「中央区を、子育て日本一の区へ」こども元気クリニック・病児保育室  小児科医 小坂和輝のblog

感染を制御しつつ、子ども達の学び・育ちの環境づくりをして行きましょう!病児保育も鋭意実施中。子ども達に健康への気づきを。

民主主義の学校としての地方議会をフォローしよう:26日中央区議会予算特別委九日目総括質疑1

2012-03-27 19:01:36 | 財務分析(予算・決算)
 26日中央区議会予算特別委九日目介護保険等(途中から)および総括質疑を見ていきます。
 総括質疑は、総括というだけあって、予算特別委員会のまとめの質問です。
 各政党の最も大事にしている内容がテーマとして取り上げられ、注目すべき箇所です。

<国民健康保険事業会計・介護保険事業会計・後期高齢者医療会計 前回からの続き>
**************
E党
保険料改定で高齢者の医療負担はどれくらいか
国保昨対均等割 300円
後期高齢者当初計画16% 安定化基金から持ってきて9%に決定

15段以上の他段階の案はあったか
中央区 11段階→13段階

今日の介護保険、予算組みで成り立つか(第5期保険料)
小規模老人ホーム
施設含まれない

介護基金の繰越しは
第4期は3期の2億を切り崩し、第5期6000万残 内6割4000万取り崩し計画

高齢者の負担増 一般財源での対策の考えは
サービスの充実、元気なお年寄り施策

3期から4期 2億崩したが給付人が増えたのか
H21  11508 H23 20000

<総括質疑>
**********************
A党
財政運営について
来年歳入の見通し
楽観視できない

中央区の予算確保について
特有の事情を算定すべきと主張している

基本計画2013 5年の見通し
成果、の検討は?スケジュールは?
人口は想定内、乳児は想定外増 震災の区民防災意識向上
オリンピック・築地等の計画
行政評価でやっている

オリンピックの見解
招致計画 H25.1 立候補ファイル提出
招致に積極的に取り組む

計画10年必要か
変化の状況を考慮している

ラジオ24000台 どの位情報周知に有効か
データなし
帰宅困難者対策対応責任の所在
一時滞在確保、運用 区の役割を求めてくる(区の責任)

情報による安全100%できる為の基本データ
実証難しい。役割分担、大震災の教訓、広範囲都が責任 検証はアンケートによる情報収集が必要である。

指定管理者制度
株式会社への指定がないが認識を
基盤施設、公園、児童遊園地は公共性があり指定業者は少ない

今後の拡大について
福祉系は、どんどん進める。
新川児童館は指定管理

指定管理
指定管理者との労働関係、問題について
選定は法令順守、運営は法令ない

観光について
築地・銀座・日本橋 中央区より先行する地名ブランド
中央区のイメージは、歴史文化とあわせ清新的なクリエイティブなもの
大人のまち、誇りをもつ区民

中央区の名のイメージ薄い
花火祭の名称経緯は、他の花火大会の対抗する意味でのスケール感でつけた。
元気高齢者

① 30,40代将来の後期高齢者対策を考えてきたか
このままでは危険、ぶつぶつ切れているところがある。若い時から健康21基本計画の中で今から推進していく。
② 中央区の対策は
キャッチフレーズ検討

保育サービスについて
認証から月1回の報告に問題ないか
4月からHPで情報公開

教育問題
人口増に伴う実態、教育委員会の対応
5年前より17%増 月島25% 日本橋17% 京橋9%
幼保園の足りないクラス小学校で代替え 日本橋 有馬 久松 豊海
H28足りなくなる

来年度に基礎調査で耐えられなかったらどうするか
幼稚園 H19~23 30%増

オリンピックの件
豊晴計画 都からの打診は
ない

****************
B党
行政改革
3.11以降、区民の意識変化どう捉える
絆がキーワードになっている 職員間のコミュニケーション 区民とのコミュニケーション

行政改革の総括をどう考える
2次行政改革は「いかに区民の要望をスピードをもってどう叶えるか」

接遇の苦情は
一部 職員不十分 叱り受ける 案内不通知 情報間違っている 他部署へ行くよう言われた

今後の接遇に対する有り方
意識、信頼の構築を認識。接遇マニュアル 研修で指導

1階 コンシェルジュを
検討する

中央区の会計制度について
複式簿記の導入
公的会計で隠れ借金を洗い出すものと理解。企業会計制度が良い。
客観的な行政評価を成し遂げるには
接遇向上、会計制度導入改革必要
行政改革は常に考えていかないといけないこれからも中心にそえてしっかり対応していきたい。会計はわかりやすいものがよい。23区との比較が必要なため歩調あわせる。

防災対策
釜石の奇跡 片田教授を中央区の講演会に招いたらどうか
招く

夏の立山臨海学校で断層を見せることできないか
2泊3日の行程、現地に早くつくバスがあれば対応できる

マンションの防災
指導要綱で周知徹底していく
職員の備蓄、防災対策は
半数3日分備蓄

中央区のうぐいす
緑化充実の成果

中央小・明石小 改修で中央区の森の間伐を
できるかぎり行う

築地市場問題
機能から質への考え移行 100年後を意識したものを

こども読書活動について
取り組み成果
図書館 本10万冊→12万   貸出 18万冊→23万

家読の取り組み
考える

************************
C党
新しい公共経営について
すべて成功していない。ネーミングライツは慎重姿勢

防災に関して
3.11情報提供手段
テレビ・ラジオ・掲示板・安全安心メール・緊急ラジオ・防災無線・Facebook
ツイッタ―

拠出運営委員会について
5回の会合、1回訓練 変化は
会合を増やす

平均年齢は高いのでは?メンバーは?
年令高く、固定化されてるが、指示するリーダーとして必要

男女比
女子少ない

防災区民組織とマンションの管理組合との関係
必要だが、連携がとれない
被災地支援経費、新年度以降は
人的支援経費を計上

地域振興事業について
NPOへ助成システム 基本姿勢
NPOへの資金支援はしない

協働提案事業、文化助成事業一体化にしては
一体のメリットない

何がどう違うのか
しくみの中で行う協働 文化のみだけでなく介護、地域問題など
文化 町会 自治会 ボランティア団体 公益企業

まるごとミュージアム、観光まつり 一元すべき 文化と観光は同じだろう
文化=観光でない。一体化かんがえない

待機児童 緊急対策をすべき
スピーディにやっていく

申し込み用紙一体化
難しい

定員の弾力化は
弾力化しない

インフルエンザ助成について
国認めていない。国の動向みる

教育について
施設一体型のカリキュラムの推進
基本計画カリキュラム 本年 晴海を中心に考える 施設一体化かんがえていない

私立大学の誘致
考えていない

カリキュラムの予算H23.24ついていない。ヤル気あるのか
外部講師を呼んでいない。小中の研究交流教師同士のものが有効であるとなった

成年後見制度
周知低い
ステップ中央で相談
町会の声などで説明実施
年間10回出前講演

以上、
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自信とひとの目 岡本太郎氏

2012-03-27 13:46:02 | 言葉について、お役所言葉

岡本太郎 ‏ @okamoto_taro_bt
自信なんてことを目標にしなくていい。また、すべきじゃない。自信なんてことを考えるから、人の目が気になるんだ。ぼくは自信があるとは思っていない。自信なんてものはどうでもいいじゃないか。そんなもので行動したら、ロクなことはないと思う。(1/3)

