拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

心に沁みるモテットの5番(バッハ)

2018-04-02 11:26:29 | 音楽
私は、バッハのモテットは5番だけ経験がなかった(ただし、他の曲は経験ありと言っても歌うたびにパートが違ったから、よく言えば毎回新鮮、悪く言えば身についてない、だから今回も楽譜を1段すっとばすようなポカをやった。因みに、ハレルヤ・コーラスとアヴェ・ヴェルム・コルプスは合唱人の多くは暗譜していて、いろんな催しの最後にみんなで歌おうとなったとき楽譜なしでもへっちゃらのようであるが、私は、これまたいろんなパートを歌っているので覚えているパートがない。だから、告白するが、そういう場所では適当に作って歌っておりました(ドイツ語豆知識:告白する=zugeben。親が子供に悪さを「白状しろ!」と言うときは「Geb zu!」と言う(と先生が言ってた))。その5番だが、もちろん聞く機会はたくさんあって、私、1番が歌いたかった、2番が一番好きとか言っているが、実は、最近のマイ・ブームは5番なのである。溌剌とした曲の多いモテット群の中で、5番のしめやかさは格別。その歌詞は「mein Leib ist müde」(体が疲れた)、「die Kraft verschwindt je mehr und mehr」(力がどんどん抜けていく)、そして最後、現世に「お休み」と言う(宗教観を抜きにすると、仕事に疲れたサラリーマンが江ノ島の裏側でふぅーっとため息をついているようでもある)。同じ葬式用と言っても2番(元気いっぱい)とは対照的。いつ頃からこういうのが心に沁みるようになったんだっけ。まあそこそこ人間をやってるといろいろ積み重ねがありますからね。因んだ話その1。「gute Nacht」(お休み)はモテットの3番にも出てくる。やはり世の虚栄に対する決別の挨拶。お別れは夜にするものらしい。そう言えば、シューベルトの「冬の旅」でも決別の挨拶は「Gute Nacht」であった。「おはよう!」と言ってお別れをするのはやはり変か。その2。5番の詩に最初に音を付けたのは、バッハより半世紀ほど前にトーマス教会のカントルであったヨハン・シェレであった。そのシェレをシュッツを歌う会でいよいよ歌う。結構楽しみにしている。え?シュッツを歌う会なのにシュッツじゃないのかって?ないのですよ(欧米語的な回答)。