■先週からホルムアルデヒドによる水道水汚染騒動で関東地方の首都圏は大騒動ですが、当会では、この問題の背景には、一般住民には知らされない何かが隠されているのではないかと、直観的に感じていました。そして、それは的中したのでした。
↑高崎金属工業の液体サンパイ中間処理施設。 ↑
「私は嘱託なんだから何も知らない。この件のことは全部組合が対応しているので、組合に聞いてほしい」
設備の点検を終えて、タラップを降りて来た初老の作業服姿の男性は、そう言い残すと、そそくさと事務所の階段を上って行きました。
↑高崎金属工業の施設内の2階にある事務所。↑
■今日の東京新聞の一面に次の記事が掲載されました。
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ホルムアルデヒド 群馬の産廃業者 排出か
業者は認識せず 埼玉の会社、処理委託
首都圏の浄水場で処理済みの水道水から有害物質のホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県高崎市の産業廃棄物処理施設から原因物質のヘキサメチレンテトラミンが利根川支流の烏川(からすがわ)に排出された可能性が高いことが5月25日、埼玉県の調べで分かった。
埼玉県によると、同県本庄市の化学製品会社「DOWAハイテック」が今月10日、高崎市の烏川沿いにある産廃業者二社に、原因物質を含む廃液の処理を委託した。うち一社が18日までに約60トンを処理し、同社の設備では原因物質が十分に分解できず、河川に排出されたとみられる。
ハイテック社は本紙の取材に「廃液の分析値は示しており、業者が適正な処理をしていれば、ヘキサメチレンテトラミンは取り除かれたはず」とした。
一方、同社から廃液処理を委託され、原因物質を流出された高崎金属工業(高崎市)の赤穂好男社長は5月25日、高崎市内で会見し、「廃液が原因物質を含むとは全く認識していなかった」と責任を否定した。
高崎金属工業はハイテック社から受け取った「試験報告書」のコピーを報道関係者に配布。原因物質の記載はなく、社長は「これを見ても原因物質の混入は想像できない。当社では原因物質の処理自体ができず知っていたら引き受けない。大変迷惑で、ぬれぎぬだ」と話した。契約書などハイテック社と交わした他の書類にも、原因物質の記載はないという。
<以下は社会面>
ホルムアルデヒド問題 産廃業者 違法性問えず?
規制対象外 処理委託会社に告知義務
利根川水系から取水する首都圏の浄水場で処理済みの水道水から有害物質のホルムアルデヒドが検出された問題。現行法では、原因物質を河川に排出する際の規制がなく、埼玉県からは「産業廃棄物処理業者の法的責任を問うのは困難」との声が出ている。
厚生労働省などは原因物質を、ゴムや合成樹脂加工に使われる「ヘキサメチレンテトラミン」と特定。浄水場で使われる塩素と反応すると、ホルムアルデヒドがつくられる。
水道法に基づく水質基準は、ホルムアルデヒドの基準値を1リットル中0.08ミリリットルと規定。一方、工場排水の基準を定める水質汚濁防止法で、ヘキサメチレンテトラミンは「環境への影響がない」(環境省水環境課)と規制の対象外としている。
埼玉県によると、この物質の流出元とされる高崎金属工業(群馬県高崎市)は今月10日、埼玉県本庄市の化学製品会社「DOWAハイテック」から産業廃棄物として、ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液約60トンの処理を請け負った。
同工業は、自社の設備で廃液を処理して河川に流したとみられるが、19日に立入検査した埼玉県は「同社の設備では十分に分解できなかった可能性が高い」としている。
埼玉県によると、廃棄物処理法施行令は「生活環境の保全上、支障を生ずるおそれがないような措置」を業者に求めている。だが同県は「ヘキサメチレンテトラミン自体が直接、生活への支障を生じさせていない。業者の違法性は問えないだとう」と指摘する。
再発防止のため、埼玉県などはヘキサメチレンテトラミンの排出規制を国に求めているが、埼玉県内で同様の問題があった9年前には、規制の必要性は見過ごされた。
埼玉県によると、利根川から取水する行田浄水場(行田市)で2003年、高濃度のホルムアルデヒドを検出。ハイテック社の排水に含まれるヘキサメチレンテトラミンが原因と確認された。
埼玉県は「当時は特異な問題と考えていた。会社が排出対策を行ったため、国などに規制を求める必要性は無いと判断した」という。
一方、埼玉県は「同社が高崎金属工業に廃液処理を委託したことについては、廃棄物処理法に抵触する可能性もあるとみている。
同法施行規則では、廃棄物の「適正な処理に必要な情報」を委託先に提供するよう義務づけているが、業者は「ハイテック社からは、ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液だとは知らされていなかった」と説明。
埼玉県は「ハイテック社は9年前の問題で、未処理ではホルムアルデヒドになることを知り得ていたはずだ」と指摘している。
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■今回、ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液を川に排出したとされている業者の名前が、5月25日にようやく明らかになりました。群馬県高崎市の産廃処理業者「高崎金属工業」の赤穂好男社長が5月25日、高崎市で記者会見し「処理を委託された廃液に原因物質が含まれていると知らなかった。知っていたら請け負わなかった」と説明したからです。
当会では、さっそく5月26日の朝8時すぎに、現地を訪ねてみました。高崎金属工業という会社がわからずネットで調べると「高崎市」のHPで「産業廃棄物処分業許可業者一覧」
sypxgh240301syobun.pdfの一番最後に「許可番号11620-159705 許可年月日平成23.4.22 高崎金属工業株式会社 赤穂好男 群馬県高崎市倉賀野町2663番地1 郵便番号370-1201 027-346-1324」というのが見つかりました。
グーグル地図で「群馬県高崎市倉賀野町2663番地1」を検索したところ、倉賀野町の中町交差点付近にマークがついたため、その界隈をチェックしましたが、民家や商店だけだったので、たまたま向かい側にあった高崎警察署倉賀野交番で、2名の警察官に番地と会社名を告げて所在地を聞いたところ「この道路をまっすぐ行って、国道17号線に出る交差点を左折したところにあるよ」と教えてもらいました。
■国道17号線と交わる交差点に差し掛かると、左手に工業団地が見えました。さっそく、高崎金属工業という看板を探しましたが、見当たりません。そこで、高崎金属工業社長の「赤穂好男」の名前で検索したところ、「ヘイワテクノ 倉賀野町2660」がヒットしました。この会社であれば、国道から直ぐ見えます。メッキ工場のようですが、60トンの廃液を処理する施設のようなものは国道からは見られません。
