万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

アメリカが北朝鮮の要求を飲めない理由

2010年11月28日 15時33分03秒 | 国際政治
北は要求つり上げ、国内には反対論 直接交渉、米の苦慮(産経新聞) - goo ニュース
 延坪島砲撃を受けて、中国政府は、南北間の緊張を緩和するために、米朝の直接対話を求めていると報じられています。しかしながら、北朝鮮の要求を全て飲む形での事態の打開はあり得ないと思うのです。

 最近の北朝鮮の要求は、(1)米国の核の脅威の除去(2)核放棄前の米朝国交正常化(3)在韓米軍の撤退(4)韓国への核の傘の放棄まで、エスカレートしているそうです。もし、カーター元大統領が勧めるように、米朝合意が成立したとしても、それで完全に北朝鮮問題が解決するとは思えません。何故ならば、この要求が全て実現しますと、韓国に、軍事的な空白が生じることは必至であるからです。この状態では、北朝鮮が、たとえ核を放棄したとしても、通常兵力で韓国を制圧することは難しくはなさそうです。また、ウラン濃縮方式の核を放棄しても、今度は、水爆や生物化学兵器を製造するかもしれません。しかも、北朝鮮の過去の行動を見れば、合意通りに核を放棄するとは考えられず、最悪の場合には、朝鮮半島一帯に、核武装した軍事独裁国家が出現するかもしれないのです。背後で中国が北朝鮮を支援すれば、その可能性は、さらに高まります。

 こうした安全保障上のリスクがある限り、米朝直接交渉が首尾よく合意に漕ぎ着けるとは思えません。むしろ北朝鮮は、実現不可能なほどに要求を吊り上げることで、米朝直接交渉をアメリカ側から断念するよう仕向けているとする見方もできます。北朝鮮問題の解決は、米朝直接交渉路線では無理なように思うのです。

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コメント (2)
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