報道によりますと、あたかも‘米価対策担当大臣’の如くに登場した小泉進次郎農水相は、米価高騰の原因について、参議院決算委員会にて「スポット価格」の上昇を原因とする見解を示したそうです。これままで、一般家庭における防災備蓄の増加説、インバウンドや大阪万博による不足説、猛暑による不作説、農協による巨額損失補填説、転売ヤー説、卸売事業者暴利説、商社参入説、政府の減反政策説、米輸出の拡大などなど、様々な要因が指摘されてきました。何れの要因も米価高騰に影響を与えたのでしょうが、ここに来て、いよいよ‘スポット価格’なる金融用語が語られるようになりました。その一方で、‘本丸’として疑われているのは、昨年8月に堂島商品取引所にて開設された米先物市場です。
米先物市場原因説につきましては、これまで、政治家もメディアも、何故か、この問題について触れようとしませんでした。否、農水省に至っては、むしろ自らのホームページにあって積極的に‘宣伝役’を務めるほどです(「堂島取引所のご案内」・・・)。今般の小泉農水相の発言を見ても、現物の相対取引である「スポット価格」のところで立ち止まっています。本来であれば、「スポット価格」上昇の原因、あるいは、同価格を上げたい人々の存在とその動機にまで踏み込めば、容易に「先物価格」の問題に行き着くはずです。意図的に「スポット価格」までに留めているとすれば、同農水相は、先物取引市場にまで国民の追求が及ぶのを防ごうとしているとも考えられます。
先物市場説については、農水省は、堂島での取引量は全体の1%未満であるから、「直接的に米価格の大幅な変動を引き起こす可能性は低い」とする見解を示しているそうです。また、先物取引には現物の受渡しが伴うので、自ずと実際の米価への影響が限られるとする反論もあります。しかしながら、新たに開設された堂島の「コメ指数先物」は、現物の受渡しを必要としない「差金決済」です。しかも、同先物市場、50倍のレバレッジが許されています。つまり、極めてギャンブル性が高く、僅かな値動きでも莫大な利益が転がり込むチャンスを‘投機家’に与えているのです。
これらの特徴は、堂島の米先物取引には、天候等に起因する農家のリスクをヘッジする機能は殆ど備えておらず、現物の受渡し義務が付されていないため、証券会社を窓口とする小口取引であっても、取引だけは無制限に行なうことができることを意味します。しかも、国境を越えてグローバルに・・・。堂島商品取引所の株式会社化に際しては、オランダに本部を置くオプティバー・ホールディングスも参加していますので、ふと、江戸時代に幕府との貿易を凡そ独占したオランダ東インド会社の幻影も浮かんでくるのです。
仮に、現物の受渡しを条件とするなら、「買いヘッジ」に賭けたとしても、実際に現物を受け取らなければならなくなり、また、逆に「売りヘッジ」を賭けた側も、引き渡すべき現物のお米を期日までに用意しなければならなくなります。つまり、単なるマネー・ゲームでは済まされなくなるのです。上述した反論も、この側面を根拠としているのでしょう。しかしながら、受渡しを要しないならば、同制約から逃れることができますので、外国人であれ、誰であれ、純粋にマネー・ゲームとして先物取引に参加することができるのです。しかも、50倍のレバレッジが働きますので、先物での取引量が1%未満であったとしても、その背後で動くお金は相当の額となりましょう(なお、この1%の取引も、受渡しを伴わないならば‘架空’なのでは・・・)。
レバレッジ効果で僅かな値動きでも大儲けできるのであれば、先物市場での参加者には、価格操作を試みる動機が働きます。しかも、今般、問題視されているように、お米の流通過程は極めて不透明であり、商社であれ、卸売業者であれ、あるいは個人であれ、自由に行動し得る環境が出現しています(これらの事業者にも外資が入っているかもしれない・・・)。このため、米価上昇を狙った高値買取、囲い込み、売り惜しみ、高値転売など、違法ではないものの国民を苦しめるありとあらゆる‘悪しき手段’が野放し状態なのです。否、半ばブラック・ボックス化している現状があるからこそ、価格操作が強く疑われているとも言えましょう。
人脈を介した農協と堂島商品取引所との繋がりもありますので、農協の関与についても調査が必要なのでしょうが、何れにしましても、今般の米価高騰は、グローバリズムと無縁とは思えません。父小泉純一郎氏の郵政民営化や菅義偉元首相を後ろ盾としていることもあって、グローバリストの‘パペット’の一人とも見なされてきた小泉農水相が、同勢力の利権に切り込む、あるいは、魑魅魍魎が蠢く流通の闇に取り組むのか、多くの国民が注視するところではないかと思うのです。