岡本太郎 ‏ @okamoto_taro_bt
本当は人なんか君のことを、全然見ちゃいないのかもしれないんだよ。人の目を意識するような者に限って、人から見られもしないし問題にもされていない場合がほとんどだ。(2/3)

岡本太郎 ‏ @okamoto_taro_bt
自信に満ちて見えるといわれるけれど、ぼく自身は自分を終始、落ち込ませているんだ。徹底的に自分を追い詰め、自信を持ちたいなどという卑しい考えを持たないように、突き放す。(3/3)




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産経新聞「国民の憲法」起草委員会(委員長田久保忠衛杏林大学名誉教授)発足、 新憲法要綱策定H25.5予定

2012-03-27 10:10:42 | シチズンシップ教育
 憲法のなんたるかを私も、学んでいるところです。

 産経新聞が、新憲法を起草する委員会を立ち上げたとのこと。

 趣旨に賛同するかどうかの是非は別にして、ものごとを多角的に捕らえていくという観点から、その委員会に注目させていただきたいと思います。

*********産経新聞(2012/03/27)*****
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120327/plc12032706590007-n1.htm

本紙が新憲法起草へ 安保環境激変に対応 委員会初会合「国新たにする覚悟で」
2012.3.27 06:59

 わが国を取り巻く安全保障環境が激変、国内でも政治や教育の劣化が顕著となり、国家としての対応が問われている。産経新聞社は国の根本的な立て直しには、新たな憲法が不可欠との認識にたち「国民の憲法」起草委員会(田久保忠衛委員長)を発足させ、26日初会合を開いた。委員会は「新憲法」の礎(いしずえ)となる要綱を来年5月までに策定する方針だ。今後、わが国のあるべき姿などを「新憲法」に盛り込むための議論を重ねていく。

 初会合では冒頭、田久保委員長が「中国の膨張は現憲法制定時に想定されていなかった。今の憲法では対処できない」と限界を指摘。「国を新しくする意気込みで取り組みたい」と抱負を述べた。出席した委員からは「日本国民は自分の手で憲法を作っておらず、現憲法の異様さを示す」「戦後的価値観を生んだ現憲法は個人を絶対視し、家族や国家を軽視する風潮を生んでいる」などと問題点が次々と指摘された。

 産経新聞社は昭和56年元日の主張で現行憲法の欺瞞(ぎまん)性をメディアではいち早く指摘した。以来、一貫して憲法改正の必要性を紙面で訴えてきた。わが国の将来を案じるときに、羅針盤となるべき憲法がこのままでは国家も国民も立ち行かなくなる恐れがあるという危機感からだった。

 中国が尖閣諸島に触手を伸ばし、北朝鮮の核開発や拉致事件など、わが国の安全や主権が脅かされる事態にも国家として十分に対応ができず、東日本大震災でも非常事態に対処する規定が不備であるという憲法の欠陥が浮き彫りとなった。

 本紙が創刊80周年を迎える来年6月に向けたプロジェクトとして「新憲法」作りを目指すことになった。紙面でも積極的に憲法を取り上げていく。

                   ◇

 ■委員会の顔ぶれ

委員長            

・田久保忠衛(たくぼ・ただえ)杏林大学名誉教授

委員             

・佐瀬昌盛(させ・まさもり) 防衛大学校名誉教授

・西修  (にし・おさむ)  駒沢大学名誉教授

・大原康男(おおはら・やすお)国学院大学教授

・百地章 (ももち・あきら) 日本大学教授

*****産経新聞 主張(2012/03/27)*****
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/column/opinion/552518/

【主張】新しい憲法へ 欠陥正さねば国もたぬ 誇りと自立心とり戻す内容に
配信元:
2012/03/27 03:20更新
 産経新聞の「国民の憲法」起草委員会が発足した。委員長の田久保忠衛氏は「国を新しくするという意気込みで取り組みたい」と、新憲法づくりの決意を表明した。この覚悟を共有したい。

 まず現行憲法が大きな欠陥を抱えていることを直視しよう。そのことに長い間、目をつぶってきた日本人の責任は問われるべきだが、今は国民の力を結集して、欠陥是正を最優先したい。

 ≪尖閣奪取を座視するな≫

 もはや、時間の余裕はない。中国が、日本固有の領土である尖閣諸島の奪取に動いている中、それを座視せざるを得ない基本的な枠組みにこそ、問題があるのだ。

 来年6月の産経新聞創刊80周年に向けて、憲法と国のありようを見つめ直し、日本の再生に全力を尽くしたい。

 日本の安全が脅かされていることの根幹に憲法がある。

 一昨年9月の中国漁船衝突事件以降、中国は強大な軍事力を背景に、尖閣周辺の日本の領海を侵犯し、海洋権益を侵害し続けている。今月も中国の監視船が領海に侵入した後、ガス田付近で他の調査船と合同訓練を行った。この侵犯に対し、海上保安庁の巡視船は退去要請しかできない。海上自衛隊であっても同様だ。

 国連海洋法条約では領海内の無害ではない行為に対し、必要な措置を取れるとしているが、日本はこれに沿った措置を取ろうとはしなかった。

 記事本文の続き 憲法第9条の「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段」として放棄する規定に抵触しかねないとの判断が背景にある。だが、この規定は他国への侵略を念頭に置いており、領土・領海を守ることは自衛行動だ。倒錯しているといえる。国際法上の軍隊としての機能と権限を自衛隊に与えていないことにも、問題がある。備えの空白が野望を膨らまし侵攻を引き入れかねない。

 北朝鮮も、「衛星打ち上げ」と称する長距離弾道ミサイル発射実験を来月行うと予告した。憲法前文は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して…」と謳(うた)っているが、日本の周辺はもはや、そんな状況ではない。横田めぐみさんらが北朝鮮工作員に拉致された事件も、日本が自立した主権国家として強固な防衛体制を敷いていれば、防げた国家犯罪だった。

 問題は、こうした憲法と現実の乖離(かいり)が日米安保体制下の米軍事力で巧妙に隠され、そこに日本人が安住したことだ。戦後民主主義の弊害だ。自らの国を自らの手で守ろうとする自立心と気概が失われれば、日本に未来はない。