↑国道沿いのヘイワテクノ。国道17号線沿いの高崎金属工業団地。高崎金属工業の赤穂社長はヘイワテクノ社の社長でもある。↑
そこで、工業団地の中に入ってみました。通りに「群馬県鍍金工業組合」の看板が見えました。
土曜日にもかかわらず操業をしている会社がいくつもありました。倉賀野町2660番地のヘイワテクノ社の正門に辿り着き、2663番地は直ぐ近くだと思い、あたりを見渡すと、おなじみのサンパイ施設の看板がすぐ目の前に見えました。近づいてよく見ると、フェンスの網の陰に確かに「高崎金属工業」と書いてあります。サンパイ施設の表示板には次の記載がありました。
産業廃棄物の中間処理施設
産業廃棄物の種類:廃酸・腐食性、廃アルカリ・腐食性
処理方法・能力;中和・廃酸20㎥/日、廃アルカリ20㎥/日
管理者名:伊藤嘉彦 連絡先:027-346-1324
技術管理者名:児島 剛 連絡先:027-346-3761
設置者名:高崎金属工業株式会社
設置者住所:高崎市倉賀野町2663番地1
許可:平成23年4月22日 第11620159705号
第11670159705号
↑高崎金属工業のサンパイ中間処理施設表示看板。↑
屋外にタンクがいくつも設置されてあり、それらをパイプが結んでありました。確かにプラント施設のようですが、正門の脇にある郵便受けには「高崎金属工業団地協同組合 水質管理センター 場長 管理責任者」と書いてあり、名前のところが擦られて消されていました。
↑高崎金属工業の正面入口脇の郵便受けの表示。↑
■ここが原因物質を含んだ液体サンパイを処理した場所であることは確かなようです。施設の周りをぐるっと一周してみましたが、「高崎金属工業団地 水質管理センター」の名前の入った容器があったりしていて、どうやら金属加工、それも主としてメッキ処理に使った廃溶液の処理を行う施設のようです。
↑高崎金属工業の正門と施設。↑
斜め向かい側で土曜日に操業していた会社の関係者にヒヤリングをしたところ、「今週は月曜日に、水質管理センターに立入調査が入り、操業出来なかったので、今日は振替えで土曜出勤して操業している」という説明がありました。そこで、当会から「そこにかけてある看板には、先日下流で水道水汚染問題を起こした会社名が書いてありますが、一方で高崎金属工業団地水質管理センターと書いたステッカーの貼られた容器もあり、郵便受けにもそう書いてあります。ということは、この施設は高崎金属工業という会社のものなのでしょうか?それとも、高崎金属工業団地協同組合で共有施設として運用しているものなのでしょうか?」と質問してみました。
↑廃棄物の容器に張ってあるステッカー。↑
すると、会社関係者のかたは、「その件は、組合で聞いてほしい。この通りをまっすぐ行くと突き当たりの右手にある」と返事をしました。どうもそれ以上の話をしたくない様子でした。
お礼を言って、教えられた方向に歩きだすと、交差点で、また女性従業員らしい方とすれ違いました。「土曜日なのに出勤ですか?」と尋ねると「月曜日に水質センターに立入検査があり、そのため団地の工場が全部操業できなかったので、今日、土曜日にその分働くためです」と教えてくれました。やはり、5月21日に水質管理センターに群馬県や高崎市の立入検査があったのは事実のようです。
それも、事前に通達があったらしく、だから工業団地の関係会社は休業について従業員にあらかじめ通知しており、その振替労働日として5月26日(土曜日)を出勤扱いにしたようです。
■さて、数分歩くと、信号機のない交差点の右奥のかどに、茶色の3階建てのビルが見えました。入口のアコーディオンフェンスが閉まっていて施設の敷地内には入れませんが、たしかに玄関の上に「高崎金属工業団地協同組合会館」と描いてあります。
誰も居ないのかな、と思っていたら、玄関の右手の事務所のガラス越しに女性職員がなにやらお茶の準備をしていました。大きく手を振るとこちらに気付いた様子で、「きょうは開いているのですか?中に入れますか?」と仕草で合図を送ったところ、女性職員は、両腕を交差させて「×」印のサインを送り返し、首を横に振りました。
しかし、確かに水質センターで装置を監理していた初老の嘱託の男性は「きょうも組合で話し合っているはずだ」と当会に言いました。駐車場には車こそありませんでしたが、所属会社からは徒歩で来られる距離にあります。今回の水道水汚染事件でなにやら関係者が協議をしているのは確かなようです。
↑1階の玄関脇の窓以外はすべてカーテンが閉められた高崎金属工業団地協同組合ビル。↑
■こうした一連の現地調査を踏まえ、25日から本日にかけての報道をもとに、当会として次の疑問点が浮上しました。
(1)高崎金属工業の中間処理施設は高崎金属工業㈱の所有・運営なのか、それとも、高崎金属工業団地協同組合の水質管理センターとして所有・運営されているのか?
(2)5月19日(土)に埼玉県が高崎金属工業㈱の中間処理施設もしくは協同組合水質センターの立入検査を行ったのに、再度5月21日(月)に再度立入検査を行ったのか?
(3)5月21日(月)の立入検査はどこがおこなったのか?埼玉県は19日に実施したのだから、群馬県と高崎市が行ったのか?
(4)しかし、5月19日の立入検査は埼玉県が単独で行うはずはなく、群馬県や高崎市も当然一緒に検査しているはずだが、なぜ5月21日の立入検査については、事実関係が公表されないのか?
(5)高崎金属工業によると、DOWAハイテック社から処理を請負った廃液は60トン弱で、JFE運搬業者が10日から6回に分けてタンクローリーで搬入。中和処理した上で、利根川支流の烏川に排出した。赤穂好男社長は「(自社の施設に)原因物質を処理する能力はない。契約書などにも記載はなく、困惑している」と話したが、少なくとも施設にはサンパイ中間処理施設の表示板以外には同社の名前を掲げた看板も社長室も事務管理棟も見当たらない。高崎金属工業の商業登記はいつどのようになされたのか?同社の実態はどうなっているのか?
(6)なぜDOWAハイテック社は5月初めに廃液60トン弱の処理について、従来の委託先に断られたのか?
(7)なぜ、DOWAハイテック社は、5月に初めて高崎金属工業に委託を決めたのか?
(8)なぜ、DOWAハイテック社は、JFEグループ関連の液体廃棄物収集運搬会社を連れて、事前に高崎金属工業の施設を見分して60トンの廃液の処理の委託を決断したのか?
(9)なぜ、DOWAハイテック社、JFEグループの液体廃棄物収集運搬会社、高崎金属工業は、得体の知れない廃液の処理を行うことについて、それぞれ疑義を持たずに実行したのか?
(10)DOWAハイテック社とJFE系収集運搬社は、5月10日(木)を含め、その後5月18日(金)までに計6回にわたり60トン弱の水道水汚染原因物質を含む廃液を高崎金属工業に持ち込んだと言うが、高崎金属工業では、自分の組合のメンバー会社から毎日排出される日量最大20㎥の廃酸・廃アルカリの処理で手一杯のはずなのに、あらたに、毎日10トン(ほぼ10㎥に等しい?)もの廃液を積んだタンクローリーを受け入れたのか?
