■公営選挙費用を使って2019年4月7日投開票の県議選に当選した自民党の南波和憲県議は、その後突然5月24日に辞職しました。以後約7カ月が経過しようとする12月18日に、南波和憲に対する連座制適用に基づく群馬県議選への立候補を今後5年禁止する判決が、東京高裁で言い渡されました。
このため、当会は、12月23日、群馬県監査委員に対して、群馬県選挙委員会が南波和憲のために支出した選挙公営費を本人から返還させるよう求める住民監査請求を郵送で提出しました。ところが、県の監査委員らは2020年2月18日に「本件措置請求を棄却する」という結果通知を送り付けてきました。
選挙違反で連座制により当選無効が裁判所から宣告されたのですから、公平・公正な選挙の実施のために投入された血税による選挙公営費は回収されて損害を回避するのが妥当だと考えて、同3月19日に前橋地裁に訴状を提出しました。
その後、コロナ禍で手続きに時間がかかりましたが、ようやく9月30日(水)午前10時から前橋地裁21号法廷で第1回口頭弁論が開かれることになりました。そして先週、被告群馬県訴訟代理人から答弁書がFAXで送られてきました。
↑群馬県代理人もしている関夕三郎弁護士から送られてきた答弁書の送付書。↑
この事件に関する当会のブログ記事は次のとおりですので、ご参照ください。
○2019年7月24日:妻が公選法違反で起訴!・・・4.7県議選で南波前県議が血税で使った選挙公営費用158万円の落とし前↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2989.html
○2019年8月23日:公選法違反で妻が起訴!・・・4.7県議選後5月に辞任の南波前県議の妻に求刑1年↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3008.html
○2019年9月23日:公選法違反で妻が起訴!・・・妻が執行猶予付き有罪判決を受けた南波元県議が一時県議会臨時議長に!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3034.html
○2019年12月24日:妻の公選法違反で連座制適用の南波元県議・・・200万円余の選挙公営費の返還を求め住民監査請求!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3095.html
○2020年2月22日:妻の公選法違反で連座制適用の南波元県議…二百万円選挙公営費返還の住民監査請求を県監査委員が棄却!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3121.html
○2020年3月20日:妻の公選法違反で連座制適用の南波元県議…二百万円選挙公営費返還請求のための住民訴訟を提起!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3139.html
訴状提出後、5月27日に前橋地裁から補正命令が届いたので、6月8日に訴状訂正申立書を提出し、7月28日に地裁から第1回口頭弁論期日について事務連絡が届き、9月30日午前10時から地裁に出頭する旨、8月1日に期日請書を地裁に提出しました。
※提訴後、5月27日の補正命令から8月1日の期日請書までの地裁とのやりとり ZIP ⇒ 0728a0801.zip
■それでは、9月16日に被告群馬県訴訟代理人からFAXで送られてきた答弁書を見てみましょう。
*****送付書*****ZIP ⇒ 20200916tiicja2isej3.zip
2020年9月16日12時14分 石原・関・猿谷法律事務所 No.2115 P.1
前橋地方裁判所民事第1部合謙係 御中
ご担当 橋本 書記官 殿
原 告
小 川 賢 殿
(FAX:027-381-0364)
令和2年9月16日
前橋市大手町3丁目4番16号
被告訴訟代理人
弁護土 関 夕 三 郎
電話027-235-2040
送 付 書
事件の表示:御庁 令和2年(行ウ)第3号
選挙公営費不正支払損害賠償請求事件
当 事 者:原 告 小 川 賢
被 告 群馬県知事 山本 一太
次回期日:令和2年9月30日午前10時00分
下記書類を送付致します。ご査収の程,宜しくお願い申し上げます。
1 答弁書 1通(9枚)
以 上
----------------------切らずにこのままでお送り下さい-------------------
受 領 書
上記書類、本日受領致しました。
令和2年9月 日
原 告
印
前橋地方裁判所民事1部合議係 御中(橋本書記官殿):FAX027-233-0901
石原・関・猿谷法律事務所(弁譲士 関夕三郎)行 :FAX027-230-9622
*****答弁書*****ZIP ⇒ 20200916iicja2isej3.zip
<P1>
2020年9月16日12時14分 石原・関・猿谷法律事務所 No.2115 P,2
令和2年(行ウ)第3号 選挙公営費不正支払損害賠償請求事件
原 告 小川賢
被 告 群馬県知事 山本一太
答 弁 書
令和2年9月16日
前橋地方裁判所 民事第1部合議係 御中
〒371-0026
群馬県前橋市大手町3丁目4番16号
石原・関・猿谷法律事務所(送達場所)
TEL 027-286-2040 /FAX 027-280-0622
被告訴訟代理人弁護士 関 夕三郎
同指定代理人 笠 木 淳 司(市町村課次長(事))
同指定代理人 清 水 直 之(同課選挙・政治団体係
補佐(事))(選挙・政治団体係長)
同指定代理人 千 明 祐 介(同課同係主事(併))
(選挙管理委員会書記)
同指定代理人 中 澤 優 友(同課同係主事(併)
(選挙管理委員会書記)
第1 原告の令和2年6月8日付け訴状訂正申立書の1項で訂正された後の請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。
<P2>
第2 請求の原因に対する認否
1 1項について
(1) (1)について
原告が群馬県の住民であることは認め、その余は認否の必要を認めない。
(2)(2)について
おおむね認める。
正確を期すのであれば、被告は、群馬県の予算を調製し及びこれを執行することを担任する者であり(地方自治法149条2号)、その権限のうち、群馬県選挙管理委員会の事務に関するものを群馬県選挙管理委員会書記長に委任している(群馬県財務規則3条)。そして、被告は、群馬県を統括し及び代表し(地方自治法147条)、並びに群馬県の事務を管理し及び執行する者である(同法148条)。
2 2項について
(1) (1)について
原告が、群馬県職貝措置請求書(甲1。以下、「本件措置請求書」という。)を群馬県監査委貝に令和元年12月24日に提出し、住民監査請求を行ったことは認め、その余は不知。
原告は,木件措置請求書(甲1 ) の提出日を令和元年12月23日であると主張し、本件措置請求書にも作成日としてその日付の記載があるが、実際に群馬県監査委員に提出されたのは同月24日であった(甲2の本文冒頭部分参照)。
(2) (2)について
認める。
(3) (3)について
認める。
(4) (4)について
<P3>
認否を保留する。
(5) (5)について
不知。
第3 請求の内容に対する認否
1 1項について
(1) 1(1) 請求の端緒となる事件」について
ア 1) について
平成31年4月7日に群馬県議会議貝選挙(以下、「本件選挙」という。)が執行されたこと、及び南波和憲氏が令和元年12月18日に束京高等裁判所において判決確定日から5年間は群馬県議会議員選挙の候補者となり、又は候補者であることができない旨の判決(以下.「本件連座判決」という。公職選挙法(以下、「法」という)251条の2第1項参照。)を受けたことは認め、その余は不知。
なお、本件連座判決は、令和2年1月7日に確定した。
イ 2) について
認める。
ウ 3) について
令和元年9月6日に南波和憲氏の妻が前橋地方裁判所において法221条1項3号、1号に該当する罪により懲役1年、4年間執行猶予の判決を受けたこと、及びこの判決が確定したことは認め、その余は不知。
この判決の確定日は、原告の主張する令和元年9月6日ではなく、同月21日である。
エ 4) について
不知。
オ 5) について
本件選挙で南波和憲氏が当選したこと、南波和憲氏から群馬県議会に辞
<P4>
職顧が栖出された後の令和元牛5月24日に南波和憲氏が群馬県議会議員を辞職したことは認め、その余は不知。
(2) 「1(2) いつ、どのような財務会計上の行為をしたか(又はしなかったか)」について
認める。
(3) 「(3) 違法又は不当である理由」について
ア 1) について
否認ないし争う。
まず、原告は、「選挙達反で連座制の適用を受けた南波和憲は当選無効となる」と主張する。しかし、総括主幸者等の買収等に対する刑事裁判の判決があっても、直ちに当該公職の候補者等であった者の当選が無効となるものでなく.連座訴訟(法211条)の結果により初めてその当選が無効とされるものとされている(安田充/荒川敦編著「逐条解税公職撰挙法 下」1702頁参照)。そして、本件連座判決は、内波和憲氏の立候補制限を命じているが、その当選を無効とはしていない。したがって、原告の上記主張は、前提を誤っており、理由がない。
なお、原告は、連座制により当選無効となった場合、「当然に得票数はゼロとみなされることになる」と主張するが.連座制による当選無効に原告が主張するような法的効力を認める法令上の規定は見当たらず、原告の上記主張は独自の見解である。
イ 2) について
おおむね認める。
ウ 3) について
令和元年7月24日に,原告から群馬県選挙管理委員会に電話があり、群馬県選学管逮委員会の清水書記から選挙公営制度の説明を行ったことは認め、その余は不知。
エ 4) について
<P5>
漬水書記の説明の要約のニュアンスが岩千異なるため、否認する。
令和元年7月24日の電話において、清水書記は、原告に対し、連座制適用者に対して選挙公営費の返還請求ができる旨を定めた法令上の規定がないこと、群馬県選挙管理委員会として法的根拠のない返還請求を行うことは困難であること及び返還のルールを法の中でどのように定めるかは立法上の問題であることを説明したとのことである。
オ 5) について
南波和憲氏に対して選挙公営費の返遠を求める予定がないことは認め、その余は否認する。
原古の主張は、被告に対して法令上の根拠がない諸求を強いるものであり、合理性がない。
カ 6) について
原告の主張は独自の見解であり、認否の必要を認めない。
キ 7) について
認否の必要を認めない。
(4) 「(5) 結果として群馬県が被っている損害」について
ア 1) について
群馬県選挙管速委員会が令和元年7月11日付けで本件選挙に係る以下の選挙公営費の支出に関する情報を開示決定したことは認め、その余は不知。
・自動車の借入れ(群馬県議会議員及び群馬県知事の遠挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第4条第2号イ)