 占領時につくられた米国製の憲法が日本の無力化を目的にしていたことを忘れてはなるまい。

 昨年3月の東日本大震災に対しても、憲法を中心とする日本の法体系はあまりに無力だった。

 ≪緊急事態対処は明記を≫

 憲法は非常時について、衆院解散中の参院の緊急集会を定めているだけで、国家緊急事態への対処規定には著しい不備がある。

 現在の法体系でも、災害対策基本法があるが、当時の菅直人首相は同法に基づく「災害緊急事態」を布告せず、「重大緊急事態」に対処するための安全保障会議も開かなかった。国家の指導者として重大な不作為責任を免れないが、政権自体が国家の非常時を想定していない憲法に安穏とし、備えを怠っていたといえる。

 それでも、国民が一丸となって復旧・復興活動に全力を挙げたのは、秩序と助け合いを重んじる日本人の国民性に加え、天皇陛下をはじめ皇族方が岩手、宮城、福島県の被災地や首都圏の避難所を訪問し、被災者一人一人に声をかけて励まされたからである。

 被災者の救出、救援には、警察、消防とともに自衛隊が大きな力を発揮した。非常時に頼りになるのはやはり自衛隊だ。天皇を戴(いただ)く日本の国柄を明確にし、自衛隊の役割を憲法で明記する必要性を改めて痛感させられた。

 産経新聞は昭和56年元日付の年頭の主張で、新聞社として初めて憲法改正を訴えた。それ以降、9条改正などいくつかの提言を行ってきた。昨年9月には、日米安保条約の片務性を是正するために「自立」と「相互防衛」を両輪とする再改定案を提示した。

 これらの蓄積を生かし、日本に生まれた子供たちが日本の歴史に誇りを持ち、将来に希望を持てる新憲法づくりを目指したい。

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国土交通省「建築法体系勉強会」(座長久保哲夫東京大学教授)とりまとめH24.3

2012-03-27 09:12:51 | 街づくり
 以下、国土交通省が建築基準法見直しを見据えた勉強会を実施し、とりまとめを出したということです。

 「まちが健康でなければ、そこで住む人は健康にならない」自分がもつ命題のひとつ。
 そのまちづくりの根幹にあるのが、「建築基準法」です。


*******国土交通省*********
http://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000294.html

建築法体系勉強会とりまとめの公表について平成24年3月16日

国土交通省は、建築物の質の確保・向上に向け、建築基準法などの建築法体系全体の目指すべき基本的方向について検討を進めるため、久保哲夫東京大学教授を座長とする「建築法体系勉強会」を設置し、検討を進めてきたところですが、今般、検討結果がとりまとまりましたので、公表いたします。

とりまとめの概要及び本文は別添1及び別添2のとおりです。また、建築法体系勉強会の委員構成、開催経緯等は別添3のとおりです。

(別添1)建築法体系勉強会とりまとめの概要(PDF ファイル)
(別添2)建築法体系勉強会とりまとめ ~建築法体系の見直しに向けた基本的視点~(PDF ファイル)
(別添3)建築法体系勉強会の委員構成、開催経緯等(PDF ファイル)



~参考資料へのリンク~
※建築法体系勉強会ホームページ


お問い合わせ先
国土交通省住宅局建築指導課 

TEL:(03)5253-8111 (内線39519)



*************************

建築法体系勉強会とりまとめ
~建築法体系の見直しに向けた基本的視点~
http://www.mlit.go.jp/common/000204606.pdf

Ⅰ はじめに
 本勉強会は建築物の質の確保・向上に向け、建築基準法などの建築法体系全体の目指すべき基本的方向を整理することを目的として、建築行政を所管する国土交通省により設置され、平成23(2011)年2 月以来、計7回に渡り議論を重ねてきた。本とりまとめは勉強会として、建築法体系を今後見直していく際に留意すべき基本的視点に関し論点整理を行ったものである。

Ⅱ 検討経緯
第一回及び第二回の勉強会において検討事項、進め方等に関し意見交換等を実施した上で、三回目以降は①~④の審議事項等に関し、事務局からの関連基礎データ等の報告及び委員からの関連意見表明を行った上で、建築法体系の見直しに向けた基本的な視点に関し議論を行った。
○第一回(平成23(2011)年2 月2 日)検討事項、進め方等に係る意見交換
○第二回(同年5 月13 日)検討事項、進め方等に係る意見表明等
○第三回(同年7 月20 日)審議事項①に係る報告、意見表明等
○第四回(同年10 月3 日)審議事項①及び②に係る報告、意見表明等
○第五回(同年11 月7 日)審議事項③に係る報告、意見表明等
○第六回(平成24(2012)年1 月12 日)審議事項④に係る報告、意見表明等
○第七回(同年3 月1 日)論点整理

審議事項
① 建築物の質の確保に向けた基準体系のあり方
② 整備段階における質の確保を担保する仕組みのあり方
③ 利用段階における質の確保を担保する仕組みのあり方
④ 建築物の質の向上に向けた専門家の資質確保方策、情報の非対称性解消方策等のあり方

Ⅲ 建築法体系の見直しに向けた基本的視点に係る論点整理(案)
 事務局の設定した審議事項等に対する委員の意見表明等を踏まえ、①建築法体系の現状と課題、②目指すべき基本的方向、③建築法体系の今後の基本的あり方と関連して検討すべき課題に関し、以下、現行の法体系の概要を簡単に確認した上で論点を整理する。

別添2

1 現行建築法体系の概要の確認
(1)建築関係法令
 建築に関係する法令としては、国民の生命、健康及び財産の保護を図るために建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定める建築基準法が文化財等を除くすべての建築物の質の確保に関する基本的な法律として機能している。
 建築基準法は、大正8(1919)年に制定施行された市街地建築物法を前身として昭和25(1950)年に制定施行された。市街地建築物法は特殊建築物等を建築する場合に建築許可処分を課していた点などは現行制度と異なるものの、用途規制、接道義務、建築物の構造・設備・敷地に関する衛生上・保安上等の規制など現行制度と類似の規制内容を含んでいた。
 この他、建築物を整備する際に建築物の敷地、構造又は建築設備が適合すべき基準を定め、建築基準法に基づく建築確認検査の際に適合性がチェックされる規定(建築基準関係規定)を定めた法律として、消防法、都市計画法、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律など18の法律がある。これらの法律のうち都市計画法などは土木等建築以外の分野も含めて対象となる。
 最低基準としての規制以外の目的で建築物の構造、設備等に関する基準を規定する法律としては、建築物の耐震性の向上を図ることを目的とする建築物の耐震改修の促進に関する法律、住宅の性能に関する表示基準・評価制度等を規定する住宅の品質確保の促進等に関する法律及び長期優良住宅の普及の促進に関する法律があり、さらには建築物に加え、輸送、工場等も対象とするエネルギーの使用の合理化に関する法律が存在する。
 また、これ以外に建築関係の資格を定める法律として、建築物の設計、工事監理等を行う技術者の資格を定める建築士法、さらには関連業を規制する法律として、建設業法、宅地建物取引業法などがある。