(11)DOWA社もJFE系会社も、そのことを知りつつなぜ廃液を出荷したのか?
(12)サンパイの取扱いには必ずマニフェストが必要だが、それは行政も含めどのような監理がなされていなのか?
(13)下流の千葉県や埼玉県で水道水のホルムアルデヒド濃度が高まって来たという5月15日(火)には、既に毎日10トン近くの廃液処理水を、側溝を介して烏川に排出していたことになるが、JFE系社が10トン近くの廃液を搬入した日は、5月10日から土日を休んで17日まで毎日だったのか?
(14)群馬県と高崎市は、埼玉県から通報や要請を受けて、高崎金属工業に対してどのような対応をとったのか?
(15)群馬県の水道事業を担当する企業局トップの関勤企業管理者や水道課長らが、5月17日午前、埼玉県から「利根川水系の浄水場で通常より高いホルムアルデヒドの数値が出た」とホルムアルデヒド検出の連絡を受けた後、17日(木)午後6時ごろからから前橋市内で開かれた内部の懇親会に出席していたが、少なくとも群馬県と高崎市は、埼玉県から、排出元のDOWAハイテック社のことを5月17日(木)には連絡を受けていた可能性がある。その場合、サンパイの廃液の搬入先のひとつが高崎金属工業㈱だったことも連絡があったはず。しかし、群馬県も高崎市も、そして埼玉県も、既にそのことを知っていたにもかかわらず、なぜ具体的な業者の氏名や所在地を公表しなかったのか?また高崎金属工業に調査に踏み込まなかったのか?
(16)事実、5月19日(土)に埼玉県は高崎金属工業の中間処理施設を立入検査しており、この時、群馬県や高崎市も一緒に居た可能性があるのに、なぜ5月21日(月)に、再度立入検査を行ったのか?この場合、平日の18日(金)には、19日(土)と21日(月)の両日にわたり立入検査を行う旨、工業団地の関係会社に事前に通知していたと思われる。にもかかわらず、なぜ、水道水汚染の原因物質の排出元が特定できないとして25日(金)まで言い続けたのか?
(17)行政は、このように、真相を迅速に公表せず、敢えて業者に証拠隠滅や、言いわけを考えさせるための時間の猶予を与えたのではなかったか?
(18)報道では、DOWAハイテック社がJFE系収集運搬社に、原因物質を含む廃液の処理を委託したのは、烏川沿いにあるサンパイ業者2社だというが、もう1社はどこなのか?マスコミや行政はもう1社の名前や所在地等をなぜ公表しないのか?
(19)高崎金属工業は、金属工業団地の協同組合員の会社以外の、外部からの液体サンパイを受け入れるビジネスを昨年4月から始めているが、その理由と経緯は何か?
■このように、群馬県の場合、とくにサンパイにかかる県行政の業者寄りの姿勢と、県民への情報非公開の姿勢は、一貫して徹底しています。利根川の上流の水質に重大な影響を与えるサンパイ処分場施設の運営を業者まかせにして、すこしも身にしみて立入検査をしたがらない群馬県の体質がこのザマですから、下流の埼玉県、千葉県、茨城県、東京都の利根川水系の浄水場の水を使用している首都圏の住民の生活や生命の安全は風前の灯といえます。
八ッ場ダム建設にうつつを抜かす国交省や群馬県、そして下流域の知事ら、また、役人の天下り先の業者らは、八ッ場ダム建設により、下流の水道水への影響、とくに草津流域から出るヒ素入りの強酸性水の中和によるヒ素の影響について、今回の事件を契機にどのような見解を持ったのか、ぜひ聞いてみたいところです。
↑入口から見た高崎金属工業のプラント施設。昨年4月から外部の液体廃棄物を受け入れて処理するビジネスを始めた。中和槽は左手にある。↑
↑中和槽にそそぎこむ周辺の土曜日でも稼働中のメッキ工場からのメッキ溶液の廃液。ここで中和処理されて、ポンプアップで外部に放流されるが、施設を管理していた初老の男性に「放流口はどこですか」と聞いても、取り合ってくれなかった。↑
↑この排水路をとおって原因物質が大量に烏川へ?↑
【ひらく会・情報部】
※参考資料
≪報道記事≫
**********読売新聞2012年5月25日07時30分
ホルムアルデヒド原因物質、群馬の業者が排出か
千葉、埼玉県の利根川水系の浄水場で処理済みの水道水から国の基準を超える化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、厚生労働省などが原因物質と断定したヘキサメチレンテトラミンは、群馬県内の産廃業者が、同県内を流れる利根川支流の烏川(かえあすがわ)に排出した可能性が高いことが24日、わかった。
埼玉県内の化学工場が今月、処理を委託したといい、埼玉県が25日にも発表する。
この産廃業者は、ヘキサメチレンテトラミンを処理するのに十分な施設をもっておらず、中和処理などをしないままで、排出した可能性が強いという。
埼玉県などが、この産廃業者と委託元の化学工場に対し、廃棄物処理法に基づき状況の報告を求める。
埼玉県と群馬県が疑いのある工場の立ち入り検査を行うなどして、排出源を調べていた。利根川水系では、9年前にもヘキサメチレンテトラミンの排出が原因で、ホルムアルデヒドを検出している。
**********日本経済新聞 2012/5/25 12:53
環境相、再発防止の制度検討 利根川水系の有害物質検出
利根川水系の浄水場で基準値を超える有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、細野豪志環境相は5月25日の記者会見で「同様事案の再発防止について、制度面の手当てでどういった手法があるか検討している」と述べた。
細野環境相は「地元自治体でも原因究明についてさまざまな取り組みを進めている。環境省もしっかり足並みをそろえた」としている。
**********東京新聞2012年5月25日 13時56分
ホルムアルデヒド 群馬の産廃業者排出か 埼玉・業者から処理委託
利根川水系から取水する首都圏の浄水場で処理済み水道水から有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で群馬県高崎市の産業廃棄物処理施設から原因物質とされるヘキサメチレンテトラミンが利根川支流の烏川(からすがわ)に排出された可能性が高いことが二十五日、埼玉県の調べで分かった。
埼玉県によると同県本庄市の化学製品会社「DOWAハイテック」が今月十日、高崎市の烏川沿いにある産廃業者二社にヘキサメチレンテトラミンを含む廃液の処理を委託した。うち一社は十八日までに約六十トンを処理したが、同社の設備ではヘキサメチレンテトラミンを十分に分解することができず、河川に排出されたとみられる。
埼玉県は十九日に、この産廃業者への立ち入り検査を実施したが、産廃業者は「ハイテック社からは、ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液だとは知らされていなかった」と説明したという。
一方、ハイテック社は本紙の取材に「廃液の分析値は示しており、業者が適正な処理をしていれば、ヘキサメチレンテトラミンは取り除かれていたはずだ。ほかの業者への委託でも、これまで問題はなかった。不正の認識はなく、県の調査に協力していきたい」としている。
