「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

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外形を自ら作り出していないのに権利外観法理(94条2項類推)が適用される場合とは。

2014-09-23 23:00:00 | 民法総則




  下に掲載した事例の検討

1、原則は、XとAの売買契約があるので、それに従う。

 すると、売買代金の支払いがなされておらず、甲土地の所有権は移転していないこととなり、Bは所有権を有しないAから甲土地を買ったこととなる。

 上の写真の設問1のほうの類似問題(公信問題)と言える。

 X    - - -→    A     →       B
    H11.2.28    4.5    4.15    4.16    
    売買契約     登記   売買契約   登記  


2、事例では、Bは、権利の外観としての「Aの登記」を信じて(善意無過失)、甲土地を購入した。
 このようなBを保護しないと、取引の安全を害することになる。


3、権利外観法理は、1)外観作出への帰責性と、2)外観を信じた第三者が保護に値すること(善意)。

 この事例では、Bは善意無過失であり、2)は問題にならない。

 Xに、1)でいう外観作出への帰責性があると言えるか。そもそも、Aは、外観作出自体に関与していないのである。

4、A名義登記という外形作出について、Xに帰責性が認められるか。

 判断要素

 〇Xに帰責性がありの方向に働く要素(下線)
 ① 白紙委任状、権利証、印鑑証明書等を容易に交付

 ② 権利書の預り証、補充後の委任状写しの内容をみたのに訂正請求せず

 〇Xに帰責性がなしの方向に働く要素(青色)
 ① XとAの属性

 ② Aが欺罔的手段を使用

 ③ A名義登記の存在を知って長期間放置していない(A名義登記とAB間の売買契約・移転登記との時間的接着性)


5、最終判断

 〇Xに帰責事由なし ⇒ 94条2項類推適用× ⇒ Xに甲土地の所有権

 〇Xに帰責事由あり ⇒ 94条2項類推適用〇 ⇒ Bに甲土地の所有権

  *ただし、本件事例のようにBが、善意・無過失の場合はよいとしても、
  Bが善意・有過失の場合は、外観を信頼した第三者と外観作出の原因行為をした者との公平を図る民法110条の法意を本件でもあてはめ、Bが保護されないと考えるべき。



6、本件事例と似た判例

 〇最判平成18.2.23 (百選I-22)

 〇本件事例のもとの判例 最判平成15.6.13

7、従来の判例

 〇意思外形対応型
  1、外形自己作出型 最判昭和41.3.18
  2、外形他人作出型 最判昭和45.9.22(百選I-21)

 〇意思外形非対応型 最判昭和43.10.17
  

**********事例*********

1 Xは、工業高校を卒業し、技術職として会社に勤務しているが、相続によ
って甲土地を所有することになった。

2 そこで、Xは、甲土地を売却することを計画して、不動産売買等を業とす
るAに売買を持ちかけたところ、Aとの間で話がまとまり、平成11年2月
28日、甲土地の所有権移転及び所有権移転登記手続と売買代金8200万
円の支払とを引換えとするとの約定で、甲土地の売買契約を締結した。

3 その際、Aが甲土地の地目を田から宅地に変更し、道路の範囲の明示や測
量をし、近隣者から承諾を得るために委任状が必要であるというので、Xは、
委任事項が白紙の委任状を作成し、Aに交付した


4 また、同時に、Aが、5月31日の所有権移転に間に合わせるために、甲
土地の地目の田から宅地への変更、道路の範囲の明示、測量等の所有権移転
の事前準備の必要があるので登記済証を預かりたいと言い、「事前に所有権移
転しますので、本日、土地の権利証を預かります」との記載
がされた預り証
を交付したところ、Xは同記載を見たものの深く考えず、Aに言われるまま
甲土地の登記済証を預けた。


5 3月4日ころ、Aはさらに、道路の範囲の明示に必要であるという説明を
して、XからXの印鑑登録証明書の交付を受けた。

6 3月9日、Xは、Aから、既に交付していた白紙委任状のコピーの交付を
受けたが、委任状には、「上記の物件の土地の売買に関して一切の権限を委任
します」との記載が書き加えられていることに気付いた


7 Xは、不安になって、Aに対し、委任状の記載はこれで良いのか等確認し
たが、Aが言葉巧みにもっともらしい説明を繰り返したため、Aの説明を信
用した。

8 Aは、Xから交付を受けた書類を悪用して、Xに対して売買代金を支払う
ことなく、甲土地につき、4月5日受付で、XからAへの所有権移転登記を
した(本件第1登記)。

9 さらに、Aは、4月15日、Bとの間で、甲土地を売買代金6500万円
で売り渡す旨の契約を締結し、これに基づき、4月16日、甲土地の所有権
移転登記をした(本件第2登記)。

10 なお、Bは、Aに甲土地の所有権が移転していないことについて善意・無
過失であった。

11 Xは、Aの地目変更のため等で委任状や登記済証等が必要であるという説
明を信じて上記書類を交付したものであって、その他本件第1登記がなされ
ることを承諾したと認められる事情はなかった。

12 Xは、本件第1登記、同第2登記がなされていることを5月26日に知り、
Aに対し事情の説明を求めたが、Aは不誠実な対応を繰り返すばかりで、埒
があかなかったので、弁護士に相談することにした。

(小問1) Xが、移転登記抹消登記手続請求をする場合、請求原因の要件事
実は何か

(小問2) 本件の素材となった事案に対する判例の処理は、従来の判例の考
え方には該当しないとする説明がある。では、素材となった事案に
対する判例の処理は、どのような点で、従来の判例の考え方に該当
しないと説明できるのか。

(小問3) あなたはXから相談を受けた弁護士だとする。
 Xから、Bに過失がある場合と無過失である場合とでXの移転登記抹消登記手続が認
められるか否かの結論が異なるのかとの質問を受けた場合、どのよ
うに回答するか。
 本件事案とは異なり、Xが、債権者から甲土地を
守るために、自らその登記名義を妻のC名義に移すこととし、Cに
は相談せず、甲土地の売買契約書を作成してCの実印を押印し、こ
れに基づいて所有権移転登記を行ったところ、その後Xと離婚した
Cが甲土地の登記名義がCとなっていることに気付いて、Cが甲土
地をDに売却した場合と比較して回答しなさい。

以上

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