(2) 建築規制等の仕組みの概要
 建築規制等を構成する主要な法制度である建築基準法(文化財等以外のすべての建築物に関し最低基準を定め、当該基準への適合性を担保するための審査・検査手続等を規定)及び建築士法(建築物の設計図書を作成する設計、工事と設計図書を照合する工事監理を行う者に関する資格制度を規定)に基づき、建築物の整備及び利用の各段階において適合させることが求められる基準や、関連の手続等の概要は以下の通りである。

① 建築基準の概要
 建築基準法に基づく建築基準関連規定には、個々の建築物に着目して構造等に制限を
課して地震、火災等に対する安全性等を確保する観点から定められている、いわゆる単
体規定と、主として都市計画区域内における用途、接道、容積、高さなど、市街地にお
いて集団的に立地する建築物に関する制限を定めている、いわゆる集団規定がある。
 単体規定に関しては、各地方の気候風土の特殊性や特殊建築物の用途等に応じ、建築
制限を地方公共団体の条例により附加できるなど、地方の実情を踏まえた規制の強化等
が可能である。また、原則として都市計画区域内において適用される集団規定について
は、地方公共団体が都市計画で用途地域を設定し、各地域における容積、建ぺい等につ
いても建築基準法に定める選択肢の中から選択し、都市計画において定めることとされ
ており、地区計画や個別特例許可などにより地域の実情に応じた地方公共団体の判断に
よる規制の強化等が可能である。

② 計画・施工・利用の各段階に適用される規制手続、関連資格制度等の概要
 建築基準法に基づき、建築主は工事着手前に建築計画が建築基準関係規定に適合して
いる旨の確認を受け、工事完了時(及び必要に応じ工事の途中段階)において建築物及
びその敷地が建築基準関係規定に適合しているか検査を受ける必要がある。
 当該確認及び検査に関しては、建築主事に加え、指定確認検査機関も担うことができ
る仕組みに平成11(1999)年に移行(民間開放)し、民間機関の体制整備が図られた
結果として、移行当時3割程度であった確認件数に対する工事完了時の検査件数の比率
は約9割となっている。
 また、設計・工事監理の的確な実施による建築物の品質確保に向け、建築士法に基づ
き①建築士の資格(学歴・実務経験・試験登録・定期講習)を定め、一定の建築物の設計・工事監理は必ず建築士が担うこととして、設計及び工事監理への専門家の関与を義務付けるとともに、②建築士を使用して他人の求めに応じ報酬を得て、業として設計等を営む場合には業規制の観点から建築士事務所の登録を課し、技術的事項を総括する専任の管理建築士を必置とするとともに、③所属建築士による建築主への重要事項説明等を義務付けている。
 平成17(2005)年に発生した構造計算偽装問題で明らかとなった課題に対応するた
め、平成18(2006)年に建築基準法、建築士法等が改正され、確認検査制度の厳格化
の一環として、一定の高さ以上等の建築物について指定構造計算適合性判定機関による
構造計算適合性判定が義務付けられるとともに、設計の際に構造・設備の分野に関し高
度な専門能力を必要とする一定の建築物の構造設計・設備設計に関し、構造設計一級建
築士・設備設計一級建築士の関与が義務付けられた。さらに、建築士事務所に所属する
建築士に3年ごとに法令改正内容や最新技術等に関する講習の受講を義務付け、当該講
習の受講状況や、行政処分・業務実績等の履歴に係る資格者の履歴情報開示制度を設け
るとともに、建築士事務所の業務報酬基準に関しても標準業務等に係る見直しが行われ
た。
 なお、工事段階の品質確保に関しては、建設業法において建設業の許可、主任技術者
及び監理技術者の設置等の規制が設けられている。
 整備後の利用段階において建築物を常時適法な状態に維持するためには、建築物の所
有者、管理者又は占有者(所有者等)による的確な維持保全を確保する必要がある。こ
のため、建築基準法に基づき、所有者等に対し維持保全の努力義務を課すとともに、適
法性の確保のために特殊建築物等に関する定期調査報告制度(建築物の構造・設備を定
期に所有者が専門資格者に調査させ、その結果を特定行政庁に報告する制度)及び昇降
機等に係る定期検査報告制度が設けられている。

2 建築法体系に係る現状と課題
 現行の建築法体系の根幹を構成する建築基準法及び建築士法は戦後復興期に制定され、その後の社会情勢の推移に応じて規定の整備がなされてきたが、急激な技術革新、国際化等の進展に伴い、社会の要請に必ずしも即応し得る体系となっていない。このため、これらの建築規制等を中心に、関連実態データや現状及び関連課題に関して、勉強会等において指摘された内容を整理する。

(1) 建築規制等の内容
.. 建築基準法の制定後60 年以上が経過し、事故・災害の発生等に対応して、その都度、法律・政令・告示を改正し条項の追加・削除がなされてきた結果として、基準の階
層構造・規定内容等の体系化が不十分なために複雑で判りにくいものとなっており、体系化された簡潔なものにする必要があると指摘された。

.. 具体的には事故、災害の発生等に対応して、その都度建築基準を見直してきた結果
として、規制の趣旨、導入時期などの事情により、規制項目毎に法律・政令・告示
で規定される内容の性格・範囲(性能項目、性能基準、検証法、適合仕様等)が異
なっていることが基準体系を判りにくいものとしている。また、規定が詳細に過ぎ
る部分があるなど、規定ぶり及び内容に関し整合性が確保されていない部分がある
と指摘された。

.. さらに、最低基準として建築物全体に求められる状態(性能)が明確化されずに、
仕様的な規制のみが定められる項目が多数存在するなど、性能規定化が一部の規定
に留まっていることも基準体系をわかりにくくし、さらに建築関連技術の発展や社
会的要請の高度化・多様化に対応した民間主体の取組が技術基準に反映されず、本
来同等の性能を有する代替仕様等を設計者が採用しにくい原因となっている。

.. なお、人が乗り込んだ状態で稼働する昇降機や遊戯施設などに関しては、構造、設
備等ハード面の安全対策に加え、適切な保守点検・運行管理の徹底による安全性の確
保が求められるものの、現行の建築基準体系は安全装置に関する基準等ハード面の
安全対策が中心で、保守点検・運行管理に関する基準体系の整備は不十分な状態にあ
る。

.. 現行制度上も、集団規定の制限内容は地方公共団体が都市計画において定めること
とされており、地域の実情を踏まえた単体規制の強化等も地方が行えることとなっ
ているが、行政庁の政策判断や地域住民の意向が個別計画により一層反映されるよ
う、集団規定は市区町村の政策判断で行えるようにすべき、あるいは、単体規定を
含め個々の建築行為に適用される基準が自治体単位で意思決定される仕組みを導入
すべきとの意見があった。

