「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

建築確認の前段階、安全確認がきちんとなされているかチェックする体制が必要。タヌキの森訴訟から。

2012-04-17 23:00:00 | 街づくり

 タヌキの森訴訟(最判平成21.12.17建築確認処分取消請求事件)、これは、行政法における「違法性の継承」の論点で、最重要な判例です。

 それとともに、私は、重要な問題提起がなされていると考えます。

 「安全確認」は、「建築確認」の前提としてとても大事なことであるが、それが、きちんとなされているか、それがきちんとなされていることをチェックできる体制があるかという点です。

 最高裁 判決文で、安全確認に関する該当部分を抜粋します。

「他方,安全認定があっても,これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず,建築確認があるまでは工事が行われることもないから,周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない(これに対し,建築確認については,工事の施工者は,法89条1項に従い建築確認があった旨の表示を工事現場にしなければならない。)。そうすると,安全認定について,その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。仮に周辺住民等が安全認定の存在を知ったとしても,その者において,安全認定によって直ちに不利益を受けることはなく,建築確認があった段階で初めて不利益が現実化すると考えて,その段階までは争訟の提起という手段は執らないという判断をすることがあながち不合理であるともいえない。」

 最高裁が述べられていることは、とりようによっては、安全確認の制度の不備をいっているのではないでしょうか。

 すなわち、

*安全確認の事実を、周辺住民は知りようがない

*たとえ、知ったとしても、安全確認による不利益がないから、安全確認の段階で、周辺住民は異議のとなえようがない

*建築確認段階で、不利益が現実化するときに初めて、異議をとなえることができる
 (建築確認がなされているから、この時に、異議をとなえても、建築工事は着手されていくから、遅い)

 


よって、私は思うに、

・「安全確認」が、なされてることをきちんと周辺住民に通知すること

・「安全確認」がきちんとなされていることをチェックできる体制をきちんと整備すること
(タヌキの森訴訟は、実際、新宿区が違法な安全確認をしたところから端を発しています。そして、実際に、安全確認に違法性をそのまま持ちながら、建築確認され、建築工事がなされてしまいました。)

以上2点が、必要ではないかと、考えます。


関連記載のブログ
http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/9ff536b97a14c885c90994be57b345e2

http://blog.goo.ne.jp/kodomogenki/e/61688ff9991077f9bc1417aaa5781eeb

【事案】
 上告人Yは、新宿区で、上告人代表者は、新宿区長である。

 上告補助参加人Z株式会社及びA株式会社を建築主とする建築物(以下「本件建築物」という。)の建築計画(敷地の地名地番 東京都新宿区下落合四丁目○○○-○、階数地上3階地下1階、最高の高さ9.750m、戸数30戸(ファミリータイプ29戸、ワンルーム1戸)、延べ床面積2820.58㎡の鉄筋コンクリート造大規模集合住宅、東棟・南棟・西棟の三棟をエキスパンションジョイントで接続、容積率112.3%(制限150%)、建ぺい率42.2%(制限60%))に対して、その申請(敷地が8m以上道路に接していないため)に基づき新宿区長から平成16年(2004年)12月22日付けで安全認可「○○新都建建審(認)第○○号」(以下「本件安全認可」という)を受け、その後、上告補助参加人Z建設株式会社及びAは、その申請に基づき新宿区建築主事から平成18年(2006年)7月31日付けで本件建築確認「新都建(確)第○○○号」を受けた。

 本件敷地は、第一種低層住居専用地域、準防火地域、第一種高度地区、指定建ぺい率60%、指定容積率150%の地域に属し、約34mの長さの路地状部分により道路に接している。

 被上告人Xらは、隣接マンションの管理組合と周辺住民多数である。安全認定、建築確認を不服として新宿区建築審査会に対し審査請求をしたが、却下又は棄却の裁決をうけた。そこで、同建築主事の所属する上告人Yを相手として、安全認定、建築確認更に裁決の取消しを求めて訴えを平成19年(2007年)5月26日提起した。

 法43条2項に基づき東京都建築安全条例(以下、「本件条例」という。)4条1項に関して制限を付加している。同条1項規定を適用すると、本件建築物は、延べ面積が約2820㎡であり、本件建築物の敷地は8m以上道路に接しなければならないということになる。ただし、本件条例4条3項は、特例として、建築物の周囲の空地の状況その他土地および周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合においては、同条1項規定は適用しないと定めている(以下、同条3項の規定により安全上支障がないと認める処分を「安全認定」という。)なお、特別区の場合、安全認定に係る事務を処理することとされ、区長がその管理及び執行を行っている。

