐欺をしてましたね。
はい。
一口では言えないでしょうけれども、この間はどんな気持ちでいましたか。
最初のころは、一つの快楽を夢見たというか、魔が差したというか、最初の金額は小さかったんですが、少しずつ大きくなりまして、できれば人に相談したいという気持ちもありました。しかし、気が付いたときには、相談しても、金額的に数千万いってましたから、もうどうなる金額ではないと自分で判断いたしまして、そのままずっとずるずるきてしまったんですが、途中何度となく、この事件が露呈してほしい、あるいはまた反対に分かってほしくない、入り乱れた気持ちで毎日を過ごしてました。
まして、あなたが毎日出勤される公社のことですよね。
はい。
毎日職場にあなたが行かなくちゃいけない、そういうことですよね。
はい。
一方においては分かっては困る、また一方においては自分のやったことが早く分かってもらいたいと、あるいは人に相談したいと、そういう気持ちが日によって右に揺れたり左に揺れていたと、こういう気持ちでしょうかね。
そうです。
本件が発覚してから、自殺を図ったことがありますね。
はい。
奥さんの口から出ましたけれども、もう死のうと思って左手首の動脈のところにカッターナイフを突き刺して切ったと、かなり血が出てたと、一時間以上そこに座っていて、浴槽内に手を入れてじっとしてたと、捜査機関の前で言われてますね。
はい。
そのときのあなたの気持ちを、自分の口からちょっと言っていただけますか。
先ほども申し上げましたとおり、私が責任取れる金額でなくなってしまったもんですから、責任の取り方は最後はこういう形で取ろうと数年前から考えておりましたので、それをただ実行しただけです。
もう、かなり以前から、分かったら死ぬしかないだろうと、こう思ってたということですね。
はい。
この事件が発覚したときに、奥さん、あるいはあなたの子供さんのことを、当然考えたこともあるでしょう。
はい。
公社は55年4月に設立をされましたね。
はい。
昨年、あなたが異動を命じられるまでの間、なんと15年間ありますね。
はい。
なぜ、あなたは異動の命令がなかったんですかね。
ちょっと私には、それについてはよく分からないんですけれども。
市の場合は、どの職員がどの配置につくか、異動、これはどの部分で決めてるんですか。
総務部の秘書課で決めています。
それで、市の職員は異動命令があれば、直ちに移動すると、こういう立場ですね。
はい。
あなたが知る範囲内で結構なんですが、県内たくさん公社がありますね。
はい。
実を言うと、私もある公社の仕事を時々頼まれてやっているんだけれども、そこでお聞きするんですが、あなたが知る範囲では、ほかの公社の職員は、およそどのくらいで異動を受けていますか。
他の公社の状況というよりは、安中市の人事に関しましては、おおむね5年を目安に人事異動対象になっているようでございます。
そうすると、あなたは異動の命令を受けるほうだから、なぜ自分が異動されなかったかよく分からないと、そういうことでしょうかね。
はい。
さて、公社の組織についてお聞きしますけれども、理事長さんは市長さんがされるわけですね。
はい。
その下に、副理事さんがおられるでしょう。
はい、副理事長です。
で、副理事長さんというのは、どなたがしていたんですか。
今までは助役がしておりました。
それでは、常務理事さんは。
今までは収入役が担当していました。
副理事や常務理事以外にも、理事さんはいらっしゃいますね。
はい。
何人おられますか。
理事は全部で14名だと思います。
これは簡単で結構ですが、どういう方が理事をされていましたか。
市の職員では、総務部長以下、部長職の人間が4名、議会代表から残りの人数が出ています。
たしかその下に、事務局長、で、事務局次長と、皆さんがおられる、こういう組織形態ですね。
はい。
そうすると、例えばあることについて決裁を受けると、捜査記録を読んでみると、正確には回議書と、こう呼んでいるようですね。
はい。
そうすると、あることで、いわゆる決裁を受けなきゃいけないということに公社内でなったときには、その書類には、一体何人の方が目を通すことになりますか。
決裁の内容によって違うんですが、理事長決裁になりますと、担当職員並びに同僚、それから事務局次長、事務局長、常務理事、副理事長、理事長、それだけの人間が目を通すことになります。
そうすると、あなたが起案して決裁を受けなきゃいけない書類を作ったときには、今あなたが言われたたくさんの方がその書類に目を通すと、こういうシステムですかね。
はい、そうです。
あなたが捜査機関でお話をしている調書によると、公社が設立されてから間もなく、市の方から年間30万円の事務費が出ていたと、こう言われましたね。
はい。
本件の詐欺事件のまず基本にあるのは、あなたが市から公社に交付があった30万円のお金の一部を使い始めたと、これが契機になっていますね。
はい。
当然、公社では監査が行なわれるでしょう。
はい。
公社の監査というのは、毎年何月に行なわれるんですか。
5月です。
公社の監査をされる方、いわゆる監事の方は、何人おられたんですか。
2名です。
それでは、どういう方が、あなたの公社の監事をされていましたか。
今までは市の監査員の2名が公社の監事を兼ねておりました。
では、市の監査員と公社の監査員は同じ方でしたね。
はい。
具体的には、どういうお仕事をしたり、あるいは、経歴を持ってる方が監査員、あるいは、監事をしておりましたか。
今までは、私が知る限りでは、2名のうち1名が市のOB、もう1名は議会代表といいまして、議会の方から推薦であがってくる人物です。
安中の市のOBが監事に入っていますね。
はい。
OBといっても、前歴いろいろあると思うんだけれども、例えばどんな役職を前歴されたOBでしたか。
今、部長制度が敷かれているんですが、公社が設立された当時はもう部長制度になっていたんですが、OBの方が退職なさったころは部長制度ってありませんで、一般事務職では課長が一番上の地位でした。課長経験者が主になっていたと思います。
市の職員では、一番ポストが上の方が退職されたときに、市や公社の監事等になられたと、こう聞いてよろしいんですか。
はい。
そうすると、一人は市のOBですから、市若しくは公社内の事務処理については、当然精通されていますね。
はい、一般的なことについては、精通されていると思います。
参考にお聞きするんですが、群馬県の公社の中には、税理士の肩書きを持った方が市や公社の監事になられる、こういう公社があるということは、あなたは耳にしてますか。
はい、昭和55年に設立するときに、私は担当いたしまして、公社を設立したんですが、そのときに、群馬県内の土地開発公社の状況を取り寄せまして、いろいろ調べてみたんですが、そういった肩書きの方が公社の監事になるという所も、二、三ありました。
あなたがお勤めになっていた市、公社では、資格をもった税理士さんにやっていただくという話は、耳にしたことはなかったですか。
ありませんでした。
先ほど言いましたように、初め、市から交付された30万、これは市から公社の口座に入るわけでしょう。
そうでございます。
そうすると、あなたはそのお金を横領するということは、公社にある金をあなたが銀行で下ろすと、こう聞いてよろしいですか。
はい。
そうすると、本件横領事件ですから、例えば30万入った、あなたが1万円下ろした、2万円下ろしたと、それが本件のきっかけになっていますね。引き金にね。
はい。
したがって、あなたが現に横領したと、その処理はどうされていたんですか。
帳簿上の処理は、公社の経理っていうのは複式簿記なもんですから、市の一般会計とは異なった方法でやっております。なおかつ伝票処理で、伝票会計で、伝票が元帳になるという形をとっておりますので、伝票を起こさない限り、数字的に合わせることができませんので、私とすれば、支出する場合は、青い伝票で起こすんですが、振替伝票でグリーンの伝票で起こすという手口で記載いたしました。
つまり出金伝票を起こすわけでしょう。
もちろんそうです。
出金の書類を作りますね。
はい。
そうすると、例えば1万円出金したというのは分かるんだけれども、じゃあ、どこに出金したという、出金先はどこになるんですか。
出金先は書きませんでした。
でも、領収書をどっかでもらってこなくちゃいけないんじゃないですか。
30万円の市からいただいている目的は、他の市町村の公社の場合は、土地を売買して公社が取得し、市に売り渡すときに手数料というのがいただけるんです。ところが、安中市の場合は、その手数料が払えないから、その30万円を事務費にあてろということで、事務費、いわゆる消耗品、あるいは、理事の報酬、こういったものの目的のために30万円がきてますので、もし1万円を使って横領して、領収証をとるとなると、事務費でボールベンを買ったり、ノートを買ったりとか、そういう消耗品関係以外はとれないんですね。ですから、結局、領収証はつづってございません。
1万を出金した、横領したと、そうすると、出金伝票は作るけれども、それに合った領収書は不存在ということになりますね。
はい。
たとえば公社で必要な文房具を買うときも、そうすると、1万円出金して領収証なしと、こういうことになるわけですか。
そうです。
