万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

行き詰まりのワクチン戦略

2021年07月14日 13時08分54秒 | 国際政治

コロナ・ワクチンをめぐっては、アメリカにあってファイザー社が既に3回目の追加接種に向けて承認申請を行ったと報じられています。その一方で、CDCは、ファウチ所長が今月12日にブースターの必要性を否定する見解を示すと共に、翌13日にはバトラー副所長は、3回目の接種にはさらに激しい副反応が生じる可能性を認めています。この二つの情報を考え合わせますと、ワクチン戦略は、既に行き詰まり、あるいは、行き止まりとなってしまったようにも思えます。

 

 ファイザー社が3回目の接種を必要とした理由は、凡そ半年前から始まったワクチン接種の効果が薄れてきているというものです。デルタ株の拡大もあって接種率が比較的高いアメリカやイスラエルでは、減少傾向にあった感染者数が上昇に転じています。未接種者の間で感染が広まっているとの説もありますが(この説が正しければ、集団免疫説は説得力を失う…)、イスラエル保健省のデータによれば、5月に実施された調査にあっておよそ94%とされた予防効果が、6月から7月にかけて64%にまで低下しているそうです。新型コロナウイルスの感染、並びに、ワクチンによって生成された抗体量が時間の経過とともに減少することは以前より知られおり、およそ6か月から8か月程度で効果が消えるのではないかとする予測もありました。変異株への感染であったにせよ、今般のデータは、ワクチン効果の短期消滅説を裏付ける形となったのです。そして、ファイザー社は、3回目の接種を主張したことで、自らが製造した遺伝子ワクチンの効果の限界を認めたことにもなりましょう(仮に、メモリーB細胞がリンパ節に温存されていたとしても、少なくとも変異株には反応しないのでは…)。

 

 その一方で、CDC側は、現時点にあってワクチン効果の持続性は認められるとした上で、ファイザー製のワクチンにあって2回目の接種時に激しい副反応が生じることを重く見ています。抗原への暴露を重ねる程に免疫反応が激化する現象についてはADE(抗体依存性増強)が疑われているのですが、3回目の接種ともなれば、接種者がさらに深刻な副反応に襲われるリスクが高まると予測しているのです。同見解は、CDCがADE、あるいは、過剰摂取のリスクを公式に認めたに等しいと言えましょう。

 

 両者の見解から分かることは、2回のワクチンを接種済みの人々は、その効果を維持するために追加接種を要するにも拘わらず、同追加接種は、自らの命に関わるほどの深刻な健康被害をもたらす可能性が高いという、接種者が置かれている二律背反の状況です。3度目の接種を拒めばワクチン効果を失い、これに応じれば、副反応によって自らの命や健康を危険に晒すこととなるからです。いわば、今日、ワクチン非接種者が置かれている立場をより先鋭化された形で厳しい選択を迫られることになりましょう。そして、この’打つべきか、打たざるべきか’という命を懸けた選択は、接種の回を重ねるごとに、副反応被害を受けるリスクの方が上昇してゆくことが予測されるのです。

 

 早かれ遅かれ、接種者にも非接種者と同様の二者択一が待っているならば、最初から打たないという選択であっても構わないのかもしれません(ワクチン推進派の人々は’愚か者’と見なしていますが…)。あるいは、既に接種してしまった人も、1回あるいは2回の接種で止めておくという選択もありましょう。中長期的な免疫に対するマイナス影響は未知としても、度重なる人工mRNAの体内への投入は、同時に体内における有害なスパイク蛋白質の大量生成を意味しますし、何よりもCDC自身が追加接種によるリスク上昇を認めています(治療薬や治療法による対応という方法もある…)。国民は、ワクチン接種の是非をその行く先を見極めた上で判断すべきですし、政府も、既にワクチン戦略が隘路に陥っている現状を理解し、抜本的な方向転換も検討すべきではないかと思うのです。

 

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