(2) 建築物の整備の際の品質確保に向けた規制、資格制度
① 建築確認検査制度
【確認検査の実施体制】
.. 現在、年間約五十数万件の確認件数の約4分の3は指定確認検査機関が担っており、確認検査の民間開放は執行体制の充実(開放以前は1900 人弱の建築主事で対応していたのが平成21(2009)年度末時点で指定確認検査機関の確認検査員約2200 人、建
築主事約1700 人で対応)による確認検査に係る行政側の負担軽減や、手続を透明化
させる効果もあったと指摘された。

.. さらに、審査権限が各地域毎に単一主体により独占されている場合に比べ、審査能
力の向上や手続の迅速化を図るインセンティブが機能するようになったとも指摘さ
れた。

.. 景観行政、違反建築物対策など行政特有の業務に重点的に取り組む必要性は高まっ
ているものの、民間開放に伴い行政庁の取り扱う確認・検査件数が減少する中で、確
認検査業務に従事する行政庁職員は減少の一途をたどっている。結果として、人口
25 万人以下又は小規模な建築物のみを扱う特定行政庁においては、一人の建築主事
で複数又は全ての分野の審査を担当することも多く、行政側の技術的審査能力をい
かに維持するかが課題であると指摘された。

.. 一方、指定確認検査機関に関しては、同一業務エリアにおいて複数の指定確認検査
機関が競合する結果として、審査・検査に要する時間及び費用の低減を求める建築主
の意向に左右され、審査・検査の質の低下につながるリスクが増大すると指摘された。
指定確認検査機関が確認を行った案件に関し、機関から確認審査報告書の提出を受
けた特定行政庁が、当該案件の計画が建築基準関係規定に適合しない旨の通知を行
い、確認済証を失効させた事例が年平均50件以上存在するなど、指定機関による
適切な審査が確保されていない事例が相当数発生している。

.. また、行政庁及び指定機関など審査主体に対するヒアリングでは、耐火性能検証法
など高度な検証方法を用いている計画や、昇降機の安全装置や浄化槽の構造など専
門性の高い分野については、現行の審査検査体制では実質的に制御することが困難
と回答されており、このような分野に関し、いかに的確な審査・検査を確保するかが
課題となっている。

【構造計算適合性判定】
.. 構造計算偽装問題に対応して導入された構造計算適合性判定に関しては、別々の主
体によるダブルチェックへの対応を回避するため、不経済な設計を促進しており対
象を見直すべきとの指摘や、手続負担軽減に向けワンストップ化を図るべきとの指
摘がなされており、法定基準への適合性のみを判定する構造計算適合性判定制度は
不要との意見もあった。一方で、第三者チェックの制度趣旨やエンドユーザー保護
の観点から見直すべきでないとの指摘がなされてきた。

【計画変更に係る手続】
.. 現行の確認検査制度上、確認を受けた計画内容を着工後に変更する場合、一定の軽
微な変更を除き、改めて変更計画が建築基準関係規定に適合する旨の確認を受けて
から変更部分の工事を行い、工事完了後に検査を受ける必要がある。

.. 当該仕組みに関し、工事着手前に計画内容の法適合性の確認を受ける事前確認制度
の趣旨からやむを得ないとする意見があった一方で、内装仕上げ等施工時に変更が
多い内容について計画変更の手続きを合理化すべきとの指摘がなされてきた。

【違反建築物対策】
.. 行政庁固有の業務である違反建築物対策に関しては例えば発見の困難な違反事項ほ
ど、法律に定める刑罰を重くし、違反を抑止すべきとの指摘があった。一方、刑罰
の強化よりも業務停止等の行政処分の強化を通じた対応を求める指摘等もなされて
いる。


② 資格制度
.. 建築士事務所へのアンケート調査によれば、建築士事務所の相当割合(調査回答事
務所の約半数)は技術系所員が1名であるなど零細なものが多く、構造・設備等の
分野を再委託しているケースも多い。

.. 建築確認検査主体に対するアンケート調査によれば、意匠・構造・設備の分野間の
調整が的確になされず、設計図書間の不整合等の不備が発生しており、当該不整合
に起因する施工段階での調整が発生していると施工者側もヒアリングにおいて指摘
している。結果として、施工段階においても設計者と施工者との間で相談しつつ分
野間の調整がなされていると指摘された。

.. 設計図書の完成度が低いこと及び工事監理における専門分化の進行等により工事監
理が十分に機能していないことの結果として、建築確認検査主体に対するヒアリン
グ結果によれば、相当割合の物件において確認申請図書と施工内容の相違について
検査の際に指摘を受けているなど、施工段階における品質管理が必ずしも的確に実
施されていない。

.. 設計の質の向上を図るためには担い手である資格者の資質の確保・向上が肝要とな
る。組織内の職階等の人事・給与体系を専門家としての資質向上を促す仕組みとす
ることが一定程度有効と考えられるが、そのような対応が困難である零細組織に所
属する資格者の資質確保向上をいかに促すかが課題と指摘された。

.. また、資格者の資質や社会的信用の確保に向け、資格者関係団体の中には職業能力
開発に向けた研修の実施、行政処分対象者や施主との契約トラブルの原因者となっ
た会員に対する懲戒、建築主等からの苦情解決業務等を実施している団体もあるが、
必ずしも十分とは言えない状況にある。

.. なお、発注者、設計者、施工者において多様化、専門分化等が進行する中で、関係
者間での役割・責任分担が的確になされていないケースが発生しているなど建築生
産の実態等を把握した上で的確な品質管理の確保に向け各種制度のあり方を検討す
べきとの指摘がなされた。

(3) 利用段階における的確な品質管理確保対策
【維持保全・改修等】
.. 建築物の質の確保・向上は本来、整備・取引段階における消費者(建築主・購入者・利用者)の合理的選択行動(例えば第三者が建築物の質を評価した結果が市場に提供され、消費者の選択行動による価格への反映等を通じ、結果的に低品質物件が淘汰される)及び利用段階における所有者等の責任による的確な維持保全、改修等所有者等を通じて推進することが効率的かつ効果的である。

.. 建築主・所有者等が発注、維持保全・改修、消費等の際に合理的な判断を行うためには、建築物の質等に関する正確な知識が本来必要となる。しかしながら建築物は物件
毎の個別性が強いことに加え、求められる性能・品質が高度化・多様化する中で、消費
者が必要な知識を収集・理解することは難しく、結果として生産供給側との間に情報の
非対称が存在するため、合理的な判断を妨げていると指摘された。消費者の選択行動
を支援する立場から提供される、十分で正確な情報を消費者が入手できる環境が整備
されていないため、限られた取引等の機会に消費者が専門知識を習得することは現実
的に困難であるとの指摘もあった。