また、もう一つの産廃業者は高崎市の調査に「群馬県外の別の産廃業者に再委託した」と説明したという。
ヘキサメチレンテトラミンはゴムや合成樹脂の加工などに使われる化学物質で、浄水場で河川水の浄化処理に使う塩素と化学反応を起こし、水道水にホルムアルデヒドが生じたとみられる。ヘキサメチレンテトラミンは工場排水を規制する水質汚濁防止法の対象外となっている。
利根川から取水する行田浄水場(埼玉県行田市)では二〇〇三年、この物質が原因となり、国の水道水の基準値(一リットル中〇・〇八ミリグラム)を超えるホルムアルデヒドを検出。ハイテック社の工場排水に含まれるヘキサメチレンテトラミンが原因と確認された。埼玉県によると同社はその後、産廃業者などに廃液処理を委託してきたという。
**********日本経済新聞2012/5/25 20:18
DOWA株が年初来安値 利根川水系の有害物質問題
関東の利根川水系浄水場で水式基準を超すホルムアルデヒドが検出された問題の影響を受け、5月25日の東京株式市場でDOWAホールディング下部が急落、一時は前日比14%(68円)安の429円まで下げ、年初来安値を更新した。
DOWAの子会社、DOWAハイテック(埼玉県本庄市)の委託先が原因物質を排出した可能性が高いと埼玉県が発表。DOWAの業績への影響を懸念したが売りが広がった。終値は11%(54円)安の443円で、この日の東証1部銘柄の下落率ランキングで2位。
DOWAハイテックは太陽光パネルなどの材料である銀粉を生産。工程で出る廃液の処分をグループ内外の廃棄物処理会社に依頼していたが、設備トラブルなどで急きょ依頼した群馬県高崎市の処理会社で問題が起きた。処理会社は廃液に原因物質が含まれているとは知らなかったとしており、廃液中の分析値は示したとするDOWA側と主張が食い違っている。
再生可能エネルギーの全量買い取り制度が7月に始まると太陽光パネル市場は急成長する見通しで、廃液も増加する。「処理依頼先を増やすことは課題」(DOWAハイテック)としている。
**********NHK 5月25日 21時17分
利根川水系に化学物質 警察捜査へ
利根川水系の浄水場の水道水から国の基準を超える化学物質のホルムアルデヒドが検出された問題で、警察は、廃棄物処理法に違反していた可能性があるとして、近く関係者から話を聞くなど捜査に乗り出す方針を固めました。
この問題では、原因とみられる化学物質を川に排出した群馬県の産業廃棄物処理業者が、処理を委託された埼玉県本庄市の化学メーカー「DOWAハイテック」から「問題の化学物質とは知らされていなかった」と話しています。
廃棄物処理法では、廃棄物を出した事業者は委託先の業者に対して廃棄物の性質などを知らせるように定めており、群馬県警察本部は廃棄物処理法に違反していた可能性もあるとみて捜査に乗り出す方針を固めました。
埼玉県によりますと、「DOWAハイテック」は、今月10日から原因とみられるヘキサメチレンテトラミンを含むおよそ60トンの廃液の処理を群馬県高崎市の産業廃棄物処理業者に委託していたということで、警察は、近く関係者から話を聞くなど当時のいきさつを詳しく調べることにしています。
「DOWAハイテック」はNHKの取材に対し、廃棄物処理業者に渡した廃液の成分表にヘキサメチレンテトラミンを記載していなかった事実を認めたうえで、「その後、口頭で伝えたかどうか社内調査を進めている」としています。
**********時事通信2012/05/25-22:06
産廃会社「知らなかった」=JFE関連が廃液運搬-利根川水系汚染・群馬
利根川水系の浄水場から基準値を超える化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、原因物質のヘキサメチレンテトラミン(HMT)を流したとされる産廃処理会社「高崎金属工業」(群馬県高崎市)の赤穂好男社長は25日、同社で記者会見し、「(廃液処理の委託元から)HMTが入っていたとは聞いていない。知っていれば処理を断った」と語った。
同社の説明では、金属加工会社「DOWAハイテック」(埼玉県本庄市)から受け入れた廃液は計60トン弱。10日以降、JFEグループ関連の廃棄物収集運搬会社によって6回に分けてタンクに運び込まれ、処理後、利根川支流の烏川に流した。
DOWA社とは今回初めて取引。赤穂社長らによると、高崎金属工業の設備ではHMTの処理はできないが、廃液受け入れ前に、運搬会社とDOWA社は設備を確認したという。
**********日本経済新聞2012/5/25 23:47
「廃液に原因物質含むと知らず」浄水場問題で業者
利根川水系の浄水場で高濃度のホルムアルデヒドが検出された問題で、原因物質を川に流したとみられる群馬県高崎市の産廃処理業者「高崎金属工業」が5月25日、同市で記者会見し「処理を委託された廃液に原因物質が含まれていると知らなかった。知っていたら請け負わなかった」と説明した。
ただ委託した埼玉県本庄市の化学品製造業「DOWAハイテック」は取材に対し「廃液の中身を分析した結果を資料で示した」と説明したが、原因物質が含まれていると口頭で説明したかどうかは調査中としている。
高崎金属工業によると、請け負った廃液は60トン弱で、運搬業者が10日から6回に分けてタンクローリーで搬入。中和処理した上で、利根川支流の烏川に排出した。赤穂好男社長は「(自社の施設に)原因物質を処理する能力はない。契約書などにも記載はなく、困惑している」と話した。
高崎市は25日、廃液処理に問題がなかったか、同社に文書で報告を求めた。埼玉県や群馬県と連携して委託の経緯などを調査する。
これまでの取材にDOWAハイテックは、従来の委託先に断られ、5月に初めて高崎金属工業に委託したと説明。この廃液にホルムアルデヒドの発生原因となるヘキサメチレンテトラミンが含まれていた。〔共同〕
**********産経新聞2012.5.26 02:09
複数の業者捜査へ 有害物質不法投棄の疑い 群馬
関東の浄水場から国の水質基準を超える有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、県警は25日、利根川水系に原因物質ヘキサメチレンテトラミン(HMT)を流した可能性のある県内外の複数の産廃業者に対し廃棄物処理法違反容疑で捜査する方針を決めた。容疑が固まれば工場などの捜索を行う。
廃棄物処理法では、みだりに廃棄物を投棄することを禁じ、国内での適正な処理を義務づけている。県警では、業者の廃液の処理状況などを調べている。
一方、県と高崎市の担当者は25日、HMTを流したとみられる2業者を訪問。委託元の埼玉県本庄市の金属加工業「DOWAハイテック」との契約書や管理書類の提出を29日の期限付きで求めた。
このうち、同社から廃液約60トンの処理を受託した「高崎金属工業」(赤穂好男社長)によると、D社側から廃液内のHMTの有無や処理方法については契約書に記載がなく、指示もなかったという。赤穂社長は同日の記者会見で「(D社側から)説明はいっさいなかった」と戸惑った様子で語った。
