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権利自白を認める範囲について 民事訴訟法179条

2012-12-09 23:23:59 | シチズンシップ教育
【事案】
Xは、Y(債権者)に対し、請求異議訴訟を提起した。

第1審において、Xは、公正証書に記載された100万円について消費貸借契約が成立したことを認めたが、あわせて、10万円が天引きされたことを主張していた。

第2審において、Xは、10万円が天引きされたので、消費貸借は90万円について成立したにすぎない旨主張した。

【民事訴訟法上の問題分析】

(1)事案における法的問題点の摘示。
 訴訟物たる権利関係自体は争いつつ、その前提となる先決的な権利・法律関係の存否に関する相手方の主張を認める陳述が自白の対象となるかが法的問題点である。

(2)(1)における問題点の指摘の根拠となる事実を、事案の中から指摘。
 第1審では、Xは、公正証書に記載された金100万円について消費貸借契約が成立したことを認めたが、第2審において、Xは、金100万円の貸付に当たって10万円を天引きし、消費貸借契約は90万円について成立したにすぎないと主張した。
 消費貸借契約に関するXの主張は、自白の取消しとみるか、法律上の意見にすぎないとみるかが問題点である。
 
(3)民事訴訟法の第何条、または、いかなる理論の適用が問題であるか。
 民事訴訟法179条が問題である。

 民事訴訟法179条
 裁判所において当事者が自白した事実及び顕著な事実は、証明することを要しない。

(4)(3)で挙げた条文のどの文言の解釈、あるいは、理論の要件が問題となっているか。
 民事訴訟法179条において、不要証事実が規定されている。
 その要件のひとつに「事実に関する陳述であること」があるが、裁判上になされた「権利自白」も、請求の当否の前提をなす先決的な権利・法律関係について争わない旨の陳述がありうる。
 本問に、権利自白の適用がされるかが問題である。


(5)この問題について、自分と反対の結論となり得る考え方。
 消費貸借契約に関するXの主張は、自白にあたるとする考え方である。
 第1審で、金100万円の消費貸借契約が成立したと自白しておきながら、第2審で金90万円の消費貸借契約が成立したとする主張することは、自白とすると、撤回禁止効により、第2審での主張は、排斥されることとなる。
 裁判所の方も、審判排除効により、金100万円の消費貸借契約成立について、証拠調べをすることができなくなる。

(6)自分と反対の結論となり得る考え方の問題点を指摘。
 消費貸借に際しては、利息の天引きが行われたような場合に、いくらの額につき消費貸借の成立を認めるかは、具体的な法律要件たる事実に基づいてなされる法律効果の判断の問題であるが、法律効果のみが、権利自白であるとして、当事者の一致した陳述によって決定されてしまうと、利息の天引きなど場合の検討ができなくなってしまうことが問題点である。

(7)この問題についての自分の結論と根拠。
 X主張の事実は、本件消費貸借の額面は金100万円になっているが、Xはその成立に際し金10万円を天引きされ90万円を受け取ったにすぎないというのであって、Xの第1審における金100万円につき消費貸借の成立したことを認める旨の陳述も、第2審における金90万円につき消費貸借の成立した趣旨の陳述も、ともに本件消費貸借が成立するに至った事実上の経過についてXが法律上の意見を陳述したものと認めるのが相当であって、これを直ちに自白と目するのは当たらない。
 なぜならば、消費貸借に際しては、利息の天引きが行われたような場合に、いくらの額につき消費貸借の成立を認めるかは、具体的な法律要件たる事実に基づいてなされる法律効果の判断の問題であるから、天引きが主張され、消費貸借の法律要件たる事実が明らかにされている以上、法律上の効果のみが当事者の一致した陳述によって左右されるいわれはないからである。
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