かりそめの旅

うるわしき 春をとどめるすべもなし 思えばかりそめの 旅と知るらむ――雲は流れ、季節は変わる。旅は過ぎゆく人生の一こま。

江島神社から鎌倉への桜行

2018-04-04 03:50:38 | * 東京とその周辺の散策
 あれはいつのことだっただろうか。
 夏も終わろうとしているのに、その年は一度も泳ぎに行っていなかったので、一度ぐらいは行こうと思いたち、手頃な海水浴場へでも行くことにした。それで、東京から近いし交通の便もいいので湘南の江の島に目ぼしを付け、夏の終わりの休日に江の島に行ったのだった。
 着いた江の島の海岸は芋を洗うような混雑で、気楽に泳ぎを楽しむような感じではなかったし、のんびり甲羅干しをするような場所もない有様だった。これでは新宿か渋谷に来たのと同じだと、早々に帰ったのだった。

 *江島神社

 この季節、毎年千鳥ヶ淵に花見に行くのだが、今年は江島神社へ行った。
 海ではなく、江の島にある江島神社が目的である。
 江島神社は弁財天を祀っているので有名で、海の三姉妹の女神を祀る「辺津宮」、「中津宮」、「奥津宮」の 三社からなる。これを知って、最近世界遺産に登録された福岡の沖ノ島を有する宗像大社を思い浮かべたら、やはり同じ神であった。

 3月28日午前11時30分、同好の士と小田急片瀬江ノ島線、片瀬江ノ島駅から出発。
すぐに江の島弁天橋があり、それを渡ると江の島だ。ウィークデーだというのに、駅から江の島に向かう人がやたら多い。
 まだ3月だというのに初夏のように暖かく、ティーシャツを着ている少年もいる。
 島に入ったところの入口に青銅の鳥居が構えていて、仲見世通りが続く。
 とりあえず、昼食をとることにした。ここの名物のシラス丼にする。
 昼食をとって、仲見世通りをまっすぐ進むと、江島神社・辺津宮に着く。ここに建ててある奉安殿には、弁財天が二つ並んで飾ってある。その一つは裸弁財天と呼ばれているように裸体であるのは珍しい。
 辺津宮から中津宮、江の島大師を巡り、奥津宮へ。

 途中、「山ふたつ」という地名があるので、小さい山を二つ超えるのかと思っていたら、島をあたかも二つに分けるかのような、海に隆起する岩を例えていたのだった。タモリだったら、この岩の隆起が江の島の誕生を証明する証拠ですね、とでも言うのではないだろうか。
 その岩と対比するように海に向かって建てられている建物が、廃墟のようで奇妙に「山ふたつ」とマッチしていたのが面白い。
 最後の奥津宮を参拝したあと、食事処でサザエの壺焼きを食す。海を眺めながらのちょっとひと時だ。
 奥津宮の先を海に向かったところからフェリーが出ていたので、それに乗って出発点の弁天橋のふもとに戻った。
 江の島神社の3宮を周るとほぼ島を周ることになり、その途中にも見どころ、食べどころがあり、船乗りも楽しめるとあって、江の島は観光地として申し分ない要素を備えていると思った。東京からは近いし、観光客が多いのも納得した。

 *鎌倉

 江の島駅から江ノ電に乗って、鎌倉に向かった。
 長谷駅で降りて、大仏を見ることにした。道を歩いていると、通りからあちこちにチラチラとピンクの桜が顔を出しているのは、この季節の日本の特徴的な風土である。
 どの桜も満開だ。満開の桜の先に大仏が座っていた。茶会の帰りであろうか、和服姿の女性が桜によく似合う。(写真)

 長谷駅から再び江ノ電で鎌倉駅へ。
 小町通りの店をチラチラ見た後、鶴岡八幡宮の参道である若宮大路へ。ここのセンターは桜の歩道である。小ぶりの桜が整頓されたようにきれいに並んでいる。道路から枝がはみ出さないように気をつけているといった、きちんと前を見ながら歩いている小学生の優等生のような桜並木だ。
 千鳥ヶ淵の、濠の方に奔放に枝をしならせている豪放磊落な桜とは性格が違うようだ。

 八幡宮の境内のなかの、左右にある池の周りの桜も咲き誇っている。
 桜の枝の先を見上げると、濃くなった青空に白い月が浮かんでいる。満月に近い丸い月だ。
 「月と桜」、すなわち「月と花」。
 ちょうど1週間前の3月21日の春分の日に「雪と桜」、すなわち「雪と花」を体験した。この日を併せて、 「雪月花」を体験したとしておこう。

 *

 日も暮れ、腹もすいてきたので夕食を求めて八幡宮を出る。
 士が探してくれた、若宮大路から1本道を離れた雪ノ下の通りに潜むタイ料理店へ。
 夫婦と思われる、人がよさそうなタイ人の営む普通の民家風の店である。
 トムヤンクンもバッタイ(台風焼きソバ)も肉と野菜の炒めも、タイ料理特有のナンプラーを適度に抑えた品のある味のタイ料理だ。
 ビールは、シンハービールとチャーンビールのタイ・ビールが料理によく似合うし、喉に合うようだ。

コメント
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