.. 整備・取引段階において消費者が住宅の性能に関する信頼性の高い情報を入手できる
環境の整備については、住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示
制度や、長期優良住宅の普及の促進に関する法律に基づく長期優良住宅建築等計画の
認定制度などが設けられており、新設住宅の2割強において住宅性能表示制度が利用
されるなど、消費者の合理的な選択行動を通じた住宅の質の確保に向け、一定程度機
能している状況にある。

.. 一方、住宅以外の建築物については法定の性能評価・表示制度がなく、環境性能を評価する任意の仕組みが一部活用されているが、十分に普及していない状況にある。

.. 住宅が量的に充足し、人口・世帯減少社会の到来を控える中で、建築ストックの質を維持しつつ有効活用を図っていくことが求められている。建築ストックの不良化を防
止するためには、当該ストックの所有者が適切な維持保全・改修を行う必要があるが、
行政庁に提出された定期調査報告書に係るサンプル調査によれば、建築物の敷地、構
造、建築設備等を常時適法な状態に維持するための維持保全に関する計画の作成率は
約2割と、維持保全の計画的な実施が確保されているとはいいがたい。

.. なお、特定行政庁が指定する一定の建築物、昇降機、建築設備の所有者等は建築基準法上、専門技術資格者に調査、検査をさせた上で特定行政庁に定期的に報告すること
が義務づけられており、当該制度は外壁の状況や機器の作動状況の把握を通じ、補修、
部品交換等メンテナンスの必要性を所有者等が認識する契機ともなる。

.. しかしながら、平成22(2010)年度に報告が必要な件数に対する実際に報告がなされた件数の割合は、建築物で約7 割、昇降機で約9 割、その他の建築設備で約3 分の2となっている。

.. 現行の建築規制等の体系は新築等工事の際の基準適合性確保を主眼とする体系となっており、現行基準に適合しない既存不適格建築物についても工事の機会等をとらえて
解消を図る仕組みとなっている。当該仕組みは既存不適格建築物の増改築を阻害する
側面等を有しているとの指摘や、既存建築物の改修の円滑化に向けた法整備が必要と
の指摘がなされた。一方で、現行の構造規定に適合しない建築物が残ることをどこま
で許容するのかについて社会的コンセンサスの形成がそもそも必要との指摘もなされ
てきた。

.. また、住宅リフォーム工事に関しては建築確認申請を要する10 ㎡超の増改築を伴わない工事が大部分であり、過半が建設業法上の許可を要しない500 万円未満の工事とな
っており、2階建て木造住宅に係る100 ㎡以下の部分のリフォームの設計・工事監理は
建築士でなくともできるなど、リフォーム工事の相当割合は無資格者が特段の手続を
経ることなく実施でき、結果として不適切な工事の発生につながっていると指摘され
た。

【不良化した建築ストックへの対応】
.. 住宅の空き家率が13%に達する中、維持保全が適切に行われずに質が低下し、結果として、保安上危険、あるいは衛生上有害な状態に至るケースが発生しており、保安上
危険である等の理由で行政庁から必要な措置を講じるよう勧告・命令等を受ける案件
は年間10~30 件程度に上っている。建築ストックの成熟化が進行する中、今後はその
ような不良化した建築ストックの解消を強力に推進する必要があると指摘された。

【昇降機・遊戯施設に係る事故等への対応】
.. 昇降機・遊戯施設等は製品が高度化、複雑化している上にハード面の安全対策に加え、適切な保守点検・運行管理が徹底されなければ安全性が確保されない側面を有する。さらに事故の再発防止に向けては、製造者や保守管理者に所要の対応を求める必要がある。しかしながら、現行法制上行政庁は建築物の所有者・管理者に対しては報告徴収、是正命令等が行えるものの、製造者や保守管理者に直接命令等は行えず、製造者・保守点検業者等を監督する仕組みが欠落している。また、再発防止策の策定に向け、事故発生時には迅速に原因の調査究明を行う必要があることから、警察との連携関係を構
築しつつ、国の審議会の委員等による事故発生直後の現地調査や、事故機の再現試験
等により事故発生原因の解明を図っているが、現行制度上建築物等に係る事故発生時
に国が直接調査を行う権限が法制上位置づけられていないため、関係者の協力が得ら
れない場合に機動的な調査の実施が困難となるおそれがある。


3 建築法体系の見直しに関し目指すべき基本的方向
 2の課題、指摘等を踏まえ、真に必要な範囲については行政が関与しつつ、所有者等による的確な維持保全等の取組を引き出し、効果的、効率的に建築物の質の確保・向上を図るため、以下の基本的方向に基づき建築基準法等の法体系の見直しを行うべきである。

(1) 時代の変化に対応したわかりやすい規制体系への移行
建築関連技術の発展、社会的要請の高度化、建築物の活用形態の多様化等に対応した民
間による様々な取組の円滑化に向け、新たな技術の導入や設計の自由度の向上が促進さ
れる明確かつ柔軟な規制体系への移行を目指す。

(2) 実効性が確保され、かつ、効率的な規制制度への見直し
整備・利用の各段階において安全性等建築物の質の確保を担保し、地域の実情が的確に
反映され、かつ、手続も迅速になされるなど、実効性と効率性が両立する規制制度の構
築を目指す。

(3) 専門家の資質確保・向上に資する資格制度への見直し
建築物の設計、施工、検査等に関与する専門家の資質の確保・向上を通じ、建築物の質
の確保・向上が図られるよう、資格制度を見直す。

(4) 所有者等が的確に判断できる法体系への見直し
専門家等の提供する情報に基づき、所有者等が建築物の質の確保・向上に的確に努める
ことのできる環境が整備されるよう、関連制度を見直す。

4 建築法体系の今後の基本的見直し方向及び関連検討課題
以下においては、建築規制等を構成する主要な制度の見直し方向と関連して検討すべき
課題等について具体的に整理する。
(1) 建築規制に係る項目・内容の再検証
【規制項目の再検証】
規制項目に関し行政が関与・責任を持つべき範囲を明確化した上で、現行の規制項目
のうち公的関与を廃止すべき項目及び事故・災害等の状況を踏まえ規制を追加する必要
のある項目を検討し、引き続き規制等を行う範囲についても性能基準体系としてのあり
方を再検証する。このため、以下の点について検討すべきである。

.. 廃止又は追加する項目に関し、規制対象から外した場合、あるいは規制対象に追加
した場合の功罪を含め検討した上で具体的方針を決定する必要がある。

.. なお、建築物の質の確保自体を情報公開、専門家の説明責任に支えられた仕組みに
移行させるとの提案や、専門家が問題を起こした場合の手当は保険で対応すれば良
いとの提案もあったが、生命・財産の安全性に関する制度・法規のあり方そのもの
に関わる問題であり、国民の理解を得られるかどうか慎重な検討を要する。なお、
保険機能の活用による質の確保についても検討する必要があり、そのような保険が
機能しているフランスは分離発注の下で保険会社が設計者・施工者等の間の責任分
担等の調整機能を担っていることなどを念頭に、日本においても成立し得る仕組み
か否か検討する必要がある。

