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万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

グローバル化がもたらす資質を欠く政治家達

2024年11月19日 11時39分32秒 | 国際政治
 古今東西を問わず、異民族を征服した際に、征服者側が自ら乗り込んで直接に被征服民を支配するのではなく、旧来の為政者に特別の地位を与えたり、被征服民の中から特定の人を選んで代理人として統治させるという、間接支配の方法がありました。被征服民と外観、言語、慣習等を同じくする現地に定住している人物の方が、抵抗運動や反乱等が起きるリスクが低下しますし、伝統的な地位や名誉のある人物であれば、その権威をも利用することができます。こうした異民族支配の手法は、近代以降の民主主義の広がりと共に既に過去のものとなったように思い込みがちですが、近年の各国の政治状況を観察しておりますと、その‘絶滅’を確信できないように思えます。‘ない、ということになっている’に過ぎないのかも知れないのです。

 間接支配の手法は、しばしば‘傀儡政権’や‘傀儡政府’という言葉で表現されるように、被支配地の為政者を自らの‘操り人形’とすることを意味します。言い換えますと、為政者の地位はあくまでも形だけであり、実際には、背後にあってそれを巧妙に操る支配者が存在しています。‘操る糸’が見えず、人形があたかも生きているかの如くに動かせる人形師こそ名人であり、ステルスな遠隔操縦こそ、理想的な間接支配とも言えましょう。

 為政者の傀儡化による間接支配とは古典的な支配方法なのですが、今日、この手法が警戒されている背景には、軍事大国による中小国に対する間接支配のみならず、グローバルな金融・経済勢力の存在があります。グローバリズムが急速に進展した1990年以降、同勢力のフロントである世界経済フォーラムは、積極的にグローバル・ガバナンスにも乗り出しており、毎年、スイスで開催される年次総会、すなわち、ダボス会議には、各国政府の首脳級の政治家も参加するようになりました。グローバル・ガバナンスと言えば聞こえは良いのですが、その実態はいわば‘世界支配’であり、近年には、「グローバル・リデザイン構想」の下でグレート・リセットプロジェクトも開始されています。陰謀論として一笑に付されてきた‘世界政府’の姿が、明確な輪郭をもって顕れてきているのが、今日の国際社会の現状なのです。

 世界経済フォーラムの目的が世界支配にあるならば、当然に、各国に対して主権、あるいは、政策権限を自らに移譲させる必要があります。そのためには、各国の政治家を自らの勢力に取り込む、すなわち、傀儡化する必要があることは言うまでもありません。世界権力が、全世界の諸国の政府の傀儡化を試みていると想定しますと、何故、政治家の質が著しく低下しているのか、その理由も自ずと見えてくることにもなります。世界権力にとりましての‘政治家’の適性とは、‘操り人形’に徹することができる素質となるからです。

 世界権力の評価基準からしますと、マックス・ヴェーバーが『職業としての政治』において挙げた三つの政治家の資質、情熱、責任感、判断力を備えた人物は、真っ先に候補者リストから排除されることとなりましょう。無気力であって、国家や国民に対する責任感などさらさら持ち合わせておらず、判断力のない人物こそ、適任者となるからです。‘操り人形’には自らの意思はなく、‘人形師’の命令通りに動くだけでよいのです。そして、元アイドルといった芸能人やスポーツ選手が抜擢され、政治家にスキャンダルが絶えない現状からしますと、しばしば世界権力による愚民化政策の手段として指摘されている3S政策の実在性も、俄然、信憑性を帯びてしまうのです。

 政治家となる以前の職業については、俳優や女優であった海外の著名な政治家が引き合いに出され、必ずしも否定すべきではないとする意見もあります。国家首脳のレベルでも、アメリカのドナルド・レーガン大統領をはじめ、アルゼンチンのエバ・ペロン大統領、そしてウクライナのゼレンスキー現職大統領など、事例がないわけではありません。しかしながら、これらの擁護論者は、各国の政治家が、高い演技力、あるいは、‘操り人形’に適した資質故に世界権力から選ばれた可能性について考えたことがあるのでしょうか(かのアドルフ・ヒトラーも、本業ではないものの、演説等に際しての演技指導は受けたとされる・・・)。

 民主主義国家では、政治家は国民のレベルを映す鏡ともされますが、グローバル化の波が押し寄せている今日、政治家についても、民主主義を形骸化させるリスク要因として、世界経済フォーラムが進めるグローバル・ガバナンスの視点からの分析を要するのではないかと思うのです。


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