文部科学省は新しい学習指導要領に「社会に開かれた教育課程」という方向を盛り込む。
記事では、企業の協力で教育が成り立っているが、地域には、経験豊富な地域の人材があります。
学校と、地域の人材がうまく連携して、「社会に開かれた教育課程」が実施できればと考えます。
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https://digital.asahi.com/articles/DA3S13451700.html
(日曜に想う)社会とつながる「魔法の授業」 編集委員・大野博人
2018年4月15日05時00分
数学の授業のおしまいのところで、教室に生徒たちの歓声と拍手が響いた。
先月の東京都杉並区立井草中学校。約2時間の長丁場なのに、2クラス合同で66人の3年生たちは飽きるどころか徐々にのめり込んでいった。
ちょっと不思議な授業の教材は、ゲーム仕立てのソフトだ。
まず教室の前の画面にアニメ風のキャラクターたちが映し出される。西暦2200年の巨大な学校を舞台にした生徒会長選という物語が始まる。個性や主張のちがう3人の候補者が、支持を増やしたり減らしたりしながら投開票まで白熱した選挙戦を繰り広げる筋書きだ。
生徒たちもただの観客ではない。なぜならこの未来の学校の新聞部員という役割を割り振られるからだ。サスペンスに満ちた展開を取材し分析し予想する。
画面には、過去のデータや節目ごとの学園内世論調査の結果が示される。そのたびに11の班ごとに話し合う。今だれが優勢か、それはなぜか。記事のための見立てをしなければならない。それに呼応して物語の筋書きも変わっていく。
生徒たちの予想と登場人物の先行きが交錯し影響し合う。実際の選挙を間近で見ているように気分が高揚していった。
巧みなのは、生徒を物語に引き込む仕掛けだけではない。後半には、選挙情勢のデータを分析するのにちょっと面倒な計算が必要になる。だが、生徒たちは、ああでもない、こうでもないと夢中になって数式を書き連ねていた。
各班が予測を発表した上で、ハラハラドキドキしながら開票を待つ。息をのむ一瞬。発表と同時に大歓声が爆発した。
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この授業を用意したのは企業教育研究会。千葉大学教育学部の藤川大祐教授のゼミが母体となって2003年にできたNPO法人だ。
さまざまな企業に専門の知見や資金で協力してもらい、新しいスタイルの授業を作る。それを小中高校に出前授業として届ける。そんな活動を続けている。
井草中学での授業は日本IBMとともに考えた。題して「数学が分かると未来が見える!? プロに学ぶデータ分析とデータに関わる仕事の今」。当日は社員も授業を進める司会役に。
研究会が提供する授業や教材は多彩だ。食品会社が協力した食育、家電企業の環境教育、コンサルティング会社による意思決定についての授業もある。どれもふつうの教科の枠を超えた内容だ。
「こうした総合的な学習という試みはゆとり教育路線で打ち出されていました」と教授。「ただ同じころ学力低下に注目が集まり、盛り上がらないまま。先生にも余裕がなくなった。でも社会とつながって学ばせる方向性は必要だった」。他方、社会貢献事業として教育分野に目を向ける企業も増えていた。
社会とつながりたい学校と学校とつながりたい社会をうまく結びつけた。出前授業は16年には200回近くに上った。
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「不易」と「流行」。教授は、学校と社会のちがいをそう表現する。生きていくために必要で変わることのない基本的知識を教える学校と、変わり続ける社会。ある程度のズレが両者に生じるのはやむをえない。しかし、最近の社会の変化には加速度がついている。何のために学ぶのかが子どもたちに見えなくなっている時代だと教授はいう。
「いい学校に入っていい就職をという学歴社会信仰ももうない。別の動機付けが必要。そのために、学んでいることが社会で使う知識とどうつながっているのかということをもっと見せてあげたい」
この試みを教授は「魔法の授業」と呼ぶ。たしかに抽象的で難しいと思われがちな数学で、教室が沸くのは「魔法」のようでもあった。それは単に物語仕立てが巧みだったからだろうか。数学が社会にもたらす意味が垣間見えたからでもあるのではないか。
文部科学省は新しい学習指導要領に「社会に開かれた教育課程」という方向を盛り込んだ。忙しい学校には「言うはやすく行うは難し」かもしれない。でも、この「魔法」は助けになりそうだ。
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