万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

移民問題-宗教や民族は個人に還元できない

2015年01月18日 15時48分47秒 | 国際政治
ベルギーは闇の武器庫 過激派への供給遮断「不可能」(産経新聞) - goo ニュース
 フランスで発生したイスラム過激派によるテロ事件を切っ掛けとして、ヨーロッパ各国では、テロリストの活動が活発化してきているそうです。武器を隠し持っているため、極めて危険な状況となりますが、問題の根源は、移民政策にあります。

 ヨーロッパ各国では、旧植民地との繋がりや、EUが原則として人の自由移動を認めてきたこともあって、移民に対しては比較的寛容な政策を採用してきました。日本国でも、昨今、新自由主義者を中心に、少子高齢化による人口減少を理由として外国人労働者の積極的な受け入れが唱えられています。しかしながら、移民政策を支持する人々の多くは、移民を個人、あるいは、労働者の一人として捉えており、集団的な要素を無視しております。宗教も、個人の信仰の自由の範囲であれば、何らの社会的軋轢も起こさないでしょうし、民族も、個性の違いほどの意味しか持たないかもしれません。ところが、現実には、宗教も民族も集団性を帯びるものであり、純粋に個人に還元することが難しいのです。特にイスラム教は、民法や刑法の分野までカバーしますので、極めて社会性の強い宗教です。つまり、居住国において独自の”イスラム社会”、すなわち、”国家内国家”を形成してしまう傾向が強いのです。この点に鑑みますと、”政教一致”よりも、移民先の諸国にとっては”社教一致”の方が、より切実な問題であるかもしれません。集団性の特徴は民族も同じであり、一定以上の数の同一民族出身者が集まりますと、そこには、外国でありながら出身国との同一性を有する独自の空間が生まれます。共通性や類似性の高い人々が集まるのは、人間の行動としては自然なことでもありますが(もちろん、中には異文化に溶け込んでしまう人もおりますが…)、政治な対立や社会的な摩擦が起きますと、深刻な社会分裂をもたらします。

 以上に述べた諸問題に有効に対処するためにも、国も国際社会も、移民を純粋に個人の問題とはせず、その集団性に対してより関心を払うべきと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
 