・燃料供給(群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第4条第2号ロ)
・運転手の雇用(群馬県謙会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公公営に関する条例第4条第2号ハ)
・ポスター作成公営費(群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における
<P6>
選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第7条)
・ビラ作成公営費(群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第7条)
イ 2)について
本件選挙における南波和憲氏の選挙遅動に係る費用について、選挙公営費として次の支出を令和元年6月12日に行ったことは認め、その余は否認する。
①選挙運動用自動車の使用[自動者車] 金137,700円
支払先;株式会社八洲(代表取締役 南波和憲)
➁選挙運動用日動車の使用[燃料] 金66,781円
支払先:吾妻総業株式会社(代表取締役 南波将彦)
➂選挙運動用自動車の使用[運転手] 金112,500円
➃ポスターの作成 金1,153,152円
支払先:宮下印刷所(代表 宮下良夫)
⑤ビラの作成 金120,160円
支払先:宮下印刷所(代表 宮下良夫)
原告は、内波和憲氏個人に対して直接支払われた選挙公営費があるかのような主張をするが、南波和憲氏個人に対して直接支払われたものはない。また、原告は、南液和憲氏が選挙運動用通常業書の使用上限8,000枚(法142条1項4号)全てを使用したと推定した上で、ハガキ代として496,000円が文払われた旨主張するが、南波和憲氏が実際に使用枚した数は不明である。
ウ 3) について
認める。
エ 4) について
おおむね認める。
選挙運動用通常葉書の使用に係る費用は、供託物没収の有無にかかわら
<P7>
ず選挙公営の対象とされている(法142条5項)。すなわち、この費用については、その余の費用と異なり、供託物を没収された候補者にも支払われることになっている。
オ 5) について
おおむね認める。
カ 6) について
群馬県選挙管理委員会が令和元年5月27日に日本郵便株式会社に対して選挙運動用通常葉書431,707枚分の取扱費用合計26,766,834円を支出したこと及び群馬県選挙管理委員会が各供補者の葉書の使用枚数を把握していないことは認め、その余は不知。
キ 7) について
否認ないし争う。
(5) 「(6)被告の群馬県選管職員の重過失」について
ア 1) について
認める。
イ 2) について
南波和憲氏の辞職が令和元年5月24日付けで効力が生じたことは認め、その余は不知。
ウ 3) について
南波和憲氏の辞職の効力が令和元年5月24日に生じたこと、その3日後の同月27日に群馬県選挙管理委貝会が日本郵便株式会社に対して選挙運動用通常葉書の取扱費用を支出したことは認め、その余は否認する。
エ 4) について
認否の必要を認めない。
(6) 「(7)総務省自治行政局選挙課へのヒヤリング結果」について
不知。
<P8>
第4 訴状訂正申立書に対する認否
1 2項(1)について
各文出区分の上限に関する説明はおおむね認め、南波和憲氏の選挙運動用通常葉書の使用枚数は不知、その余は否認する。
2 2項(2)について
否認する。
元本債権が発生しないので、その遅延損害金の起算日の議論は前提を欠くが、一般論として、不法行為に基づく損害賠償請求権の遅延損害金の起算日は不法行為日であるところ、本件選挙の投開票日における南波和憲氏のいずれの行為が違法な不法行為となるのか不明である。
第5 被告の主張
1 選挙公営について
原告の請求は、いわゆる「選挙公営」に係るものである。
選挙公営とは、国又は地方公共団体がその費用を負担して候補者の選挙運動を行い若しくは選挙を行うにあたり便宜を供与し、又は候補者の選挙運動の費用を負担する制度である。
これは、金のかからない選挙を実現するとともに候補者間の選挙運動の機会均等等を図るための手段として採用され、その拡充・合理化が進められてきた制度である。
現在の公職選挙法で採用されている具体的な選挙公営について、選挙の種類によって制度が複雑に異なっているので県議会議貝選挙に限定して幾つか見ておくと、選挙運動用自動車の使用(法141条8項)、通常葉書の交付(法142条5項)、ビラの作成(法142条11項)、ポスターの作成(法143条15項)等について選学公嘗制度が採用されている。なお、公職選挙法上、個々の費目によっては、遮挙公営を採用するか否か、要するに、それらの曹用を公費から支出するか否かについて、条例に委任されているものもあり、群馬県におい
<P9>
ては、この法律による委任を受け、「群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例」(以下、「条例」という。) を制定し、広く選挙公営が採用されている。
そして、この選挙公営費は、通常葉書の交付など一定の選挙公営を除き、供託物が没収とならない候補者に限って支払われるものとされている(条例2条など).そのため、その支出時期は、選挙会において得票の計算が終わり、供託物が没収されない候補者が確定した後に支出される。
支出の手続としては、候補者と各支出について契約を締結した業者等から群馬県に対して請求してもらい、これに基づいてその業者等に支払われる(条例4条など)。もとより、供託物を没収される候補者に係る費用にあっては、業者等から請求があっても、選挙公営費の支出は行わない"
2 原告の主張には理由がないこと
原告の主張は、南波和憲氏の得票数が本件連座判決により「ゼロとみなされることになる」という意見を大前提とするものと解されるが、上述のとおり、連座制は、当選を無効とすることはあっても、有権者の投票の効力を無効とする効力があるわけではないから、「得票数がゼロとみなされることになる」とする原告の主張には、無理があると言わざるを得ない。
その他、南波和憲氏については、選挙公営費の支出が認められない理由が何ら見当たらないから、被告が南波和憲氏に対して選挙公営費の返還を求めることには法令上の根拠がない。
したがって、原告の主張には理由がなく、本訴請求は速やかに菜却されなければならない。
第6 擬制陳述
令和2年9月30日午前10時に指定されている第1回口頭弁論期日は差し支えるため、擬制陳述でお願い致します。
以 上
**********
■上記の認否では、訴状に対してどのように被告が答弁しているのか分かり辛いので、項目ごとに対比させてみました。
**********
第2 請求の原因
1 当事者
(1)原告は群馬県の住民であり納税者である。
⇒原告が群馬県の住民であることは認め、その余は認否の必要を認めない。
(2)被告は、群馬県知事であり、選挙公営費を扱う群馬県選管を管理・監督する者である。
⇒おおむね認める。正確を期すのであれば、被告は、群馬県の予算を調製し及びこれを執行することを担任する者であり(地方自治法149条2号)、その権限のうち、群馬県選挙管理委員会の事務に関するものを群馬県選挙管理委員会書記長に委任している(群馬県財務規則3条)。そして、被告は、群馬県を統括し及び代表し(地方自治法147条)、並びに群馬県の事務を管理し及び執行する者である(同法148条)。
2 住民監査請求
(1)令和元年12月23日、原告は群馬県監査委員に、地方自治法第242条第1項により、妻の公選法違反が発覚し議員を突然辞職した南波和憲が、その後、妻の有罪判決や自身の連座制適用判決を経てもなお、群馬県選管が選挙公営費の返還を南波和憲に請求しようとせず、南波和憲に公金を不当支出したままにしていること(以下、「本件損害」という。)について措置請求(甲第1号証)を行った。
⇒原告が、群馬県職貝措置請求書(甲1。以下、「本件措置請求書」という。)を群馬県監査委貝に令和元年12月24日に提出し、住民監査請求を行ったことは認め、その余は不知。原告は,木件措置請求書(甲1 ) の提出日を令和元年12月23日であると主張し、本件措置請求書にも作成日としてその日付の記載があるが、実際に群馬県監査委員に提出されたのは同月24日であった(甲2の本文冒頭部分参照)。
(2)令和2年1月8日、群馬県監査委員は原告に対して住民監査請求を受理する旨の通知をした(甲第2号証)。
⇒認める。
(3)令和2年1月27日、原告は群馬県監査委員に対して、地方自治法第242条第6項の規定に基づき、意見の陳述を行った。
⇒認める。
(4)令和2年2月17日、原告は、群馬県監査委員から「本件措置請求を棄却する」旨の監査結果(令和2年2月17日付、群監第202-31号)(甲第3号証)を受け取った。
⇒認否を保留する。
(5)原告はこの監査結果に対して不服である。
⇒不知。
第3 請求の内容
1 請求の要旨
(1)請求の端緒となる事件
1)2019年4月7日投開票の群馬県議選を巡り、公選法違反の罪で、南波建設㈱代表取締役で妻の南波久美子の有罪が確定した元群馬県議の南波和憲に対し、東京地裁が連座制の適用を求めた訴訟で東京高裁(近藤昌昭裁判長)が2019年12月18日、請求通り、群馬県議選への立候補を5年間禁止する判決を言い渡した。報道によれば、南波和憲は弁論に出廷せず、争う意思を示さなかった。
⇒平成31年4月7日に群馬県議会議貝選挙(以下、「本件選挙」という。)が執行されたこと、及び南波和憲氏が令和元年12月18日に束京高等裁判所において判決確定日から5年間は群馬県議会議員選挙の候補者となり、又は候補者であることができない旨の判決(以下.「本件連座判決」という。公職選挙法(以下、「法」という)251条の2第1項参照。)を受けたことは認め、その余は不知。なお、本件連座判決は、令和2年1月7日に確定した。
2)同判決によると、南波和憲の妻の南波久美子は2019年4月9~10日ごろ、南波和憲の運動員9人に報酬として、1箱6千円相当のようかんを配ったり、うち8人には計80万円の現金を渡したりするなどした。
⇒認める。
3)妻は6月21日に公選法違反(事後買収)の疑いで群馬県警から前橋地検に書類送検され、7月22日に在宅で起訴されたあと、9月6日公選法違反(買収)の罪で、懲役1年、執行猶予4年(求刑懲役1年)を言い渡した9月6日前橋地裁の判決が確定した。
⇒令和元年9月6日に南波和憲氏の妻が前橋地方裁判所において法221条1項3号、1号に該当する罪により懲役1年、4年間執行猶予の判決を受けたこと、及びこの判決が確定したことは認め、その余は不知。この判決の確定日は、原告の主張する令和元年9月6日ではなく、同月21日である。
4)判決理由で国井恒志(こうし)裁判長は「選挙運動の謝礼として渡した和菓子や渡そうとした現金は高額で、相手方も9人と少なくない」と指摘し、「県議の妻としての経験と知識を踏まえれば誠に軽率で、民主主義の根幹である選挙の公正さを害する犯行」と非難した。一方、南波和憲が既に県議を辞職しているなどとして、刑の執行猶予が妥当と判断した。