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↑高崎金属工業の液体サンパイ中間処理施設。 ↑
「私は嘱託なんだから何も知らない。この件のことは全部組合が対応しているので、組合に聞いてほしい」
設備の点検を終えて、タラップを降りて来た初老の作業服姿の男性は、そう言い残すと、そそくさと事務所の階段を上って行きました。
↑高崎金属工業の施設内の2階にある事務所。↑
■今日の東京新聞の一面に次の記事が掲載されました。
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ホルムアルデヒド 群馬の産廃業者 排出か
業者は認識せず 埼玉の会社、処理委託
首都圏の浄水場で処理済みの水道水から有害物質のホルムアルデヒドが検出された問題で、群馬県高崎市の産業廃棄物処理施設から原因物質のヘキサメチレンテトラミンが利根川支流の烏川(からすがわ)に排出された可能性が高いことが5月25日、埼玉県の調べで分かった。
埼玉県によると、同県本庄市の化学製品会社「DOWAハイテック」が今月10日、高崎市の烏川沿いにある産廃業者二社に、原因物質を含む廃液の処理を委託した。うち一社が18日までに約60トンを処理し、同社の設備では原因物質が十分に分解できず、河川に排出されたとみられる。
ハイテック社は本紙の取材に「廃液の分析値は示しており、業者が適正な処理をしていれば、ヘキサメチレンテトラミンは取り除かれたはず」とした。
一方、同社から廃液処理を委託され、原因物質を流出された高崎金属工業(高崎市)の赤穂好男社長は5月25日、高崎市内で会見し、「廃液が原因物質を含むとは全く認識していなかった」と責任を否定した。
高崎金属工業はハイテック社から受け取った「試験報告書」のコピーを報道関係者に配布。原因物質の記載はなく、社長は「これを見ても原因物質の混入は想像できない。当社では原因物質の処理自体ができず知っていたら引き受けない。大変迷惑で、ぬれぎぬだ」と話した。契約書などハイテック社と交わした他の書類にも、原因物質の記載はないという。
<以下は社会面>
ホルムアルデヒド問題 産廃業者 違法性問えず?
規制対象外 処理委託会社に告知義務
利根川水系から取水する首都圏の浄水場で処理済みの水道水から有害物質のホルムアルデヒドが検出された問題。現行法では、原因物質を河川に排出する際の規制がなく、埼玉県からは「産業廃棄物処理業者の法的責任を問うのは困難」との声が出ている。
厚生労働省などは原因物質を、ゴムや合成樹脂加工に使われる「ヘキサメチレンテトラミン」と特定。浄水場で使われる塩素と反応すると、ホルムアルデヒドがつくられる。
水道法に基づく水質基準は、ホルムアルデヒドの基準値を1リットル中0.08ミリリットルと規定。一方、工場排水の基準を定める水質汚濁防止法で、ヘキサメチレンテトラミンは「環境への影響がない」(環境省水環境課)と規制の対象外としている。
埼玉県によると、この物質の流出元とされる高崎金属工業(群馬県高崎市)は今月10日、埼玉県本庄市の化学製品会社「DOWAハイテック」から産業廃棄物として、ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液約60トンの処理を請け負った。
同工業は、自社の設備で廃液を処理して河川に流したとみられるが、19日に立入検査した埼玉県は「同社の設備では十分に分解できなかった可能性が高い」としている。
埼玉県によると、廃棄物処理法施行令は「生活環境の保全上、支障を生ずるおそれがないような措置」を業者に求めている。だが同県は「ヘキサメチレンテトラミン自体が直接、生活への支障を生じさせていない。業者の違法性は問えないだとう」と指摘する。
再発防止のため、埼玉県などはヘキサメチレンテトラミンの排出規制を国に求めているが、埼玉県内で同様の問題があった9年前には、規制の必要性は見過ごされた。
埼玉県によると、利根川から取水する行田浄水場(行田市)で2003年、高濃度のホルムアルデヒドを検出。ハイテック社の排水に含まれるヘキサメチレンテトラミンが原因と確認された。
埼玉県は「当時は特異な問題と考えていた。会社が排出対策を行ったため、国などに規制を求める必要性は無いと判断した」という。
一方、埼玉県は「同社が高崎金属工業に廃液処理を委託したことについては、廃棄物処理法に抵触する可能性もあるとみている。
同法施行規則では、廃棄物の「適正な処理に必要な情報」を委託先に提供するよう義務づけているが、業者は「ハイテック社からは、ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液だとは知らされていなかった」と説明。
埼玉県は「ハイテック社は9年前の問題で、未処理ではホルムアルデヒドになることを知り得ていたはずだ」と指摘している。
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■今回、ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液を川に排出したとされている業者の名前が、5月25日にようやく明らかになりました。群馬県高崎市の産廃処理業者「高崎金属工業」の赤穂好男社長が5月25日、高崎市で記者会見し「処理を委託された廃液に原因物質が含まれていると知らなかった。知っていたら請け負わなかった」と説明したからです。
当会では、さっそく5月26日の朝8時すぎに、現地を訪ねてみました。高崎金属工業という会社がわからずネットで調べると「高崎市」のHPで「産業廃棄物処分業許可業者一覧」
sypxgh240301syobun.pdfの一番最後に「許可番号11620-159705 許可年月日平成23.4.22 高崎金属工業株式会社 赤穂好男 群馬県高崎市倉賀野町2663番地1 郵便番号370-1201 027-346-1324」というのが見つかりました。
グーグル地図で「群馬県高崎市倉賀野町2663番地1」を検索したところ、倉賀野町の中町交差点付近にマークがついたため、その界隈をチェックしましたが、民家や商店だけだったので、たまたま向かい側にあった高崎警察署倉賀野交番で、2名の警察官に番地と会社名を告げて所在地を聞いたところ「この道路をまっすぐ行って、国道17号線に出る交差点を左折したところにあるよ」と教えてもらいました。
■国道17号線と交わる交差点に差し掛かると、左手に工業団地が見えました。さっそく、高崎金属工業という看板を探しましたが、見当たりません。そこで、高崎金属工業社長の「赤穂好男」の名前で検索したところ、「ヘイワテクノ 倉賀野町2660」がヒットしました。この会社であれば、国道から直ぐ見えます。メッキ工場のようですが、60トンの廃液を処理する施設のようなものは国道からは見られません。
↑国道沿いのヘイワテクノ。国道17号線沿いの高崎金属工業団地。高崎金属工業の赤穂社長はヘイワテクノ社の社長でもある。↑
