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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の仲裁判決無視ー常設仲裁裁判所が令状を発行すれば?

2016年07月18日 14時26分48秒 | 国際政治
南シナ海裁定で完敗した中国、世界の「判決を支持」反応に逆ギレ
 南シナ海問題に関する仲裁裁判は、国際法秩序の行方をも左右する重大事件であり、人類の運命をも決定づけると言っても過言ではありません。中国が不履行を貫くとしますと、国際法秩序が根底から崩壊するからです。

 中国不履行のリスクは相当に高く、その根拠として、仲裁裁判の判決には執行力が備わっていないことが指摘されています。しかしながら、仲裁手続は、当事者の一方による不履行のケースを想定していないのでしょうか。本仲裁裁判は、国連海洋法条約の第287条(c)に基づいて設置されており、同条約の付属書Ⅶにおいて、手続きの詳細が記されています。その第12条には、「仲裁判断の解釈又は履行の方法に関し紛争当事者間で生じる争いについては、いずれの紛争当事者も、当該裁判判断を行った仲裁裁判所の決定を求めるため当該裁判所に付託できる…」とあります。つまり、仲裁手続きでは不履行のケースを想定外とはしておらず、紛争当事者が求めれば、仲裁裁判所が何らかの対処をすることができるのです。本ケースは常設仲裁裁判所が管轄しましたので、紛争当事者の一方が当裁判所に申し出た場合、執行を命じる令状を発行することができるはずです。そして、この令状の手渡し先の最有力候補は、国連安保理となるのではないでしょうか。

 現在中国は、フィリピンに対して積極的に懐柔策を弄していますが、もしかしますと、フィリピンによる中国の不履行の常設仲裁裁判所への付託を阻止するためかもしれません。仮に、フィリピンが中国に籠絡され、令状の発行が困難であるならば、他の諸国が(公海が侵害されている場合には全諸国が提訴可能では?)、再度、中国を相手に仲裁裁判を起こす方法もあります。また、この問題は、本質において中国による南シナ海の違法な軍事基地化なのですから、安保理、あるいは、総会が、中国の不履行を独自に平和と安全の維持に関わる問題として扱うことも一案です。国際法秩序の崩壊を防ぐべく、国際社会は、知恵を絞るべきではないかと思うのです。

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コメント (2)
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