万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

領有権問題と国際ルールを区別していない中国

2015年11月23日 17時27分24秒 | 国際政治
日豪2プラス2、南シナ海の中国に「強い懸念」
 中国は、南シナ海の問題について、再三にわたり紛争の当事国間の問題として解決すべきと主張し、”航行の自由作戦”を実行したアメリカに対して、部外者は介入すべきでないと批判しています。この態度からしますと、どうやら中国は、根本的なところで国際法における区別を理解していないか、敢えて別次元の問題を行動させようとしているように思われます。

 南シナ海のスプーラトリ諸島の領有権をめぐっては、中国は、確かに東南アジア諸国との間で領有権を争っています。否、争っているというよりも、法的、並びに、歴史的根拠を欠いているにも拘わらず、既成事実化を重ねることで実質的に支配下に置いているのが現状です。複数の国家間で領域を争うケースでは、紛争の解決は、当事国間での外交をはじめ平和的手段を以って解決されるべきであり、この点においては、当事者の合意は重要です。その一方で、航行の自由の問題は、一つの領域をめぐる特定の諸国間の領有権確定の争いではなく、「公海に関する条約」や「国連海洋法」といった国際ルール上(一般国際法)の問題です。全ての諸国に適用される国際ルール上の問題となりますと、当事国のみならず、全ての諸国に、違反国に対してルールの順守を求める権利が生じます。南シナ海問題について、全世界から中国批判の声が湧きあがっているのは、それが、法の支配に基づく国際秩序そのものに対する危険な”挑戦”であるからに他なりません。

 中国は、あくまでも、南シナ海問題を専ら領有権問題として扱おうとしておりますが、国際社会は、中国が南シナ海に人工島を建設した上で領海を設定し、かつ、軍事基地化を図ろうとしている行為を問題視しています。つまり、これらの行為こそが、国際ルールを侵犯しているのです。中国は、航行の自由を阻害する行為が、国際社会から当然に介入されるべき違反行為であることを認識すべきと思うのです。

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2 コメント

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Unknown (ねむ太)
2015-11-23 20:17:19
こんばんは。中国の思想では国際法というのは世界の中心・・中華の皇帝が決めるもので中華世界から離れた蛮族がとやかく言うことではない・・現代に於いても古代の中華思想が維持されている世界・・それこそが中国です。
国名が示す通り、中華人民共和国・・中華思想を奉ずる人民の国という意味です。
中華民国は中華と称して居ますが・・蒋介石は国際的な文書の署名には支那という表記を用いておりました。
そもそも、中華とは思想であっても国名ではない・・
始皇帝によって打ち立てられた国「秦」が語源の支那こそが歴史に基づく正しい国名という事になります。
中華を名乗りながら歴史的に自国の国の領土・・矛盾に気がついていない、歴史を主張するなら支那と名乗らねば・・
南シナ海で中国が領海として主張できるのは、香港・澳門と海南島の周囲・・それも海洋条約で定められた範囲だけです。
ベトナムやフィリピン・ブルネイ・マレーシアの漁業権を侵害する事は許されませんし、国際航路の通る公海・・国際公共財としての海ですから中国が勝手に埋め立てたり領有権を主張する事は国際法上も、海洋条約上も許されません。
我が国で申しますと、津軽海峡・対馬海峡・関門海峡などは国際海峡として無害通航権が認められていますし
海洋に面した国の中には、領海を制限して国際公共財である事を優先させている国もあります。
其の上で・・南沙諸島は満潮時には岩礁は完全に水没しますので島として認められません。
沖ノ鳥島は満潮時でも一部が水没しない事もありコンクリートで固め島としても認められるのですが・・
困った事に元外務省情報分析官の佐藤優氏は「南沙諸島問題に日本は口出しすべきではない・・沖ノ鳥島をコンクリートで固めて島にしているのだから」と外務省の職員であったにもかかわらず国際法一つ知らない無知さ加減をさらけ出しているのか・・それとも中国の軍事力に怯えているのか・・
何方にせよ、元外務省の情報主任分析官という肩書がありますので、このような軽率な発言は厳に粛むべきでしょう。
この問題に対し、我が国はもっと厳重に抗議しなければなりません。
日中平和友好条約を一方的に踏みにじる行為なのですから、条約を締結している当事国として条約を順守するよう強く迫る責任があるのです。
野田聖子氏のように「南シナ海問題は関係ない」と言うのならば日中平和友好条約を破棄した上で言うべきなのです。
ところで・・条約とは一体何なのでしょう。
何の為にあるのでしょう。
慰安婦・南京・戦時賠償・南シナ海・・・
条約は国家同士が締結した約束事であり外交問題ではないでしょうか。
条約で決着がついているにもかかわらず、市民団体や第三者が条約の中の一部を取り出して謝罪や賠償を 要求する・・
条約は外交の話になりますので、どうするかは各国の政府に決定権がある。
日韓基本条約に不服があるなら韓国は国会の場で議論し議決し政府の決定という事で見直しを求めるなり破棄するなりするのが正規の手続きなのです。
日中平和友好条約も中国が不服があるならば全人代で決定し破棄するか見直しを求めるのが正規の手続きと言うものです。
支那事変については日華平和条約で解決済み。
慰安婦も南京も遺棄化学兵器問題も条約で包括して解決された問題です。
それを、慰安婦・遺棄化学兵器・南京と取り出して謝罪や賠償を求めたり国連の場で責任追及をするような言動をする連中が存在する。
歴史検証の問題と混同してはいけません。
歴史研究の過程で新たな資料が発見され、史料批判の結果、第一次史料と確認された場合は歴史の訂正は行われても、それを根拠に市民団体や民間人、第三者が裁判を起こしたり謝罪や賠償を求めるような行為は許されない・・
条約の取り扱いについては各国政府が判断するべき事です。
このような状況を放置して置く事こそが条約を軽んじ、引いては国際法を形骸化させる要因の一つではないかと思うのです。

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ねむ太さま (kuranishi masako)
2015-11-23 21:16:54
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 中国の国名は、正式には中華人民共和国であり、英語では、People's Republic of Chinaと表記されております。英語表記のChinaは、”支那”ですので、おそらく、海外の人々は、中国の国名に”世界の中心”という意味が含まれていることに気が付いていないのではないかと思います。ここに中国の国柄を見誤る原因が潜んでいるかもしれません。”中華”と”支那”とでは、全く意味が違うのですから。
 なお、国際法には、任意の国家間の合意としての条約法と国際社会の一般ルールとしての一般国際法の違いがあります(その他にも慣習国際法もある…)。南シナ海の問題は、一般国際法の問題であり、それこそが、本記事でも指摘いたしましたように、原則としては国際社会を構成する諸国の全てが順守すべきルールとなります。この違いは、契約と法との違いに近いのではないかと思います。
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