そうすると、そういう事務処理ですと、本当にそのお金が正式に出金されているかどうかというのは、分かりませんね。
はい。
その点について、領収証をそろえるようにと、そういう指示、あるいは、話が公社、あるいは、市のほうからあったことがありますか、ありませんか。
ありません。
関係の記録によると、例えば、ときには30万のうち半分の15万くらいを横領したこともあると、こういうことですよね。
(うなずく)
そうすると、交付されたお金の半分も横領していたときがある、こういうことになりますね。
はい。
そうすると、それが、なぜ公社の監査のときに分からなかったんですか。
監査の方法になってしまうんですけれども、領収証と通帳の付け合せというのが、伝票の付け合せというのがありませんので、分からなかったんだと思います。
この法廷にも監事の決算書類が出ています。適切であると、あるいは、関係書類を見ても間違いないという書類が法廷に出ているんだけれども、事実は全くそのとおりじゃなかったですね。
はい。
出金をしたという伝票はあっても、本当に出金をしたかどうかって言うのは、領収書がなきゃ、正しく分かりませんよね。
(うなづく)
あなたは公社に15年もお勤めだったね。そうすると、文字通り、簡単に言えば、15回、あるいは、16回監査があったと、こういうことになりますね。
はい。
一度も監事のほうから、例えば、ある書類を見て、これはどうなっているの、おかしいじゃないか、こういう趣旨の言葉は聞かれたことはなかったですか。
はい、ありませんでした。
それでは、そもそも監事さんが監査をするに要した時間、それは通常、さあ監査が始まった、そうすると、どの程度かけていましたか。
最初のころは、朝の10時ごろから始めまして、お昼ごろまで、最近ここ何年かは、9時半ごろから始めまして、12時、お昼で終わるというのが通常でございました。
あなたの捜査機関の記録によると、ときには1万円、2万円下ろしたと、それがかさんでいったと、それで、結局は、金融機関の借入金を水増しをする方法で切り抜けようとしたと、そういうことですね。
はい。
そこでお聞きしますが、本件の起訴以前のことなんですけれども、例えば、5000万借りるのを1億円水増しして、1億5000万を借り入れたということで考えてみると分かりやすいと思うんですが、そのお金は、まずどこに入るわけですか。
特別会計を作る前は、公社のほうの通帳に入ります。
当然決裁、つまり稟議に回すのは5000万と、ところが、公社の口座に入ってきた金は1億5000万と、たとえた場合で言えばですよ。
はい。
そうすると、特別口座ができる前の話なんですけれども、監事の方が通帳を見れば、もうあなたが不正に借入れしてるという事実は、一目瞭然ですよね。
はい。
そうすると、この監事さんは監査のときにその一番基になる、重要な通帳を見なかったということになるんですか。
はい、そうです。
じゃあ、何を見て、監事さんは当時監査してたんでしょうかね。
決算書類を作りまして、私のほうからその書類についての説明をいたします。それからいろんな台帳、書類ですね、土地を買った契約書、工事をした場合、工事の請負契約書、そういった書類関係を見、あとは帳簿類を見ていただくということでございます。
そうすると、もとの金額がどういうふうに動いてるかということに関しての通帳については、監事の方は全く見なかったと、こう聞いてよろしいですね。
はい。
あなたも捜査段階で言われてるけれども、その口座に市から土地代金が入ってきたこともありますね。
はい。
ときには、実際は銀行に返していないんだけれども、返したという決裁書類を作った、でもお金は以前としてその口座になると、こういうこともありましたね。
はい。
そうすると、そういう段階で口座を見れば、あなたが不正をしたことは一目瞭然ですね。
はい。
安中市の公社に安中市土地開発公社会計規程というものがあるのを、あなたも御存じでしょう。
はい。
既に裁判所に出されている書類の中に入っているんだけれども、その28条によると、預金の残高証明を監事に確認してもらいなさいと、こういうのがあるのも、あなたも恐らく御存じでしょう。
はい。
その中のどこを見ても、金融機関からの借入れの残高証明をもらいなさいという規定は、どこにも見当たらないんだけれども、そこでお聞きするんですが、あなたがお勤めしてた当時、預金の残高証明書だけでは正しく事実をつかめないから、金融機関からの残高証明書をもらおうと、もらうべきだと、こういう話があなたが在職中出たことがありますか、ありませんか。
ありません。
さて、平成2年に入って、特別口座を設けましたね。
(うなづく)
だました金は特別口座に入る、正規の借入れの金額は従前の口座と、こういうことにしましたか。
はい。
いずれにしても、例えば、群馬銀行からお金を借りるとき、借入依頼書、あるいは、金銭消費貸借契約証書、そこには必ず公社の理事長印が押されますね。
(うなずく)
そこで、理事長印がどういうふうに保管されていたかと、簡単にちょっとお聞きします。まず公社の理事長印は、ふだんはどこにあったんですか。
理事長印は、公社の事務局長でもあります都市計画課長の席に、執務時間内はそこにございます。
〔検察官請求証拠等関係カード(乙)5添付の「都市計画課の配置状況」と題する書面を示す〕
これはあなたがお作りになったわけですかね。
はい、私が作りました。
都市計画課の配置状況とありますね。
はい。
この図面のほぼ真ん中辺りに、「加部局長(都市計画課長)」とありますね。
はい。
この加部課長は、公社の局長のことですね。
はい。
あなたが言われたのは、この加部局長の机の上に理事長印がふだん置かれていると、こういうことでしょうか。
はい、そうです。
それでは、その日の仕事が終わるでしょう、そのときに、その判子はどこに保管されることになりますか。
課長だと思うんですが、課長の後ろにロッカーがあるんですが、そこが都市計画課の公印の保管場所、並びに公社の印鑑の保管場所となっておりました。
この図面で、真ん中の右側にロッカーと書いてあって、公印保管用とありますね。
はい。
そこに、勤務時間過ぎると保管するわけですか。
はい。
それではかぎはかかりますか、かかりませんか。
かかります。
そうすると、どなたが、勤務時間を過ぎると、そのロッカーを開けて保管されますか。
通常、課長がやると思います。
その課長がかぎをした、そのかぎは、その後どうなりますか。
課長の机の上にレターケースがあるんですが、そのレターケースの引き出しの中にいつも入れてあったと思います。
この図面の中の加部局長の机の上に、レターケースって書いてありますね。
はい。
そこにかぎは入れると。
はい。
そのレターケースには、かぎはかかってますか、かかってませんか。
レターケースにはかかっておりません。
そのレターケースにかぎがかかってないから、そこからかぎを持ち出して、ロッカーを開けることは、これは可能になりますね。
はい。
その理事長印がどういう手順で押されるかということについて、ちょっとお聞きします。例えば、群馬銀行から1億円を借りたいということになったとしますね。そうすると、1億円を借りられる借入依頼書、それをあなたは担当で作りますね。
はい。
その所には、どういう経緯をへて理事長印が押されるか、ちょっと説明してくれませんか。
回議書が決裁になって、理事長から戻ってきまして、戻ってきました決裁書類を提示して印鑑をもらうのが通常なんですが、課長とか留守の場合には、私が直接机の上から印鑑を持ち出して、その場で押していくことが多かったです。
もうちょっと前のサイドから聞きますね。決裁書を起案します。それからどのように上がっていくか説明してください。
決裁書を起案しまして、同僚の回議の印鑑をいただき、それから事務局次長、事務局長、常務理事、副理事長、理事長と、そこまでいって決裁になります。
そうすると、決裁になった書類は、例えば、あなたが群馬銀行から1億円借りたいと、そういう決裁書類の場合は、決裁になった書類は、だれからあなたのところに戻るんですか。
これは市長室の秘書から戻ることもあれば、たまたま課長が市長室に行ってもらってくることもあります。
市長さんの話はまた聞きます。私が聞いているのは、理事長印のこと。
ですから、市長が理事長ですから、理事長のところまで書類が回りますので、そこで市長の秘書である職員が、決裁になったものは各課のほうへ戻すというのが通常でございます。
そうすると、公社の理事長から各課に戻ると言いましたね。
はい。
そうすると、たくさんの借入依頼書が法廷に出てるんですけれども、理事長印が押されていますね。
(うなずく)
その理事長印というのは、あなたが例えば群馬銀行から1億円借りるというときには、もう一度言ってくれませんか。正規に流れていったとき、だれがどうやって押すんですか。
正規の場合は、決裁された回議書が私のところに戻ってきます。それを印鑑を保管されている課長のところに行って、課長に提示し、で、課長にその決裁になった書類を見ていただいて、群馬銀行に提出する書類であれば、それに印鑑をもらうというのが通常の流れです。
そうすると、決裁をした後に課長が理事長印を押すと。課長の上に理事長印がありますけれども、こういう流れですね。
はい、そうです。
