万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

小池知事の学歴詐称疑惑-情報化時代の虚実

2024年06月21日 09時16分13秒 | 日本政治
 今般の東京都知事選挙にあって、再選を目指して立候補を表明した小池百合子都知事。しかしながら、過去の都政への批判のみならず、学歴詐称事件を抱え、同知事は苦戦を強いられています。報道によりますと、これまで同知事が主張してきたカイロ大学首席卒業は虚偽であり、学歴を偽っているというのです。この疑惑、むしろ、‘何故、簡単に証明することができないのか’という問題の方が、余程、謎です。

 小池都知事の学歴詐称については、カイロ大学在学中にルームメートであった北原百代氏の証言が、主たる根拠とされています。文春オンラインに掲載されている記事を読みますと、当時の様子が北原氏の口から詳細に語られており、ルームメートの女性が作り話をしているとも思えません。少なくとも、今日、日本国内にあって虚偽説の最大の根拠となるのは、この北原証言です。もっとも、あくまでも一個人の記憶に頼った証言に過ぎませんので、この内容が偽証ではないことを証明するためには、厳正な調査による事実の裏付けを要しましょう。それでは、どのような調査を行なえば、事の真偽が分かるのでしょうか。

 学歴詐称とは、自己に関する虚偽の情報によって他者を騙す行為ですので、刑法上の罪となります。この点、同知事の側近であった小島敏郎氏が既に公職選挙法違反の罪で東京地裁に対して告発状を提出しています。同告発が受理され、検察が捜査を開始するとすれば、真偽の判別は司直の手に任されることとなりましょう。

 小池知事が証拠として提示したカイロ大学の卒業証明書も、先端的な科学的手法を用いた鑑定に付されるものと推測されます。しかしながら、さらなる証拠を必要となる場合、日本国の司法捜査機関がエジプト領域内で活動することは基本的にはできませんので、エジプト側に協力を求めることになりましょう。仮に、エジプト政府側から日本国側の調査員の受け入れを許可される、あるいは、国際強力として日本国側が作成した質問事項をエジプトの捜査機関に代行してもらうことができれば、真偽の確認はそれ程に難しいことではありません(もっとも、2020年にカイロ大学の学長が卒業を認める声明を出しているため、協力を拒否する可能性もある・・・)。

 例えば、カイロ大学を卒業したとなりますと、通常は、卒業論文を提出しているはずです。そこで、卒論を切り口とすれば、(1)卒業論文の提出の有無、(2)所属した研究室並びに指導教授、(3)卒論のテーマなどが調査項目となりましょう。首席卒業説についても、仮にカイロ大学が保存しているとすれば、同大学に残された成績表をもって首席の事実確認は出来るはずです。また、首席卒業ではないにせよ、エジプト人であってもカイロ大学での進級、卒業は大変難しいとされますので、ましてや外国人である日本人学生であれば、その存在だけで目立ったことでしょう。となりますと、当時、カイロ大学文学部社会学部の学生であった同窓の人々の証言を求めれば、当時の大学での様子や交友関係が明らかとなりますし、同時に北原証言の真偽をも確かめることができます。ネット上には、小池知事が、カイロ大学時代に北原氏並びに他の二人の日本人女性と一緒に映っている写真が公開されていますが、エジプト人学生等と一緒に撮られた写真はありません。カイロ大学にあって小池知事が、現地学生並びに他の諸国からの留学してきた学生達と積極的に交流し、和気藹々とした雰囲気の中で学生生活を送った様子は窺えず、小池知事の社交的な性格からしますと、やはりどこか不自然なのです。なお、エジプト側の協力を必要とせず、より簡便な方法としましては、小池知事に対しまして、アラビア語での文章作成をテストすると言った方法もありましょう(アラビア語は、口語よりも文語が難しいらしい・・・)。

 現代は、様々な情報が国境を越えて自由に行き交うグローバルな時代とされながら、日本国の首都の知事の学歴さえ確認できない現状は、情報化時代の虚実をも露わにしているように思えます。公人あるいはメディア人等の発信する情報は事実とは限らない一方で、一般の国民は偽情報に騙されるままとなり、その真偽を確かめることさえできないという情報統制・閉鎖社会の現実です。とりわけ民主的な選挙に際しては、有権者は、公表されている情報を判断材料として一票を投じるのですから、同情報が間違っていれば、当然に選挙結果も正当性を失います。二度とこのような不可思議な学歴詐称、否、虚偽情報問題が起きないよう、候補者の経歴等の情報については自己申告とはせず、中立・公平な機関による事実確認を要するのではないかと思うのです。

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