⇒不知。
5)南波和憲は2019年4月の群馬県議選で当選したが、その後5月23日に群馬県議会の狩野議長宛てに辞職願を提出し自由民主党群馬県支部連合会(県連)の星野建市幹事長に辞職理由を記した書面を手渡した。この書面で南波和憲は、「4月の県議選を巡って関係者が県警の取り調べを受けているため、「知事選や参院選を前に、県連に多大な迷惑を掛ける懸念がある」と説明していた。
⇒本件選挙で南波和憲氏が当選したこと、南波和憲氏から群馬県議会に辞職顧が栖出された後の令和元牛5月24日に南波和憲氏が群馬県議会議員を辞職したことは認め、その余は不知。
(2)いつ、どのような財務会計上の行為をしたか(又はしなかったか)
2019年4月7日執行の群馬県議会議員選挙において、南波和憲の親族の公選法違反(事後買収)が確定したにもかかわらず、南波和憲の選挙公営のために支出した公費の返還を南波和憲に求めようとしていない。
⇒否認ないし争う。まず、原告は、「選挙達反で連座制の適用を受けた南波和憲は当選無効となる」と主張する。しかし、総括主幸者等の買収等に対する刑事裁判の判決があっても、直ちに当該公職の候補者等であった者の当選が無効となるものでなく.連座訴訟(法211条)の結果により初めてその当選が無効とされるものとされている(安田充/荒川敦編著「逐条解税公職撰挙法 下」1702頁参照)。そして、本件連座判決は、内波和憲氏の立候補制限を命じているが、その当選を無効とはしていない。したがって、原告の上記主張は、前提を誤っており、理由がない。なお、原告は、連座制により当選無効となった場合、「当然に得票数はゼロとみなされることになる」と主張するが.連座制による当選無効に原告が主張するような法的効力を認める法令上の規定は見当たらず、原告の上記主張は独自の見解である。
(3)違法又は不当である理由
1)選挙違反で連座制の適用を受けた南波和憲は当選無効となるため、当然に得票数はゼロとみなされることになる。よって、法定得票数に満たないため、選挙公営の適用外となる。ところが、群馬県選管は、返還請求の必要性を認めようとしておらず、法令順守の義務を放棄している。
⇒おおむね認める。
2)そもそも、この公費負担制度は、供託物没収点以上の得票が得られた時にのみ受けることができるものなので、供託物没収点以上の得票を得られなかった場合は、選挙運動費用の全額が候補者の負担となる。
⇒令和元年7月24日に,原告から群馬県選挙管理委員会に電話があり、群馬県選学管逮委員会の清水書記から選挙公営制度の説明を行ったことは認め、その余は不知。
3)今年4月の統一地方選の群馬県議選の選挙違反発覚により、もしかしたら、南波和憲本人から選挙公営費分の金額が群馬県選挙管理委員会に返還されているのかもしれないと思い、また、公選法違反で、親族が逮捕された場合、連座制適用で当然本人の選挙のために血税から支出された選挙公営費用は、群馬県として返還を求めるべきである、と考えて、原告は2019年7月24日10時過ぎに群馬県選管の清水担当に電話をした。
⇒令和元年7月24日に,原告から群馬県選挙管理委員会に電話があり、群馬県選学管逮委員会の清水書記から選挙公営制度の説明を行ったことは認め、その余は不知。
4)その結果、県選管は次の見解を原告に示した。
①公選法に、選挙違反の場合の選挙公営費の取り扱いについて、どこにも記載がない。
②法律に記載がないのだから、公営費を本人から返してもらう必要性が見当たらない。
⇒漬水書記の説明の要約のニュアンスが岩千異なるため、否認する。令和元年7月24日の電話において、清水書記は、原告に対し、連座制適用者に対して選挙公営費の返還請求ができる旨を定めた法令上の規定がないこと、群馬県選挙管理委員会として法的根拠のない返還請求を行うことは困難であること及び返還のルールを法の中でどのように定めるかは立法上の問題であることを説明したとのことである。
5)ということで、カネのかからない選挙を実現するために血税から候補者に支出された選挙公営費を南波和憲から取り戻そうという考えは微塵もないことが明らかになった。
⇒南波和憲氏に対して選挙公営費の返遠を求める予定がないことは認め、その余は否認する。原古の主張は、被告に対して法令上の根拠がない諸求を強いるものであり、合理性がない。
6)本来であれば、選挙違反を犯した候補は、供託金も没収されるべきだと原告は考えるが、群馬県選管はなぜか、選挙公営費も気前よく、選挙違反者にくれたままで、なんにも道義的責任など感じていない。
⇒原告の主張は独自の見解であり、認否の必要を認めない。
7)これでは、有権者・納税者として納得できないため、県選管の清水担当には、住民監査請求で、この理不尽な事件をきちんと精査する必要がある旨、請求者から同氏に伝えておいた。原告にとって、今回の住民監査請求は、そうした経緯に基づく措置であった。
⇒認否の必要を認めない。
(5)結果として群馬県が被っている損害
1)このため、請求者は、2019年4月7日執行の群馬県議会議員選挙の公費負担の詳細について、群馬県に開示請求をした。その結果、「選挙運動用通常はがきの交付」を除く、①選挙運動用自動車の借入(甲第4号証)、②同自動車の燃料供給(甲第5号証)、③同自動車運転手の雇用(甲第6号証)、④選挙運動用ポスターの使用(甲第7号証)、⑤選挙運動用ビラの作成(甲第8号証)について、情報が開示された。
⇒群馬県選挙管速委員会が令和元年7月11日付けで本件選挙に係る以下の選挙公営費の支出に関する情報を開示決定したことは認め、その余は不知。
・自動車の借入れ(群馬県議会議員及び群馬県知事の遠挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第4条第2号イ)
・燃料供給(群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第4条第2号ロ)
・運転手の雇用(群馬県謙会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公公営に関する条例第4条第2号ハ)
・ポスター作成公営費(群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第7条)
・ビラ作成公営費(群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第7条)
2)その結果、公選法違反の疑惑が発覚したあと辞職した南波和憲はしっかり選挙公営費を受け取っていることが判明した。なお、自動車使用料と燃料代は南波和憲自身や同族が関わる会社に支払われていた。
**********集計値**********
【候補者名:南波和憲】
区分 支払額(円) 支払先 代表者
自動車 137,700 ㈱八洲 南波 和憲
燃料代 56,781 吾妻総業㈱ 南波 将彦
運転手 112,500 個人のため非開示
ポスター 1,153,152 宮下印刷所 宮下 良夫
ビラ 120,160 宮下印刷所 宮下 良夫
ハガキ 496,000 8,000枚の選挙ハガキを発送
合計 2,076,293
***********************
⇒本件選挙における南波和憲氏の選挙遅動に係る費用について、選挙公営費として次の支出を令和元年6月12日に行ったことは認め、その余は否認する。
➀選挙運動用自動車の使用[自動者車] 金137,700円
支払先;株式会社八洲(代表取締役 南波和憲)
➁選挙運動用日動車の使用[燃料] 金66,781円
支払先:吾妻総業株式会社(代表取締役 南波将彦)
➂選挙運動用自動車の使用[運転手] 金112,500円
➃ポスターの作成 金1,153,152円
支払先:宮下印刷所(代表 宮下良夫)
➄ビラの作成 金120,160円
支払先:宮下印刷所(代表 宮下良夫)
原告は、内波和憲氏個人に対して直接支払われた選挙公営費があるかのような主張をするが、南波和憲氏個人に対して直接支払われたものはない。また、原告は、南液和憲氏が選挙運動用通常業書の使用上限8,000枚(法142条1項4号)全てを使用したと推定した上で、ハガキ代として496,000円が文払われた旨主張するが、南波和憲氏が実際に使用枚した数は不明である。
3)このうち、選挙ハガキ(発送代)は他のものと同様公費負担となるが、日本郵便が県選管に合計額で請求するため、県選管では候補者それぞれの枚数・金額は把握していないとのことである。
⇒認める。
4)そのため原告が「供託金を没収された候補者にもハガキ代金(発送)は選管が負担するのか」と質問したところ、「その通りです」との回答があった。
⇒おおむね認める。選挙運動用通常葉書の使用に係る費用は、供託物没収の有無にかかわらず選挙公営の対象とされている(法142条5項)。すなわち、この費用については、その余の費用と異なり、供託物を没収された候補者にも支払われることになっている。
5)県議選では候補者1人につき上限8,000枚までのハガキ代金を県選管が負担している。ハガキが1枚62円だったので、1人496,000円まで負担されることになる。
⇒おおむね認める。
6)なお、2019年4月の県議選で日本郵便へ支払われたハガキ代金総額は26,765,834円、枚数は431,707枚だという。この数字は何人がハガキを利用したかは全くわからないそうで、選管にはあくまでも合計額しか請求されないそうだが、原告としては「そんなことは無いだろう」と考えている。
⇒群馬県選挙管理委員会が令和元年5月27日に日本郵便株式会社に対して選挙運動用通常葉書431,707枚分の取扱費用合計26,766,834円を支出したこと及び群馬県選挙管理委員会が各供補者の葉書の使用枚数を把握していないことは認め、その余は不知。
7)上記の通り、南波和憲の選挙公営に係る支出を巡り群馬県には計207万6293円の損害が発生している。
⇒否認ないし争う。
(6)被告の群馬県選管職員の重過失
1)監査結果通知(甲第3号証)の3ページ目に本事件にかかる経緯が時系列で表になっている。これを見ると、5月24日に南波和憲元県議の辞職(県議会による承認)の後、同27日に本件選挙に係るはがき郵送料金を支出したことがわかる。さらに6月12日には、はがき郵送料金以外の選挙公営費を支出したことがわかる。
⇒認める。
2)南波和憲元県議が辞職願を県議会議長に届けたのは同5月23日であり、翌24日に新聞報道がなされており、関係者が公職選挙法違反の疑いで県警から任意で事情聴取を受けていることを理由に辞職したことは被告の職員らも当然承知していたはずである。
⇒南波和憲氏の辞職が令和元年5月24日付けで効力が生じたことは認め、その余は不知。
3)にもかかわらず、南波和憲に事情聴取もしないまま、その3日後にはがき郵送料金を支出し、19日後にはがき郵送料金以外の選挙公営費を支出したことは、公正・公平かつ適正に行われなければならない選挙を管理する立場の群馬県選管が重大な過失を犯したことになる。