本件の場合は、あなたが無断で理事長印を押したことはあるわけですか。
ございます。
回数で答えるのは難しいでしょうけれども、あなたが無断で理事長印を押したというのは、都合どのくらいあるんでしょうかね。
書類に関しまして、少なくても、借入れに関しましては、不正をしている部分は100パーセント私が押しました。
なぜ、事務局長の机の上にある理事長印をあなたが無断で使えるんですか。
これは各課もそうなんですけれども、担当職員が印鑑をお借りしますと言って借りて、どの書類に判子を押すっていちいち断らずに押すということも、度々ありますんで、そういう合間を縫ってということですか。
通常は、事務局長、つまり課長が判子を押すことになりますね。
はい。
ところが、実際には、時々、担当者がほかの部署でも判を押していたことがあると、分かりやすく言うと、そういうことですかね。
はい。
それをあなたも利用したと、こういうことですか。
そうです。
ちょっと話は変わるんですけれども、公社が借り入れることについて、市が連帯保証をしますね。
はい。
毎年、議会で債務保証について限度額、上限を決めますね。
はい。
それはいつの議会で決めるんですか。
例えば、平成7年度の債務保証であれば、平成7年の3月議会で決めます。
平成7年というのは、平成7年4月から平成8年3月まで、こういうことになりますね。
はい。
では、市のほうで毎年限度を決めるわけですね。
はい。
そうすると、各金融機関にとって、例えば安中市のほうでは幾ら限度になったか、あるいは、お隣の富岡市では幾ら限度になったかというのは、非常に重要なことですね。
はい。
そこで、その議会で議決した債務保証についての議決の部分を抄本にして、各金融機関に毎年出しているでしょう。それは分かりますか。
はい。
私がお聞きしたいのは、市のほうの調書にも書いてあって分かるんだけれども、現実に各金融機関にだれが出していたかというのが、分からないんです。そこでお聞きしたいんですが、各金融機関には、限度額議決の抄本等を公社が出していたんですか。それとも、市のほうが出していたんですか。
私もその辺ははっきり分からないんですけれども、毎年4月になりますと、群馬銀行には、私が抄本を議会にお願いして作っていただいたものを届けてました。
安中の公社の場合は、金融機関は群馬銀行だけじゃないですね。
はい。
甘楽郡信用金庫安中市店とか、碓氷安中農協とか、群馬県信用組合とか、東和銀行安中市店とか、いろいろあるんじゃないですか。
はい。
ほかの金融機関などは、どなたが出していたんですか。あなたは分かりますか。
ええ、借入れ行くときに、そういうものを作ったものを持ってかないと、銀行は貸してくれませんから、一応そういうものはお持ちしました。
そうすると、例えば3月の議会で決めると、当然にそれを各金融機関に出すんじゃなくて、借入が起きたときに初めて持っていって出してると、こういうことですか。
そうです。
それは間違いないですか。
はい。
そうすると、金融機関に出すのは、市ではなくて、公社、こういうことになりますか。
それはどちらが出すのが正しいかは、私には分かりません。
現実には、どなたが出していたのか、公社と聞いていいですか。
はい。
それでは、この保証の限度額が予定が変更になって、年度中に減額する場合がありますね。
はい。
安中市の場合も、土地開発公社の場合、何度かあったでしょう。
はい。
そうすると、例えば初め借入れしたときに、10億円なら10億円の上限の議決書の抄本を出しますね。
(うなづく)
ところが、年度の途中に、行事の変更で減額する場合がありますね。
はい。
減額をする場合は、また議会が議決をしてるでしょう。
はい、してます。
それでは、例えば10億円の限度が7億円の限度になったときに、その減額された議会の議決書の抄本は、安中市の場合は出しておりましたか、出していなかったですか。
私は請求がなかったら出しませんでした。
そうすると、金融機関としては、初めの10億円は出てると、その後、減額されたのが出てないと、初めのものが10億円だとすると、仮に3億円減額されて7億円になったとしても、金融機関としては分かりませんね。
はい。
そこでお聞きするんですが、年度の途中で変更になり、議会で減額が議決されたときに、あなたの話だと、減額の議決書は出していないということですね。
はい。
あなたはずっと15年間いましたよね。
(うなづく)
減額になったときも、かなりあるでしょう。
ございます。
初めの減額されない限度額の書類を前提にして、減額された分まで借りちゃったと、こういうことはかつてありましたか、ありませんか。
あります。
そうすると、議会が議決をしていない、つまり議会が議決をした限度を超えた借入れと、こうなりますね。
はい。
それを市が債務保証したとなると、その効力はどうなっちゃうんですか。
さあちょっと私には分かりません。
現に、そういうことがありましたね。
はい。
金融機関のほうから、初めの議決書だけでは困ると、減額があったら、その都度きちんと出して欲しいという指示が、あなたのほうにあったか、ないか、結論だけお答えください。
ありませんでした。
〔検察官請求証拠等関係カード(甲)99を示す〕
その調書の7丁の裏から8丁に、「最後に、債務保証の減額をする場合の理由について説明します。この理由として、大きく分けると、国庫補助金の減額や増額などによる市の財政運営上の都合による場合、用地交渉の難航により、その年度内に取得できない場合、単価が当初見込みよりも上回ったり、下回ったりした場合が考えられると思います,このうち最も多いのは、用地交渉の難航によるものであり、この場合には、三月の定例議会において減額補正をし、先ほども説明したとおり、議決書の写しを作成して、公社の取引金融機関に提出していると思います。」という言い方をしてるんだけれども、現実的には、出されていなかったということですね
はい。
先ほどもお聞きしたけど、群馬銀行のほうから、時々、当然議会が開かれるわけだから、減額の有無を確認をされたことはないわけですか。
ありません。
それでは、例えば群馬銀行から借入れを起こすとしたとしますね。
はい。
まず簡単に言うと、公社で、先ほどあなたが言った手順をへて、理事長の決裁印が押されるわけでしょう。
はい,
そうすると、例えば借用書なら借用書に、公社の理事長印が押されますね。では、連帯保証人欄に市長印が押されることの手順を簡単にお聞きしたいんだけれども、借用書に市長印が押されるっていうのは、どういう手順で押されることになりますか。
土地開発公社と安中市とは、別団体なもんですから、公社の理事長の名前で、安中市長あてに債務保証依頼という文書をつけまして、担当課である財政課のほうへ持って行きます。財政課のほうが市長のほうへ決裁をとりまして、市長印を押して、公社のほうへ戻ってくるというのが流れでございます。
まず公社のほうで、幾つかの段階をへて決裁を得ますね。
はい。
そうすると、今度は財政課のほうにいくわけですね。
はい。
そうすると、今度は、財政課は財政課で、保証することに関連しての起案をするわけでしょう。
はい。
それが財政課で稟議されるわけですね。
(うなずく)
最終の決裁は、たしか総務 部長ですか。
はい。
それでは、公社は公社で、先ほど言いましたように、起案をする、公社内の決裁が下りた、次に今度は財政課に連絡をして、財政課は財政課で起案をされる、で、財政課で決裁が下りますね。そうすると、その後どうなるんですか。
財政課で決裁が下りますと、通常であれば、財政課が秘書課の公印の管理している係まで行きまして、決裁書類の私のほうでお願いした金銭消費貸借契約証書を持って、市長印を捺印にいくんだと思います。
金銭消費貸借契約証書の市長印を押印する方はどなたになりますか。
秘書課の横田係長です。
正規の流れでいくとすれば、横田係長は、どなたから市長印を押す借用書を受け取ることになるんですか。
財政課の担当職員だと思います。
それが押されてから公社に戻るということですね。
はい。
そうすると、借用書に押される市長印というのは秘書課の方か判を押すんだけれども、財政課の方が持っていって印を押していただくと、こうなりますね。
はい、そうです。
ところが、本来、財政課の人が持っていって押してもらうべきなのにもかかわらず、あなたが持っていったときに、秘書課は判を押しているでしょう。
はい。
それは全く間違った手順でしょう。
そうですね。
公社と市というのは別組織ですね。
はい。
借用書の市長印を、公社の方が待っていって直接押してもらうということは、本来あり得ないことでしょう、組織としては、いかかですか。
はい、そうです。
本件は何回かそれをあなたがしていて、どういうわけだか分からないけど、判を押してますね。
(うなずく)
特に、本件の起訴事実のうち、あなたか全面偽造したのは平成7年3月の2億5000万と平成6年9月の4億円ですね。なぜ、そういうことができたかということなんです。借用書に押される市長印、あなたが秘書課に持っていったって、秘書課は判を押すべき立場じゃないでしょう。
(うなずく)
