万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

原子力規制委員会-再稼働のリスク許容判断は政治がすべきでは

2012年12月19日 15時57分18秒 | 日本経済
11月の貿易収支、過去最大の赤字…輸出低調で(読売新聞) - goo ニュース
 11月の日本国の貿易赤字は過去最高を記録し、年間で6兆円もの輸入超過となっているそうです。諸外国の景気低迷が輸出不振の要因ともされていますが、円高による競争力喪失と原発稼働停止による火力燃料の輸入増加も無視できない要因です。

 自民党政権の発足により、為替相場は、ようやく円安方向に動いたものの、原発再稼働については、幾つかの障害があるそうです。中でも、原子炉の安全性を監視する原子力規制委員会の判断が注目されるところであり、活断層をめぐっては、これまで、敦賀原発2号機や東通原発に関する見解が公表されています。拙速な判断については、選挙を目前とした政局絡みとする批判もあり、最終的な行くへは不透明ですが、原子力規制委員会の仕組みと権限については、再考の余地があると思うのです。その理由は、(1)科学的な分析を以ってしても研究者の見解が分かれる場合、原子力規制委員会の判断が絶対に正しいとは限らないこと、(2)委員の人選には政府が関わっており、必ずしも政府から独立していないこと、(3)地震発生の確率に対する許容のレベルは、人間がしなければならないこと、(4)廃炉の決定は、事業者、産業、国民生活に甚大な影響を及ぼすこと・・・などを挙げることができます。例えば、活断層認定の対象スパンは40万年に拡大されましたが、たとえ活断層が存在していたとしても、それが動く確率は、数万分の1かもしれません。原子力規制委員会に、活断層の存在や可能性を認定する権限はあるとしても、このリスクが、日本国の経済や国民生活に照らして許容できるか、できないかの判断は、政治がすべきではないかと思うのです。この場合、政府は、地震発生時において活断層が動く確率が低いこと、万が一動いた場合にも対応策があること、そして、廃炉の場合のマイナス影響が破滅的であることを説明し、国民に、再稼働への理解を求めることになります。

 政治的な思惑から離れ、純粋に科学的な見地から原子炉の安全性を判断できることが、原子力規制委員会の独立性強化の根拠ですが(実際には、この意義も薄れている…)、技術的な問題ではなく、リスク許容の範囲に関する判断については、独立的な機関が最終決定権を持つことが適切であるとは思えません。原発の再稼働については、原子炉の安全性に関わる科学的な判断とリスク許容の政治的な判断とを分け、原子力規制委員会と政府との間で、役割分担をすべきではないかと思うのです。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2012-12-19 23:45:03
こんばんは。原子力規制委員会については、幾つかの問題を感じています。
福島の事故対応が現場とあまりにかけ離れ、結果的に菅直人という素人の視察・介入を招き事故を拡大させ、責任逃れの為に風評被害が拡大する事を放置し、弁解に終始していたことです。
これは原子力の専門家といっても学者レベルの話であり現場からの報告を聞いて現場の状況を察知し的確な指示を出せないことが原因であったろうと思います。
今回の活断層の問題も規制委員会の調査といえど、土木工学については素人でしょう。
原子力規制委員会は専門的な知識を持つ学者も必要ですが、原発で長年、所長・副所長として働き現場を把握出来る人材、地震や自然災害で発生しかねない地盤の緩みや亀裂についてはゼネコンの現場で経験を積んだ人材、建屋や構造物については建築の専門家、テロや不審者に対する対策は自衛隊などで経験をつまれ専門知識を持つ人材、放射線防護学の専門家も必要です。
原発は国家の安全保障の問題と不可分ですので各分野で長い間働き研鑽を積んだ人々の経験から得た知恵は欠かせないものでしょう。
今回の事故後の記者会見でも自信無さげに責任を取らずに済むような無難な答弁を繰り返していれば国民の不安や不信感がつのりヒステリー状態に陥ります。それを外国勢力とマスコミが煽った事は明白です。
今回の衆院選のついでに卒原発を謳い、嘘つきと専門家から指摘されても自然エネルギーを言い続ける飯田哲也氏が副代表を務める"未来は真っ暗"の党のホームページのエネルギー政策を(怖いもの見たさです)覗いて見たのですが内容が酷すぎて・・・呆然としました。
曰く、原子力や化石燃料に頼らずクリーンな自然エネルギーの活用のために、発送電分離、電気料金の値上がり分は交付国債で補填する。(えっ、実用化が何十年かかるか分からない自然エネルギーの為に延々と交付国債を出し続けるつもりなのか)
嘉田氏は滋賀に建設予定だった新幹線の駅を潰し節約したと胸を張っていましたっけ(滋賀に予定されていた新幹線の新駅は経済効果は絶大だったのです。近くには工業地帯が存在しビジネスマンはもちろんですが、風光明媚な琵琶湖を擁する滋賀に観光客誘致にも効果は十分見込まれていました、京都で降りて在来線で引き返さなければならない不便な点が指摘されていました)
目先の支出だけで将来の発展と経済効果を理解できない主婦感覚の人物であることがよくわかります。
今や反原発芸人となった山本太郎氏は選挙後ひろゆき氏の質問に「東北の農作物は汚染されて危険」「100ベクレルはドラム缶に詰められた放射性廃棄物と同じレベル」と答え「じゃあTPPでも何でも外国から安全で安い農作物を輸入することには賛成ですか」と聞かれ「日本の農業は守らなくてはならない食料輸入には絶対反対」「じゃあ、どうすんの」「汚染のひどい地域を特定し農家に補償を出すべき」「夏の参院選に出馬したら?」「それでは間に合わない、いつ事故が起きるか分からない、今度事故が起きたら北半球は全滅する」
はっきり言って原発や放射性物質についての知識もろくにないまま怪しげな情報に踊らされ人生を誤った哀れな芸人と云う他は無いのですが、これも原子力安全委員会や政府の対応の酷さ、現場を知らない、責任は取りたくない、ただかっこ良く米国大統領かスーパーマンのようなヒーローになりたかっただけの大馬鹿者が原因ですね。
だからこそ原子力規制委員会に必要な人材は現場で実務を経験し研鑽を積んだあらゆる分野の人々が結集することが重要だと思います。
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ねむ太さま (kuranishi masako)
2012-12-20 08:00:00
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 現在の原子力規制委員会の仕事が、地質学者を中心とした”活断層認定”に特化されているような状況は、異常としか言いようがありません。おそらく、”活断層認定”によって原発を強制的にゼロにするための、民主党政権の策略であったのではないかと疑っております(全国どこにでも、活断層、あるいは、活断層らしきものは存在…)。自分の都合のよいメンバーばかりを集め、不都合な人々を排除するという方法は、あらゆる分野で見られた民主党の常套手段でした。この方法で、民主党政権は、”専門家の意見”や”民意”を捏造しつつ、自らは、姑息にも、責任逃れをしていたのです。
 まことに、反・卒原発派の人々は、論理的、かつ、現実的に物事を考えることができない人々のようです。恐怖心を煽ることで人々の心を支配しようとしているのですから、恐怖を手段とするテロリストと、本質的には変わりはありません。日本未来の党が、議席を大幅に減らしたのは、国民の多くが、この政党の怪しさを敏感に感じ取ったからなのではないかと思うのです。
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