万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国は忖度社会-オミクロン株命名問題

2021年11月30日 18時21分45秒 | 国際政治

 今般、最も警戒すべき変異株として登場してきたオミクロン株は、その免疫回避性に関するリスクのみならず、全く別の問題をも浮かび上がらせることとなりました。その別の問題とは、WHOが中国の国家主席である習近平国家主席に配慮して、ギリシャ文字のXI(クサイ)を飛ばしたというものです。「Xi」と共に「Nu」も飛ばされており、計二文字が省かれたこととなりますが、この措置、中国と言う国の体質を余すところなく表しているように思えます。

 

 WHOの説明によれば、「Nu」は、英語のNewの音と同じとなるため、混同をさけたからなそうですが、「Xi」の方は、一般的な人名であることから使用を避けたとしています。しかしながら、「Xi」のみならず、世界中を探せば、「パイ」や「ロー」、あるいは、「ファイ」なども人名として存在していそうです。「Xi」がダメならば、これらの文字もダメなはずなのですが、おそらく、WHOは、「Xi」以外の文字には配慮するつもりはないのでしょう(オミクロン株の命名に際して、尾身氏には配慮がなかったとする指摘も…)。

 

 かねてより、WHOは、テドロス事務局長が中国を後ろ盾として選出されているため、中国の出先機関とも揶揄されてきましたが、国際機関という外部組織でさえ習主席に忖度して変異株命名のルールを変えるぐらいですから、中国国内の状況は推して量るべしと言えましょう。官民を問わず、中国共産党を筆頭とするあらゆる組織が、独裁者として君臨する習主席のご機嫌を常に伺い、僅かでも習主席を気分を損ねるような表現や行動は自粛しようとしているはずです。かの愛らしい『くまのプーさん』でさえ、習主席に似ているという理由で消されてしまうのですから。中国にあって、習主席は‘神聖にして犯すべからず’の存在であり、今やこの絶対権威への崇敬と忠誠は、国際社会においても他の諸国や組織にまで強要されようとしているのです。

 

 市場規模のみならず、技術力においてもトップクラスの実力を備えるようになった中国に対しては、そのさらなる発展を信じる論調も少なくありません。しかしながら、中国が、究極の忖度社会である点を考慮しますと、中国が全世界の諸国が理想とするモデルとはなり得ないように思えます。中国の未来には、国家主席という絶対権威の前に国民が跪き、自発的な思考停止を以って自らの生命を維持している姿しか思い浮かばないのです。同国では、自由な発想は命とりなのであり、たとえ伸びやかな芽を出したとしても、常に高度なITを用いた監視システムによって摘み取られてしまうことでしょう。

 

 なお、「Xi」という文字は、日本国のマスメディアでは「クサイ」と発音されると説明されていますが、「クサイ」の他にも「グザイ」並びに「クシー」とも発音され、音価は[ks]なそうです。そして、「クシー」とする発音は、岸田首相の「キシ」とも通じるようにも思えます。岸田政権は、今日、林外相の人事からして親中政権とする批判を浴びていますが、「Xi」を介して習主席との関連性を見出すとしますと、これは、深読みなのでしょうか。何れにしましても、「Xi」をめぐる一件には、独裁者への忖度が通用してしまうという国際社会の闇の一端を垣間見るような思いがするのです。

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