万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

小和田氏ICJ退任のプラス効果-司法解決への道

2018年02月14日 15時17分41秒 | 日本政治
ICJの小和田裁判官、6月に退任=皇太子妃の父、来年の即位考慮
 報道に拠りますと、今月6日、東宮の岳父に当たる小和田恆氏が、ICJ(国際司法裁判所)の判事を辞任したそうです。15年にもわたり同職を務めたわけですが、同氏の辞任には、日本国にとりましてプラスの効果もあるように思えます。

 皇室の姻族が司法の分野であれ公職を務めたことは(司法も統治機能の一つである…)、天皇家と政治との距離の観点から問題が皆無なわけではありませんでした。そもそも、同職は、日本国政府の承認の下で一種の“名誉職”として小和田氏のために準備されたとも指摘されており、天皇家の私的利用に繋がりかねない危険性を孕んでいたからです。つまり、皇族と姻族となった民間人が政府から特別の便宜を受ける前例を開いたとも言えるのです(こうした問題は正田家にはなかった…)。

 しかも、ICJの判事職は、如何なる国の国益からも離れ、中立・公平な立場を保つ義務が課されていますので、日本の国と国民の安寧を天神地祇に祈ることを専らの使命とする皇室にはそぐわない側面があります。同氏は、国家守護の文脈において理解される天皇家に連なりながら、その職務上、日本国の国益を守ってはならない、とする矛盾した立場に置かれてきたのです。

 以上の諸点からしますと、小和田氏のICJ辞任はこうした問題を解消する機会ともなり得るのですが、もう一つ、プラスの効果があるとしますと、それは、竹島問題等、司法解決が望ましい日韓間の争いに対する作用です。何故ならば、司法の独立に関する観念が希薄な韓国では、同氏がICJの判事職にあることを以って、司法解決を回避する口実の一つとする論調が強かったからです。政治と司法が癒着し、政治裁判が日常茶飯事であるが故に、韓国は、ICJにおける同氏の存在を判決を歪める、即ち、日本国に有利な判決が下される要因と見なしたのでしょう(一方、日本国側でも、同氏が“日本国ハンディキャップ論”の主唱者とされていたため、日本に不利な判決が懸念されていた…)。

 竹島問題については、IOCへの単独提訴の選択肢を温存させながらも、日本国政府は韓国を攻めあぐねており、目下、膠着状態が続いています。また、これ以外の問題でも、司法解決が望ましいケースが多々あります。小和田氏のICJ辞任により、韓国側の拒絶理由が一つ減ったわけですから、日韓間の紛争が司法解決される日が僅かなりとも近づいたことになるのではないでしょうか。

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