⇒南波和憲氏の辞職の効力が令和元年5月24日に生じたこと、その3日後の同月27日に群馬県選挙管理委貝会が日本郵便株式会社に対して選挙運動用通常葉書の取扱費用を支出したことは認め、その余は否認する。
4)また、南波和憲も、選良として選挙公営費の全額返還を自主的に申し出なければならないのにそれを怠ったことも重過失にあたる。
⇒認否の必要を認めない。
(7)総務省自治行政局選挙課へのヒヤリング結果
1)原告は、この問題について国の考え方を聴取すべく今年に入り何度か総務省自治行政局選挙課に電話をしたが、後日返答するとのことで、なかなか返事をもらえなかった。
⇒不知。
2)そうしたなか、令和2年2月4日の午後1時過ぎに、別件で東京地裁を訪れた際に、向かい側にある総務省選挙課に電話をしてみた。すると選挙課の「サカイ」と名乗る職員が電話口に出た。選挙課の同職員との電話のやりとりは概ね次のとおり。
選挙課「先週、電話をしたが番号違いか何かでつながらなかった。回答というか規程の説明になってしまうが、例えば選挙事務所、でなく、選挙カー、自動車については公選法141条の7項に規定はされている。例えば衆議院や参議院の選挙で政令により無料で使用することができるというふうにされているなかで、そこで但し、ということで、供託物が国庫に帰属されることにならない場合に限るとされている。なので、あのう、そこはまあ供託金が国庫のほうに帰属されることになる場合については、無料で使用することはできないというような形になるんですけれども」
原告「法定得票数に足りなかった場合は、というときですね」
選挙課「そうですね。その供託金が国庫に寄贈されるということになるケースが、法定得票数に達しなかった場合ですとか、あとは、候補者の届出が取り下げられて、その候補者たることを辞した場合、そういったケースがあるのかなあと思うんですけれども、あとは司法の判断のなかで、選挙における得票が無効であるという場合について、供託物が返還されなくて没収となるというケースもあるかとおもう。その辺は、司法の判断になってくるかと思うので、得票が無効となるかいなか、というのはその個々のケースに応じて違うのかな、という気もいたします」
原告「わかりました。そんな感じですね」
選挙課「そんなかたちでの規定のご説明になりますので…」
原告「まあ、いずれにしても地方分権法で、選挙の主体はそれぞれの自治体の判断ということで私も承っているので、だから今回のケースもおっしゃるように司法の判断ということだと究極的にはそう思います」
選挙課「最終的には司法の判断ですね」
原告「そうですよね。だから住民訴訟で白黒つけてみたいと思います。いろいろありがとうございます」
選挙課「いや、とんでもないです」
⇒不知。
<訴状訂正申立書>
2 上記1にかかる補充説明
(1)被告が請求すべき金額207万6293円について、群馬県が被った損害又は損失の額の算定根拠
訴状の6/10ページに示した次の表を参照されたい。
**********集計値**********
【候補者名:南波和憲】
区分 支払額(円) 支払先 代表者
自動車 137,700 ㈱八洲 南波 和憲
燃料代 56,781 吾妻総業㈱ 南波 将彦
運転手 112,500 個人のため非開示
ポスター 1,153,152 宮下印刷所 宮下 良夫
ビラ 120,160 宮下印刷所 宮下 良夫
ハガキ 496,000 8,000枚の選挙ハガキを発送
合計 2,076,293
上記の「区分」に示す項目は、選挙運動費用に関する公費負担制度の種類を表す。即ち「自動車」は、選挙運動用自動車の使用(レンタカー契約の場合)の自動車の借入(1日1台に限る)のことであり、上限額が1日あたり15,800円と定められている。したがって、上限の総額は@15,800円×9日=142,200円だが、南波和憲が経営する㈱八洲から@15,300円×9日=137,700円が請求され、選管は全額支出した。
次に「燃料代」は、選挙運動用自動車の使用(レンタカー契約の場合)の燃料代のことであり、上限額が7,560円×選挙運動日数と定められている。したがって、上限の総額は68,040円だが、南波和憲の親族が経営する吾妻総業㈱から56,781円が請求され、選管は全額支出した。
「運転手」は、選挙運動用自動車の使用(レンタカー契約の場合)の運転手の雇用(1日1人に限る)のことであり、上限額が1日あたり12,500円と定められている。よって、@12,500円×9日=112,500円の上限満額が選管から運転手に全額支出された。
「ポスター」は、選挙運動用ポスターの作成のことであり、選挙区のポスター掲示場数の2倍の定めがあり、作成単価の上限額は選挙区のポスター掲示場数から算出される。宮下印刷所から1,153,152円が請求され、選管は全額を支出した。
「ビラ」は、選挙運動用ビラの作成のことであり、作成枚数の上限数は公選法142条に定めがあり、作成単価の上限額はビラ作成枚数から産出される。宮下印刷所から120,160円が請求され、選管は全額を支出した。
「ハガキ」は、選挙運動用通常葉書の作成であり、公選法142条により作成枚数の上限数は県議選の場合8,000枚とあることから、@62円×8,000枚=496,000円である。南波和憲は上限数の葉書を作成したと推測されるため、選管は日本郵政㈱(JP)に496,000円を支出したと推測できる。ちなみに、「ハガキ」については、法定得票数に満たない候補者の場合でも、選挙公営費は選管が負担していると聞く。
よって、南波和憲への連座制適用で同人の得票数が無効になったことにより、群馬県が被った損害ないし損失額2,076,293円は、上記各区分の総額に相当する。
⇒ 各文出区分の上限に関する説明はおおむね認め、南波和憲氏の選挙運動用通常葉書の使用枚数は不知、その余は否認する。
(2)遅延損害金にかかる起算日を2019年4月7日とする理由
南波和憲の連座制適用は、妻の事後買収による公選法違反の不法行為に基づくものだが、事後買収であっても、公正、公平な制度運用を前提に実施された県議選の投開票日がその違反の端緒となったことは明らかである。よって、当該不法行為の日として、県議選の投開票日である2019年4月7日を起算日とする。
⇒否認する。元本債権が発生しないので、その遅延損害金の起算日の議論は前提を欠くが、一般論として、不法行為に基づく損害賠償請求権の遅延損害金の起算日は不法行為日であるところ、本件選挙の投開票日における南波和憲氏のいずれの行為が違法な不法行為となるのか不明である。
第3 むすび
以上のとおり、公選法違反(事後買収)による連座制が適用された南波和憲の当選は無効である。無効であることは、得票数がゼロになるわけで、選挙違反の場合も供託金が没収されることから、当選無効により、選挙公営費は支出されてはならないことは明らかである。
よって被告は、南波和憲に支出された選挙公営費207万6293円を南波本人をして返還させるか、もしくは南波本人に返還させようとしない群馬県選管の責任者に返還を請求しなければならない。
⇒第5 被告の主張
1 選挙公営について
原告の請求は、いわゆる「選挙公営」に係るものである。
選挙公営とは、国又は地方公共団体がその費用を負担して候補者の選挙運動を行い若しくは選挙を行うにあたり便宜を供与し、又は候補者の選挙運動の費用を負担する制度である。
これは、金のかからない選挙を実現するとともに候補者間の選挙運動の機会均等等を図るための手段として採用され、その拡充・合理化が進められてきた制度である。
現在の公職選挙法で採用されている具体的な選挙公営について、選挙の種類によって制度が複雑に異なっているので県議会議貝選挙に限定して幾つか見ておくと、選挙運動用自動車の使用(法141条8項)、通常葉書の交付(法142条5項)、ビラの作成(法142条11項)、ポスターの作成(法143条15項)等について選学公嘗制度が採用されている。なお、公職選挙法上、個々の費目によっては、遮挙公営を採用するか否か、要するに、それらの曹用を公費から支出するか否かについて、条例に委任されているものもあり、群馬県においては、この法律による委任を受け、「群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例」(以下、「条例」という。) を制定し、広く選挙公営が採用されている。
そして、この選挙公営費は、通常葉書の交付など一定の選挙公営を除き、供託物が没収とならない候補者に限って支払われるものとされている(条例2条など).そのため、その支出時期は、選挙会において得票の計算が終わり、供託物が没収されない候補者が確定した後に支出される。
支出の手続としては、候補者と各支出について契約を締結した業者等から群馬県に対して請求してもらい、これに基づいてその業者等に支払われる(条例4条など)。もとより、供託物を没収される候補者に係る費用にあっては、業者等から請求があっても、選挙公営費の支出は行わない"
2 原告の主張には理由がないこと
原告の主張は、南波和憲氏の得票数が本件連座判決により「ゼロとみなされることになる」という意見を大前提とするものと解されるが、上述のとおり、連座制は、当選を無効とすることはあっても、有権者の投票の効力を無効とする効力があるわけではないから、「得票数がゼロとみなされることになる」とする原告の主張には、無理があると言わざるを得ない。
その他、南波和憲氏については、選挙公営費の支出が認められない理由が何ら見当たらないから、被告が南波和憲氏に対して選挙公営費の返還を求めることには法令上の根拠がない。
したがって、原告の主張には理由がなく、本訴請求は速やかに菜却されなければならない。
**********
■以上のとおり、被告群馬県は、候補者が秘書や親族の選挙違反がバレて連座制の適用を受けて当選無効となっても、血税で賄われている選挙公営費の返還は求めないことをハッキリと主張しています。
この理屈で行くと、選挙期間中、候補者本人が選挙違反をしてでもなお当選さえしてしまえば、選挙後、違反がバレて当選無効になっても、供託金も没収されずに済むし、選挙公営費の返還をする必要がないということなります。
だとすれば、まじめに選挙期間中、選挙運動をルールに基づいて行った候補者が、法定得票数に届かないという理由で、供託金は没収され、選挙公営費も自腹で支払わなくてはならないというのは、あまりにも理不尽なのではないでしょうか。バレなければ、選挙違反をしてもなお、当選はもとより、法定得票数を超えたほうが、懐が痛まないことになり、金権政治の温床を放置することになりかねません。
このように、現在の公選法の不備を、常に意識し、改善しようとする気概は群馬県選挙管理委員会を司る群馬県市町村課には毛頭存在していないようです。
当会は、こうした不合理な実態を、この訴訟を通じて、あぶり出し、少しでも公平、公正、透明な選挙ルールに近づけるよう、微力ながら全力で取り組みたいと存じます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
