秘境という名の山村から(東祖谷)

にちにちこれこうにち 秘境奥祖谷(東祖谷山)

祖谷の山々に想う

2009年07月12日 | Weblog
早足に駆けてゆくくろ雲を目で追いながら和尚はまだ降るかもと
傘を片手に久保林道を上のほうへとゆっくりと歩いていた
ちょうど天狗塚が眺められる辺りまで来ると、近くの老婆が畑で
ホドイモの様子を窺っているので、「今年はどうかな」と声をかける
「どうかのう、今から少々掘って見ようかのう」

鍬を持って畑に入りながら「和尚さんや、ほれ、そこに宵待草が綺麗やのう」
と指さす方を見ると土手に何本か咲いているが、雨に打たれてうな垂れてはいるが
綺麗である、「ほんに、雨の待宵草は風情があるなあ」

雲も切れ始めて薄日が射し見上げると天狗塚が雲の切れ間からぽっかりと
浮んでいる風景を眺めて思わず「天狗塚には待宵草が良く似合う」と
呟いたものだ。

どこかで聞いた台詞だがなと考えていて、ああ、そうだ太宰治の小説
「富嶽百景」のなかに「富士には月見草が良く似合う」の有名なくだりが
あったと思い出した。

コメント
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