万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アジアインフラ投資銀行の白紙協定の行くへ

2015年03月21日 15時01分35秒 | 国際経済
日米の参加待つ=中国(時事通信) - goo ニュース
 加盟申請締め切りの3月末が迫り、中国主導のアジアインフラ投資銀行に関する情報が飛び交っております。報道量が増える中で、驚かされるのは、実のところ、”アジアインフラ投資銀行協定”が未だに作成されていないというのです。

 イギリスが参加を表明したことで、アジアインフラ投資銀行の参加国数は急激に増加しましたが、不思議に感じるのは、協定が白紙の状態で加盟を決定していることです。一つ間違えますと、甘い言葉に騙されて白紙の契約書にサインをしてしまった結果、後から書き込まれた契約内容に縛られる事態に陥ります。本日の日経新聞の記事によりますと、当銀行への中国の出資比率は40%まで下がったそうですが、中国が大株主となる中国主導体制には変わりはないようです。白紙の協定には、中国憲法に記載されている”共産党の指導”のように、”中国の指導”が書き込まれるかもしれません。あるいは、法の支配ならぬ人治の国ですから、空文化している憲法と同様に、協定など意味のない単なる紙切れと見なしている可能性もあります。それとも、参加を表明した諸国は、協定が白紙段階であることにチャンスを見出したのでしょうか。設立準備に際して、中国当局の担当者が日本国にノウハウを訊いてきたとも報じられておりますので、国際機構の運営に実績のある欧州諸国が、参加国の権利として制度設計を含む協定の草案を造ろうとしているとも考えられます。そもそも、協定草案の作成権限や手続きさえ存在していないようなのです(中国による単独決定?加盟国による多数決による採択?)。はたまた、蓋を開けてみると、アジア開発銀行設立協定のコピーに過ぎないかもしれません。

 法の支配を無視してきた中国ですが、アジアインフラ投資銀行の設立を決定したことで、国際機関におけるルール作りという最も不得意とする難題を自ら抱え込むことになりました。中国のみに特権を与え、腐敗を助長する不透明な協定を造ろうものなら、参加国から一斉にブーイングを浴びせられることになるのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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