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 米議会調査局は史実の調査を | トップ | 移民の帰国奨励策は人道的な... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ねむ太)
2015-01-18 21:15:36
こんばんは。フランスで起きた事件は民族の歴史や風土・地理的な部分を無視シては語れません。
アラブの民は砂漠の民族なのです。
砂漠のような自然環境の苛酷な土地では、集団を追い出されるという事は死を意味します。
民族が生き延びる為には、民族の固い結束が不可欠なのです。
そういう土地柄だからこそ厳格な一神教が生まれ、神を神聖なものとして風刺や批判の入る余地を認めないのです。
キリスト教は、欧州に根付くことで時代の変化を柔軟に受け入れながら寛容性を持つに至ったのでしょう。
インドは仏教もあればヒンドゥー教の神々も存在します。
宗教的な戒律は有りますが、仏教とヒンドゥー教が寛容性を持ちながら同居できる環境、亜熱帯気候で多雨で水が豊富ですので植物も動物も繁殖しやすく、集団を追い出されても死に至る事はありません。
我が国の場合、神社は、今でこそ八代が有りますが、仏教の伝来とともに伽藍が建てられた事に対して創建されたもので、元々はしめ縄などで神域を定めていたのです。
沖縄の御嶽が一番近いのではないかと思われます。
とは言え、我が国でも古の宗教的な思想は色濃く残っています。
顕著な例が、軍隊を忌避する・・これは血の穢れを忌避した古の宗教的な考え方です。
また、危機管理に弱い・・最悪の場合を想定する事ができない・・これも言霊信仰が現在も色濃く残っている事を示しています。
今朝のサンデーモーニングで、フランスのムハマンドの風刺と、我が国の首相に対する風刺を同一視して発言するという馬鹿な事をやって居ましたが、これこそが、知識人が世界を知らないという何よりの証明でしょう。
移民が引き起こす様々な問題・・少人数の時は、大人しくしていますが人数が増加し、民族的なマイノリティーを形成すれば圧力団体にもなるのです。
我が国で移民を画策する人間は足元が見えない、試験の為の教育という訓練を受けただけの人間です。
我が国では移民ではありませんが、在日の引き起こす犯罪や様々な問題が有ります。
在日特権と呼ばれる様々な権利(通名や税金の控除・生活保護・年金など)国民の正当な権利を侵害する問題も引き起こしながら、更に、選挙権を寄越せ、日本人と同じ権利を寄越せ、と要求はエスカレートするばかりではありませんか。
また、それに加担し善良な人間を装う偽善者の群れ。
彼らの要求を認めれば、最後は法律までも都合よく改正しろと言い出しかねないのです。
選挙権を認めるという事は、立法府の議員に自分達の都合のいい人間を選出したいという事は明らかです。
ここで、立ち止まって考えてみましょう。
国の維持には様々な職業が必要になります。
限界集落と呼ばれる山間部での農業・林業、土木建築業
都市部でも、毎日の快適で安全な生活を維持する為には下水管・水道管・ガス管の定期的な取替、道路の舗装も定期的に直さなければなりません。
橋や高速道路・建築物の補修も必要ですし耐震化も必要になります。
俗にいう3kと呼ばれる仕事ですね。
考えていただきたいのは、高校や大学を卒業してから、わざわざ、しんどい肉体労働に就きたいと考える人間がいるでしょうか。
誰でも、エアコンの効いたオフィスでの仕事に就きたいと思うはずです。
先進国で共通の問題は、ここに有ります。
現場での肉体労働を一段低く見て、移民にさせておけば良いと考えてしまうのです。
現場での肉体労働は、実際には高度な技術職なのです。
高学歴の為に現場での作業に従事する人間が減る・・出稼ぎで人手不足を補う・・・国民から技術が失われ、出稼ぎ労働者を移民として受け入れざるを得なくなる・・ドイツの例がこれに当てはまります。
誰もが教育を受ける権利は大切です。
但し、社会に出て働いて、やっぱり学びたいと思う人が高校や大学で学べるシステムの構築が大切ではないでしょうか。
最初から、大学合格をゴールにして大学合格の為に塾や予備校、模擬試験に多額の金銭が必要になる・・
社会に出て働きながら学ぶ、働いて学費をためてから学ぶ、どちらも権利として保証されていなくてはなりません。
此のような事を、考えつつ山間部にも人が住み林業や農業に従事する・・其のためには道路や公共の交通機関の整備、インターネット環境の整備など仕事は山のように有ります。
どんな僻地でも人が住み生活しているからこそ、国土は荒廃せずに済んでいるのです。
国民一人一人が国土の管理をしているのです。
職業に貴賎なし・・先進国は、この言葉を知ってほしいのです。
どんな職業であれ、一生懸命に働き努力した人が報われる社会こそが真の意味での国家の独立ではないでしょうか。
返信する
ねむ太さま (kuranishi masako)
2015-01-18 22:26:47
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 ヨーロッパ諸国は、近代以降の啓蒙思想の時代を経ておりますので、兎角に物事を個人に還元しがちです。その盲点が、現在、移民問題として表面化してるようにも思えます。特にフランスは、革命時に発せられた人権宣言にも見られますように、個人の権利や自由を普遍的に保障されるべきものとして尊重しておりますが、その反面、現実に存在している固有性を帯びた”集団”というものに対しては、脆弱性が見られます。今回の事件も、個人主義と集団主義、あるいは、普遍性と固有性との間の、文化的な軋轢としても理解できるかもしれません。北朝鮮による拉致事件などは、移民問題に起因するテロでもありますので、この問題は、フランスに限らず、全ての諸国に共通する問題です。この点を認識していれば、政府は、安易に移民推進などできないはずなのではないかと思うのです。
返信する

国際政治」カテゴリの最新記事