万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

最も平和的なウクライナ問題の解決方法とは?-和平案

2022年10月03日 13時21分07秒 | 国際政治
先日、ロシアのプーチン大統領は、軍事介入によって占領したウクライナ東部並びに南部の4州の併合を、今月23日から27日にかけて実施された住民投票における賛成多数の結果を根拠として宣言しました。クリミアに続くロシアの強引な領土併合の強行に対して、当事国のウクライナのみならず、アメリカをはじめ国際社会から強い反発が起きています。国連安保理にあっても、アメリカとアルバニアが共同で非難決議案を提案したのですが、同決議案はロシアの拒否権の前に葬り去られています。

 ロシアが東南部の4州を自国領として認識するに至ったことで、今後、ウクライナ紛争が核戦争に発展する恐れもあります。何故ならば、プーチン大統領は、過去において核使用の判断基準は、自国領への攻撃であると述べたことがあるからです。主観的ではあれ、同地域がロシア領と見なされれば、ウクライナ軍による占領地奪還の軍事行動は、ロシア領への直接的な攻撃と見なされかねないのです。実際に、ウクライナ軍によるリマン奪回を前に、ロシア国内では核兵器の使用を求める声も聞かれ、チェチェン首相に至っては、「国境付近一帯への戒厳令発令や低出力の核兵器の使用」を提案したとも報じられています。ロシアの核使用については、アメリカは容認せずの姿勢を示していますので、ウクライナ情勢は、第三次世界大戦並びに核戦争にも発展しかねない極めて危険な状況を呈しているのです。それでは、人類破滅への道を未然に防ぐことはできるのでしょうか。

そもそもウクライナ紛争の主たる原因は、同地域における多民族混住の状態にあります。ユーラシア大陸中央部に位置する同地域では、長きにわたる歴史において様々な民族や国家が興亡を繰り返してきました。キエフ公国を共通の起源とするベラルーシを含めてロシア人とウクライナ人の三者を明瞭に区別するのは難しいとされていますが、東部・南部の地域はロシア、並びに、ウクライナ双方とも‘固有の領土’とは言いがたい側面があるのです。このことは、手続きや手段においては国際法違反が問われているものの、同紛争の原因については、民族紛争、即ち、政治問題であることを示しています。民族対立が主因であれば、まずもって、この問題を解決しないことには紛争は収まりません。そこで、以下の住民投票の再実施を軸とした和平案を考えてみることにしました。

1.ロシア占領地への武器を携行した中立的国際監視・調査団の派遣

・国際監視・調査団の構成は両国に対して中立的な国の部隊(軍隊)が望ましい
・住民が自由に意思表示できる状態を確保する。
・ロシアが占領地から自軍を撤退させて同地の管理を国際監視団に委ねる可能性はゼロに近いので、国際監視団の受け入れと安全の保障はロシア側に求める。

2.国際的な監視下での住民・現地調査の実施

・国際監視団・調査団によるロシア側占領地内におけるロシア系とウクライナ系それぞれの人口・世帯数、居住地域、宗教等の実態を調査する(なお、ウクライナにはユダヤ教徒も多い・・・)
・紛争に伴う双方の公的施設、並びに、国民の被害や損害状況を把握する。
・同時に、ウクライナ領内の非占領地並びに全世界のウクライナ難民の実態も調査する。

3.ロシア・ウクライナ間の歴史調査

・ソ連邦時代にウクライナ人並びにロシア人の強制移住が行なわれていた場合には、双方の個人の請求権、並びに、帰還の希望の有無を把握する。

4.ウクライナにおけるロシア側占領地の将来に対する選択肢の提示

 ①ウクライナ領残留
 ②ロシア領編入
 ③人口比率+居住地域を基準とした分割(双方の住民の同族居住地域への移住も許す・・・)
 ④独立(全州、各州、複数の州による合邦・・・)
なお、何れのケースでも、マイノリティーとなった住民の保護は相互に保障する

5.各州の帰属に関する住民投票の実施

・住民の過半数以上の賛意が得られるよう、投票は、最終的に一つの案に絞り込むことができる複数回方式が望ましい。
・投票資格は、紛争発生以前に同地域に居住していた住民に限定する(紛争後に多数派工作のために移住してきたロシア人には資格を認めない一方で、ウクライナ非占領地並びに海外の避難民には投票権を付与・・・)。

6.各州の投票結果に従った解決

・投票結果に従い、各州は、全部または一部が、ロシア領、ウクライナ領、独立国家となる。
・投票結果によって移住を余儀なくされた双方の住民に対しては、両国政府がフォローする(不動産売買の斡旋、補助金の支給、新たな居住地の提供・・・)。
・自国領となった地域にあって、ウクライナ政府の過去の公共投資によって建設されたインフラ等の残置財産に対しては、たとえそれが既に破壊されていたとしても、ロシア政府、あるいは、独立国家の新政府が、ウクライナに対して補償金を支払う。
・紛争に伴う双方の国民間の被害に関する請求権を精算する。
・ソ連邦時代に強制移住させられたウクライナ人に対して、ロシア政府、あるいは、独立政府は補償する。

7.ロシア・ウクライナ間の国境画定条約の締結と国際的な承認

 以上に、過去の戦後処理や講和条約等を参考としながら和平案のスケッチを描いてみました。ロシアの一方的、かつ、軍事的な圧力の元ではなく、住民の自由意思の表明が保障された環境下での住民投票であれば、その結果については、民族自決の原則に沿う形で正当性が生じることでしょう。すなわち、仮に当該和平案のもとで住民投票が行なわれれば、今般のロシア主導の投票結果と比べれば併合への賛成率は下がり、全州併合の結果は得られなくとも、同地域の人口構成を踏まえれば、ロシアへの併合支持多数が予測されるからです。この案が既に実施済みの住民投票の無効を意味する点においては、ロシアは同案に難色を示すでしょうが、既住の住民がロシア寄りの選択をすれば、ロシアとしても国際的な承認の元での併合が実現します。一方、ウクライナは、今般におけるウクライナ側の被害、並びに、ロシア政府及び独立国家の新政府に移譲することになる残置財産についてはロシアから補償を受けられますので、実質的な被害や損害を最低限に抑えることができます。そして、何にもまして、和平案が成立すれば、双方の国民の命が守られることになりましょう。若者達も、動員されることも、死を覚悟して戦地に赴く必要もなくなるのです。

ウクライナ紛争のエスカレーションは、当事国の両国のみならず、全人類の存亡の危機となりましょう。悲劇的な結末に至らぬよう、日本国を含む国際社会は、双方の国民、並びに、多くの人々が合意し得る和平案の作成、並びに、その実現に向けた努力を惜しんではならないと思うのです。

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