夕食時での会話です。
あるご婦人の話題になったため、私は妻にある話をしました。
30年くらい前……あるご婦人が名家の一人息子に嫁ぎました。
しかし、誓い合った人があったため、家を飛び出して、その人と結ばれました。
妻に出て行かれた名家の男は、自分も家を出て、新たにお店を開き独り暮らしました。
男もご婦人も、ご自分で人生を切り開かれたのです。……
すると、妻は……
ご婦人が嫁いだ先は、名家の長男でしょうと。
家を出て行ってお店を開いたのは、弟の方でしょうと。
長男は名家を継がれたのでしょうと。
こうはっきり断言するのです。
……ということは、名家の跡取りには弟がいたの?
そうでしょう、と妻が言います。
兄弟がいたのは初耳です。
私は、てっきり、名家には一人しか息子がいなくて、ご婦人はその人に嫁いだのだけれど、無理で、出て行ったのだと。
失意の息子は、自分も家を捨て、新たに事業を始めたのだと、思っていたのです。
事実は違っていたのです。
そこで、私は妻に問いました。
「昔の話だけど、その情報は確かなのか?」
「間違いない」
「どこから、その情報を得たのだと?」
妻曰く、
「20年前に、あなたが私に話してくれた」
ですと。
……
妻はその家族のことを知りませんから、正しいわけです。
私は、20年の時を経て、勝手に話を作り替えていたのです。
そして、それを真実だと思っていたのです。
ある意味、簡略化していたのですね、理解しやすいように。
しかも、20年前に、妻にその話をしたことを忘れていたのです。
それは普通かもしれませんが……
このように、過去の出来事を思い違えて覚えているのです。
今日は、過去の自分が。妻をメッセンジャーとして未来の自分へ、それは現在の自分へですが、真実を伝えたのです。
中身はたいしたことがありませんが……