このため、当会は、12月23日、群馬県監査委員に対して、群馬県選挙委員会が南波和憲のために支出した選挙公営費を本人から返還させるよう求める住民監査請求を郵送で提出しました。ところが、県の監査委員らは2020年2月18日に「本件措置請求を棄却する」という結果通知を送り付けてきました。
選挙違反で連座制により当選無効が裁判所から宣告されたのですから、公平・公正な選挙の実施のために投入された血税による選挙公営費は回収されて損害を回避するのが妥当だと考えて、同3月19日に前橋地裁に訴状を提出しました。
その後、コロナ禍で手続きに時間がかかりましたが、ようやく9月30日(水)午前10時から前橋地裁21号法廷で第1回口頭弁論が開かれることになりました。そして先週、被告群馬県訴訟代理人から答弁書がFAXで送られてきました。
↑群馬県代理人もしている関夕三郎弁護士から送られてきた答弁書の送付書。↑
この事件に関する当会のブログ記事は次のとおりですので、ご参照ください。
○2019年7月24日:妻が公選法違反で起訴!・・・4.7県議選で南波前県議が血税で使った選挙公営費用158万円の落とし前↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2989.html
○2019年8月23日:公選法違反で妻が起訴!・・・4.7県議選後5月に辞任の南波前県議の妻に求刑1年↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3008.html
○2019年9月23日:公選法違反で妻が起訴!・・・妻が執行猶予付き有罪判決を受けた南波元県議が一時県議会臨時議長に!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3034.html
○2019年12月24日:妻の公選法違反で連座制適用の南波元県議・・・200万円余の選挙公営費の返還を求め住民監査請求!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3095.html
○2020年2月22日:妻の公選法違反で連座制適用の南波元県議…二百万円選挙公営費返還の住民監査請求を県監査委員が棄却!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3121.html
○2020年3月20日:妻の公選法違反で連座制適用の南波元県議…二百万円選挙公営費返還請求のための住民訴訟を提起!↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/3139.html
訴状提出後、5月27日に前橋地裁から補正命令が届いたので、6月8日に訴状訂正申立書を提出し、7月28日に地裁から第1回口頭弁論期日について事務連絡が届き、9月30日午前10時から地裁に出頭する旨、8月1日に期日請書を地裁に提出しました。
※提訴後、5月27日の補正命令から8月1日の期日請書までの地裁とのやりとり ZIP ⇒ 0728a0801.zip
■それでは、9月16日に被告群馬県訴訟代理人からFAXで送られてきた答弁書を見てみましょう。
*****送付書*****ZIP ⇒ 20200916tiicja2isej3.zip
2020年9月16日12時14分 石原・関・猿谷法律事務所 No.2115 P.1
前橋地方裁判所民事第1部合謙係 御中
ご担当 橋本 書記官 殿
原 告
小 川 賢 殿
(FAX:027-381-0364)
令和2年9月16日
前橋市大手町3丁目4番16号
被告訴訟代理人
弁護土 関 夕 三 郎
電話027-235-2040
送 付 書
事件の表示:御庁 令和2年(行ウ)第3号
選挙公営費不正支払損害賠償請求事件
当 事 者:原 告 小 川 賢
被 告 群馬県知事 山本 一太
次回期日:令和2年9月30日午前10時00分
下記書類を送付致します。ご査収の程,宜しくお願い申し上げます。
1 答弁書 1通(9枚)
以 上
----------------------切らずにこのままでお送り下さい-------------------
受 領 書
上記書類、本日受領致しました。
令和2年9月 日
原 告
印
前橋地方裁判所民事1部合議係 御中(橋本書記官殿):FAX027-233-0901
石原・関・猿谷法律事務所(弁譲士 関夕三郎)行 :FAX027-230-9622
*****答弁書*****ZIP ⇒ 20200916iicja2isej3.zip
<P1>
2020年9月16日12時14分 石原・関・猿谷法律事務所 No.2115 P,2
令和2年(行ウ)第3号 選挙公営費不正支払損害賠償請求事件
原 告 小川賢
被 告 群馬県知事 山本一太
答 弁 書
令和2年9月16日
前橋地方裁判所 民事第1部合議係 御中
〒371-0026
群馬県前橋市大手町3丁目4番16号
石原・関・猿谷法律事務所(送達場所)
TEL 027-286-2040 /FAX 027-280-0622
被告訴訟代理人弁護士 関 夕三郎
同指定代理人 笠 木 淳 司(市町村課次長(事))
同指定代理人 清 水 直 之(同課選挙・政治団体係
補佐(事))(選挙・政治団体係長)
同指定代理人 千 明 祐 介(同課同係主事(併))
(選挙管理委員会書記)
同指定代理人 中 澤 優 友(同課同係主事(併)
(選挙管理委員会書記)
第1 原告の令和2年6月8日付け訴状訂正申立書の1項で訂正された後の請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。
との判決を求める。
<P2>
第2 請求の原因に対する認否
1 1項について
(1) (1)について
原告が群馬県の住民であることは認め、その余は認否の必要を認めない。
(2)(2)について
おおむね認める。
正確を期すのであれば、被告は、群馬県の予算を調製し及びこれを執行することを担任する者であり(地方自治法149条2号)、その権限のうち、群馬県選挙管理委員会の事務に関するものを群馬県選挙管理委員会書記長に委任している(群馬県財務規則3条)。そして、被告は、群馬県を統括し及び代表し(地方自治法147条)、並びに群馬県の事務を管理し及び執行する者である(同法148条)。
2 2項について
(1) (1)について
原告が、群馬県職貝措置請求書(甲1。以下、「本件措置請求書」という。)を群馬県監査委貝に令和元年12月24日に提出し、住民監査請求を行ったことは認め、その余は不知。
原告は,木件措置請求書(甲1 ) の提出日を令和元年12月23日であると主張し、本件措置請求書にも作成日としてその日付の記載があるが、実際に群馬県監査委員に提出されたのは同月24日であった(甲2の本文冒頭部分参照)。
(2) (2)について
認める。
(3) (3)について
認める。
(4) (4)について
<P3>
認否を保留する。
(5) (5)について
不知。
第3 請求の内容に対する認否
1 1項について
(1) 1(1) 請求の端緒となる事件」について
ア 1) について
平成31年4月7日に群馬県議会議貝選挙(以下、「本件選挙」という。)が執行されたこと、及び南波和憲氏が令和元年12月18日に束京高等裁判所において判決確定日から5年間は群馬県議会議員選挙の候補者となり、又は候補者であることができない旨の判決(以下.「本件連座判決」という。公職選挙法(以下、「法」という)251条の2第1項参照。)を受けたことは認め、その余は不知。
なお、本件連座判決は、令和2年1月7日に確定した。
イ 2) について
認める。
ウ 3) について
令和元年9月6日に南波和憲氏の妻が前橋地方裁判所において法221条1項3号、1号に該当する罪により懲役1年、4年間執行猶予の判決を受けたこと、及びこの判決が確定したことは認め、その余は不知。
この判決の確定日は、原告の主張する令和元年9月6日ではなく、同月21日である。
エ 4) について
不知。
オ 5) について
本件選挙で南波和憲氏が当選したこと、南波和憲氏から群馬県議会に辞
<P4>
職顧が栖出された後の令和元牛5月24日に南波和憲氏が群馬県議会議員を辞職したことは認め、その余は不知。
(2) 「1(2) いつ、どのような財務会計上の行為をしたか(又はしなかったか)」について
認める。
(3) 「(3) 違法又は不当である理由」について
ア 1) について
否認ないし争う。
まず、原告は、「選挙達反で連座制の適用を受けた南波和憲は当選無効となる」と主張する。しかし、総括主幸者等の買収等に対する刑事裁判の判決があっても、直ちに当該公職の候補者等であった者の当選が無効となるものでなく.連座訴訟(法211条)の結果により初めてその当選が無効とされるものとされている(安田充/荒川敦編著「逐条解税公職撰挙法 下」1702頁参照)。そして、本件連座判決は、内波和憲氏の立候補制限を命じているが、その当選を無効とはしていない。したがって、原告の上記主張は、前提を誤っており、理由がない。
なお、原告は、連座制により当選無効となった場合、「当然に得票数はゼロとみなされることになる」と主張するが.連座制による当選無効に原告が主張するような法的効力を認める法令上の規定は見当たらず、原告の上記主張は独自の見解である。
イ 2) について
おおむね認める。
ウ 3) について
令和元年7月24日に,原告から群馬県選挙管理委員会に電話があり、群馬県選学管逮委員会の清水書記から選挙公営制度の説明を行ったことは認め、その余は不知。
エ 4) について
<P5>
漬水書記の説明の要約のニュアンスが岩千異なるため、否認する。
令和元年7月24日の電話において、清水書記は、原告に対し、連座制適用者に対して選挙公営費の返還請求ができる旨を定めた法令上の規定がないこと、群馬県選挙管理委員会として法的根拠のない返還請求を行うことは困難であること及び返還のルールを法の中でどのように定めるかは立法上の問題であることを説明したとのことである。
オ 5) について
南波和憲氏に対して選挙公営費の返遠を求める予定がないことは認め、その余は否認する。
原古の主張は、被告に対して法令上の根拠がない諸求を強いるものであり、合理性がない。
カ 6) について
原告の主張は独自の見解であり、認否の必要を認めない。
キ 7) について
認否の必要を認めない。
(4) 「(5) 結果として群馬県が被っている損害」について
ア 1) について
群馬県選挙管速委員会が令和元年7月11日付けで本件選挙に係る以下の選挙公営費の支出に関する情報を開示決定したことは認め、その余は不知。
・自動車の借入れ(群馬県議会議員及び群馬県知事の遠挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第4条第2号イ)
・燃料供給(群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第4条第2号ロ)
・運転手の雇用(群馬県謙会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公公営に関する条例第4条第2号ハ)