市役所の財政課財務係で課長補佐兼係長をされている田島文雄さんが昨年6月5日に警察でお話をしている調書があります。この調書の中で、どういう手順で市長印が押されるかを細かく警察の方に御説明をしてるんですけれども、11丁裏4行目で、「今話した、字句の訂正でも、新たな書き替えでも、公社は財務係を経由しなければならないことはあたりまえのことです。なぜならば、今まで説明した様に、市とは別組織だからです」と言われています。全くそのとおりですね。
はい。
あるいは、財政課財務係主査の須藤純子さんも平成7年6月6日付けで警察の前で話してます、この方も全く同様のことを言ってます。市長印は公社が押すんじゃない、財務課が持ってきて初めて押すんだと、直接公社が持ってきて押すなんてことはあり得ないんだと、こう言われてますけれども、確かに全くそのとおりですね。
(うなずく)
平成6年9月の4億円の全面偽造、これはあなたは当初水増しを考えてたけど、結局は書き間違えたんで全面偽造をしましたね。
(うなずく)
そのときには、全面偽造した書類を、あなた、直接、財務係を通じないで横田さんのところに持っていって判を押してもらってますね。
(うなずく)
横田さんのほうから、組織上そんなことはできませんと、財務係を通じてくるようにと言われましたか、言われませんか。
言われませんでした。
財務係の係長さんも主査の方も、異口同音に、公社と市は組織が別だから秘書課に市長印を直接公社の方がもらいに来ることはあり得ないことなんだと、こう言われているんだけれども、そうすると、これだけはっきり捜査機関の前で財政課の方が言っているにもかかわらず、安中市の場合は、その辺が、されてなかったということになりますか。
その件に関してはそう思います。
調書の中では、今まで公社からの訂正の申出は一件もなかったけれども、訂正をするときにはこういうふうにするという具合に言われているんです。実際は、田島係長は御存じなかったけれども、現実には行われていた、こういうことですね。
(うなずく)
金銭消費貸借契約証書の連帯保証人欄に市長印を押すのは秘書課ですね。
はい。
平成7年3月の2億5000万の全面偽造の件、その借用書は、秘書課にだれか持っていったんですか。
偽造分は私が持っていきました。
横田さんのほうから、手続が違うと、財政課を通してくれるようにと言われましたか。
いえ、言われませんでした。
あなたが捜査官にお話ししたところを見ると、平成6年の全面偽造のほうは、書き損じをしたんで、一方の書類にバツ印をつけて、全面偽造の書類をもう1通作って、それを直接秘書課に持っていって判を押してもらったと、こう言ってますね。
はい。
平成7年の3月に全面偽造したほうは、あなたが秘書課に行って直接判を押してもらったと言いましたね。
はい。
そのとき、あなたは、全面偽造した借用書と何を持っていったんですか。
借用書以外には、変更契約書数枚と理事長の決裁書類を持っていきました。
理事長の決裁書の中に、2億5000万を借りるというのは書いてありましたか、ありませんでしたか。
書いてありません。
横田さんのほうがあなたが持ってきた書類をざっと見れば、あなたが持ってきた書類の中に一部全面偽造されているのがあるということは容易に分かりますよね。
(うなづく)
横田さんは、あなたが持っていった書類は全く中身確認しないで、めくら判押したということですか。それとも、何かあなたとの間で特別なものがあったんですか。
そんなことはありません。
あなたは、先ほど、変更契約書の中に全面偽造した借用書を紛れ込ませて持っていったと言いましたね。
(うなづく)
変更契約書というのは、はっきり太字で書いてありますね。金銭消費貸借契約証書というのも、はっきり太文字で書いてありますね。見れば一目瞭然でしょう、その違いは。いかがですか。
はい。
あなたは、そんなことじゃ簡単に見破られてしまうと思わなかったですか。
やはり、怖さはありました。
でも、決裁が通っちゃった、市長印も押されちゃったと、こういうことですか。
はい。
変更契約証書というのは、いったん金融機関から借入れした、その弁済期間を変える、若しくは利率を変えるということについて使う書類のことですね。
はい。
だから、お金を借りるという書類じゃないですね。
はい。
法廷にも変更契約証書がたくさん出てます。ところが、あるものについては市長印が押してあり、あるものについては市長印が押してないんだけれども。
〔検察官請求証拠等関係カード(乙)28末尾添付の変更契約証書を示す〕
この連帯保証人欄には市長印がないですね。
はい。
〔検察官請求証拠等関係カード(乙)27末尾添付の変更契約証書を示す〕
こちらには市長印が押されているでしょう。
はい。
そうすると、群馬銀行に出された変更契約証書の連帯保証人の部分に、時には判が押されたものが出たり、時には判が押されなかったものが出たり、全くばらばらな気がするんだけれども、これは、どうしてこうなるんですか。あなたの認識の範囲内で、もし分かればお答えいただけますか。
変更契約がある場合、群馬銀行の方から指示がありまして、その指示に従って印をいただいてました。
群馬銀行は、時には市長印もらいなさいと言ったり、時には市長印はいいと言うから、あなたは、簡単に言うと、群馬銀行の指示に従ったということですか。
はい。
平成7年11月7日付けのあなたの調書によると、最後のほうに、変更契約証書の連帯保証人欄には市長印をもらう必要なかったんだと、だから、不正借入金の更新契約についてはとても都合がよかったんだと言ってます。でも、よく書類を見ると、きちんと市長印が押されるのと、全く押されてないのと、ばらばらですよ。そうすると、あなたは、銀行の指示を受けた、そのとおりやった、こういうことですね、それしか答えようがないね。
(うなずく)
群馬銀行のことについて聞きます。群馬銀行から、多額の、それも長期にわたって、時には水増しでお金を借入れしましたね。当然、金融機関とすると、いくら相手が公社だからといって、資金の使途は非常に大事だと思うんですよ。次から次への借入があったわけですからね。この使途については、銀行のほうから、あなたに対して質問はなかったんですか。
あることもありましたし、何も言わないで貸してくれたこともあります。
どの程度の質問があったんですか。
事業名を聞かれました。
そうすると、ほとんど群馬銀行は資金使途には関心を持ってなかったと、こういう感じですか。あなたの今の感じでいいです。
そうですね。
公社の場合、公社の金を土地の買主に払うときには、全部振り込みだと思うんですよね。恐らく県下の公社もほとんどそうだと思います。ところが、安中市の公社の場合は、あなたが何回も金を下ろしに行ったでしょう。それについてあなたに不審を持ったようなことはなかったんですか、あなたの感じでは。
はい、ありませんでした。
公社が市民の方なんかにお金を払うときに、銀行から金を下ろして現金で払うんじゃなくて、振りみにすることはあなたも分かるでしょう。
はい。
役所の事務処理ですね、ある意味では。
はい。
ところが、あなたは、しょっちゅう群馬銀行に行っては、多額の金を数限りなく下ろした。
(うなずく)
そうすると、あなた、とがめられるとか、あるいは疑われているんじゃないかという考えはなかったんですか。
考えました。
あるいは、金融機関の場合、お金を貸すだけじゃなくて、公社から支払われたお金の預金を獲得するという仕事が非常に大事なことは分かりますね。それも、大きいお金の場合は、その金がどこに流れているか、どこに払われるのかということについて、預金獲得のために最大の関心持つんだけれども、捜査記録読んでみても、その辺も、ほとんど群銀さんのほうはあんまり関心持たなかったと聞いていいですか、あなたの感じでは。
はい、そのとおりです。
変造のほうですが、決裁を通して、数字を付け足したということですね。
(うなずく)
改造前の書類とあなたが変造した書類を見ると一目瞭然なんだけど、金という不動文字が書かれてるところと、あなたが書いた数字の間に、非常に余白があるんです。長期間、そういう書類の作成の仕方をしていて、稟議はたくさんの人を渡っていくでしょう、多胡君、余白部分がありすぎだよと言われたことがありますか、ありませんか。
ありません。
変造の金銭消費貸借契約証書を見ると、あなたが書き足した部分がいかにも不自然のように見えるのがたくさんあります。その点について、銀行から、何かあなたのほうで質問受けたことありませんか。
ありませんでした。
〔検察官請求証拠等関係カード(乙)24末尾添付の金銭消費貸借契約証書(平成4年9月30日付け、金額壱千五百五万四千円のもの)を示す〕
金額の欄に、「金」として、「壱千五百五万四千円」とありますね。非常に余白があるでしょう。
(うなずく)
〔同号証末尾添付の金銭消費貸借契約証書(平成4年9月30日付け、金額弐億壱千五百五万四千円のもの)を示す〕
これは、いかにも、全体の数字のバランスからすると、あとで書き入れたんじゃないかという感じは目で見てします。まずいな、分かるんじゃないかなと思ったことないですか。
あります。
被告人供述調書(第5回公判調書)平成8年1月18日
多胡邦夫
質問及び供述
田中弁護人
今の気持ちを率直に言っていただけますか。
申し訳ないことをしたというのが率直な気持ちで、この事件は社会に与えた影響が大変大きいものだと思ってます。まして公務員の地位を利用して、公務員の名誉を大きく傷つけ失墜させ、社会に対しての背信行為を深く反省してます。
