万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

行政機関の独立性は絶対か?-日銀と原子力規制委員会

2012年12月21日 11時15分27秒 | 日本政治
原発9基再稼働でも貿易赤字 来年度6.3兆円 エネ研試算(フジサンケイビジネスアイ) - goo ニュース
 民主党政権下で長期化した円高・デフレと電力危機。どちらも、日本の産業と国民生活を直撃する大問題ですが、両者には、共通する制度上の問題点があります。それは、政策決定を司る行政機関に対して、政府からの独立性が保障されていることです。

 これらの独立性の保障には、れっきとした根拠があります。中央銀行の独立性は、政府の無節操な財政政策によるインフレを防止するための遮断措置ですし、原子力規制委員会も、原子炉の安全性を確保するためには、専門家による正確なデータに基づく科学的な判断のほうが、その道の素人に過ぎない政治家の判断より信頼性が高いに決まっています。この点は、誰もが納得するところなのですが、その一方で、独立性の保障は、これらの行政機関が、絶対主義の如く、外部から何らの拘束やチェックを受けることなく、何事も専断できることを意味します(専門家でも意見が分かれる事項でも、決定権を持てる…)。これまでの記事でも指摘したように、これらの行政機関は、現実には、政府から完全に独立しているわけでも、また、産業や国民の利益を考えて仕事をしているわけでもありません。また、将来に起き得る出来事に対しては、100%正しい判断を行うことも不可能です。しかも、独立性は、他者からの介入を拒絶する絶好の口実になるのですから、本来の目的を離れ、時にして、悪用されることもあるのです(再生エネ法の調達価格算定等委員会の高値設定も同じ…)。

 独立性の高い行政機関によって発生するリスクをどうのように押さえるのか。これは、現在、日本国のみならず、同様の事態に直面している諸国につきつけられている問題でもあります。良かれとして設けられた制度でも、看過できないマイナス作用が発生したり、悪用が見られる場合には、これらを防止しする仕組みが必要となります。制度とは、欠点を発見次第、常に改良を加えませんと、取り返しのつかない損害が発生する元凶ともなりかねないと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村

コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 原発再稼働と悪魔の証明 | トップ | 竹島の日政府式典見送りの懸念 »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
監査機関の設立が重要では? (通りすがりのおじ様)
2012-12-21 16:03:04
独立性の高い機関であればあるほど、厳しい監査機能が無ければ駄目なんじゃないでしょうか?

また、メンバーの人物も徹底的に洗って任命する必要があると思いますね。

思想的な部分や、諸外国人との関係など(特に中韓との関係)

今の原子力規制委員会のメンバーは、どう考えても原発再稼動を止めさせようとしか見えないのは自分だけでしょうか?

前政権は媚中媚韓だったので、その時代に任命された人物はどうも信用ができない。

独立性が高ければ高いほど、より強力な監視、監査体制を持たなければ、枕営業や賄賂で転がされて国民に不利益をもたらせるような不届き者が現れても不思議ではないと思うのですが・・・・

まぁ、情報のリーク先も偏った朝○新聞とかですからね。
返信する
通りすがりのおじ様 (kuranishi masako)
2012-12-21 17:56:00
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 民主党政権時代の人選には、明らかなる偏りがみられました。中立公平どころか、同一人物が、何故か、複数の役職を兼任していることもあったのですから、偏向を疑われても仕方がないと思うのです。十分な情報を公開せず、公開の議論もなく、かつ、秘密裏に決定を行うのでは、独立的な機関は、むしろ、危険な存在となっていまいます。人権擁護のための人権委員会も、同様の独立性の高い組織であることを考えましても、独立性のリスクに関する議論があってもよいと思うのです。
返信する
Unknown (ねむ太)
2012-12-21 20:17:29
こんばんは。独立性をもたせるるなら何らかの形で責任を取らせる仕組みもセットでなければなりません。
自民党の経済政策をアベノミクスと言いながら日銀法改正には独立性を損なうなどと生半可な知識だけで批判しているのですが欧米の中央銀行の独立性の意味を自分勝手に解釈しているだけに過ぎません。
朝日新聞に高橋源一郎氏が次の様な記事を書いているそうですが、自民党の憲法改正は基本的人権や言論の自由を取り上げるものだ。
この改正草案が何を謳っているかといえば、今まで野放しにされていたマスコミを始め公的な活動をするものに対して言動には公の立場から責任を持たせる。というものです。
公的言動に責任も持たず幼稚な感情論だけで暴言・虚言・捏造で国民を誘導し国家の転覆を図るような自由がないことは常識だと思うのですが、その事を理解できないような幼稚な人物が新聞に寄稿し掲載される事こそ重大な問題です。
原子力規制委員会も第三者機関で運用する・しないに拘らず法律に責任を明確にし責任を取らせる条文を明記し罰則規定を設け、執行する事で担保できると思います。
もっともも罰則規定が甘すぎたり容易に責任逃れが出来るようなザル法では意味がありませんが。
確か90年代だったと思いますが公務員の責任を明確にし厳格な処分を課すべきだとの議論がなされた事がありますが「士気が落ちる」「能力のある人材が集まらない」
などと訳の分からない反論で潰されたことを記憶しています。
結局の所、公務員として身分保障や特権は手放したくない、責任は取りたくない、甘えた幼稚な人間が大勢を占めるとこの様な結論になってしまうのでしょう。
法による責任の所在の明確化と罰則は見識や志を持たない人間の排除にもつながります。
国民には自由は責任と一体であることを自覚させるためにも必要だと思います。
返信する
ねむ太さま (kuranishi masako)
2012-12-21 21:18:28
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 独立性の問題は、マスコミ全般にも言えることなのではないかと思います。特にNHKは、”政治からの介入は、報道の中立性を損ねる”、とする理由から、高い独立性が認められていますが、現実には、独立性を盾にして、特定の左翼イデオロギーや中国・韓国・北朝鮮に偏った偏向番組ばかりを制作しています。しかも、報道の自由の名の下で、捏造報道や世論誘導を繰り返す一方で、国民の声に対しては、シャット・アウトなのですから、NHKの独立性の悪用には、目に余るものがあります。言論や報道の自由は認められるべきですが、虚偽を報じる自由など、あるはずもありません。こうした自由が認められるならば、犯罪行為も”自由”のうちに入り、許容されることになってしまいます。何れにしましても、独立性の名の下で、公的な機関による無責任な行為が蔓延り、国民に害を与えることがあってはならないと思うのです。
返信する

日本政治」カテゴリの最新記事