・ポスター作成公営費(群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における
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選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第7条)
・ビラ作成公営費(群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第7条)
イ 2)について
本件選挙における南波和憲氏の選挙遅動に係る費用について、選挙公営費として次の支出を令和元年6月12日に行ったことは認め、その余は否認する。
①選挙運動用自動車の使用[自動者車] 金137,700円
支払先;株式会社八洲(代表取締役 南波和憲)
➁選挙運動用日動車の使用[燃料] 金66,781円
支払先:吾妻総業株式会社(代表取締役 南波将彦)
➂選挙運動用自動車の使用[運転手] 金112,500円
➃ポスターの作成 金1,153,152円
支払先:宮下印刷所(代表 宮下良夫)
⑤ビラの作成 金120,160円
支払先:宮下印刷所(代表 宮下良夫)
原告は、内波和憲氏個人に対して直接支払われた選挙公営費があるかのような主張をするが、南波和憲氏個人に対して直接支払われたものはない。また、原告は、南液和憲氏が選挙運動用通常業書の使用上限8,000枚(法142条1項4号)全てを使用したと推定した上で、ハガキ代として496,000円が文払われた旨主張するが、南波和憲氏が実際に使用枚した数は不明である。
ウ 3) について
認める。
エ 4) について
おおむね認める。
選挙運動用通常葉書の使用に係る費用は、供託物没収の有無にかかわら
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ず選挙公営の対象とされている(法142条5項)。すなわち、この費用については、その余の費用と異なり、供託物を没収された候補者にも支払われることになっている。
オ 5) について
おおむね認める。
カ 6) について
群馬県選挙管理委員会が令和元年5月27日に日本郵便株式会社に対して選挙運動用通常葉書431,707枚分の取扱費用合計26,766,834円を支出したこと及び群馬県選挙管理委員会が各供補者の葉書の使用枚数を把握していないことは認め、その余は不知。
キ 7) について
否認ないし争う。
(5) 「(6)被告の群馬県選管職員の重過失」について
ア 1) について
認める。
イ 2) について
南波和憲氏の辞職が令和元年5月24日付けで効力が生じたことは認め、その余は不知。
ウ 3) について
南波和憲氏の辞職の効力が令和元年5月24日に生じたこと、その3日後の同月27日に群馬県選挙管理委貝会が日本郵便株式会社に対して選挙運動用通常葉書の取扱費用を支出したことは認め、その余は否認する。
エ 4) について
認否の必要を認めない。
(6) 「(7)総務省自治行政局選挙課へのヒヤリング結果」について
不知。
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第4 訴状訂正申立書に対する認否
1 2項(1)について
各文出区分の上限に関する説明はおおむね認め、南波和憲氏の選挙運動用通常葉書の使用枚数は不知、その余は否認する。
2 2項(2)について
否認する。
元本債権が発生しないので、その遅延損害金の起算日の議論は前提を欠くが、一般論として、不法行為に基づく損害賠償請求権の遅延損害金の起算日は不法行為日であるところ、本件選挙の投開票日における南波和憲氏のいずれの行為が違法な不法行為となるのか不明である。
第5 被告の主張
1 選挙公営について
原告の請求は、いわゆる「選挙公営」に係るものである。
選挙公営とは、国又は地方公共団体がその費用を負担して候補者の選挙運動を行い若しくは選挙を行うにあたり便宜を供与し、又は候補者の選挙運動の費用を負担する制度である。
これは、金のかからない選挙を実現するとともに候補者間の選挙運動の機会均等等を図るための手段として採用され、その拡充・合理化が進められてきた制度である。
現在の公職選挙法で採用されている具体的な選挙公営について、選挙の種類によって制度が複雑に異なっているので県議会議貝選挙に限定して幾つか見ておくと、選挙運動用自動車の使用(法141条8項)、通常葉書の交付(法142条5項)、ビラの作成(法142条11項)、ポスターの作成(法143条15項)等について選学公嘗制度が採用されている。なお、公職選挙法上、個々の費目によっては、遮挙公営を採用するか否か、要するに、それらの曹用を公費から支出するか否かについて、条例に委任されているものもあり、群馬県におい
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ては、この法律による委任を受け、「群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例」(以下、「条例」という。) を制定し、広く選挙公営が採用されている。
そして、この選挙公営費は、通常葉書の交付など一定の選挙公営を除き、供託物が没収とならない候補者に限って支払われるものとされている(条例2条など).そのため、その支出時期は、選挙会において得票の計算が終わり、供託物が没収されない候補者が確定した後に支出される。
支出の手続としては、候補者と各支出について契約を締結した業者等から群馬県に対して請求してもらい、これに基づいてその業者等に支払われる(条例4条など)。もとより、供託物を没収される候補者に係る費用にあっては、業者等から請求があっても、選挙公営費の支出は行わない"
2 原告の主張には理由がないこと
原告の主張は、南波和憲氏の得票数が本件連座判決により「ゼロとみなされることになる」という意見を大前提とするものと解されるが、上述のとおり、連座制は、当選を無効とすることはあっても、有権者の投票の効力を無効とする効力があるわけではないから、「得票数がゼロとみなされることになる」とする原告の主張には、無理があると言わざるを得ない。
その他、南波和憲氏については、選挙公営費の支出が認められない理由が何ら見当たらないから、被告が南波和憲氏に対して選挙公営費の返還を求めることには法令上の根拠がない。
したがって、原告の主張には理由がなく、本訴請求は速やかに菜却されなければならない。
第6 擬制陳述
令和2年9月30日午前10時に指定されている第1回口頭弁論期日は差し支えるため、擬制陳述でお願い致します。
以 上
**********
■上記の認否では、訴状に対してどのように被告が答弁しているのか分かり辛いので、項目ごとに対比させてみました。
**********
第2 請求の原因
1 当事者
(1)原告は群馬県の住民であり納税者である。
⇒原告が群馬県の住民であることは認め、その余は認否の必要を認めない。
(2)被告は、群馬県知事であり、選挙公営費を扱う群馬県選管を管理・監督する者である。
⇒おおむね認める。正確を期すのであれば、被告は、群馬県の予算を調製し及びこれを執行することを担任する者であり(地方自治法149条2号)、その権限のうち、群馬県選挙管理委員会の事務に関するものを群馬県選挙管理委員会書記長に委任している(群馬県財務規則3条)。そして、被告は、群馬県を統括し及び代表し(地方自治法147条)、並びに群馬県の事務を管理し及び執行する者である(同法148条)。
2 住民監査請求
(1)令和元年12月23日、原告は群馬県監査委員に、地方自治法第242条第1項により、妻の公選法違反が発覚し議員を突然辞職した南波和憲が、その後、妻の有罪判決や自身の連座制適用判決を経てもなお、群馬県選管が選挙公営費の返還を南波和憲に請求しようとせず、南波和憲に公金を不当支出したままにしていること(以下、「本件損害」という。)について措置請求(甲第1号証)を行った。
⇒原告が、群馬県職貝措置請求書(甲1。以下、「本件措置請求書」という。)を群馬県監査委貝に令和元年12月24日に提出し、住民監査請求を行ったことは認め、その余は不知。原告は,木件措置請求書(甲1 ) の提出日を令和元年12月23日であると主張し、本件措置請求書にも作成日としてその日付の記載があるが、実際に群馬県監査委員に提出されたのは同月24日であった(甲2の本文冒頭部分参照)。
(2)令和2年1月8日、群馬県監査委員は原告に対して住民監査請求を受理する旨の通知をした(甲第2号証)。
⇒認める。
(3)令和2年1月27日、原告は群馬県監査委員に対して、地方自治法第242条第6項の規定に基づき、意見の陳述を行った。
⇒認める。
(4)令和2年2月17日、原告は、群馬県監査委員から「本件措置請求を棄却する」旨の監査結果(令和2年2月17日付、群監第202-31号)(甲第3号証)を受け取った。
⇒認否を保留する。
(5)原告はこの監査結果に対して不服である。
⇒不知。
第3 請求の内容
1 請求の要旨
(1)請求の端緒となる事件
1)2019年4月7日投開票の群馬県議選を巡り、公選法違反の罪で、南波建設㈱代表取締役で妻の南波久美子の有罪が確定した元群馬県議の南波和憲に対し、東京地裁が連座制の適用を求めた訴訟で東京高裁(近藤昌昭裁判長)が2019年12月18日、請求通り、群馬県議選への立候補を5年間禁止する判決を言い渡した。報道によれば、南波和憲は弁論に出廷せず、争う意思を示さなかった。
⇒平成31年4月7日に群馬県議会議貝選挙(以下、「本件選挙」という。)が執行されたこと、及び南波和憲氏が令和元年12月18日に束京高等裁判所において判決確定日から5年間は群馬県議会議員選挙の候補者となり、又は候補者であることができない旨の判決(以下.「本件連座判決」という。公職選挙法(以下、「法」という)251条の2第1項参照。)を受けたことは認め、その余は不知。なお、本件連座判決は、令和2年1月7日に確定した。
2)同判決によると、南波和憲の妻の南波久美子は2019年4月9~10日ごろ、南波和憲の運動員9人に報酬として、1箱6千円相当のようかんを配ったり、うち8人には計80万円の現金を渡したりするなどした。
⇒認める。
3)妻は6月21日に公選法違反(事後買収)の疑いで群馬県警から前橋地検に書類送検され、7月22日に在宅で起訴されたあと、9月6日公選法違反(買収)の罪で、懲役1年、執行猶予4年(求刑懲役1年)を言い渡した9月6日前橋地裁の判決が確定した。
⇒令和元年9月6日に南波和憲氏の妻が前橋地方裁判所において法221条1項3号、1号に該当する罪により懲役1年、4年間執行猶予の判決を受けたこと、及びこの判決が確定したことは認め、その余は不知。この判決の確定日は、原告の主張する令和元年9月6日ではなく、同月21日である。
4)判決理由で国井恒志(こうし)裁判長は「選挙運動の謝礼として渡した和菓子や渡そうとした現金は高額で、相手方も9人と少なくない」と指摘し、「県議の妻としての経験と知識を踏まえれば誠に軽率で、民主主義の根幹である選挙の公正さを害する犯行」と非難した。一方、南波和憲が既に県議を辞職しているなどとして、刑の執行猶予が妥当と判断した。