そこで、工業団地の中に入ってみました。通りに「群馬県鍍金工業組合」の看板が見えました。
土曜日にもかかわらず操業をしている会社がいくつもありました。倉賀野町2660番地のヘイワテクノ社の正門に辿り着き、2663番地は直ぐ近くだと思い、あたりを見渡すと、おなじみのサンパイ施設の看板がすぐ目の前に見えました。近づいてよく見ると、フェンスの網の陰に確かに「高崎金属工業」と書いてあります。サンパイ施設の表示板には次の記載がありました。
産業廃棄物の中間処理施設
産業廃棄物の種類:廃酸・腐食性、廃アルカリ・腐食性
処理方法・能力;中和・廃酸20㎥/日、廃アルカリ20㎥/日
管理者名:伊藤嘉彦 連絡先:027-346-1324
技術管理者名:児島 剛 連絡先:027-346-3761
設置者名:高崎金属工業株式会社
設置者住所:高崎市倉賀野町2663番地1
許可:平成23年4月22日 第11620159705号
第11670159705号
↑高崎金属工業のサンパイ中間処理施設表示看板。↑
屋外にタンクがいくつも設置されてあり、それらをパイプが結んでありました。確かにプラント施設のようですが、正門の脇にある郵便受けには「高崎金属工業団地協同組合 水質管理センター 場長 管理責任者」と書いてあり、名前のところが擦られて消されていました。
↑高崎金属工業の正面入口脇の郵便受けの表示。↑
■ここが原因物質を含んだ液体サンパイを処理した場所であることは確かなようです。施設の周りをぐるっと一周してみましたが、「高崎金属工業団地 水質管理センター」の名前の入った容器があったりしていて、どうやら金属加工、それも主としてメッキ処理に使った廃溶液の処理を行う施設のようです。
↑高崎金属工業の正門と施設。↑
斜め向かい側で土曜日に操業していた会社の関係者にヒヤリングをしたところ、「今週は月曜日に、水質管理センターに立入調査が入り、操業出来なかったので、今日は振替えで土曜出勤して操業している」という説明がありました。そこで、当会から「そこにかけてある看板には、先日下流で水道水汚染問題を起こした会社名が書いてありますが、一方で高崎金属工業団地水質管理センターと書いたステッカーの貼られた容器もあり、郵便受けにもそう書いてあります。ということは、この施設は高崎金属工業という会社のものなのでしょうか?それとも、高崎金属工業団地協同組合で共有施設として運用しているものなのでしょうか?」と質問してみました。
↑廃棄物の容器に張ってあるステッカー。↑
すると、会社関係者のかたは、「その件は、組合で聞いてほしい。この通りをまっすぐ行くと突き当たりの右手にある」と返事をしました。どうもそれ以上の話をしたくない様子でした。
お礼を言って、教えられた方向に歩きだすと、交差点で、また女性従業員らしい方とすれ違いました。「土曜日なのに出勤ですか?」と尋ねると「月曜日に水質センターに立入検査があり、そのため団地の工場が全部操業できなかったので、今日、土曜日にその分働くためです」と教えてくれました。やはり、5月21日に水質管理センターに群馬県や高崎市の立入検査があったのは事実のようです。
それも、事前に通達があったらしく、だから工業団地の関係会社は休業について従業員にあらかじめ通知しており、その振替労働日として5月26日(土曜日)を出勤扱いにしたようです。
■さて、数分歩くと、信号機のない交差点の右奥のかどに、茶色の3階建てのビルが見えました。入口のアコーディオンフェンスが閉まっていて施設の敷地内には入れませんが、たしかに玄関の上に「高崎金属工業団地協同組合会館」と描いてあります。
誰も居ないのかな、と思っていたら、玄関の右手の事務所のガラス越しに女性職員がなにやらお茶の準備をしていました。大きく手を振るとこちらに気付いた様子で、「きょうは開いているのですか?中に入れますか?」と仕草で合図を送ったところ、女性職員は、両腕を交差させて「×」印のサインを送り返し、首を横に振りました。
しかし、確かに水質センターで装置を監理していた初老の嘱託の男性は「きょうも組合で話し合っているはずだ」と当会に言いました。駐車場には車こそありませんでしたが、所属会社からは徒歩で来られる距離にあります。今回の水道水汚染事件でなにやら関係者が協議をしているのは確かなようです。
↑1階の玄関脇の窓以外はすべてカーテンが閉められた高崎金属工業団地協同組合ビル。↑
■こうした一連の現地調査を踏まえ、25日から本日にかけての報道をもとに、当会として次の疑問点が浮上しました。
(1)高崎金属工業の中間処理施設は高崎金属工業㈱の所有・運営なのか、それとも、高崎金属工業団地協同組合の水質管理センターとして所有・運営されているのか?
(2)5月19日(土)に埼玉県が高崎金属工業㈱の中間処理施設もしくは協同組合水質センターの立入検査を行ったのに、再度5月21日(月)に再度立入検査を行ったのか?
(3)5月21日(月)の立入検査はどこがおこなったのか?埼玉県は19日に実施したのだから、群馬県と高崎市が行ったのか?
(4)しかし、5月19日の立入検査は埼玉県が単独で行うはずはなく、群馬県や高崎市も当然一緒に検査しているはずだが、なぜ5月21日の立入検査については、事実関係が公表されないのか?
(5)高崎金属工業によると、DOWAハイテック社から処理を請負った廃液は60トン弱で、JFE運搬業者が10日から6回に分けてタンクローリーで搬入。中和処理した上で、利根川支流の烏川に排出した。赤穂好男社長は「(自社の施設に)原因物質を処理する能力はない。契約書などにも記載はなく、困惑している」と話したが、少なくとも施設にはサンパイ中間処理施設の表示板以外には同社の名前を掲げた看板も社長室も事務管理棟も見当たらない。高崎金属工業の商業登記はいつどのようになされたのか?同社の実態はどうなっているのか?
(6)なぜDOWAハイテック社は5月初めに廃液60トン弱の処理について、従来の委託先に断られたのか?
(7)なぜ、DOWAハイテック社は、5月に初めて高崎金属工業に委託を決めたのか?
(8)なぜ、DOWAハイテック社は、JFEグループ関連の液体廃棄物収集運搬会社を連れて、事前に高崎金属工業の施設を見分して60トンの廃液の処理の委託を決断したのか?
(9)なぜ、DOWAハイテック社、JFEグループの液体廃棄物収集運搬会社、高崎金属工業は、得体の知れない廃液の処理を行うことについて、それぞれ疑義を持たずに実行したのか?
(10)DOWAハイテック社とJFE系収集運搬社は、5月10日(木)を含め、その後5月18日(金)までに計6回にわたり60トン弱の水道水汚染原因物質を含む廃液を高崎金属工業に持ち込んだと言うが、高崎金属工業では、自分の組合のメンバー会社から毎日排出される日量最大20㎥の廃酸・廃アルカリの処理で手一杯のはずなのに、あらたに、毎日10トン(ほぼ10㎥に等しい?)もの廃液を積んだタンクローリーを受け入れたのか?
(11)DOWA社もJFE系会社も、そのことを知りつつなぜ廃液を出荷したのか?
(12)サンパイの取扱いには必ずマニフェストが必要だが、それは行政も含めどのような監理がなされていなのか?