要は、どんな処罰でも受けますと、そういうことですか。
はい。
今の率直な気持ちはね。
はい。
現在の気持ちはよく分かったんですけれども、かない長い間、横領したり、又は詐欺をしてましたね。
はい。
一口では言えないでしょうけれども、この間はどんな気持ちでいましたか。
最初のころは、一つの快楽を夢見たというか、魔が差したというか、最初の金額は小さかったんですが、少しずつ大きくなりまして、できれば人に相談したいという気持ちもありました。しかし、気が付いたときには、相談しても、金額的に数千万いってましたから、もうどうなる金額ではないと自分で判断いたしまして、そのままずっとずるずるきてしまったんですが、途中何度となく、この事件が露呈してほしい、あるいはまた反対に分かってほしくない、入り乱れた気持ちで毎日を過ごしてました。
まして、あなたが毎日出勤される公社のことですよね。
はい。
毎日職場にあなたが行かなくちゃいけない、そういうことですよね。
はい。
一方においては分かっては困る、また一方においては自分のやったことが早く分かってもらいたいと、あるいは人に相談したいと、そういう気持ちが日によって右に揺れたり左に揺れていたと、こういう気持ちでしょうかね。
そうです。
本件が発覚してから、自殺を図ったことがありますね。
はい。
奥さんの口から出ましたけれども、もう死のうと思って左手首の動脈のところにカッターナイフを突き刺して切ったと、かなり血が出てたと、一時間以上そこに座っていて、浴槽内に手を入れてじっとしてたと、捜査機関の前で言われてますね。
はい。
そのときのあなたの気持ちを、自分の口からちょっと言っていただけますか。
先ほども申し上げましたとおり、私が責任取れる金額でなくなってしまったもんですから、責任の取り方は最後はこういう形で取ろうと数年前から考えておりましたので、それをただ実行しただけです。
もう、かなり以前から、分かったら死ぬしかないだろうと、こう思ってたということですね。
はい。
この事件が発覚したときに、奥さん、あるいはあなたの子供さんのことを、当然考えたこともあるでしょう。
はい。
公社は55年4月に設立をされましたね。
はい。
昨年、あなたが異動を命じられるまでの間、なんと15年間ありますね。
はい。
なぜ、あなたは異動の命令がなかったんですかね。
ちょっと私には、それについてはよく分からないんですけれども。
市の場合は、どの職員がどの配置につくか、異動、これはどの部分で決めてるんですか。
総務部の秘書課で決めています。
それで、市の職員は異動命令があれば、直ちに移動すると、こういう立場ですね。
はい。
あなたが知る範囲内で結構なんですが、県内たくさん公社がありますね。
はい。
実を言うと、私もある公社の仕事を時々頼まれてやっているんだけれども、そこでお聞きするんですが、あなたが知る範囲では、ほかの公社の職員は、およそどのくらいで異動を受けていますか。
他の公社の状況というよりは、安中市の人事に関しましては、おおむね5年を目安に人事異動対象になっているようでございます。
そうすると、あなたは異動の命令を受けるほうだから、なぜ自分が異動されなかったかよく分からないと、そういうことでしょうかね。
はい。
さて、公社の組織についてお聞きしますけれども、理事長さんは市長さんがされるわけですね。
はい。
その下に、副理事さんがおられるでしょう。
はい、副理事長です。
で、副理事長さんというのは、どなたがしていたんですか。
今までは助役がしておりました。
それでは、常務理事さんは。
今までは収入役が担当していました。
副理事や常務理事以外にも、理事さんはいらっしゃいますね。
はい。
何人おられますか。
理事は全部で14名だと思います。
これは簡単で結構ですが、どういう方が理事をされていましたか。
市の職員では、総務部長以下、部長職の人間が4名、議会代表から残りの人数が出ています。
たしかその下に、事務局長、で、事務局次長と、皆さんがおられる、こういう組織形態ですね。
はい。
そうすると、例えばあることについて決裁を受けると、捜査記録を読んでみると、正確には回議書と、こう呼んでいるようですね。
はい。
そうすると、あることで、いわゆる決裁を受けなきゃいけないということに公社内でなったときには、その書類には、一体何人の方が目を通すことになりますか。
決裁の内容によって違うんですが、理事長決裁になりますと、担当職員並びに同僚、それから事務局次長、事務局長、常務理事、副理事長、理事長、それだけの人間が目を通すことになります。
そうすると、あなたが起案して決裁を受けなきゃいけない書類を作ったときには、今あなたが言われたたくさんの方がその書類に目を通すと、こういうシステムですかね。
はい、そうです。
あなたが捜査機関でお話をしている調書によると、公社が設立されてから間もなく、市の方から年間30万円の事務費が出ていたと、こう言われましたね。
はい。
本件の詐欺事件のまず基本にあるのは、あなたが市から公社に交付があった30万円のお金の一部を使い始めたと、これが契機になっていますね。
はい。
当然、公社では監査が行なわれるでしょう。
はい。
公社の監査というのは、毎年何月に行なわれるんですか。
5月です。
公社の監査をされる方、いわゆる監事の方は、何人おられたんですか。
2名です。
それでは、どういう方が、あなたの公社の監事をされていましたか。
今までは市の監査員の2名が公社の監事を兼ねておりました。
では、市の監査員と公社の監査員は同じ方でしたね。
はい。
具体的には、どういうお仕事をしたり、あるいは、経歴を持ってる方が監査員、あるいは、監事をしておりましたか。
今までは、私が知る限りでは、2名のうち1名が市のOB、もう1名は議会代表といいまして、議会の方から推薦であがってくる人物です。
安中の市のOBが監事に入っていますね。
はい。
OBといっても、前歴いろいろあると思うんだけれども、例えばどんな役職を前歴されたOBでしたか。
今、部長制度が敷かれているんですが、公社が設立された当時はもう部長制度になっていたんですが、OBの方が退職なさったころは部長制度ってありませんで、一般事務職では課長が一番上の地位でした。課長経験者が主になっていたと思います。
市の職員では、一番ポストが上の方が退職されたときに、市や公社の監事等になられたと、こう聞いてよろしいんですか。
はい。
そうすると、一人は市のOBですから、市若しくは公社内の事務処理については、当然精通されていますね。
はい、一般的なことについては、精通されていると思います。
参考にお聞きするんですが、群馬県の公社の中には、税理士の肩書きを持った方が市や公社の監事になられる、こういう公社があるということは、あなたは耳にしてますか。
はい、昭和55年に設立するときに、私は担当いたしまして、公社を設立したんですが、そのときに、群馬県内の土地開発公社の状況を取り寄せまして、いろいろ調べてみたんですが、そういった肩書きの方が公社の監事になるという所も、二、三ありました。
あなたがお勤めになっていた市、公社では、資格をもった税理士さんにやっていただくという話は、耳にしたことはなかったですか。
ありませんでした。
先ほど言いましたように、初め、市から交付された30万、これは市から公社の口座に入るわけでしょう。
そうでございます。
そうすると、あなたはそのお金を横領するということは、公社にある金をあなたが銀行で下ろすと、こう聞いてよろしいですか。
はい。
そうすると、本件横領事件ですから、例えば30万入った、あなたが1万円下ろした、2万円下ろしたと、それが本件のきっかけになっていますね。引き金にね。
はい。
したがって、あなたが現に横領したと、その処理はどうされていたんですか。
帳簿上の処理は、公社の経理っていうのは複式簿記なもんですから、市の一般会計とは異なった方法でやっております。なおかつ伝票処理で、伝票会計で、伝票が元帳になるという形をとっておりますので、伝票を起こさない限り、数字的に合わせることができませんので、私とすれば、支出する場合は、青い伝票で起こすんですが、振替伝票でグリーンの伝票で起こすという手口で記載いたしました。
つまり出金伝票を起こすわけでしょう。
もちろんそうです。
出金の書類を作りますね。
はい。
そうすると、例えば1万円出金したというのは分かるんだけれども、じゃあ、どこに出金したという、出金先はどこになるんですか。
出金先は書きませんでした。
でも、領収書をどっかでもらってこなくちゃいけないんじゃないですか。
30万円の市からいただいている目的は、他の市町村の公社の場合は、土地を売買して公社が取得し、市に売り渡すときに手数料というのがいただけるんです。ところが、安中市の場合は、その手数料が払えないから、その30万円を事務費にあてろということで、事務費、いわゆる消耗品、あるいは、理事の報酬、こういったものの目的のために30万円がきてますので、もし1万円を使って横領して、領収証をとるとなると、事務費でボールベンを買ったり、ノートを買ったりとか、そういう消耗品関係以外はとれないんですね。ですから、結局、領収証はつづってございません。
