「僕にはゴルフしかない。だから、ゴルフを一生懸命やることによって、被災者の人を元気づけたい」
といった多くの人が言いそうなことを、石川遼は言わなかった。もちろんこの台詞では、「ゴルフ」は「野球」でも、「サッカー」でも、「歌」にでも置き換えていい。
石川遼は、今シーズンに入ってここ2週続けて、米ツアーで予選落ちして苦しんでいた。爽やかな笑顔は見られず、ゆがんだ顔をのぞかせた。それは、3月11日に起きた東日本大震災に呼応しているかのようだった。
震災の被害の大きさが明らかになるにつれ、有名人やゴルファーも義捐金や寄付の呼びかけをするなか(個人の有名人義捐金・寄付に関しては「東日本大震災③」を参照)、彼は黙していた。
彼の今まで何に対しても真正面から対応しているのを知っている私たちは、黙している彼は何を考えているのだろうかと訝った。彼は苦悩し、葛藤しているかのように見えた。
真摯で堂々とした態度を見せていたが、やはり19歳なのだ、と思った。この未曾有の大被害に、個人でどう対応していいか分からず苦慮していると思えた。
3月29日、石川遼は、それまでたまっていた自分の胸のうちの震災に対する思いを爆発させるかのように発表した。
「今季の国内大会と海外メジャー大会の獲得賞金全額を、東日本大震災の義捐金として寄付します」と。
そこに、彼の苦悶の末の答えがあった。
この内容は、かつて今までにないものだろう。1試合や2試合、もしくは優勝したときの賞金を何がしかに寄付するというのはあったとしても、どのジャンルにしろ、シーズンを通して全試合の獲得賞金を寄付というのは、前代未聞ではなかろうか。
「素晴らしい」というより、若いのだが「偉大な」という形容詞をつけなければいけないような答えだし、彼しか出せない結論だった。
「皆さんとずっと戦っていくんだという気持ちを、形にしたかった」と、彼は、震災復興が長期戦になることも考慮して言った。
やはり、石川遼は普通の選手ではなかった。ただゴルフが上手い、強いという人間ではなかった。
「苦しんでいる皆さんへ獲得賞金を渡せると思えば、気合が入る」と彼は、新しい熱意を込めるように言った。そこには、眩しいほどの前向きな若々しさがある。
そして、「バーディー(イーグルを含む)1個に付き、10万円を加える」と付け足した。
石川遼の昨年の獲得賞金は1億5,146万円である。
バーディー数は341個。
「2億円が目標」というのは、十分に可能な数字だ。
海外のイギリス紙も「本物の一流」と賛美した。
といった多くの人が言いそうなことを、石川遼は言わなかった。もちろんこの台詞では、「ゴルフ」は「野球」でも、「サッカー」でも、「歌」にでも置き換えていい。
石川遼は、今シーズンに入ってここ2週続けて、米ツアーで予選落ちして苦しんでいた。爽やかな笑顔は見られず、ゆがんだ顔をのぞかせた。それは、3月11日に起きた東日本大震災に呼応しているかのようだった。
震災の被害の大きさが明らかになるにつれ、有名人やゴルファーも義捐金や寄付の呼びかけをするなか(個人の有名人義捐金・寄付に関しては「東日本大震災③」を参照)、彼は黙していた。
彼の今まで何に対しても真正面から対応しているのを知っている私たちは、黙している彼は何を考えているのだろうかと訝った。彼は苦悩し、葛藤しているかのように見えた。
真摯で堂々とした態度を見せていたが、やはり19歳なのだ、と思った。この未曾有の大被害に、個人でどう対応していいか分からず苦慮していると思えた。
3月29日、石川遼は、それまでたまっていた自分の胸のうちの震災に対する思いを爆発させるかのように発表した。
「今季の国内大会と海外メジャー大会の獲得賞金全額を、東日本大震災の義捐金として寄付します」と。
そこに、彼の苦悶の末の答えがあった。
この内容は、かつて今までにないものだろう。1試合や2試合、もしくは優勝したときの賞金を何がしかに寄付するというのはあったとしても、どのジャンルにしろ、シーズンを通して全試合の獲得賞金を寄付というのは、前代未聞ではなかろうか。
「素晴らしい」というより、若いのだが「偉大な」という形容詞をつけなければいけないような答えだし、彼しか出せない結論だった。
「皆さんとずっと戦っていくんだという気持ちを、形にしたかった」と、彼は、震災復興が長期戦になることも考慮して言った。
やはり、石川遼は普通の選手ではなかった。ただゴルフが上手い、強いという人間ではなかった。
「苦しんでいる皆さんへ獲得賞金を渡せると思えば、気合が入る」と彼は、新しい熱意を込めるように言った。そこには、眩しいほどの前向きな若々しさがある。
そして、「バーディー(イーグルを含む)1個に付き、10万円を加える」と付け足した。
石川遼の昨年の獲得賞金は1億5,146万円である。
バーディー数は341個。
「2億円が目標」というのは、十分に可能な数字だ。
海外のイギリス紙も「本物の一流」と賛美した。