 第1審(東京地判平20.4.18)では、建築確認の違法事由として安全認定の違法を退けたが、原審(東京高判平21.1.14)では、安全認定は建築確認の取消事由になるとした。その上で、安全認定の適法性について検討を加え、敷地の周囲の多くが崖になっていて最小幅員4m、長さ34mの路地上部分を通らなければ道路に達することができないなどの事情があり、この状況に照らせば、安全上の支障がないとすることは明らかに合理的根拠がないから、新宿区長がした安全確認は裁量権の逸脱濫用をしたもので違法であると判断し、結局建築確認は違法であるとしてこれを取り消した。

 上告人Yから上告受理の申立てがなされた。

【被上告人Xら主張】本件安全認定は、違法であるから本件建築確認も違法である。

【上告人Y主張】先行処分である安全認定が取り消されていない場合、たとえこれが違法であるとしても、その違法は後続処分である建築確認に承継されないのが原則であり、本件において本件安全認定が違法であるとの主張はできない。

 

【参照法令】

○建築基準法(平成18年法律第46号による改正前のもの)6条1項,

(建築物の建築等に関する申請及び確認)

建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合も、同様とする。

  別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が百平方メートルを超えるもの

  木造の建築物で三以上の階数を有し、又は延べ面積が五百平方メートル、高さが十三メートル若しくは軒の高さが九メートルを超えるもの

  木造以外の建築物で二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超えるもの

  前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域(都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)、準都市計画区域(市町村長が市町村都市計画審議会(当該市町村に市町村都市計画審議会が置かれていないときは、当該市町村の存する都道府県の都道府県都市計画審議会)の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法 (平成十六年法律第百十号)第七十四条第一項 の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物

 

○建築基準法43条,
(敷地等と道路との関係)

建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に二メートル以上接しなければならない。ただし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては、この限りでない。


一  自動車のみの交通の用に供する道路
二  高架の道路その他の道路であつて自動車の沿道への出入りができない構造のものとして政令で定める基準に該当するもの(第四十四条第一項第三号において「特定高架道路等」という。)で、地区計画の区域(地区整備計画が定められている区域のうち都市計画法第十二条の十一 の規定により建築物その他の工作物の敷地として併せて利用すべき区域として定められている区域に限る。同号において同じ。)内のもの
2  地方公共団体は、特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計。第四節、第七節及び別表第三において同じ。)が千平方メートルを超える建築物の敷地が接しなければならない道路の幅員、その敷地が道路に接する部分の長さその他その敷地又は建築物と道路との関係についてこれらの建築物の用途又は規模の特殊性により、前項の規定によつては避難又は通行の安全の目的を充分に達し難いと認める場合においては、条例で、必要な制限を付加することができる。




○東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条1項,

○東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項


(建築物の敷地と道路との関係)

第四条 延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合は、その延べ面積の合計とする。)が千平方メートルを超える建築物の敷地は、その延べ面積に応じて、次の表に掲げる長さ以上道路に接しなければならない。

 

延べ面積

長さ

千平方メートルを超え、二千平方メートル以下のもの

六メートル

二千平方メートルを超え、三千平方メートル以下のもの

八メートル

三千平方メートルを超えるもの

十メートル

 

2 延べ面積が三千平方メートルを超え、かつ、建築物の高さが十五メートルを超える建築物の敷地に対する前項の規定の適用については、同項中「道路」とあるのは、「幅員六メートル以上の道路」とする。

 

3 前二項の規定は、建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合においては、適用しない。

(昭四七条例六一・全改、昭六二条例七四・平五条例八・平一一条例四一・一部改正)

 

 *****判決文全文 最高裁ホームページより*****

       主   文

 1 原判決のうち被上告人X1に関する部分を破棄する。
 2 上告人のその余の上告を棄却する。
 3 上告費用は上告人の負担とする。
 4 本件訴訟のうち被上告人X1に関する部分は,平成20年5月25日同被上告人の死亡により終了した。