⇒不知。
5)南波和憲は2019年4月の群馬県議選で当選したが、その後5月23日に群馬県議会の狩野議長宛てに辞職願を提出し自由民主党群馬県支部連合会(県連)の星野建市幹事長に辞職理由を記した書面を手渡した。この書面で南波和憲は、「4月の県議選を巡って関係者が県警の取り調べを受けているため、「知事選や参院選を前に、県連に多大な迷惑を掛ける懸念がある」と説明していた。
⇒本件選挙で南波和憲氏が当選したこと、南波和憲氏から群馬県議会に辞職顧が栖出された後の令和元牛5月24日に南波和憲氏が群馬県議会議員を辞職したことは認め、その余は不知。
(2)いつ、どのような財務会計上の行為をしたか(又はしなかったか)
2019年4月7日執行の群馬県議会議員選挙において、南波和憲の親族の公選法違反(事後買収)が確定したにもかかわらず、南波和憲の選挙公営のために支出した公費の返還を南波和憲に求めようとしていない。
⇒否認ないし争う。まず、原告は、「選挙達反で連座制の適用を受けた南波和憲は当選無効となる」と主張する。しかし、総括主幸者等の買収等に対する刑事裁判の判決があっても、直ちに当該公職の候補者等であった者の当選が無効となるものでなく.連座訴訟(法211条)の結果により初めてその当選が無効とされるものとされている(安田充/荒川敦編著「逐条解税公職撰挙法 下」1702頁参照)。そして、本件連座判決は、内波和憲氏の立候補制限を命じているが、その当選を無効とはしていない。したがって、原告の上記主張は、前提を誤っており、理由がない。なお、原告は、連座制により当選無効となった場合、「当然に得票数はゼロとみなされることになる」と主張するが.連座制による当選無効に原告が主張するような法的効力を認める法令上の規定は見当たらず、原告の上記主張は独自の見解である。
(3)違法又は不当である理由
1)選挙違反で連座制の適用を受けた南波和憲は当選無効となるため、当然に得票数はゼロとみなされることになる。よって、法定得票数に満たないため、選挙公営の適用外となる。ところが、群馬県選管は、返還請求の必要性を認めようとしておらず、法令順守の義務を放棄している。
⇒おおむね認める。
2)そもそも、この公費負担制度は、供託物没収点以上の得票が得られた時にのみ受けることができるものなので、供託物没収点以上の得票を得られなかった場合は、選挙運動費用の全額が候補者の負担となる。
⇒令和元年7月24日に,原告から群馬県選挙管理委員会に電話があり、群馬県選学管逮委員会の清水書記から選挙公営制度の説明を行ったことは認め、その余は不知。
3)今年4月の統一地方選の群馬県議選の選挙違反発覚により、もしかしたら、南波和憲本人から選挙公営費分の金額が群馬県選挙管理委員会に返還されているのかもしれないと思い、また、公選法違反で、親族が逮捕された場合、連座制適用で当然本人の選挙のために血税から支出された選挙公営費用は、群馬県として返還を求めるべきである、と考えて、原告は2019年7月24日10時過ぎに群馬県選管の清水担当に電話をした。
⇒令和元年7月24日に,原告から群馬県選挙管理委員会に電話があり、群馬県選学管逮委員会の清水書記から選挙公営制度の説明を行ったことは認め、その余は不知。
4)その結果、県選管は次の見解を原告に示した。
①公選法に、選挙違反の場合の選挙公営費の取り扱いについて、どこにも記載がない。
②法律に記載がないのだから、公営費を本人から返してもらう必要性が見当たらない。
⇒漬水書記の説明の要約のニュアンスが岩千異なるため、否認する。令和元年7月24日の電話において、清水書記は、原告に対し、連座制適用者に対して選挙公営費の返還請求ができる旨を定めた法令上の規定がないこと、群馬県選挙管理委員会として法的根拠のない返還請求を行うことは困難であること及び返還のルールを法の中でどのように定めるかは立法上の問題であることを説明したとのことである。
5)ということで、カネのかからない選挙を実現するために血税から候補者に支出された選挙公営費を南波和憲から取り戻そうという考えは微塵もないことが明らかになった。
⇒南波和憲氏に対して選挙公営費の返遠を求める予定がないことは認め、その余は否認する。原古の主張は、被告に対して法令上の根拠がない諸求を強いるものであり、合理性がない。
6)本来であれば、選挙違反を犯した候補は、供託金も没収されるべきだと原告は考えるが、群馬県選管はなぜか、選挙公営費も気前よく、選挙違反者にくれたままで、なんにも道義的責任など感じていない。
⇒原告の主張は独自の見解であり、認否の必要を認めない。
7)これでは、有権者・納税者として納得できないため、県選管の清水担当には、住民監査請求で、この理不尽な事件をきちんと精査する必要がある旨、請求者から同氏に伝えておいた。原告にとって、今回の住民監査請求は、そうした経緯に基づく措置であった。
⇒認否の必要を認めない。
(5)結果として群馬県が被っている損害
1)このため、請求者は、2019年4月7日執行の群馬県議会議員選挙の公費負担の詳細について、群馬県に開示請求をした。その結果、「選挙運動用通常はがきの交付」を除く、①選挙運動用自動車の借入(甲第4号証)、②同自動車の燃料供給(甲第5号証)、③同自動車運転手の雇用(甲第6号証)、④選挙運動用ポスターの使用(甲第7号証)、⑤選挙運動用ビラの作成(甲第8号証)について、情報が開示された。
⇒群馬県選挙管速委員会が令和元年7月11日付けで本件選挙に係る以下の選挙公営費の支出に関する情報を開示決定したことは認め、その余は不知。
・自動車の借入れ(群馬県議会議員及び群馬県知事の遠挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第4条第2号イ)
・燃料供給(群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第4条第2号ロ)
・運転手の雇用(群馬県謙会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公公営に関する条例第4条第2号ハ)
・ポスター作成公営費(群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第7条)
・ビラ作成公営費(群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例第7条)
2)その結果、公選法違反の疑惑が発覚したあと辞職した南波和憲はしっかり選挙公営費を受け取っていることが判明した。なお、自動車使用料と燃料代は南波和憲自身や同族が関わる会社に支払われていた。
**********集計値**********
【候補者名:南波和憲】
区分 支払額(円) 支払先 代表者
自動車 137,700 ㈱八洲 南波 和憲
燃料代 56,781 吾妻総業㈱ 南波 将彦
運転手 112,500 個人のため非開示
ポスター 1,153,152 宮下印刷所 宮下 良夫
ビラ 120,160 宮下印刷所 宮下 良夫
ハガキ 496,000 8,000枚の選挙ハガキを発送
合計 2,076,293
***********************
⇒本件選挙における南波和憲氏の選挙遅動に係る費用について、選挙公営費として次の支出を令和元年6月12日に行ったことは認め、その余は否認する。
➀選挙運動用自動車の使用[自動者車] 金137,700円
支払先;株式会社八洲(代表取締役 南波和憲)
➁選挙運動用日動車の使用[燃料] 金66,781円
支払先:吾妻総業株式会社(代表取締役 南波将彦)
➂選挙運動用自動車の使用[運転手] 金112,500円
➃ポスターの作成 金1,153,152円
支払先:宮下印刷所(代表 宮下良夫)
➄ビラの作成 金120,160円
支払先:宮下印刷所(代表 宮下良夫)
原告は、内波和憲氏個人に対して直接支払われた選挙公営費があるかのような主張をするが、南波和憲氏個人に対して直接支払われたものはない。また、原告は、南液和憲氏が選挙運動用通常業書の使用上限8,000枚(法142条1項4号)全てを使用したと推定した上で、ハガキ代として496,000円が文払われた旨主張するが、南波和憲氏が実際に使用枚した数は不明である。
3)このうち、選挙ハガキ(発送代)は他のものと同様公費負担となるが、日本郵便が県選管に合計額で請求するため、県選管では候補者それぞれの枚数・金額は把握していないとのことである。
⇒認める。
4)そのため原告が「供託金を没収された候補者にもハガキ代金(発送)は選管が負担するのか」と質問したところ、「その通りです」との回答があった。
⇒おおむね認める。選挙運動用通常葉書の使用に係る費用は、供託物没収の有無にかかわらず選挙公営の対象とされている(法142条5項)。すなわち、この費用については、その余の費用と異なり、供託物を没収された候補者にも支払われることになっている。
5)県議選では候補者1人につき上限8,000枚までのハガキ代金を県選管が負担している。ハガキが1枚62円だったので、1人496,000円まで負担されることになる。
⇒おおむね認める。
6)なお、2019年4月の県議選で日本郵便へ支払われたハガキ代金総額は26,765,834円、枚数は431,707枚だという。この数字は何人がハガキを利用したかは全くわからないそうで、選管にはあくまでも合計額しか請求されないそうだが、原告としては「そんなことは無いだろう」と考えている。
⇒群馬県選挙管理委員会が令和元年5月27日に日本郵便株式会社に対して選挙運動用通常葉書431,707枚分の取扱費用合計26,766,834円を支出したこと及び群馬県選挙管理委員会が各供補者の葉書の使用枚数を把握していないことは認め、その余は不知。
7)上記の通り、南波和憲の選挙公営に係る支出を巡り群馬県には計207万6293円の損害が発生している。
⇒否認ないし争う。
(6)被告の群馬県選管職員の重過失
1)監査結果通知(甲第3号証)の3ページ目に本事件にかかる経緯が時系列で表になっている。これを見ると、5月24日に南波和憲元県議の辞職(県議会による承認)の後、同27日に本件選挙に係るはがき郵送料金を支出したことがわかる。さらに6月12日には、はがき郵送料金以外の選挙公営費を支出したことがわかる。
⇒認める。
2)南波和憲元県議が辞職願を県議会議長に届けたのは同5月23日であり、翌24日に新聞報道がなされており、関係者が公職選挙法違反の疑いで県警から任意で事情聴取を受けていることを理由に辞職したことは被告の職員らも当然承知していたはずである。
⇒南波和憲氏の辞職が令和元年5月24日付けで効力が生じたことは認め、その余は不知。
3)にもかかわらず、南波和憲に事情聴取もしないまま、その3日後にはがき郵送料金を支出し、19日後にはがき郵送料金以外の選挙公営費を支出したことは、公正・公平かつ適正に行われなければならない選挙を管理する立場の群馬県選管が重大な過失を犯したことになる。
