花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

「原子力規制委員会とは」

2013年01月16日 16時57分49秒 | ちょっと気になること
原子力規制委員会は、国家行政組織法三条に基づき各省庁に設置される、独自性の強い三条委員会と位置付けされています。 現在、三条委員会は次の5委員会です。

<原子力規制委員会(環境省)、公害等調整委員会(総務省)、公安審査委員会(法務省)、中央労働委員会(厚生労働省)、運輸安全委員会(国土交通省)>

さる1月9日に原子力規制委が組織理念を公表しました。この中には、活動5原則が定められています。
1、独立した意思決定
2、実効ある行動
3、透明で開かれた組織
4、向上心と責任感
5、緊急時即応

この崇高な5つの理念はいずれも最もなことで、忠実に実行していただきたいと切に希望します。ところで、田中委員長は記者会見で次のように述べています。

(日経新聞:1月9日)]
[原子力規制委員会は9日、5項目の活動原則を記した組織理念を公表した。第1項に「何ものにもとらわれず、科学的・技術的な見地から、独立して意思決定を行う」と掲げた。福島第1原発事故を防げなかった反省を踏まえ、政界や経済界、立地自治体の影響を受けずに判断を下す方針を改めて強調した。]

(産経新聞:1月9日)
[1月9日に、田中規制委員長は記者会見で、「再稼働の申請が出てから、(審査は)早くても原発1基に半年から1年はかかる。3年で50基をやるのは常識的に考えて難しい」と話した。]

まず、田中委員長を含めた現在の5名(田中、島崎、更田、中村、大島)の委員は、いずれも当時の民主党政権の要請に応じて、原子力規制委員に就任しました。 すなわち、民主党政権の原子力発電を30年後にはなくするという基本方針に賛意を示したわけです。 極論すれば、原子力発電の廃止を視野に入れた安全規制を行っているのです。
しかし現在の自民党政権は、安全性が確認された原子力発電を再稼働するという方針です。 では、田中委員長はじめ、民主党の政策に呼応して就任した原子力規制委員は、自民党政権の方針にどのような対応をするのでしょうか。

田中委員長が1月9日の産経聞で語っていること(原発の安全審査の進め方)は、単に計算上のことであり、政府の原子力方針に沿うような工夫、努力が全く感じられません。活断層の議論も、最初から活断層ありきであり、再稼働する場合に科学的知見を踏まえて、技術的にどのような努力、工夫する余地があるかという視点が全く欠けています。 勿論、再稼働の判断は政府が責任を持って行うのであることは言うまでもありません。

田中委員長は1月9日の記者会見で、「何ものにもとらわれず、独立して意思決定を行う」ことをことさらに強調しています。自民党政権の方針には従わないぞと宣言しているようにも受け取れます。原子力規制委員会が、国家組織の中で他の行政組織とは全く切り離されて単独で存在し、原子力について科学的、技術的判断を行う組織と考えているのでしょうか。

しかし、原子力規制委員会は、行政組織として「内閣の統轄の下に、その政策について、自ら評価し、企画及び立案を行い、並びに国の行政機関相互の調整を図るとともに、その相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない」[国家行政組織法第二条] とされています。
環境省の外局であり、内閣の組織の一部として、他の行政組織と一体となって、その機能を発揮しなければなりません。

すなわち、純粋に技術的事項であろうとも、内閣の基本方針実現に向けての範囲内で判断をすべきなのです。 逆にいえば、内閣の方針をはみ出すような判断をしなければならない場合には、まず、内閣の基本方針そのものを見直す必要があります。 内閣が基本方針を見直さない場合には、他の組織と一体となって機能を発揮することができないわけですので、行政組織の一端を担う責任からも、原子力規制員会の委員長、委員は職を辞する道を選ぶべきと思います。

田中委員長を含む現在の5名の委員は、原子力非常事態宣言下という理由で国会同意を得ておらず、緊急的に当時の野田総理が任命して今日に至っています。
安倍総理は、次期通常国会で現在の原子力規制委員5名の同意を得る考えと報道されていますが、しかし、政権の方針と相いれない考えを持つ委員の同意を行うべきではありません。国会同意が得られていないからこそ、原子力規制委員の人選をやり直すべきと思います。

原子力規制委員会よりもさらに高い独立性・中立性が求められている日本銀行の総裁人事でも、安倍総理は、政府の政策との整合性のとれる人物という考えを述べています。 日本銀行も日本国家の一組織ですので当然のことです。ましてや、環境省の外局の原子力規制委員会人事をや、です。


[2013年1月16日 花塾里]


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