       理   由

 第1 上告代理人石津廣司ほかの上告受理申立て理由第1点及び上告補助参加代理人大脇茂ほかの上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について
 1(1) 本件は,上告補助参加人及びAを建築主とする建築物(以下「本件建築物」という。)の建築計画に対して建築基準法(平成18年法律第46号による改正前のもの。以下「法」という。)6条1項に基づき新宿区建築主事がした建築確認(以下「本件建築確認」という。)について,本件建築物の敷地の周辺に建物を所有し又は居住する被上告人らが,同建築主事の所属する上告人を相手としてその取消しを求める事案である。
 (2) 東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号。以下「本件条例」という。)4条1項は,法43条2項に基づき同条1項に関して制限を付加した規定であり,延べ面積が1000平方メートルを超える建築物の敷地は,その延べ面積に応じて所定の長さ(最低6m)以上道路に接しなければならないと定めている。ただし,本件条例4条3項は,建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める場合においては,同条1項の規定は適用しないと定めている(以下,同条3項の規定により安全上支障がないと認める処分を「安全認定」という。)。特別区は,特別区における東京都の事務処理の特例に関する条例(平成11年東京都条例第106号)により,安全認定に係る事務を処理することとされ,区長がその管理及び執行をしている。
 本件条例4条1項によれば,延べ面積が約2820平方メートルである本件建築物の敷地は8m以上道路に接しなければならないとされており,本件建築物の建築計画につき,Aほか1社は,その申請に基づき新宿区長から平成16年12月22日付けで安全認定(以下「本件安全認定」という。)を受け,その後,上告補助参加人及びAは,その申請に基づき新宿区建築主事から同18年7月31日付けで本件建築確認を受けた。被上告人らは,本件安全認定は違法であるから本件建築確認も違法であるなどと主張している。
 2 原審は,本件安全認定は,新宿区長がその裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用してした違法なものであるから,本件建築物の敷地は本件条例4条1項所定の接道義務に違反しており,本件建築確認は違法であると判断して,これを取り消した。
 所論は,先行処分である安全認定が取り消されていない場合,たとえこれが違法であるとしても,その違法は後続処分である建築確認に承継されないのが原則であり,本件において本件安全認定が違法であるとの主張はできないのであるから,これと異なる原審の判断には,法令解釈の誤りがあるというのである。
 3(1) 本件条例4条1項は,大規模な建築物の敷地が道路に接する部分の長さを一定以上確保することにより,避難又は通行の安全を確保することを目的とするものであり,これに適合しない建築物の計画について建築主は建築確認を受けることができない。同条3項に基づく安全認定は,同条1項所定の接道要件を満たしていない建築物の計画について,同項を適用しないこととし,建築主に対し,建築確認申請手続において同項所定の接道義務の違反がないものとして扱われるという地位を与えるものである。
 平成11年東京都条例第41号による改正前の本件条例4条3項の下では,同条1項所定の接道要件を満たしていなくても安全上支障がないかどうかの判断は,建築確認をする際に建築主事が行うものとされていたが,この改正により,建築確認とは別に知事が安全認定を行うこととされた。これは,平成10年法律第100号により建築基準法が改正され,建築確認及び検査の業務を民間機関である指定確認検査機関も行うことができるようになったこと(法6条の2,7条の2,7条の4,77条の18以下参照)に伴う措置であり,上記のとおり判断機関が分離されたのは,接道要件充足の有無は客観的に判断することが可能な事柄であり,建築主事又は指定確認検査機関が判断するのに適しているが,安全上の支障の有無は,専門的な知見に基づく裁量により判断すべき事柄であり,知事が一元的に判断するのが適切であるとの見地によるものと解される。
 以上のとおり,建築確認における接道要件充足の有無の判断と,安全認定における安全上の支障の有無の判断は,異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが,もともとは一体的に行われていたものであり,避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。そして,前記のとおり,安全認定は,建築主に対し建築確認申請手続における一定の地位を与えるものであり,建築確認と結合して初めてその効果を発揮するのである。
 (2) 他方,安全認定があっても,これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず,建築確認があるまでは工事が行われることもないから,周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない(これに対し,建築確認については,工事の施工者は,法89条1項に従い建築確認があった旨の表示を工事現場にしなければならない。)。そうすると,安全認定について,その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。仮に周辺住民等が安全認定の存在を知ったとしても,その者において,安全認定によって直ちに不利益を受けることはなく,建築確認があった段階で初めて不利益が現実化すると考えて,その段階までは争訟の提起という手段は執らないという判断をすることがあながち不合理であるともいえない。
 (3) 以上の事情を考慮すると安全認定が行われた上で建築確認がされている場合,安全認定が取り消されていなくても,建築確認の取消訴訟において,安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許されると解するのが相当であるこれと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用することができない。
 第2 職権による検討
 記録によれば,被上告人X1は原判決言渡し前である平成20年5月25日に死亡したことが明らかである。本件訴訟のうち同被上告人に関する部分は,同被上告人が死亡した場合においてはこれを承継する余地がなく当然に終了するものと解すべきであるから,同部分につき,原判決を破棄し,訴訟の終了を宣言することとする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宮川光治 裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志)

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 契約で「動機の錯誤」に伴う... | トップ | 学校保健安全法施行規則の一... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

街づくり」カテゴリの最新記事