シンガポールのジュロンバードパーク「滝の飼育舎」の鳥と一緒にシンガポールを占領した日本軍の華僑工作を紹介しましょう。1942年2月15日シンガポールを占領した日本軍(第25軍)は、シンガポール(昭南)市民に次のような布告を出しています。・・・インドクジャク♂
昭南在住の華僑で18歳から50歳までの男子は来る2月21日正午までに左記の地区に集合すべし(中略)、右に違反したる者は死刑に処す。なお、各自飲料水及び食料を携帯せよ。大日本軍司令官・・・インドクジャクの♀
布告は華僑(23万6千人、シンガポール市人口の44%)の抗日分子を粛清することで、華僑の中から抗日分子を三日間で選択することになっていました。・・・コウラウン(紅羅雲)はインドから中国南部、東南アジアに分布するヒヨドリ科の鳥。警戒心が強く、なかなか近くに寄れません。
実は、シンガポール作戦を終えた第25軍は、すぐに他の地域に転進する予定となっていて、シンガポールには僅かの兵力しか残らないことから手薄な兵力での治安維持を容易にするための対策だったようです。・・・アフリカのサハラ砂漠以南に分布するウロコカワラバト。東アフリカでは日本のドバトと同じ扱いだそうです。
粛清対象となったのは「シンガポール華僑義勇軍、共産党員、抗日分子、重慶(蒋介石政権への)献金者、無頼漢、前科者」とされ、該当すると判断された華僑(戦後の英国軍発表では約6千人)が処刑されています。・・・硬いトサカのあるホロホロチョウもアフリカに分布する鳥
また、第25軍軍政部長渡辺渡大佐(45歳)名で出された「華僑工作実施要領」は、「占領地域内において服従を誓い協力を惜しまざる者に対してはその生業を奪わず、然らざる者に対しては断乎その生存を認めざる(認めない)ものとす」と、非常に厳しいものでした。・・・滝の飼育舎(ウォーターエビアリイ)の中で、ひと際目立つメタリックな青い羽を持つツキノワテリムク(月の輪照り椋鳥)もアフリカの鳥
抗日分子でなくてもシンガポール、マレー、スマトラ在住の有力華僑には、最低5千万ドルの軍資金調達が命じられ「協力せざる者に対しては、峻厳なる処理を以ってこれに答え、華僑全体に対する動向(日本軍への服従)決定に資せしむ」としていました。・・・ツキノワより少数派ですが、体がメタリック調パープルというムラサキテリムク(紫照り椋鳥)もアフリカの鳥
この通達は日本が敗戦に至るまで継続され、その過程で協力的でない者は抗日分子と判断されて容赦なく処刑されています。・・・カンムリバトは、インドネシア(ニューギニア西部)に分布する鳥でハトの仲間。体長64cmと大きな体をしているせいか堂々としていました。
この第25軍布告は、辻政信作戦主任参謀(39歳)と朝枝繁春作戦参謀(30歳)が発案したのではないかと推定されていますが、その命令を承認した山下奉文軍司令官(56歳)の責任も免れないでしょうね。・・・カンムリバトの光彩は赤でした。
参考文献:マレー・シンガポール作戦 森田康平著