⇒南波和憲氏の辞職の効力が令和元年5月24日に生じたこと、その3日後の同月27日に群馬県選挙管理委貝会が日本郵便株式会社に対して選挙運動用通常葉書の取扱費用を支出したことは認め、その余は否認する。
4)また、南波和憲も、選良として選挙公営費の全額返還を自主的に申し出なければならないのにそれを怠ったことも重過失にあたる。
⇒認否の必要を認めない。
(7)総務省自治行政局選挙課へのヒヤリング結果
1)原告は、この問題について国の考え方を聴取すべく今年に入り何度か総務省自治行政局選挙課に電話をしたが、後日返答するとのことで、なかなか返事をもらえなかった。
⇒不知。
2)そうしたなか、令和2年2月4日の午後1時過ぎに、別件で東京地裁を訪れた際に、向かい側にある総務省選挙課に電話をしてみた。すると選挙課の「サカイ」と名乗る職員が電話口に出た。選挙課の同職員との電話のやりとりは概ね次のとおり。
選挙課「先週、電話をしたが番号違いか何かでつながらなかった。回答というか規程の説明になってしまうが、例えば選挙事務所、でなく、選挙カー、自動車については公選法141条の7項に規定はされている。例えば衆議院や参議院の選挙で政令により無料で使用することができるというふうにされているなかで、そこで但し、ということで、供託物が国庫に帰属されることにならない場合に限るとされている。なので、あのう、そこはまあ供託金が国庫のほうに帰属されることになる場合については、無料で使用することはできないというような形になるんですけれども」
原告「法定得票数に足りなかった場合は、というときですね」
選挙課「そうですね。その供託金が国庫に寄贈されるということになるケースが、法定得票数に達しなかった場合ですとか、あとは、候補者の届出が取り下げられて、その候補者たることを辞した場合、そういったケースがあるのかなあと思うんですけれども、あとは司法の判断のなかで、選挙における得票が無効であるという場合について、供託物が返還されなくて没収となるというケースもあるかとおもう。その辺は、司法の判断になってくるかと思うので、得票が無効となるかいなか、というのはその個々のケースに応じて違うのかな、という気もいたします」
原告「わかりました。そんな感じですね」
選挙課「そんなかたちでの規定のご説明になりますので…」
原告「まあ、いずれにしても地方分権法で、選挙の主体はそれぞれの自治体の判断ということで私も承っているので、だから今回のケースもおっしゃるように司法の判断ということだと究極的にはそう思います」
選挙課「最終的には司法の判断ですね」
原告「そうですよね。だから住民訴訟で白黒つけてみたいと思います。いろいろありがとうございます」
選挙課「いや、とんでもないです」
⇒不知。
<訴状訂正申立書>
2 上記1にかかる補充説明
(1)被告が請求すべき金額207万6293円について、群馬県が被った損害又は損失の額の算定根拠
訴状の6/10ページに示した次の表を参照されたい。
**********集計値**********
【候補者名:南波和憲】
区分 支払額(円) 支払先 代表者
自動車 137,700 ㈱八洲 南波 和憲
燃料代 56,781 吾妻総業㈱ 南波 将彦
運転手 112,500 個人のため非開示
ポスター 1,153,152 宮下印刷所 宮下 良夫
ビラ 120,160 宮下印刷所 宮下 良夫
ハガキ 496,000 8,000枚の選挙ハガキを発送
合計 2,076,293
上記の「区分」に示す項目は、選挙運動費用に関する公費負担制度の種類を表す。即ち「自動車」は、選挙運動用自動車の使用(レンタカー契約の場合)の自動車の借入(1日1台に限る)のことであり、上限額が1日あたり15,800円と定められている。したがって、上限の総額は@15,800円×9日=142,200円だが、南波和憲が経営する㈱八洲から@15,300円×9日=137,700円が請求され、選管は全額支出した。
次に「燃料代」は、選挙運動用自動車の使用(レンタカー契約の場合)の燃料代のことであり、上限額が7,560円×選挙運動日数と定められている。したがって、上限の総額は68,040円だが、南波和憲の親族が経営する吾妻総業㈱から56,781円が請求され、選管は全額支出した。
「運転手」は、選挙運動用自動車の使用(レンタカー契約の場合)の運転手の雇用(1日1人に限る)のことであり、上限額が1日あたり12,500円と定められている。よって、@12,500円×9日=112,500円の上限満額が選管から運転手に全額支出された。
「ポスター」は、選挙運動用ポスターの作成のことであり、選挙区のポスター掲示場数の2倍の定めがあり、作成単価の上限額は選挙区のポスター掲示場数から算出される。宮下印刷所から1,153,152円が請求され、選管は全額を支出した。
「ビラ」は、選挙運動用ビラの作成のことであり、作成枚数の上限数は公選法142条に定めがあり、作成単価の上限額はビラ作成枚数から産出される。宮下印刷所から120,160円が請求され、選管は全額を支出した。
「ハガキ」は、選挙運動用通常葉書の作成であり、公選法142条により作成枚数の上限数は県議選の場合8,000枚とあることから、@62円×8,000枚=496,000円である。南波和憲は上限数の葉書を作成したと推測されるため、選管は日本郵政㈱(JP)に496,000円を支出したと推測できる。ちなみに、「ハガキ」については、法定得票数に満たない候補者の場合でも、選挙公営費は選管が負担していると聞く。
よって、南波和憲への連座制適用で同人の得票数が無効になったことにより、群馬県が被った損害ないし損失額2,076,293円は、上記各区分の総額に相当する。
⇒ 各文出区分の上限に関する説明はおおむね認め、南波和憲氏の選挙運動用通常葉書の使用枚数は不知、その余は否認する。
(2)遅延損害金にかかる起算日を2019年4月7日とする理由
南波和憲の連座制適用は、妻の事後買収による公選法違反の不法行為に基づくものだが、事後買収であっても、公正、公平な制度運用を前提に実施された県議選の投開票日がその違反の端緒となったことは明らかである。よって、当該不法行為の日として、県議選の投開票日である2019年4月7日を起算日とする。
⇒否認する。元本債権が発生しないので、その遅延損害金の起算日の議論は前提を欠くが、一般論として、不法行為に基づく損害賠償請求権の遅延損害金の起算日は不法行為日であるところ、本件選挙の投開票日における南波和憲氏のいずれの行為が違法な不法行為となるのか不明である。
第3 むすび
以上のとおり、公選法違反(事後買収)による連座制が適用された南波和憲の当選は無効である。無効であることは、得票数がゼロになるわけで、選挙違反の場合も供託金が没収されることから、当選無効により、選挙公営費は支出されてはならないことは明らかである。
よって被告は、南波和憲に支出された選挙公営費207万6293円を南波本人をして返還させるか、もしくは南波本人に返還させようとしない群馬県選管の責任者に返還を請求しなければならない。
⇒第5 被告の主張
1 選挙公営について
原告の請求は、いわゆる「選挙公営」に係るものである。
選挙公営とは、国又は地方公共団体がその費用を負担して候補者の選挙運動を行い若しくは選挙を行うにあたり便宜を供与し、又は候補者の選挙運動の費用を負担する制度である。
これは、金のかからない選挙を実現するとともに候補者間の選挙運動の機会均等等を図るための手段として採用され、その拡充・合理化が進められてきた制度である。
現在の公職選挙法で採用されている具体的な選挙公営について、選挙の種類によって制度が複雑に異なっているので県議会議貝選挙に限定して幾つか見ておくと、選挙運動用自動車の使用(法141条8項)、通常葉書の交付(法142条5項)、ビラの作成(法142条11項)、ポスターの作成(法143条15項)等について選学公嘗制度が採用されている。なお、公職選挙法上、個々の費目によっては、遮挙公営を採用するか否か、要するに、それらの曹用を公費から支出するか否かについて、条例に委任されているものもあり、群馬県においては、この法律による委任を受け、「群馬県議会議員及び群馬県知事の選挙における選挙運動用自動車の使用等の公営に関する条例」(以下、「条例」という。) を制定し、広く選挙公営が採用されている。
そして、この選挙公営費は、通常葉書の交付など一定の選挙公営を除き、供託物が没収とならない候補者に限って支払われるものとされている(条例2条など).そのため、その支出時期は、選挙会において得票の計算が終わり、供託物が没収されない候補者が確定した後に支出される。
支出の手続としては、候補者と各支出について契約を締結した業者等から群馬県に対して請求してもらい、これに基づいてその業者等に支払われる(条例4条など)。もとより、供託物を没収される候補者に係る費用にあっては、業者等から請求があっても、選挙公営費の支出は行わない"
2 原告の主張には理由がないこと
原告の主張は、南波和憲氏の得票数が本件連座判決により「ゼロとみなされることになる」という意見を大前提とするものと解されるが、上述のとおり、連座制は、当選を無効とすることはあっても、有権者の投票の効力を無効とする効力があるわけではないから、「得票数がゼロとみなされることになる」とする原告の主張には、無理があると言わざるを得ない。
その他、南波和憲氏については、選挙公営費の支出が認められない理由が何ら見当たらないから、被告が南波和憲氏に対して選挙公営費の返還を求めることには法令上の根拠がない。
したがって、原告の主張には理由がなく、本訴請求は速やかに菜却されなければならない。
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■以上のとおり、被告群馬県は、候補者が秘書や親族の選挙違反がバレて連座制の適用を受けて当選無効となっても、血税で賄われている選挙公営費の返還は求めないことをハッキリと主張しています。
この理屈で行くと、選挙期間中、候補者本人が選挙違反をしてでもなお当選さえしてしまえば、選挙後、違反がバレて当選無効になっても、供託金も没収されずに済むし、選挙公営費の返還をする必要がないということなります。
だとすれば、まじめに選挙期間中、選挙運動をルールに基づいて行った候補者が、法定得票数に届かないという理由で、供託金は没収され、選挙公営費も自腹で支払わなくてはならないというのは、あまりにも理不尽なのではないでしょうか。バレなければ、選挙違反をしてもなお、当選はもとより、法定得票数を超えたほうが、懐が痛まないことになり、金権政治の温床を放置することになりかねません。
このように、現在の公選法の不備を、常に意識し、改善しようとする気概は群馬県選挙管理委員会を司る群馬県市町村課には毛頭存在していないようです。
当会は、こうした不合理な実態を、この訴訟を通じて、あぶり出し、少しでも公平、公正、透明な選挙ルールに近づけるよう、微力ながら全力で取り組みたいと存じます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】