万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

‘ダブルシンキング’を国民に強いる安部元首相の国葬

2022年09月08日 13時45分34秒 | 国際政治
安部元首相は、日本国を護る愛国の士であったのか、それとも、愛国者のふりをした希有な売国奴であったのか。この問いは、国葬の日が近づくにつれ、多くの日本国民を日々憂鬱にしています。何と申しましても、安部元首相と日本国の韓国への従属化を公言して憚らない世界平和統一家庭連合(元統一教会)との密接な関係は、陰謀でも何でもなく、否定のしようもない事実であるからです。

この問題は、安部元首相のみならず、自民党の問題でもあります。中国との強い絆を有する創価学会を支持母体とする公明党の問題もあるのですから(反日的言動で知られる中国の王毅外相は、創価大学に留学していた経歴の持ち主・・・)。さらに、野党の中にもロシア、中国、韓国、北朝鮮といった諸国と繋がりがあり、かつ、新教宗教団体との関係が問われている政治家も散見され(民主党の鳩山元首相は、韓国にて土下座をしている・・・)、日本の政界全体の問題とも言えましょう。言い換えますと、これまで日本国民の多くが、左派政党の政治家に対しては凡そ確信し、保守政党の政治家に対しては漠然と抱いていた疑いが、今日、事実として証明されてしまったようなものなのです。与野党問わず、日本国並び日本国民のために尽くそうとしている政治家は、皆無に等しいらしいといっても過言ではありません。

事実が事実であるだけに、国葬を前にして国民の政治家を見る目は厳しさを増す一方です。本日、9月8日、自民党は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係について調査結果を公表するそうですが、内部調査の報告を100%信じる国民はそう多くはないことでしょう。問題行為に対する調査や捜査というものは、警察や検察がそうあるように、独立性が付与された中立的な外部機関によるものでなければ、信頼を置くことはできないからです。国民の批判に対する対応を、自己申告となる党内の内部調査に留めた時点において、既に隠蔽、あるいは、表面を取り繕うとする意図が窺えるのです。

こうした対応からしますと、自民党は、決して安部元首相が世界平和統一家庭連合と結託した偽旗作戦の中心人物であったとは認めないことでしょう。あくまでも保守の旗手としてのイメージを以て国葬に臨むものと予測されます。病身を押して8年8ヶ月にもわたって日本国のために尽力し、アベノミクスを以て日本経済を抜本的に立て直し、かつ、国際的にも‘自由で開かれたインド・太平洋構想’を打ち立てた偉大な政治家であったと・・・。そして、愛国心に満ちた政治家であったにも拘わらず、無情にも凶弾に倒れた悲劇の人というイメージが強調されるものと予測されるのです。若くして暗殺されたケネディ米大統領の国葬も同大統領の歴史的評価を高めるためのイメージ戦略の一環であったとする指摘もありますが、弔意の強制は見送られたものの、安部元首相の国葬も、国民の感情に訴えつつ、愛国者のイメージを押しつける演出が試みられるのかもしれません。

 イメージ戦略は、政治家にとりましては死後の評価にもかかわりますので大変重要なのでしょうが、国民の側からしますと、安部元首相については二つの全く正反対のイメージが重なることとなります。‘愛国者’と‘売国奴’という・・・。そして、この二重性は、ジョージ・オーウェルが『1984年』において描いたダブルシンキング(二重思考)を彷彿させます(イギリスを舞台とした小説には、『ジーギル博士とハイド氏』の二重人格や『大路と乞食』の取り替え物語を含め、二重性をテーマとするものが多い・・・)。小説の舞台となるオセアニア国の独裁政党が掲げる三つのスローガンは、“戦争は平和なり”“自由は隷従なり”“無知は力なり”なのですが、今日の日本国では、‘愛国者は売国奴なり’となりましょう。

二重思考とは、小説のみならず、現実の世界にあっても独裁国家の常套手段でもあります。例えば、共産党員が権力を独占する一党独裁体制を敷く中国の正式の国名は中華人民共和国ですし、北朝鮮の国名に至っては、‘民主主義’さえ加えられています(正式名称は朝鮮民主主義人民共和国・・・)。国家が強いる二重思考が国民に精神的な苦痛を与えるのは言うまでもありません。自らの心に正直であることが許されないどころか、事実の逆の‘認識’を押しつけられるのですから。安部元首相の国葬問題は、世界平和統一家庭連合が反日思想を教義として掲げてきただけに、否が応でも保守が抱える矛盾を暴き出し、この隠されてきた矛盾が、国民に二重思考のリスク、並びに拭いがたい政治家不信として重くのしかかっているように思えるのです。
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