【規制内容(基準体系)の再検証】
規制項目毎に法律・政令・告示で規定される内容の性格・範囲が異なり、部分的にしか
性能規定化されていないことが基準体系を複雑で判りにくくしている状況を改めるた
め、階層化された明解な性能基準体系(上位の法令で規制の目的及び要求性能を規定し
た上で、当該性能を満たす構造方法・材料であることを検証するための方法や性能を有
することが認められた適合仕様などは下位の法令で規定し、技術開発の進展等に対応し
て見直していく仕組みとする観点から、例えば法律に規制目的、政令に要求性能、告示
に検証方法・適合仕様が規定されている体系とする等)への移行を図る。このため、以下の点について検討すべきである。

.. 集団規定も含め各基準の趣旨(目的及び要求性能)を明確化するとともに、産学官
等関係主体の知見を集約し、性能の検証方法、適合仕様の検討をあらかじめ進めて
おく必要がある。

.. 建築関連技術の発展、社会的要請の高度化、建築物の活用形態の多様化等に対応し
た民間主体の取組を技術基準に円滑に反映させるため、新技術の活用や各種ニーズ
に対応した良質な建築物整備に向けた民間の取組の円滑化が図られる基準体系とな
るよう、民間の取組を評価し、検証方法、適合仕様等として性能基準体系の中で位
置づける認定・承認等の仕組みのあり方について検討する必要がある。

.. 高度化する装置・設備等の性能確保に向け、材料・部品等の製造・加工段階を含め
た適切な品質管理を確保する仕組み及び昇降機、遊戯施設等に係る保守点検・運行管
理などソフト面での適切な対応を確保する枠組み(基準・審査体系及び調査・監督等)
についても検討する必要がある。

.. ハード面での対策が中心となっている現行の建築法体系の中に、ソフト面での対策
をいかに組み込むべきかは建築基準法にとらわれることなく検討する必要がある。

【地域の実情を踏まえた規制のあり方】
地域の実情を建築規制により的確に反映できるよう、基準整備や審査・検査に係る特定
行政庁(及び建築主事)の役割・責任範囲のあり方について再検証する。このため、以
下の点について検討すべきである。
.. 違反建築物に対する行政指導件数が年間5000 件を超える中、限られた体制の中で行
政庁固有の業務である違反建築物対策、景観行政等の充実強化が求められているこ
とから、建築規制に関し地域に委ねる範囲の見直しに関しては的確な執行体制の確
保に配慮しつつ検討する必要がある。

.. 集団規定の内容及び規制方法に関し都市計画あるいは各市町村の政策判断に委ねる
提案に関しては、民間機関も審査可能な単体規定関連手続きとの二重化や体制整備、
安全性等と異なり強制力を本来持たせにくい部分に関する計画制度の見直しの必要
性などについて検討する必要がある。なお、単体規定も行政庁毎に基準を設定し許
可制とする提案もなされたが、安全性等単体規定に関し地域毎に異なる趣旨の基準
が設定され、対応を求められるのは非効率であると指摘された。


(2) 整備段階に係る規制手法、資格制度の再検証
① 確認検査制度の再検証
【確認検査の的確な実施体制の整備】
民間機関、行政庁による的確な審査検査の実施確保に向け、体制を整備する。このため、以下の点について検討すべきである。

.. 民間機関においては、競争環境下での適切な審査検査の実施確保が課題として指摘されていることを踏まえ、民間機関が発注者(建築主)の意向に左右されることなく、適切な審査検査を実施できる環境整備のあり方について検討する必要がある。

.. 行政庁の場合には、限られた体制・経験の中での適切な対応の確保や審査能力の確保
向上を図る方策を、十分な審査能力・体制の確保が困難な場合の取扱いを含めて検
討する必要がある。

.. 高度な検証法を使用する計画や専門性の高い分野に関し、通常の審査検査体制では対応が困難と審査側が回答していることを踏まえ、そのような分野に関しどのような専門家をいかに活用し、的確な審査・検査体制を構築するか具体的に検討する必要がある。

【構造計算適合性判定及び計画変更手続きの再検証】
構造計算適合性判定を含む確認検査のあり方に関し、審査及び施工段階の品質管理の
実態に即して再検証を行う。このため、以下の点について検討すべきである。

.. 構造計算適合性判定に関しては、適用対象、方法の見直しを求める意見と、見直しに慎重な意見の双方が存在することを踏まえ、構造計算ルート等に応じた審査の難易度及び審査側の対応可能範囲などを勘案しつつ、構造計算の法適合性確認の的確かつ効
率的な実施に向け、制度のあり方を検討する必要がある。

.. 着工後の計画変更に係る手続については、施工段階で決定することが多い事項につ
いては確認審査の対象外とし、検査において変更計画内容及び実際の工事内容の法
適合を確認する制度に見直すべきとの提案がなされていることなどを踏まえ、施工
段階における設計内容の調整・確定、設計内容と施工内容の同一性確保等品質管理の
実態を調査した上で、完成した建築物及びその敷地の法適合性確認の的確かつ効率
的な実施に向け、現場における変更計画内容に係る迅速な適合性チェックの可能性
や不適合事項の発見時の是正容易性等も考慮しつつ、確認制度と検査制度における
審査・検査事項のあり方について検討する必要がある。

【違反建築物対策】
.. 違反建築物の防止に向け、現行の刑罰と行政処分の実効性・軽重等を比較衡量し、バランスのとれた刑罰と行政処分のあり方について検討する必要がある。

② 資格制度の再検証
整備される建築物のデザイン、構造・仕様、機能等を規定することとなる設計の品質は建築物の質を大きく左右することから、意匠・構造・設備図面間の不整合の防止等設計段階における的確な品質管理の実施に向け、建築士事務所におけるチェック体制の強化及び個々の建築士の資質向上を推進する。特に組織内でのチェック体制の構築が困難な零細な組織における個々の建築士の資質確保のあり方について再検証する。このため、以下の点について検討すべきである。

.. 設計図書間の不整合や確認申請図書と施工内容の相違等確認検査の際に指摘を受け
ている問題が生じないよう、的確な品質管理に日頃から努めることが重要である。このため、建築士事務所における業務の適正化が図られるよう、設計図書のチェック等を適切に行うための業務のあり方について検討し、その内容を建築士事務所開設者に対する業務運営研修や所属建築士に対する定期講習の内容に盛り込むなど業務の適正化方策を検討する必要がある。