1万を出金した、横領したと、そうすると、出金伝票は作るけれども、それに合った領収書は不存在ということになりますね。
はい。
たとえば公社で必要な文房具を買うときも、そうすると、1万円出金して領収証なしと、こういうことになるわけですか。
そうです。
そうすると、そういう事務処理ですと、本当にそのお金が正式に出金されているかどうかというのは、分かりませんね。
はい。
その点について、領収証をそろえるようにと、そういう指示、あるいは、話が公社、あるいは、市のほうからあったことがありますか、ありませんか。
ありません。
関係の記録によると、例えば、ときには30万のうち半分の15万くらいを横領したこともあると、こういうことですよね。
(うなずく)
そうすると、交付されたお金の半分も横領していたときがある、こういうことになりますね。
はい。
そうすると、それが、なぜ公社の監査のときに分からなかったんですか。
監査の方法になってしまうんですけれども、領収証と通帳の付け合せというのが、伝票の付け合せというのがありませんので、分からなかったんだと思います。
この法廷にも監事の決算書類が出ています。適切であると、あるいは、関係書類を見ても間違いないという書類が法廷に出ているんだけれども、事実は全くそのとおりじゃなかったですね。
はい。
出金をしたという伝票はあっても、本当に出金をしたかどうかって言うのは、領収書がなきゃ、正しく分かりませんよね。
(うなづく)
あなたは公社に15年もお勤めだったね。そうすると、文字通り、簡単に言えば、15回、あるいは、16回監査があったと、こういうことになりますね。
はい。
一度も監事のほうから、例えば、ある書類を見て、これはどうなっているの、おかしいじゃないか、こういう趣旨の言葉は聞かれたことはなかったですか。
はい、ありませんでした。
それでは、そもそも監事さんが監査をするに要した時間、それは通常、さあ監査が始まった、そうすると、どの程度かけていましたか。
最初のころは、朝の10時ごろから始めまして、お昼ごろまで、最近ここ何年かは、9時半ごろから始めまして、12時、お昼で終わるというのが通常でございました。
あなたの捜査機関の記録によると、ときには1万円、2万円下ろしたと、それがかさんでいったと、それで、結局は、金融機関の借入金を水増しをする方法で切り抜けようとしたと、そういうことですね。
はい。
そこでお聞きしますが、本件の起訴以前のことなんですけれども、例えば、5000万借りるのを1億円水増しして、1億5000万を借り入れたということで考えてみると分かりやすいと思うんですが、そのお金は、まずどこに入るわけですか。
特別会計を作る前は、公社のほうの通帳に入ります。
当然決裁、つまり稟議に回すのは5000万と、ところが、公社の口座に入ってきた金は1億5000万と、たとえた場合で言えばですよ。
はい。
そうすると、特別口座ができる前の話なんですけれども、監事の方が通帳を見れば、もうあなたが不正に借入れしてるという事実は、一目瞭然ですよね。
はい。
そうすると、この監事さんは監査のときにその一番基になる、重要な通帳を見なかったということになるんですか。
はい、そうです。
じゃあ、何を見て、監事さんは当時監査してたんでしょうかね。
決算書類を作りまして、私のほうからその書類についての説明をいたします。それからいろんな台帳、書類ですね、土地を買った契約書、工事をした場合、工事の請負契約書、そういった書類関係を見、あとは帳簿類を見ていただくということでございます。
そうすると、もとの金額がどういうふうに動いてるかということに関しての通帳については、監事の方は全く見なかったと、こう聞いてよろしいですね。
はい。
あなたも捜査段階で言われてるけれども、その口座に市から土地代金が入ってきたこともありますね。
はい。
ときには、実際は銀行に返していないんだけれども、返したという決裁書類を作った、でもお金は以前としてその口座になると、こういうこともありましたね。
はい。
そうすると、そういう段階で口座を見れば、あなたが不正をしたことは一目瞭然ですね。
はい。
安中市の公社に安中市土地開発公社会計規程というものがあるのを、あなたも御存じでしょう。
はい。
既に裁判所に出されている書類の中に入っているんだけれども、その28条によると、預金の残高証明を監事に確認してもらいなさいと、こういうのがあるのも、あなたも恐らく御存じでしょう。
はい。
その中のどこを見ても、金融機関からの借入れの残高証明をもらいなさいという規定は、どこにも見当たらないんだけれども、そこでお聞きするんですが、あなたがお勤めしてた当時、預金の残高証明書だけでは正しく事実をつかめないから、金融機関からの残高証明書をもらおうと、もらうべきだと、こういう話があなたが在職中出たことがありますか、ありませんか。
ありません。
さて、平成2年に入って、特別口座を設けましたね。
(うなづく)
だました金は特別口座に入る、正規の借入れの金額は従前の口座と、こういうことにしましたか。
はい。
いずれにしても、例えば、群馬銀行からお金を借りるとき、借入依頼書、あるいは、金銭消費貸借契約証書、そこには必ず公社の理事長印が押されますね。
(うなずく)
そこで、理事長印がどういうふうに保管されていたかと、簡単にちょっとお聞きします。まず公社の理事長印は、ふだんはどこにあったんですか。
理事長印は、公社の事務局長でもあります都市計画課長の席に、執務時間内はそこにございます。
〔検察官請求証拠等関係カード(乙)5添付の「都市計画課の配置状況」と題する書面を示す〕
これはあなたがお作りになったわけですかね。
はい、私が作りました。
都市計画課の配置状況とありますね。
はい。
この図面のほぼ真ん中辺りに、「加部局長(都市計画課長)」とありますね。
はい。
この加部課長は、公社の局長のことですね。
はい。
あなたが言われたのは、この加部局長の机の上に理事長印がふだん置かれていると、こういうことでしょうか。
はい、そうです。
それでは、その日の仕事が終わるでしょう、そのときに、その判子はどこに保管されることになりますか。
課長だと思うんですが、課長の後ろにロッカーがあるんですが、そこが都市計画課の公印の保管場所、並びに公社の印鑑の保管場所となっておりました。
この図面で、真ん中の右側にロッカーと書いてあって、公印保管用とありますね。
はい。
そこに、勤務時間過ぎると保管するわけですか。
はい。
それではかぎはかかりますか、かかりませんか。
かかります。
そうすると、どなたが、勤務時間を過ぎると、そのロッカーを開けて保管されますか。
通常、課長がやると思います。
その課長がかぎをした、そのかぎは、その後どうなりますか。
課長の机の上にレターケースがあるんですが、そのレターケースの引き出しの中にいつも入れてあったと思います。
この図面の中の加部局長の机の上に、レターケースって書いてありますね。
はい。
そこにかぎは入れると。
はい。
そのレターケースには、かぎはかかってますか、かかってませんか。
レターケースにはかかっておりません。
そのレターケースにかぎがかかってないから、そこからかぎを持ち出して、ロッカーを開けることは、これは可能になりますね。
はい。
その理事長印がどういう手順で押されるかということについて、ちょっとお聞きします。例えば、群馬銀行から1億円を借りたいということになったとしますね。そうすると、1億円を借りられる借入依頼書、それをあなたは担当で作りますね。
はい。
その所には、どういう経緯をへて理事長印が押されるか、ちょっと説明してくれませんか。
回議書が決裁になって、理事長から戻ってきまして、戻ってきました決裁書類を提示して印鑑をもらうのが通常なんですが、課長とか留守の場合には、私が直接机の上から印鑑を持ち出して、その場で押していくことが多かったです。
もうちょっと前のサイドから聞きますね。決裁書を起案します。それからどのように上がっていくか説明してください。
決裁書を起案しまして、同僚の回議の印鑑をいただき、それから事務局次長、事務局長、常務理事、副理事長、理事長と、そこまでいって決裁になります。
そうすると、決裁になった書類は、例えば、あなたが群馬銀行から1億円借りたいと、そういう決裁書類の場合は、決裁になった書類は、だれからあなたのところに戻るんですか。
これは市長室の秘書から戻ることもあれば、たまたま課長が市長室に行ってもらってくることもあります。
市長さんの話はまた聞きます。私が聞いているのは、理事長印のこと。
ですから、市長が理事長ですから、理事長のところまで書類が回りますので、そこで市長の秘書である職員が、決裁になったものは各課のほうへ戻すというのが通常でございます。
そうすると、公社の理事長から各課に戻ると言いましたね。
はい。
そうすると、たくさんの借入依頼書が法廷に出てるんですけれども、理事長印が押されていますね。
(うなずく)
その理事長印というのは、あなたが例えば群馬銀行から1億円借りるというときには、もう一度言ってくれませんか。正規に流れていったとき、だれがどうやって押すんですか。
