おうい雲よ
ゆうゆと
馬鹿にのんきさうぢやないか
どこまでゆくんだ
ずつと岩城平の方までゆくんか 山村暮鳥作
今日の湿原道路は前日同様で、風は全く無く背に受ける日差しの温もりがとても心地良かった。そのうえ中空に浮く雲の様は、まるで長閑な絵を見るようで最高のウォーキング日和であった。秋色一色の世界に浸りあれこれ思い、疲れなどはすっかり忘れてしまっていた。
冒頭の詩は、山村暮鳥の「雲」という作品の中の一部で、私の好きな詩の一つです。暮鳥そのものの人柄、また他の作品などのことについては、余り深くは知りません。ただ二十歳代の頃、何かの折に目にしたこの詩が何故か、50年も経った今でも、消える事無く残っていて、特に秋空に浮く雲を眺めた時などに甦って来るのです。
勝手な想像ですが、草叢にでも寝そべり中空を流がれ行く雲を見入って、感傷的になっている、若き暮鳥の姿が浮かんで来ます。
またこうした情景からは、直ぐに啄木が連想されます。ただ彼の場合は寂れた城跡が相応しく、其処に佇み物憂げに空を見上げている青年啄木の姿が浮かびます。
更に思いは飛躍して、美空ひばりの世界にまで発展して、「りんご追分を」に始まり、並木路子の「リンゴの唄」などまで広がり、何時の間にか記憶を辿りながら、いつしか口ずさんでいました。
追分山のてっぺんを、綿みてえな白い雲が
ポッカリポッカリ流れて行き・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・おらぁ・・・おらぁ・・・・
傍には老妻しか居ないのを見越して、良い年(70余歳)をした老人が、すっかり興に乗り大きな声で歌い出す始末でした。