万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

衆愚政治の原因―国民に高度で複合的な選択を迫る現行の選挙制度

2012年07月08日 13時57分00秒 | その他
一体改革法案成立後、解散含み…自公が攻勢へ(読売新聞) - goo ニュース
 民主主義体制は、煽動的な政治家の出現によって、衆愚政治に陥りやすいことが、致命的な欠点としてしばしば指摘されてきました。しかしながら、それは、国民が愚かであるからなのでしょうか。

 得てして、衆愚政治の原因は、甘言に騙されやすく、付和雷同し易い民衆心理に帰されています。その一方で、現行の選挙制度にも問題がないわけではありません。何故ならば、特に、日本国のように、議院内閣制を採用している国では、衆議院選挙は、一回の選挙において、政治家、代表者、立法者、政権、政策、政党といった次元や役割の異なる選択を同時に行うよう、国民に迫っているからです。たった1、2票(比例代表制)を以って、これだけ多くの選択を優先順位を付けながら同時に行い、かつ、政治に影響を与えるよう有効に用いるには、高度な計算と推測力を要します。他者の行動による状況の変化も考慮しなければらなないのですから、この選択は、スーパーコンピューターを用いても至難の業であるかもしれません。高度で複合的な選択を強いる現行の制度は、実のところ、国民にとりましては、酷な制度なのです。結局、選択の争点を極端に単純化するか、あるいは、重大な”何か”を犠牲にしなければならなくなるのですから。

 制度的な欠点は、国民への責任転嫁を容易にしますし、この欠点が政治家に悪用されますと、政治は、さらに民主主義から遠のくことにもなります。国民には全く責任がない、とは言い切れませんが、制度面にも着目し、衆愚政治や国民による自滅を防ぐための工夫が、制度改革として提起されてもよいのではないかと思うのです。

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コメント (2)
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