万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

パリ同時テロ事件-問題悪化要因はテロの支援者

2015年11月17日 18時59分16秒 | 国際政治
支配地域外で影響力拡大=一般市民に同調者か―「イスラム国」
 今月13日にパリで発生した同時テロ事件は、人権派、保守派、そしてイスラム教徒を中心とする移民集団の間の三つ巴となる可能性があります。そして、一般市民を装うテロ支援者の存在は、この三つ巴の解消をさらに難しくしています。

 ロシアのプーチン大統領がISILの支援国は実に40カ国に上ると発言したことで、国際社会における対テロの結束に綻びが生じている疑いが浮上しておりますが、さらに問題を複雑化しているのは、フランス国内の一般市民の中にもテロ支援者が紛れていることです。このことは、テロリストと一般市民との区別を付けることが極めて難しい状態に至っていることを示唆しています。三つ巴の解消が難しい理由は、常に、組合せを変えながら二対一の構図が繰り返されるところにあります。A、B、Cの三者とするならば、Cに対してAとBとが協力しても、CがAかBのどちらかに接近する状況が発生しますと、C・A対B、または、C・B対Aの対立へと移行します(もっとも、テロをめぐる三つ巴は、保守と移民集団の組合せはありませんので、人権派がどちらに寄るかによって組合せが替わる…)。テロ事件を受けて、フランス議会では、テロリストに対する左右の政治的立場の違いを越えた団結を示されましたが、一般市民の同調者の存在は、左派がテロリストに寛容となる要因となりかねません。自らの政治的信条に従って一般市民を擁護しようとすれば、テロリストをも庇う結果を招くからです。

 仮に、移民集団の中にテロを支援する者が存在しなければ、三つ巴が悪化することなく、移民集団もまた対テロの結束に加わることができたかもしれません。テロの支援者は、自らこそ、問題解決を遠ざけている存在であることを自覚すべきではないかと思うのです。

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コメント (2)
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