(13)下流の千葉県や埼玉県で水道水のホルムアルデヒド濃度が高まって来たという5月15日(火)には、既に毎日10トン近くの廃液処理水を、側溝を介して烏川に排出していたことになるが、JFE系社が10トン近くの廃液を搬入した日は、5月10日から土日を休んで17日まで毎日だったのか?
(14)群馬県と高崎市は、埼玉県から通報や要請を受けて、高崎金属工業に対してどのような対応をとったのか?
(15)群馬県の水道事業を担当する企業局トップの関勤企業管理者や水道課長らが、5月17日午前、埼玉県から「利根川水系の浄水場で通常より高いホルムアルデヒドの数値が出た」とホルムアルデヒド検出の連絡を受けた後、17日(木)午後6時ごろからから前橋市内で開かれた内部の懇親会に出席していたが、少なくとも群馬県と高崎市は、埼玉県から、排出元のDOWAハイテック社のことを5月17日(木)には連絡を受けていた可能性がある。その場合、サンパイの廃液の搬入先のひとつが高崎金属工業㈱だったことも連絡があったはず。しかし、群馬県も高崎市も、そして埼玉県も、既にそのことを知っていたにもかかわらず、なぜ具体的な業者の氏名や所在地を公表しなかったのか?また高崎金属工業に調査に踏み込まなかったのか?
(16)事実、5月19日(土)に埼玉県は高崎金属工業の中間処理施設を立入検査しており、この時、群馬県や高崎市も一緒に居た可能性があるのに、なぜ5月21日(月)に、再度立入検査を行ったのか?この場合、平日の18日(金)には、19日(土)と21日(月)の両日にわたり立入検査を行う旨、工業団地の関係会社に事前に通知していたと思われる。にもかかわらず、なぜ、水道水汚染の原因物質の排出元が特定できないとして25日(金)まで言い続けたのか?
(17)行政は、このように、真相を迅速に公表せず、敢えて業者に証拠隠滅や、言いわけを考えさせるための時間の猶予を与えたのではなかったか?
(18)報道では、DOWAハイテック社がJFE系収集運搬社に、原因物質を含む廃液の処理を委託したのは、烏川沿いにあるサンパイ業者2社だというが、もう1社はどこなのか?マスコミや行政はもう1社の名前や所在地等をなぜ公表しないのか?
(19)高崎金属工業は、金属工業団地の協同組合員の会社以外の、外部からの液体サンパイを受け入れるビジネスを昨年4月から始めているが、その理由と経緯は何か?
■このように、群馬県の場合、とくにサンパイにかかる県行政の業者寄りの姿勢と、県民への情報非公開の姿勢は、一貫して徹底しています。利根川の上流の水質に重大な影響を与えるサンパイ処分場施設の運営を業者まかせにして、すこしも身にしみて立入検査をしたがらない群馬県の体質がこのザマですから、下流の埼玉県、千葉県、茨城県、東京都の利根川水系の浄水場の水を使用している首都圏の住民の生活や生命の安全は風前の灯といえます。
八ッ場ダム建設にうつつを抜かす国交省や群馬県、そして下流域の知事ら、また、役人の天下り先の業者らは、八ッ場ダム建設により、下流の水道水への影響、とくに草津流域から出るヒ素入りの強酸性水の中和によるヒ素の影響について、今回の事件を契機にどのような見解を持ったのか、ぜひ聞いてみたいところです。
↑入口から見た高崎金属工業のプラント施設。昨年4月から外部の液体廃棄物を受け入れて処理するビジネスを始めた。中和槽は左手にある。↑
↑中和槽にそそぎこむ周辺の土曜日でも稼働中のメッキ工場からのメッキ溶液の廃液。ここで中和処理されて、ポンプアップで外部に放流されるが、施設を管理していた初老の男性に「放流口はどこですか」と聞いても、取り合ってくれなかった。↑
↑この排水路をとおって原因物質が大量に烏川へ?↑
【ひらく会・情報部】
※参考資料
≪報道記事≫
**********読売新聞2012年5月25日07時30分
ホルムアルデヒド原因物質、群馬の業者が排出か
千葉、埼玉県の利根川水系の浄水場で処理済みの水道水から国の基準を超える化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、厚生労働省などが原因物質と断定したヘキサメチレンテトラミンは、群馬県内の産廃業者が、同県内を流れる利根川支流の烏川(かえあすがわ)に排出した可能性が高いことが24日、わかった。
埼玉県内の化学工場が今月、処理を委託したといい、埼玉県が25日にも発表する。
この産廃業者は、ヘキサメチレンテトラミンを処理するのに十分な施設をもっておらず、中和処理などをしないままで、排出した可能性が強いという。
埼玉県などが、この産廃業者と委託元の化学工場に対し、廃棄物処理法に基づき状況の報告を求める。
埼玉県と群馬県が疑いのある工場の立ち入り検査を行うなどして、排出源を調べていた。利根川水系では、9年前にもヘキサメチレンテトラミンの排出が原因で、ホルムアルデヒドを検出している。
**********日本経済新聞 2012/5/25 12:53
環境相、再発防止の制度検討 利根川水系の有害物質検出
利根川水系の浄水場で基準値を超える有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、細野豪志環境相は5月25日の記者会見で「同様事案の再発防止について、制度面の手当てでどういった手法があるか検討している」と述べた。
細野環境相は「地元自治体でも原因究明についてさまざまな取り組みを進めている。環境省もしっかり足並みをそろえた」としている。
**********東京新聞2012年5月25日 13時56分
ホルムアルデヒド 群馬の産廃業者排出か 埼玉・業者から処理委託
利根川水系から取水する首都圏の浄水場で処理済み水道水から有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で群馬県高崎市の産業廃棄物処理施設から原因物質とされるヘキサメチレンテトラミンが利根川支流の烏川(からすがわ)に排出された可能性が高いことが二十五日、埼玉県の調べで分かった。
埼玉県によると同県本庄市の化学製品会社「DOWAハイテック」が今月十日、高崎市の烏川沿いにある産廃業者二社にヘキサメチレンテトラミンを含む廃液の処理を委託した。うち一社は十八日までに約六十トンを処理したが、同社の設備ではヘキサメチレンテトラミンを十分に分解することができず、河川に排出されたとみられる。
埼玉県は十九日に、この産廃業者への立ち入り検査を実施したが、産廃業者は「ハイテック社からは、ヘキサメチレンテトラミンを含む廃液だとは知らされていなかった」と説明したという。
一方、ハイテック社は本紙の取材に「廃液の分析値は示しており、業者が適正な処理をしていれば、ヘキサメチレンテトラミンは取り除かれていたはずだ。ほかの業者への委託でも、これまで問題はなかった。不正の認識はなく、県の調査に協力していきたい」としている。
また、もう一つの産廃業者は高崎市の調査に「群馬県外の別の産廃業者に再委託した」と説明したという。
