写真は大理の名物、「沙鍋魚」。大理に多く住むぺー族の名物料理の一つだ。総じてぺー族の料理は塩味ベースの、さっぱりとした味のものが多い。本物のぺー族料理店では、現代の雲南には珍しく、唐辛子で真っ赤になった料理というのは、見あたらない。
【魚の豊かな街・大理】
雲南に住む少数民族で今なお、豊富な魚類資源に恵まれた民といえば、大理のペー(白)族だろう。大理には耳の形をした洱海という巨大な湖がある。面積246平方キロメートルは、テン池の300平方キロに次ぐ雲南第2の広さを持つ。汚染も少なく、水は澄んでいて魚影が船の上から確認できた。
大理は、かつて日本の平安時代にあたる中国の唐の時代に雲南最大の国家の中心地として栄え、元のフビライによって滅んだ大理国の首都があったところであり、また雲南の交易ルートの重要な中継地点であった。だが、盆地のど真ん中にあり、平地にも限りがあることから、昆明ほどの乱開発がなかったのである。
さて、洱海の漁獲高は年間2500トンと、雲南の主だった湖沼群の中で群を抜いて多い。60年代初頭より徐々に草魚などの4大家魚が持ち込まれ、さらにブラックバスなどの放流もあって、昔から自然に住む魚も19種と減少気味だが、それでも雲南の主な湖のなかでは一番多く生き残っている。
(なんと60年代の資料によると全国淡水魚類の総種類の40%を雲南が占めていた。その数432種類。それが1990年代の調査では約130種類、確認されるのみだった。今なら、もっと減っていることだろう。―「雲南的外来魚類和土著魚類 楊君興、1996年発表のものに随時加筆、訂正、2007年」)
このように魚が恵まれた地なので、街を歩くと、「魚」の文字が書かれた料理屋の看板がやたらと目につく。賑わっている店に入ると、当然のように魚料理を勧めてきた。(肉料理よりもは値段が高め。魚の価格が上がっているためもあるのだろう。)
ぺー族独特の魚料理も牛乳で煮たり、唐辛子で濃厚に味付けしたりと様々だが、店の前に並ぶ魚から好みの魚を選んで、その後、野菜を選んで、つくってもらう「沙鍋魚」がさっぱりとして食べやすい。
作り方は店によって多少、違うが、内臓を取り去って洗い、塩もみして約10分後に水または鶏ガラスープを張った土鍋に魚を入れ、豆腐や椎茸、木くらげ、ハム、肉、白菜、百合根などの野菜を入れる。ショウガ、ネギ、コショウ、塩、場合によっては唐辛子をいれ、できあがる。塩味ベースの白湯スープがさっぱりとして食べやすい。それでいて、各種素材がからみあった複雑な味に仕上がっていて旅行中に疲れた時には、胃にも心にも優しい料理だった。
大きい魚の場合は、魚の頭の大きさを強調するために魚の頭と尻尾を注意深く鍋のへりに出すように飾りつけられる。これが、昔から美味とうたわれた土着の頭の大きな魚・弓魚だと、ぺー族最高料理に格上げされる。 (つづく)
【魚の豊かな街・大理】
雲南に住む少数民族で今なお、豊富な魚類資源に恵まれた民といえば、大理のペー(白)族だろう。大理には耳の形をした洱海という巨大な湖がある。面積246平方キロメートルは、テン池の300平方キロに次ぐ雲南第2の広さを持つ。汚染も少なく、水は澄んでいて魚影が船の上から確認できた。
大理は、かつて日本の平安時代にあたる中国の唐の時代に雲南最大の国家の中心地として栄え、元のフビライによって滅んだ大理国の首都があったところであり、また雲南の交易ルートの重要な中継地点であった。だが、盆地のど真ん中にあり、平地にも限りがあることから、昆明ほどの乱開発がなかったのである。
さて、洱海の漁獲高は年間2500トンと、雲南の主だった湖沼群の中で群を抜いて多い。60年代初頭より徐々に草魚などの4大家魚が持ち込まれ、さらにブラックバスなどの放流もあって、昔から自然に住む魚も19種と減少気味だが、それでも雲南の主な湖のなかでは一番多く生き残っている。
(なんと60年代の資料によると全国淡水魚類の総種類の40%を雲南が占めていた。その数432種類。それが1990年代の調査では約130種類、確認されるのみだった。今なら、もっと減っていることだろう。―「雲南的外来魚類和土著魚類 楊君興、1996年発表のものに随時加筆、訂正、2007年」)
このように魚が恵まれた地なので、街を歩くと、「魚」の文字が書かれた料理屋の看板がやたらと目につく。賑わっている店に入ると、当然のように魚料理を勧めてきた。(肉料理よりもは値段が高め。魚の価格が上がっているためもあるのだろう。)
ぺー族独特の魚料理も牛乳で煮たり、唐辛子で濃厚に味付けしたりと様々だが、店の前に並ぶ魚から好みの魚を選んで、その後、野菜を選んで、つくってもらう「沙鍋魚」がさっぱりとして食べやすい。
作り方は店によって多少、違うが、内臓を取り去って洗い、塩もみして約10分後に水または鶏ガラスープを張った土鍋に魚を入れ、豆腐や椎茸、木くらげ、ハム、肉、白菜、百合根などの野菜を入れる。ショウガ、ネギ、コショウ、塩、場合によっては唐辛子をいれ、できあがる。塩味ベースの白湯スープがさっぱりとして食べやすい。それでいて、各種素材がからみあった複雑な味に仕上がっていて旅行中に疲れた時には、胃にも心にも優しい料理だった。
大きい魚の場合は、魚の頭の大きさを強調するために魚の頭と尻尾を注意深く鍋のへりに出すように飾りつけられる。これが、昔から美味とうたわれた土着の頭の大きな魚・弓魚だと、ぺー族最高料理に格上げされる。 (つづく)