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刑事弁護の論点1 被告人が凶悪犯罪の真犯人であると考えられる場合の弁護について

2014-06-21 09:35:52 | 社会問題


刑事弁護の論点1 被告人が凶悪犯罪の真犯人であると考えられる場合の弁護について

1、誠実義務(弁護士法1条2項)、誠実協議義務、守秘義務

 弁護士には、民法上の受任者としての善管注意義務(民法644条)を前提に、誠実義務(弁護士法1条2項)がある。刑事事件では、孤立し、防御に疲れ絶望した被告人を、依頼者の単なる「代理人」あるいは利益の代弁者に留まらず、「保護者」として、最善の弁護活動(弁護士職務基本規定46条)をすることが求められる。また、最善の弁護活動を保障するため、弁護人には全ての訴訟行為について包括的代理権が与えられている(大判昭和6年7月22日、最大決昭和63年2月17日)。

 誠実義務を尽くすには、防御方針と弁護方針を立てるため率直で突っ込んだ協議の機会をもつ誠実協議義務と、信頼感の基礎となる、本人の明かした秘密の一切が、本人の承諾なくして第三者に対して漏れることがないという絶対の信頼をよせることができることが必須であり、そのための守秘義務(弁護士法23条)が欠かせない。

 守秘義務が解除される「正当な理由」は、非常に限定的であり、依頼者につき殺人等の人身被害に関する重大犯罪の企図が明確で、その実行行為が差し迫っている旨の秘密を弁護士が知ったときに、これを防止するために秘密開示を行うような極限的な場合である。


2、消極的真実義務

 真実義務の名の下に、弁護人に対して被告人に不利な方向での「真実」発見(刑訴法1条)に関する証拠や情報を自ら積極的に提出開示する義務を課すこと(積極的真実義務)は、弁護人は誠実義務と秘密保持義務を負っているのであり、否定される(職務基本規定5条、同規定82条1項)。

 他方、弁護人は被告人の利益を擁護する目的に出た行為であっても、裁判所による真実発見を妨害するために、積極的に不利な証拠を隠滅したり、虚偽の証拠を提出するなどして事実を歪める行為をしてはならないという義務(消極的真実義務)を有する。例えば、不当、不正な手段で被告人に不利な証拠の提出を妨げたり、証拠を偽造、隠滅しない、あるいは偽証をさせたり虚偽証拠の提出をしないことである。

 一方、裁判所の訴訟指揮や検察官の証拠調べ請求等に対して刑事訴訟法上の権利として意見を述べたり反対すること、証人に対して反対尋問することなどは弁護人としての本来の正当な任務の遂行であり、「真実発見を妨害する行為」などにはあたらない。また、検察官の主張する事実や、裁判所が判決によって認定する事実とは異なる事実の主張と立証(そのための証拠収集活動や調査活動を含む)を展開することも弁護人の本来的職務の遂行であるから、「事実を歪める行為」となるわけではない。



3、被告人による「真犯人」であることの告白への対応

 被告人による「真犯人」の告白を、絶対的真実であるとは言えない。身代わり犯人であることもある。否認して争うことにより長期勾留あるいは保釈困難の結果を招くのではないかという恐怖ないし危惧が、やむなく有罪を認めると告白する場合もある。


4、全人的ケア
 凶悪犯罪を犯した被告人大は、責任能力を有していたかどうかが疑われうることがある。精神鑑定が必要な場合があるかもしれないし、少なくとも精神科医師や心理士による心のケアが必要であった事案であると考える。弁護人は、それら適切なケアをできる体制をコーディネートする役割を担うと考える。

 また、犯罪被害者のためにどのように償っていくべきか、残された家族とどのように接していけばよいか、残された家族の今後はどのようにしていくべきか等を、被告人と共に考えることも「保護者」として行うべきである。

以上
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