.. 零細な組織内の資格者が資質向上に努める動機付けを付与するためには、当該資格者の定期講習の受講状況等、資質向上に向けた取組状況が社会的に評価される環境の整
備が有効と考えられる。所属建築士の定期講習の受講状況等が記載された業務報告書
の閲覧制度の開示請求件数は多くないものの、開示される可能性自体が講習受講等資
質向上に努める動機づけとなるとの指摘もあったことから、資格者の資質向上に向
け、講習内容及び受講状況等の関連情報開示の充実強化方策を検討する必要がある。

.. 研修、懲戒、苦情解決業務等の資格者団体の取組についても、資格者の資質確保を図る観点から充実させる必要がある。特に資格者の業務実績等の情報提供など、資格者が資質確保・向上に取り組む動機付けとなる取組の強化方向に関し検討を行い、資格者
全体の資質確保・向上に資する仕組みとなるよう、指導方向に関し検討する必要があ
る。

.. より高度な資質の確保に向け、資格を新設すべきとの提案もなされたが、資質の向上は資格の細分化・新設ではなく、市場機能の活用等で対応すべきと指摘された。

(3) 利用段階における的確な品質管理確保方策の再検証
 建築ストックが充実・成熟化する中で、建築ストックの質の確保方策を重視し、フロ
ーよりもストックを主眼とする施策体系を構築する必要性が指摘されたことを踏まえ、
適切な維持保全、改修工事等の実施を担保する観点から関連規制体系を再検証する。具
体的には以下の点について検討すべきである。
【所有者等による適切な維持保全・改修等のための環境整備】
.. 適切な維持保全・改修を通じ建築ストックの不良化を防止するためには、定期調査報告・定期検査報告の結果や専門家のアドバイス等を踏まえ、所有者が必要な修繕の内容、時期等を判断し、計画的な維持保全等に取り組む環境を整備する必要がある。関連してストックの実際に有している性能をセンサー等により計測・記録し、当該データに基づき的確な維持保全・改修を課す仕組みも提案された。このため、所有者等が建築物の質に関する正確な情報に基づき的確に維持保全等に取り組む環境の整備に向け、建築物の質等に関する情報の提供や必要な修繕等に関するアドバイスなどを担う人材の育成、専門家の資質が二極化する中で資格・保険等を通じ的確に選択できる仕組みの構築、さらには建築の専門家が建主等に新築等の機会を含め適切な選択行動等を支援する立場から適切なアドバイス等を行うことがビジネスとして成立する環境整備のあり方
を検討する必要がある。

.. リフォーム等を通じたストックの質の向上が円滑化されるよう、増改築等に係る建
築規制のあり方について検討する必要がある。

.. 不適切なリフォーム工事の防止に向け、実態を踏まえた事業者の選択・活用が図ら
れる仕組みを業規制や資格制度の見直しにより構築することについて検討する必要
がある。この場合、当該見直しがストック投資意欲をそぐことのないよう、制度設
計上配慮する必要がある。なお、リフォーム等ストックの適切な維持保全等に向け
た投資を喚起するインセンティブのあり方等については、建築法体系のあり方とは別途検討が必要と指摘された。

【不良化した建築ストックの解消に向けた環境整備】
.. 不良化した建築ストックの解消に向けては、新築・改修等の工事機会をとらえて質
を確保するフローベースの施策と異なる発想で対応する必要があり、所有者による
解消に向けた取組を促進するため、維持保全に係る意思・能力を有する所有者への
権利集約を円滑化する仕組みを導入する、不良化した建築ストックを放置した場合
に更地の場合よりも税負担等を強化する、あるいは空家再生等の取組に対し支援を
行うことなどの提案があった。このうち保有コストを引き上げる仕組みは実効性の
ある徴収システムをいかに構築するかが課題となる。経常的に徴収作業が発生しな
い仕組みとして、事故時に維持保全状況に応じた額を徴収する仕組みも提案された
が、その場合も所有者がまとまった額を負担できないおそれがあるとの指摘がなさ
れ、あらかじめ解体除却費用を確保する仕組み等も提案された。実効性のある仕組
みの構築に向け、建築法体系の見直しと並行して検討する必要がある。

【昇降機・遊戯施設に係る事故等に係る制度の検討】
.. 昇降機・遊戯施設に関しては、製造段階における問題が顕在化した際の関連機種全体
に対する迅速な対応の確保及び利用段階における適切な保守点検・運行管理の徹底
が安全性の確保上肝要である。このため、昇降機、遊戯施設の製造・保守点検・運行
管理に起因する事故が発生した場合に、同種の製品や保守点検・運行管理業者の現状
を把握し、改善指導やリコール等の速やかな実施を確保する等、製造・保守点検・運
行管理業者を調査・監督する仕組みをいかに構築するか検討する必要がある。この場
合、より機動的な事故原因究明体制の確保に向け、国等事故調査機関の調査権限の
あり方についても検討する必要がある。

(4) 建築基本法の検討
 一般に基本法においては、目的、基本理念、関係者の責務、基本的施策などが規定されることが多く、建築基本法に関しては、建築物の質の確保・向上に向け、建築の理念、関係者の責務、関係法の見直し方向等を示すものとして制定を求める意見や、民間の取組が基準体系に円滑に取り込める仕組みの構築に向け機能することを期待する意見が提起された。
 建築基本法は単なる理念法ではなく、関係法や関連制度の見直しに向けた指標等として機能することが期待されていることから、以下の点について検討すべきである。

.. 建築法体系の基本的見直しに係る上記の検討と併せて、法体系の見直し方向に関する指針等として機能する建築基本法の制定について検討する必要がある。

.. この場合、現行法体系に単に屋上屋を重ねるような法律として建築基本法を法制化すべきではないとの指摘があったことを踏まえて検討する必要がある。

.. なお、建築の理念、関係者の責務等を規定した純粋な理念法として建築基本法を制
定することに関しては、サブリミナルな効果を期待する指摘があった一方で、建築
のあり方等理念のみ規定することの意義を疑問視する意見が提起されたことも踏ま
えて検討する必要がある。

Ⅳ おわりに
.. 本勉強会においては建築法体系の現状について多くの課題が指摘された。それらの課題に対応するために整理した建築規制等の目指すべき基本的方向と関連検討課題を踏まえ、今後は建築法体系の具体的な見直し・再編方向等を建築実務者や消費者・利用主体などの関係者も交えて検討すべきである。

.. また、今回は建築規制等を中心に検討がなされたが、不適切な住宅リフォーム工事の防止に向けた建設業法などの関係法令の見直しや、不良化した建築ストックの解消に向けた税制の見直しなど、建築規制等以外の仕組みについても関連して見直しが必要との指摘がなされた。指摘内容については関係方面に働きかけ、必要な検討が併せて進められるよう努めるべきである。
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