万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の民主化を腐らせるAKB商法

2014年07月26日 15時24分37秒 | アジア
 中国の上海では、日本国のAKB48の姉妹グループとして「SNK48」がデビューしたそうです。投票権付CDを購入したファンの投票によってグループのセンターを決める”総選挙”も、そのままそっくりまねていると報じられています。

 本日の産経新聞では、芸能界のイベントとはいえ、中国において”投票”を実施された事実に注目し、”AKBが中国を変える”とする記事を掲載していました。「投票の快感」を覚えた中国の若者が、民主化を支持するのではないかと期待しているのです。確かに、ポストの人選において有権者による投票を実施する、という点において、アイドル・グループの”総選挙”は、民主的な普通選挙と共通しています。しかしながら、中国における”総選挙”の実施は、手放しに歓迎できるのでしょうか。何故ならば、”総選挙”は、民主的選挙のマイナス面を象徴しているからです。第一に、資金力が結果を左右するという民主的制度の悪しき一面が公然とまかり通っています。しかも、”総選挙”では、一人一票同価値の原則は存在せず、票は、CDの購入数=資金力に比例しています。日本国のAKB48の総選挙の結果を決めたのは、CDを大量購入した中国の富豪でした。中国の若者は、自らの無力さを痛感することになるかもしれません。第二に、民主的選挙は、常に”人気投票”に堕するリスクがあります。日本国をはじめ、タレント出身の議員は少なくなく、統治レベルの低下原因とも指摘されています。”総選挙”は、まさにこの”人気投票”を地で行っているのであり、享楽的で刹那的となった若者たちは、民主的選挙などは、所詮、”人気投票”に過ぎないと、民主主義に対して冷ややかな視線を投げかけるかもしれません。第三に、中国国内では、劉暁波氏といった活動家が投獄されていることを考慮しますと、アイドル・グループの総選挙の実施は、ふざけた感すらあります。中国の政治的民主化よりも、アイドル・グループの総選挙に関心が集まるようでは、衆愚化の効果の方が高いかもしれません。

 民主化に先立って、既に腐敗した民主主義に慣らされてしまう中国の若者たち。アイドル・グループの”総選挙”は、当局が黙認しているところを見ますと、あるいは、民主主義をせせら笑う中共政府の高等戦術ではないかと疑うのです。

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コメント (2)
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