正規の場合は、決裁された回議書が私のところに戻ってきます。それを印鑑を保管されている課長のところに行って、課長に提示し、で、課長にその決裁になった書類を見ていただいて、群馬銀行に提出する書類であれば、それに印鑑をもらうというのが通常の流れです。
そうすると、決裁をした後に課長が理事長印を押すと。課長の上に理事長印がありますけれども、こういう流れですね。
はい、そうです。
本件の場合は、あなたが無断で理事長印を押したことはあるわけですか。
ございます。
回数で答えるのは難しいでしょうけれども、あなたが無断で理事長印を押したというのは、都合どのくらいあるんでしょうかね。
書類に関しまして、少なくても、借入れに関しましては、不正をしている部分は100パーセント私が押しました。
なぜ、事務局長の机の上にある理事長印をあなたが無断で使えるんですか。
これは各課もそうなんですけれども、担当職員が印鑑をお借りしますと言って借りて、どの書類に判子を押すっていちいち断らずに押すということも、度々ありますんで、そういう合間を縫ってということですか。
通常は、事務局長、つまり課長が判子を押すことになりますね。
はい。
ところが、実際には、時々、担当者がほかの部署でも判を押していたことがあると、分かりやすく言うと、そういうことですかね。
はい。
それをあなたも利用したと、こういうことですか。
そうです。
ちょっと話は変わるんですけれども、公社が借り入れることについて、市が連帯保証をしますね。
はい。
毎年、議会で債務保証について限度額、上限を決めますね。
はい。
それはいつの議会で決めるんですか。
例えば、平成7年度の債務保証であれば、平成7年の3月議会で決めます。
平成7年というのは、平成7年4月から平成8年3月まで、こういうことになりますね。
はい。
では、市のほうで毎年限度を決めるわけですね。
はい。
そうすると、各金融機関にとって、例えば安中市のほうでは幾ら限度になったか、あるいは、お隣の富岡市では幾ら限度になったかというのは、非常に重要なことですね。
はい。
そこで、その議会で議決した債務保証についての議決の部分を抄本にして、各金融機関に毎年出しているでしょう。それは分かりますか。
はい。
私がお聞きしたいのは、市のほうの調書にも書いてあって分かるんだけれども、現実に各金融機関にだれが出していたかというのが、分からないんです。そこでお聞きしたいんですが、各金融機関には、限度額議決の抄本等を公社が出していたんですか。それとも、市のほうが出していたんですか。
私もその辺ははっきり分からないんですけれども、毎年4月になりますと、群馬銀行には、私が抄本を議会にお願いして作っていただいたものを届けてました。
安中の公社の場合は、金融機関は群馬銀行だけじゃないですね。
はい。
甘楽郡信用金庫安中市店とか、碓氷安中農協とか、群馬県信用組合とか、東和銀行安中市店とか、いろいろあるんじゃないですか。
はい。
ほかの金融機関などは、どなたが出していたんですか。あなたは分かりますか。
ええ、借入れ行くときに、そういうものを作ったものを持ってかないと、銀行は貸してくれませんから、一応そういうものはお持ちしました。
そうすると、例えば3月の議会で決めると、当然にそれを各金融機関に出すんじゃなくて、借入が起きたときに初めて持っていって出してると、こういうことですか。
そうです。
それは間違いないですか。
はい。
そうすると、金融機関に出すのは、市ではなくて、公社、こういうことになりますか。
それはどちらが出すのが正しいかは、私には分かりません。
現実には、どなたが出していたのか、公社と聞いていいですか。
はい。
それでは、この保証の限度額が予定が変更になって、年度中に減額する場合がありますね。
はい。
安中市の場合も、土地開発公社の場合、何度かあったでしょう。
はい。
そうすると、例えば初め借入れしたときに、10億円なら10億円の上限の議決書の抄本を出しますね。
(うなづく)
ところが、年度の途中に、行事の変更で減額する場合がありますね。
はい。
減額をする場合は、また議会が議決をしてるでしょう。
はい、してます。
それでは、例えば10億円の限度が7億円の限度になったときに、その減額された議会の議決書の抄本は、安中市の場合は出しておりましたか、出していなかったですか。
私は請求がなかったら出しませんでした。
そうすると、金融機関としては、初めの10億円は出てると、その後、減額されたのが出てないと、初めのものが10億円だとすると、仮に3億円減額されて7億円になったとしても、金融機関としては分かりませんね。
はい。
そこでお聞きするんですが、年度の途中で変更になり、議会で減額が議決されたときに、あなたの話だと、減額の議決書は出していないということですね。
はい。
あなたはずっと15年間いましたよね。
(うなづく)
減額になったときも、かなりあるでしょう。
ございます。
初めの減額されない限度額の書類を前提にして、減額された分まで借りちゃったと、こういうことはかつてありましたか、ありませんか。
あります。
そうすると、議会が議決をしていない、つまり議会が議決をした限度を超えた借入れと、こうなりますね。
はい。
それを市が債務保証したとなると、その効力はどうなっちゃうんですか。
さあちょっと私には分かりません。
現に、そういうことがありましたね。
はい。
金融機関のほうから、初めの議決書だけでは困ると、減額があったら、その都度きちんと出して欲しいという指示が、あなたのほうにあったか、ないか、結論だけお答えください。
ありませんでした。
〔検察官請求証拠等関係カード(甲)99を示す〕
その調書の7丁の裏から8丁に、「最後に、債務保証の減額をする場合の理由について説明します。この理由として、大きく分けると、国庫補助金の減額や増額などによる市の財政運営上の都合による場合、用地交渉の難航により、その年度内に取得できない場合、単価が当初見込みよりも上回ったり、下回ったりした場合が考えられると思います,このうち最も多いのは、用地交渉の難航によるものであり、この場合には、三月の定例議会において減額補正をし、先ほども説明したとおり、議決書の写しを作成して、公社の取引金融機関に提出していると思います。」という言い方をしてるんだけれども、現実的には、出されていなかったということですね
はい。
先ほどもお聞きしたけど、群馬銀行のほうから、時々、当然議会が開かれるわけだから、減額の有無を確認をされたことはないわけですか。
ありません。
それでは、例えば群馬銀行から借入れを起こすとしたとしますね。
はい。
まず簡単に言うと、公社で、先ほどあなたが言った手順をへて、理事長の決裁印が押されるわけでしょう。
はい,
そうすると、例えば借用書なら借用書に、公社の理事長印が押されますね。では、連帯保証人欄に市長印が押されることの手順を簡単にお聞きしたいんだけれども、借用書に市長印が押されるっていうのは、どういう手順で押されることになりますか。
土地開発公社と安中市とは、別団体なもんですから、公社の理事長の名前で、安中市長あてに債務保証依頼という文書をつけまして、担当課である財政課のほうへ持って行きます。財政課のほうが市長のほうへ決裁をとりまして、市長印を押して、公社のほうへ戻ってくるというのが流れでございます。
まず公社のほうで、幾つかの段階をへて決裁を得ますね。
はい。
そうすると、今度は財政課のほうにいくわけですね。
はい。
そうすると、今度は、財政課は財政課で、保証することに関連しての起案をするわけでしょう。
はい。
それが財政課で稟議されるわけですね。
(うなずく)
最終の決裁は、たしか総務 部長ですか。
はい。
それでは、公社は公社で、先ほど言いましたように、起案をする、公社内の決裁が下りた、次に今度は財政課に連絡をして、財政課は財政課で起案をされる、で、財政課で決裁が下りますね。そうすると、その後どうなるんですか。
財政課で決裁が下りますと、通常であれば、財政課が秘書課の公印の管理している係まで行きまして、決裁書類の私のほうでお願いした金銭消費貸借契約証書を持って、市長印を捺印にいくんだと思います。
金銭消費貸借契約証書の市長印を押印する方はどなたになりますか。
秘書課の横田係長です。
正規の流れでいくとすれば、横田係長は、どなたから市長印を押す借用書を受け取ることになるんですか。
財政課の担当職員だと思います。
それが押されてから公社に戻るということですね。
はい。
そうすると、借用書に押される市長印というのは秘書課の方か判を押すんだけれども、財政課の方が持っていって印を押していただくと、こうなりますね。
はい、そうです。
ところが、本来、財政課の人が持っていって押してもらうべきなのにもかかわらず、あなたが持っていったときに、秘書課は判を押しているでしょう。
はい。
それは全く間違った手順でしょう。
そうですね。
公社と市というのは別組織ですね。
はい。
借用書の市長印を、公社の方が待っていって直接押してもらうということは、本来あり得ないことでしょう、組織としては、いかかですか。
はい、そうです。
本件は何回かそれをあなたがしていて、どういうわけだか分からないけど、判を押してますね。
(うなずく)
特に、本件の起訴事実のうち、あなたか全面偽造したのは平成7年3月の2億5000万と平成6年9月の4億円ですね。なぜ、そういうことができたかということなんです。借用書に押される市長印、あなたが秘書課に持っていったって、秘書課は判を押すべき立場じゃないでしょう。
