写真はチョコレートヒルズ。乾季に草が枯れてチョコレート色になることから名づけられたというが、私が見たときは乾季ではないので緑色だった。
【まるでジェットコースター】
翌日はボホール島の観光スポットをめぐることに。ここも公共の交通機関はありません。バイクに幌馬車のような座席がついたトライシクルはあるのですが、見どころがちらばっているうえに島が思いがけず大きいことに気づいたのでホテルに頼んで車を手配することにしました。面積は淡路島ぐらいだと思っていたら、東京都の1・5倍(埼玉県や奈良県、鳥取県)ぐらいもあったのです。
朝、運転手1人と添乗員1人が付く4WDがやってきました。
添乗員さんはボホール島出身の陽気な人で、本業は画家だと自己紹介。他にラジオのディスクジョッキーや英語教師、島への貢献活動もしていると聞いているうちにわかってきました。とにかく、どこにいっても島の顔役なのか顔パスで順番に関係なく、割り込むことができる不思議な人でした。スマホで自分の作品なんかも見せてくれます。売る気はなさそうです。
緑のトンネルを抜けるような豊かな空間と、行きかう車はほとんどない舗装道路がどこまでも続く中、常に助手席から後ろを向いて話しかけ続けます。
「これは三菱。日本製だから性能がいいんだ。」
というと、うれしそうに運転手が車のスピードを上げ始めました。いけない。これではゆっくり車窓も眺められない。なにより、不思議なのはジェットコースターに乗っているかのように、えんえんと身体が飛び上がらんばかりのアップダウンが続くのです。酔いそうです。
「スピードを下げて。」
とお願いすると、少しは下がるのですが、気づくとまたもや70キロを超えるスピードに。走りやすい整備された道路なのでスピードを出したくなるのはわかるのですが、なかなかつらいものがありました。
車の冷房も効きすぎ。客は我々だけなので要望が通りそうなものですが、お願いしても、やがて強冷に戻ってしまうのです。今までのセブ島留学ではなかった過剰な接待! リゾート価格を素直に払うと、車の性能も、雇う人の水準も上がって、かえって私には厳しい世界になることに気づくのでした。
さて、しばらく行くとチョコレートヒルズという不思議な景観の場所に案内されました。ひときわ高い山を登ると、周辺一帯がポコポコと丸みを帯びた小山だらけなことがわかりました。昔のサンゴ礁を中心とした石灰岩が地殻変動で隆起し、柔らかい部分が侵食されたものだとか。
雲南の昆明には石林と呼ばれる石灰岩が侵食されてたくさんの剣が屹立しているような不思議な地形がありますが、ボホール島のようにおわんを伏せたような丸い形になるのと剣のような形ははじめてみました。
ともかくこのポコポコ小山の地形のために、車がジェットコースター化するのだと得心したのでした。
(つづく)