万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

バングラテロ事件ー経済協力より治安支援が先か

2016年07月03日 14時56分40秒 | 国際政治
「最大の衝撃」狙う?…集客施設、また標的に
 今月1日にバングラディッシュのダッカで発生したテロ事件は、外国人を含む多くの無辜の人々の命を奪いました。日本人もJICA関係の7名の方が犠牲となられており、現地の発展に貢献するために活動しておられただけに、まことに心が痛みます。

 ISやアルカイダ系集団による犯行との見方が有力ですが、今回の事件のような無差別殺戮は、ダッカでも初めてなそうです。昨今の中東での劣勢が南アジア方面での活動を活発化させているとの指摘もあり、今後とも、外国人を狙ったテロの多発が予測されます。そして、テロの標的が外国人であり、その外国人の多くが、経済支援活動のために同地を訪れているとなりますと、国際的な途上国支援の将来にも暗い影を投げかけているのです。また、イスラム過激派は、とりわけインフラ事業に対して攻撃的であり、多額の資金を投じてインフラ整備を行っても、テロによって破壊されれば、全ての努力が無に帰してしまう可能性も否定はできません。おそらく、イスラム過激派組織の主たる狙いも、外国との関係の切断にあるのでしょう。

 治安上のリスクが高まれば高まるほど、支援国は、途上国に対する経済協力に二の足を踏むことになります。こうした側面を考えますと、今後の途上国支援は、経済協力に先立って、治安状況を改善するための支援を要するかもしれません(安全が確保できないと、外国人の居留地区を設置したり、インフラを軍隊で防御せざるを得なくなり、時代は逆戻りする…)。安全の確保こそ、安定した経済発展の基礎であるとしますと、途上国の統治能力の向上は、今後、国際社会が真剣に取り組むべき課題なのではないかと思うのです。

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