(うなずく)
市役所の財政課財務係で課長補佐兼係長をされている田島文雄さんが昨年6月5日に警察でお話をしている調書があります。この調書の中で、どういう手順で市長印が押されるかを細かく警察の方に御説明をしてるんですけれども、11丁裏4行目で、「今話した、字句の訂正でも、新たな書き替えでも、公社は財務係を経由しなければならないことはあたりまえのことです。なぜならば、今まで説明した様に、市とは別組織だからです」と言われています。全くそのとおりですね。
はい。
あるいは、財政課財務係主査の須藤純子さんも平成7年6月6日付けで警察の前で話してます、この方も全く同様のことを言ってます。市長印は公社が押すんじゃない、財務課が持ってきて初めて押すんだと、直接公社が持ってきて押すなんてことはあり得ないんだと、こう言われてますけれども、確かに全くそのとおりですね。
(うなずく)
平成6年9月の4億円の全面偽造、これはあなたは当初水増しを考えてたけど、結局は書き間違えたんで全面偽造をしましたね。
(うなずく)
そのときには、全面偽造した書類を、あなた、直接、財務係を通じないで横田さんのところに持っていって判を押してもらってますね。
(うなずく)
横田さんのほうから、組織上そんなことはできませんと、財務係を通じてくるようにと言われましたか、言われませんか。
言われませんでした。
財務係の係長さんも主査の方も、異口同音に、公社と市は組織が別だから秘書課に市長印を直接公社の方がもらいに来ることはあり得ないことなんだと、こう言われているんだけれども、そうすると、これだけはっきり捜査機関の前で財政課の方が言っているにもかかわらず、安中市の場合は、その辺が、されてなかったということになりますか。
その件に関してはそう思います。
調書の中では、今まで公社からの訂正の申出は一件もなかったけれども、訂正をするときにはこういうふうにするという具合に言われているんです。実際は、田島係長は御存じなかったけれども、現実には行われていた、こういうことですね。
(うなずく)
金銭消費貸借契約証書の連帯保証人欄に市長印を押すのは秘書課ですね。
はい。
平成7年3月の2億5000万の全面偽造の件、その借用書は、秘書課にだれか持っていったんですか。
偽造分は私が持っていきました。
横田さんのほうから、手続が違うと、財政課を通してくれるようにと言われましたか。
いえ、言われませんでした。
あなたが捜査官にお話ししたところを見ると、平成6年の全面偽造のほうは、書き損じをしたんで、一方の書類にバツ印をつけて、全面偽造の書類をもう1通作って、それを直接秘書課に持っていって判を押してもらったと、こう言ってますね。
はい。
平成7年の3月に全面偽造したほうは、あなたが秘書課に行って直接判を押してもらったと言いましたね。
はい。
そのとき、あなたは、全面偽造した借用書と何を持っていったんですか。
借用書以外には、変更契約書数枚と理事長の決裁書類を持っていきました。
理事長の決裁書の中に、2億5000万を借りるというのは書いてありましたか、ありませんでしたか。
書いてありません。
横田さんのほうがあなたが持ってきた書類をざっと見れば、あなたが持ってきた書類の中に一部全面偽造されているのがあるということは容易に分かりますよね。
(うなづく)
横田さんは、あなたが持っていった書類は全く中身確認しないで、めくら判押したということですか。それとも、何かあなたとの間で特別なものがあったんですか。
そんなことはありません。
あなたは、先ほど、変更契約書の中に全面偽造した借用書を紛れ込ませて持っていったと言いましたね。
(うなづく)
変更契約書というのは、はっきり太字で書いてありますね。金銭消費貸借契約証書というのも、はっきり太文字で書いてありますね。見れば一目瞭然でしょう、その違いは。いかがですか。
はい。
あなたは、そんなことじゃ簡単に見破られてしまうと思わなかったですか。
やはり、怖さはありました。
でも、決裁が通っちゃった、市長印も押されちゃったと、こういうことですか。
はい。
変更契約証書というのは、いったん金融機関から借入れした、その弁済期間を変える、若しくは利率を変えるということについて使う書類のことですね。
はい。
だから、お金を借りるという書類じゃないですね。
はい。
法廷にも変更契約証書がたくさん出てます。ところが、あるものについては市長印が押してあり、あるものについては市長印が押してないんだけれども。
〔検察官請求証拠等関係カード(乙)28末尾添付の変更契約証書を示す〕
この連帯保証人欄には市長印がないですね。
はい。
〔検察官請求証拠等関係カード(乙)27末尾添付の変更契約証書を示す〕
こちらには市長印が押されているでしょう。
はい。
そうすると、群馬銀行に出された変更契約証書の連帯保証人の部分に、時には判が押されたものが出たり、時には判が押されなかったものが出たり、全くばらばらな気がするんだけれども、これは、どうしてこうなるんですか。あなたの認識の範囲内で、もし分かればお答えいただけますか。
変更契約がある場合、群馬銀行の方から指示がありまして、その指示に従って印をいただいてました。
群馬銀行は、時には市長印もらいなさいと言ったり、時には市長印はいいと言うから、あなたは、簡単に言うと、群馬銀行の指示に従ったということですか。
はい。
平成7年11月7日付けのあなたの調書によると、最後のほうに、変更契約証書の連帯保証人欄には市長印をもらう必要なかったんだと、だから、不正借入金の更新契約についてはとても都合がよかったんだと言ってます。でも、よく書類を見ると、きちんと市長印が押されるのと、全く押されてないのと、ばらばらですよ。そうすると、あなたは、銀行の指示を受けた、そのとおりやった、こういうことですね、それしか答えようがないね。
(うなずく)
群馬銀行のことについて聞きます。群馬銀行から、多額の、それも長期にわたって、時には水増しでお金を借入れしましたね。当然、金融機関とすると、いくら相手が公社だからといって、資金の使途は非常に大事だと思うんですよ。次から次への借入があったわけですからね。この使途については、銀行のほうから、あなたに対して質問はなかったんですか。
あることもありましたし、何も言わないで貸してくれたこともあります。
どの程度の質問があったんですか。
事業名を聞かれました。
そうすると、ほとんど群馬銀行は資金使途には関心を持ってなかったと、こういう感じですか。あなたの今の感じでいいです。
そうですね。
公社の場合、公社の金を土地の買主に払うときには、全部振り込みだと思うんですよね。恐らく県下の公社もほとんどそうだと思います。ところが、安中市の公社の場合は、あなたが何回も金を下ろしに行ったでしょう。それについてあなたに不審を持ったようなことはなかったんですか、あなたの感じでは。
はい、ありませんでした。
公社が市民の方なんかにお金を払うときに、銀行から金を下ろして現金で払うんじゃなくて、振りみにすることはあなたも分かるでしょう。
はい。
役所の事務処理ですね、ある意味では。
はい。
ところが、あなたは、しょっちゅう群馬銀行に行っては、多額の金を数限りなく下ろした。
(うなずく)
そうすると、あなた、とがめられるとか、あるいは疑われているんじゃないかという考えはなかったんですか。
考えました。
あるいは、金融機関の場合、お金を貸すだけじゃなくて、公社から支払われたお金の預金を獲得するという仕事が非常に大事なことは分かりますね。それも、大きいお金の場合は、その金がどこに流れているか、どこに払われるのかということについて、預金獲得のために最大の関心持つんだけれども、捜査記録読んでみても、その辺も、ほとんど群銀さんのほうはあんまり関心持たなかったと聞いていいですか、あなたの感じでは。
はい、そのとおりです。
変造のほうですが、決裁を通して、数字を付け足したということですね。
(うなずく)
改造前の書類とあなたが変造した書類を見ると一目瞭然なんだけど、金という不動文字が書かれてるところと、あなたが書いた数字の間に、非常に余白があるんです。長期間、そういう書類の作成の仕方をしていて、稟議はたくさんの人を渡っていくでしょう、多胡君、余白部分がありすぎだよと言われたことがありますか、ありませんか。
ありません。
変造の金銭消費貸借契約証書を見ると、あなたが書き足した部分がいかにも不自然のように見えるのがたくさんあります。その点について、銀行から、何かあなたのほうで質問受けたことありませんか。
ありませんでした。
〔検察官請求証拠等関係カード(乙)24末尾添付の金銭消費貸借契約証書(平成4年9月30日付け、金額壱千五百五万四千円のもの)を示す〕
金額の欄に、「金」として、「壱千五百五万四千円」とありますね。非常に余白があるでしょう。
(うなずく)
〔同号証末尾添付の金銭消費貸借契約証書(平成4年9月30日付け、金額弐億壱千五百五万四千円のもの)を示す〕
これは、いかにも、全体の数字のバランスからすると、あとで書き入れたんじゃないかという感じは目で見てします。まずいな、分かるんじゃないかなと思ったことないですか。
あります。