ヘキサメチレンテトラミンはゴムや合成樹脂の加工などに使われる化学物質で、浄水場で河川水の浄化処理に使う塩素と化学反応を起こし、水道水にホルムアルデヒドが生じたとみられる。ヘキサメチレンテトラミンは工場排水を規制する水質汚濁防止法の対象外となっている。
利根川から取水する行田浄水場(埼玉県行田市)では二〇〇三年、この物質が原因となり、国の水道水の基準値(一リットル中〇・〇八ミリグラム)を超えるホルムアルデヒドを検出。ハイテック社の工場排水に含まれるヘキサメチレンテトラミンが原因と確認された。埼玉県によると同社はその後、産廃業者などに廃液処理を委託してきたという。
**********日本経済新聞2012/5/25 20:18
DOWA株が年初来安値 利根川水系の有害物質問題
関東の利根川水系浄水場で水式基準を超すホルムアルデヒドが検出された問題の影響を受け、5月25日の東京株式市場でDOWAホールディング下部が急落、一時は前日比14%(68円)安の429円まで下げ、年初来安値を更新した。
DOWAの子会社、DOWAハイテック(埼玉県本庄市)の委託先が原因物質を排出した可能性が高いと埼玉県が発表。DOWAの業績への影響を懸念したが売りが広がった。終値は11%(54円)安の443円で、この日の東証1部銘柄の下落率ランキングで2位。
DOWAハイテックは太陽光パネルなどの材料である銀粉を生産。工程で出る廃液の処分をグループ内外の廃棄物処理会社に依頼していたが、設備トラブルなどで急きょ依頼した群馬県高崎市の処理会社で問題が起きた。処理会社は廃液に原因物質が含まれているとは知らなかったとしており、廃液中の分析値は示したとするDOWA側と主張が食い違っている。
再生可能エネルギーの全量買い取り制度が7月に始まると太陽光パネル市場は急成長する見通しで、廃液も増加する。「処理依頼先を増やすことは課題」(DOWAハイテック)としている。
**********NHK 5月25日 21時17分
利根川水系に化学物質 警察捜査へ
利根川水系の浄水場の水道水から国の基準を超える化学物質のホルムアルデヒドが検出された問題で、警察は、廃棄物処理法に違反していた可能性があるとして、近く関係者から話を聞くなど捜査に乗り出す方針を固めました。
この問題では、原因とみられる化学物質を川に排出した群馬県の産業廃棄物処理業者が、処理を委託された埼玉県本庄市の化学メーカー「DOWAハイテック」から「問題の化学物質とは知らされていなかった」と話しています。
廃棄物処理法では、廃棄物を出した事業者は委託先の業者に対して廃棄物の性質などを知らせるように定めており、群馬県警察本部は廃棄物処理法に違反していた可能性もあるとみて捜査に乗り出す方針を固めました。
埼玉県によりますと、「DOWAハイテック」は、今月10日から原因とみられるヘキサメチレンテトラミンを含むおよそ60トンの廃液の処理を群馬県高崎市の産業廃棄物処理業者に委託していたということで、警察は、近く関係者から話を聞くなど当時のいきさつを詳しく調べることにしています。
「DOWAハイテック」はNHKの取材に対し、廃棄物処理業者に渡した廃液の成分表にヘキサメチレンテトラミンを記載していなかった事実を認めたうえで、「その後、口頭で伝えたかどうか社内調査を進めている」としています。
**********時事通信2012/05/25-22:06
産廃会社「知らなかった」=JFE関連が廃液運搬-利根川水系汚染・群馬
利根川水系の浄水場から基準値を超える化学物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、原因物質のヘキサメチレンテトラミン(HMT)を流したとされる産廃処理会社「高崎金属工業」(群馬県高崎市)の赤穂好男社長は25日、同社で記者会見し、「(廃液処理の委託元から)HMTが入っていたとは聞いていない。知っていれば処理を断った」と語った。
同社の説明では、金属加工会社「DOWAハイテック」(埼玉県本庄市)から受け入れた廃液は計60トン弱。10日以降、JFEグループ関連の廃棄物収集運搬会社によって6回に分けてタンクに運び込まれ、処理後、利根川支流の烏川に流した。
DOWA社とは今回初めて取引。赤穂社長らによると、高崎金属工業の設備ではHMTの処理はできないが、廃液受け入れ前に、運搬会社とDOWA社は設備を確認したという。
**********日本経済新聞2012/5/25 23:47
「廃液に原因物質含むと知らず」浄水場問題で業者
利根川水系の浄水場で高濃度のホルムアルデヒドが検出された問題で、原因物質を川に流したとみられる群馬県高崎市の産廃処理業者「高崎金属工業」が5月25日、同市で記者会見し「処理を委託された廃液に原因物質が含まれていると知らなかった。知っていたら請け負わなかった」と説明した。
ただ委託した埼玉県本庄市の化学品製造業「DOWAハイテック」は取材に対し「廃液の中身を分析した結果を資料で示した」と説明したが、原因物質が含まれていると口頭で説明したかどうかは調査中としている。
高崎金属工業によると、請け負った廃液は60トン弱で、運搬業者が10日から6回に分けてタンクローリーで搬入。中和処理した上で、利根川支流の烏川に排出した。赤穂好男社長は「(自社の施設に)原因物質を処理する能力はない。契約書などにも記載はなく、困惑している」と話した。
高崎市は25日、廃液処理に問題がなかったか、同社に文書で報告を求めた。埼玉県や群馬県と連携して委託の経緯などを調査する。
これまでの取材にDOWAハイテックは、従来の委託先に断られ、5月に初めて高崎金属工業に委託したと説明。この廃液にホルムアルデヒドの発生原因となるヘキサメチレンテトラミンが含まれていた。〔共同〕
**********産経新聞2012.5.26 02:09
複数の業者捜査へ 有害物質不法投棄の疑い 群馬
関東の浄水場から国の水質基準を超える有害物質ホルムアルデヒドが検出された問題で、県警は25日、利根川水系に原因物質ヘキサメチレンテトラミン(HMT)を流した可能性のある県内外の複数の産廃業者に対し廃棄物処理法違反容疑で捜査する方針を決めた。容疑が固まれば工場などの捜索を行う。
廃棄物処理法では、みだりに廃棄物を投棄することを禁じ、国内での適正な処理を義務づけている。県警では、業者の廃液の処理状況などを調べている。
一方、県と高崎市の担当者は25日、HMTを流したとみられる2業者を訪問。委託元の埼玉県本庄市の金属加工業「DOWAハイテック」との契約書や管理書類の提出を29日の期限付きで求めた。
このうち、同社から廃液約60トンの処理を受託した「高崎金属工業」(赤穂好男社長)によると、D社側から廃液内のHMTの有無や処理方法については契約書に記載がなく、指示もなかったという。赤穂社長は同日の記者会見で「(D社側から)説明はいっさいなかった」と戸惑った様子で語った。
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