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雲南の菊の花

2012-10-13 14:34:48 | Weblog

写真上は文山チュワン族自治区広南でいただいた羊肉鍋にたっぷり入った菊の花。写真下は広南の市場で売られていた菊の花(2004年10月撮影。)

【お鍋の具材に】
 秋。日本でも北は山形や宮城では、ポツンと一花、盛りつける刺身の飾りとしてだけではなく、菊の花がおひたしなどとして普通に食べられます。同様に雲南でも食用菊は、秋野菜の一品として鍋料理にはかかせません。

 花の色は白色。花弁が5センチ以上もあるような大輪で、細く、やわらかく、苦みもそれほどなく、くせがありません。
しかも、スーパーで1パック買って入れる、などというささやかな日本モードでは考えられないほど、どっさりと入れて、しっかりと食べるのです。
 羊肉などの濃いお味の鍋にはとくによく合って、くさみをおさえ、まろやかにしてくれるので、胃疲れをおこす旅行者にはありがたい存在といえるでしょう。

 ただ、問題は、花なので、見た目と香りを重視するためにあまり洗わずに食べざるをえないこと。つまり、農薬を一緒に食べてしまいがちなこと。
 雲南に限らず、中国全土で緑茶などとブレンドして愛飲されるお茶用や漢方としても利用される乾燥菊からは基準を超過した農薬が毎年、検出され、収穫期になると何かの風物詩のようにニュースに流れます。雲南から花を日本に輸入する仕事をなさっていた方には「現場を知ると、なかなか口にできないよ」といわれました。

【日本のかとり線香にも】
 他に、21世紀に入ってからの雲南の名産の一つに除虫菊があります。蚊取り線香の原料として日本でも戦前、さかんに使われていたものです。雲南中部の紅河州瀘西県で除虫菊の生産が始まったのが、2000年。2011年統計では県全体で6000トンの生産を誇るまでになりました。
 2009年には紅河森菊公司という地元の会社が、輸出などの際に有利な資格・原産地認証を中国国家出入境検験検疫局から取得し、海外に積極的に輸出しています。

 日本もその一つ。和歌山県有田市の「かえる印のナチュラルかとり線香」で使われている「天然除虫菊」は全量、ここからの菊を使っているのだそうです(http://www.binchoutan.com/kaeru/senko/index2.html)。

 我が家でも日本の自然食品店で見かけた「雲南」の言葉につられて、このかとり線香を買いました。
 使うと、たしかに体にやさしいのですが、じつは蚊にもやさしく、この蚊取り線香のまわりを元気に蚊が飛び回っている姿を目にします。少しはいやがって別の部屋に移ってくれる蚊もないわけではありません。私は満足しているのですが、家の者にはのどと目が痛くなるのに、あんまり効かない、と残念ながら不評です。戦後、日本の会社が化学系農薬の蚊取り線香に走り、長らく除虫菊の殺虫成分だけのものがなかった理由は「確実な効き目」にもあるのでしょう。

 じつは紅河州の主な現金収入は、昔からたばこの栽培にあります。雲南産のたばこの銘柄として「紅河」が全国的に知られていますが、この主産地です。

 除虫菊がこの地に定着したのは、たばこの葉を刈り取った後、間をおかずに同じ畑で栽培できたということにあります。6月中旬に育苗を開始し、雨期の終わる9月末には畑に移植し、4月頃に刈り取り。ぴったりたばこの葉の生産の裏作にあてはまったというわけです。

  (おわり)

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