万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

高まる米軍の対北先制攻撃の可能性-北朝鮮による核実験再開

2018年04月01日 14時49分52秒 | 国際政治
河野氏「北朝鮮が核実験用意」 日朝会談に慎重
 報道に拠りますと、北朝鮮がこれまで自粛してきた核実験を再開する気配を見せているそうです。この情報は、先月末日に高知県で催された講演会での河野太郎外相の談によりますが、この動きが事実であれば、米軍による対北先制攻撃の可能性は格段に高まるのではないでしょうか。

 米朝首脳会談の開催時期は、5月までの何れかの時期とされ、それに先立つ4月27日には、南北首脳会談が既に予定されています。この日程からしますと、遅くとも5月末迄には北朝鮮の運命が決せられるのですが、今般の北朝鮮による核実験再開の準備が、今後に予定される首脳会談と無縁とは思えません。仮に、先の金正恩委員長の訪中が、米朝会談決裂を織り込んでの行動であったとしますと、核実験再開には、以下のような北朝鮮側の思惑が推測されます。

 第一に想定される北朝鮮の思惑とは、核兵器を対米脅迫手段として米朝首脳会談に臨むと言うものです。トランプ米政権は、検証可能、かつ、不可逆的な核放棄を北朝鮮に求めており、その手段として、アメリカ本土に核関連の全ての機材や原料等を運搬して破壊したリビア方式を検討しているそうです。現状のままでは、北朝鮮がアメリカの強硬姿勢を崩すのは困難ですので、核実験の再開、否、核攻撃能力を示すことで、対米交渉を有利に導こうとしている可能性があります。しばしば、外交交渉にあっても背後に軍事力の担保がなければ足元を見られる、とする説がありますが、北朝鮮は、アメリカと対等な立場で交渉の席に着くために、この説を実践しているかもしれません。あわよくば核保有を認めさせた上で米朝国交正常化を果たす、あるいは、核放棄に応じたとしても、アメリカから最大限の譲歩を引き出せれば、北朝鮮の狡猾な核保有戦略は半ば成功したことになります。

 第二に推測されるのでは、北朝鮮が、米朝会談の決裂を見越しており、その際に、自国のミサイルの射程距離に入る何れかの国に対する核攻撃の意思を表明したとする見方です。仮に、先の金正恩委員長による核攻撃準備完了宣言を信じるならば、グアム島のみならず、アメリカ本土に対するICBMやSLBMによる攻撃もあり得ますし、テポドンといった中距離ミサイルの射程内にある日本国も当然に攻撃対象となりましょう(事前に対北融和政策を表明している韓国は攻撃対象から外すのでは…)。北朝鮮の核開発には、核保有国による国際的な技術協力が疑われていますので、その攻撃能力は侮れません。いわば、“窮鼠猫を咬む”の行動となるのですが、米朝会談決裂と同時に、即、金委員長によって核のボタンが押される怖れがあります。

 何れにしましても、北朝鮮は、脅迫効果であれ、破壊効果であれ、核の威力を最大限に利用しようとすることでしょう。しかしながら、果たしてアメリカは、こうした北朝鮮側の“準備”を黙認するのでしょうか。仮に放置するとしますと、北朝鮮を核放棄に追い込むことは困難となりますし、最悪の場合には、アメリカ国民、あるいは、同盟国である日本国の国民が核攻撃を受け、多大なる人的・物的被害が生じる事態も予測されます(もちろん、日本国が見捨てられてしまう可能性もないわけではありませんが…)。

アメリカの開拓時代には、相手が先に銃に手をかけた場合、正当防衛としてその相手を撃っても構わない、とする習わしがあったそうですが、国連安保理決議にも反する北朝鮮による核実験の再開を前にしては、誰もがアメリカによる正当防衛権の発動を咎めはしないでしょうし(中ロも非難はできない…)、国際法に照らしても正当な軍事制裁と見なされることでしょう。目前の脅威の事前排除の意味において、アメリカは、最早、北朝鮮に対する先制攻撃に躊躇しないのではないかと思うのです。

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