万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ロシア正義論が影響力を有する理由とは?

2022年06月20日 16時44分49秒 | 国際政治
 ウクライナ危機の発生当初、自由主義国の政府も大手メディアも、’ロシアが悪い’の一色でした。正義は、ロシアから侵略を受けたウクライナにある、と。ウクライナと共にロシアと戦おうとする勇ましい声も聞かれたのですが、その一方で、ネットなどにアップされたブログ記事などを読んでみますと、必ずしもウクライナ支持一色に染まっているわけではないようです。むしろ、積極的にロシアに正義があると訴えている記事やコメントも少なくないのです。それでは、何故、ロシア正義論が一定の支持を得ているのでしょうか。

 もちろん、ウクライナ危機の背後では両陣営による凄まじいばかりの情報戦が戦われていますので、ロシア正義論は、ロシアの情報部隊による日本国内の世論操作である可能性があります。しかしながら、人とは、基本的には自らが信じ得るものを信じる存在ですので、何らの根拠もない、根も葉もない情報については怪しむものです。たとえロシア側の情報操作ではあっても、流布されている情報の内容に、日本国民の多くが自ずと信じてしまうような何らかの要素が含まれていなければ、一顧だにされないことでしょう。

 それでは、ウクライナ正義論の立場にある政府やメディアの見解とは逆に、民間にあってロシア正義論が一定の信憑性を得ているのは、どのような背景があるからなのでしょうか。実のところ、ロシア正義論の大多数は、近年、とみに関心を集めているディープ・ステート論と結びついています。ディープ・ステートという用語は、トランプ前大統領が用いたことで知名度が上がり、一般的には胡散臭いとされてきた陰謀論の世界から、現実の政治の世界に飛び出してきた言葉です。

日本国内では、十分に市民権を得ているとは言えない状況にありますが、歴史を探究していますと、ディープ・ステートという用語は、ディアスポラ以来のユダヤ系金融・商業ネットワーク、改宗ユダヤ人、イエズス会、東インド会社、ユダヤ金融財閥、フリーメーソン、イルミナティ、共産党、ビルダーバーグ会議、ダボス会議といった実在の組織の総称という観があります。むしろ、’ディープ・ステート’という呼称が、これらの実在性の煙幕なっている観さえあるのです。本ブログでは、出来得る限り陰謀論的なニュアンスを薄めるために超国家権力体、あるいは、超国家勢力といった表現を用いているのですが(それでも、どこか怪しげな響きとなってしまう…)、何れの国家にも属さず、地球規模で自らの利益の最大化を追求している団体(秘密結社?)、あるいは、それらが結合した勢力は、人類の歴史にあって実在しているのです。

そして、このディープ・ステートと呼ばれている超国家権力体にあって最大の問題は、’参政権がない’にもかかわらず、全世界の諸国をコントロールしようとするところにありましょう。超国家的な組織とは、何れの国にも属していませんので、政治に参加する権利を持ち得ません。それにも拘わらず、全世界の諸国に対して自らの利益や目的の実現に資するような政策を行わせようとすれば、マネー・パワーや秘密裏のネットワークを介して各国の政府や政治家を動かすしかなくなります。言い換えますと、超国家権力体の権力とは、国家や国民の立場からしますと不当なる簒奪、民主主義の形骸化、国家乗っ取り、あるいは、’静かなる侵略’であり、それは、秘密裏での賄賂やハニートラップ、さらには脅迫といった政治腐敗や違法行為を前提としなければ成り立たないのです。言い換えますと、超国家権力体に纏わる陰謀論とは、超国家性に由来する極めて本質的なものなのです。

特に、80年代以降のグローバリズムに伴う各国の開放政策は、まさに超国家権力体の要望に沿うものでした。しかも、リベラリズムとの一体化は各国に社会変革をも迫るものとなり、保守政党の様変わりは‘偽旗作戦’の域に達しています。加えて、コロナ禍にあってのWHOを利用した集権化への動きやコロナワクチン圧力は、人口削減説やインフレ人為論等と相まって人々の超国家権力体に対する警戒心を強めたと言えましょう。

ウクライナ危機とは、まさにディープ・ステートに対する人々の疑いが現実のものとして認識されつつあった矢先に起きた出来事です。ウクライナは、かつてのハザール国の末裔が多く居住する国であり、全世界のユダヤネットワークとも繋がってもいます。ロシアは、ウクライナとディープ・ステートとを同一視し、世界のディストピア化を目論む同組織からの開放を以って自らの正義を主張することとなったのです。そして、ディープ・ステートの存在を信じる人々がロシアの言い分に耳を傾けるに至ったのは、理解に難くはありません。

三つ目の戦争は、二次元戦争と三次元戦争との組み合わせであるとは、先日申しました。今日のウクライナ危機は、ウクライナという一国家が、本来、グローバルな存在であるはずの超国家権力と一体化しているため、従来の世界大戦とは異なり、世界大戦に至る前に、地域紛争として三次元戦争が表面化してしまったのかもしれません。本推論からすれば、当初の計画は、国際的なウクライナ支援を導火線として第三次世界大戦までつなげる予定であったのでしょう。しかしながら、各国における戦争回避の世論、並びに、ウクライナ正義論に対する人々の懐疑心が、同計画の実現を阻んでいるのかもしれません。プーチン大統領も、第三次世界大戦を引き起こすための駒に過ぎないのかもしれませんが、ロシア正義論が、むしろ超国家権力体の姿を明るみにし、それ故に、人々が情報操作に安易に流されなくなったのは、超国家権力体にとりまして計画を狂わす誤算であったのではないかと思うのです。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« NPT再検討会議が人類の未来を... | トップ | 政策が’詐欺’となりかねない... »
最新の画像もっと見る

国際政治」カテゴリの最新記事