体の中のエネルギー産生に関して、最後に鉄欠乏について考えてみましょう。
前にお話ししましたが、解糖系は酸素を必要としないエネルギー産生システムです。
呼吸をする間もない(息を止めて頑張る)程、急速にエネルギーを必要とする時に働くイメージです。
一方、クエン酸回路は酸素を必要とするシステムです。
酸素を利用することによって大きなエネルギーを生み出すことができます。
(その分、活性酸素が発生してある程度体が酸化するのは、生きていくうえで避けられないことです。)
もし、体に鉄が足りなかったらどうなるでしょう。
鉄欠乏性貧血という診断がありますが、鉄が足りないと赤血球が育ちません。
赤血球に含まれるヘモグロビンの「ヘム」には鉄が含まれています。
ご存じのとおり赤血球は酸素を体のすみずみに運ぶ役割をしています。
そのために鉄不足になると体に運ばれる酸素が少なくなるのです。
いわゆる酸欠です。
そして酸素が足りなければクエン酸回路の働きも弱まってしまいます。
鉄分が足りていない人が元気がなく不調を訴えることがあるのは、エネルギーがつくられないからなのです。
鉄には動物性の食品に多く含まれるヘム鉄と、植物性の食品に含まれる非ヘム鉄とがあります。
吸収率でいうとヘム鉄の方がずっと高いです。
ヘム鉄は2価のイオン、非ヘム鉄は3価のイオン。
2価のイオンの方が10~20%の吸収率と高く、3価の鉄イオンは吸収率が2~5%で、2価に還元されないと吸収されません。
非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂らないと吸収が悪くなりますし、お茶と一緒に摂っても吸収が悪くなります。
鉄分補給には、ヘム鉄が多く含まれる肉やレバー、赤身の魚、あさりなどがお勧めです。
ホウレンソウやプルーンではなかなか鉄が補給できないと覚えておくとよいでしょう。
小幡歯科医院