花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

「左手のピアニスト 舘野 泉」(再放送)を見て

2014年04月18日 12時15分40秒 | 趣味(音楽、絵画、等)
NHKで2005年(平成17年)1月に放送された「左手のピアニスト~舘野泉 ふたたびつかんだ音楽~」が、去る4月14日に再放送されました。幸運にも見ることができました。 アーカイブスの中で、視聴者から再放送の要望の多いものを取り上げたのだそうです。左手のピアニストのことは耳にしたことがありましたが、映像で見、名前が舘野泉氏ということをしったのは、今回が初めてです。

内容は、ピアニストとしてフィンランドの首都ヘルシンキを拠点にして国際的に活躍している舘野泉氏が、2002年(平成14年)1月、コンサート中に脳出血で倒れ(65歳)、右半身麻痺の後遺症が残り、ピアニストとして活動できなくなりましたが、家族(ソプラノ歌手の妻、ヴァイオリニストの長男、他)や左手用の曲を作曲してくれた友人の作曲家(フィンランドの作曲家、ペール・ヘンリック・ノルドグレン氏、間宮芳正氏)、他の多くの友人の助けもあり、左手のピアニストとして2004年(平成16年)5月に再起を果たす感動のドキュメンタリーで、多くの人から再放送の要望が寄せられたのも納得できます。

まず、放映された映像から右半身麻痺になった舘野氏の体の状態を勝手に推測してみます。
・右腕・右手の動きは日常生活にはほとんど支障がないほどに回復している。右足はわずかにビッコを引いているが、歩行にはほとんど影響がない。もちろん杖は使用していない。
・わずかに言語障害があるようで、語りが流暢ではないが、日常生活上は全く支障がない。もともと笑顔を絶やさやない温厚な人柄のようであり、障害のためか、映像では、やさしい表情で、言葉を選ぶように、ゆっくりと話しているので、 何とも言えないソフトな人柄の印象を強く引き出している。 絶望的な苦しみを乗り越え、何らかの境地に達した人の持つ雰囲気だと思うことしきりです。
・せき込む場面があり、若干の嚥下障害があるように見られた。
・麻痺以外の痺れや感覚障害などには全く触れていないので、これらの障害はないのかもしれない。

このドキュメンタリーを見て、リハビリに励む多くの脳卒中患者が励まされた思います。舘野氏は懸命のリハビリにより、日常生活は全く不自由ないほどに回復しており、ピアノも両手で弾くことはできるものの、国際的なピアニストとして人前で演奏するには、右手・腕の動きが十分には回復していないので、左手で弾いているというのが現状だと認識しています。

この番組の中で興味深かった部分を紹介します。
1、飼い猫の存在
舘野氏が飼っているネコのことに触れ、「退院して暫くの間は自宅で寝ている時間が多かったのですが、ネコが必ず麻痺している右肩に頬をくっつけて寝るのです。以前はこのようなことはなかったのです。不思議です。」と語っていました。 ネコなどペットは、飼い主の不自由になった体の部位を本能的に察知し、労わるのかもしれません。体だけではなく不安定な精神状態も察知することができるのかもしれません。ペットが側にいるだけで癒されることを経験した人も多いと思います。

2、左手でピアノを弾くための曲との出会い
長男のヤンネ氏から渡されたイギリスの作曲家・ブリッジの左手用のピアノ曲の譜面を見て、舘野氏は次のように語っています。
「氷河が溶けて動き出したような感じであった。(中略)ただ、生きかえるようであった。(中略)音が香り、咲き、漂い、はぜ、大きく育って、ひとつの全き姿となって完成する。音楽をするのに、手が一本も二本も、関係はなかった。」(エッセイ『ひまわりの海』)
また、バッハ作曲、 ブラームス編曲の「シャコンヌ」については、「あれは、要するに左手だの、右手が使えない人のための練習曲、左手の練習曲だっていうような感じですよね。 ところがね、2か月ぐらいそれを自分で練習していたら、 音が生きている。音が波のように広がっていくのを感じた。 そして、生きる喜び、生きる意味がつかめた。一音一音がすごく愛おしかった。」 
<舘野氏が再起するために作曲された左手用のピアノ曲>、
間宮芳生「風のしるし風のしるし・オッフェルトリウム」」
ノルドグレン「小泉八雲の『怪談』によるバラードⅡ」

(2014年4月18日  花熟里)






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