花熟里(けじゅくり)の静かな日々

脳出血の後遺症で左半身麻痺。日々目する美しい自然、ちょっと気になること、健康管理などを書いてみます。

「人は順位づけにこだわる」

2010年10月30日 10時28分42秒 | ちょっと気になること
過日読売新聞の「放送塔から」に「ランク付けに不思議な魔力」という小さな記事が掲載

されていました。


『人はなぜ、ランク付けが好きなのだろう。テレビ朝日系「お試しかっ!」を見るたびに

思う。番組の中心は、芸人やタレントたちが、レストランなどの人気メニューベスト10

を、すべて当てるまで食べ続ける「帰れま10」のコーナーだ。 くだらないと思いなが

らつい見てしまう。

(略)

ベスト10はなかなか当たらない。出演者たちは満腹感に苦しみながら、延々食べ続ける

ので、大食い番組の要素もある。大食いには食べ物を粗末にするという批判も多い。だ

が、この場合、目的そのものは大食いではないので、大食い番組にありがちないやな感じ

は少ない。宣伝と大食いと言う、ヘタをすれば最悪の組み合わせが面白く見えてしまうの

は、ランク付けの魔力だろうか。』



私はこの番組をはじめラング付けする番組をほとんど見たことがないので、番組について

のコメントはできませんが、考えてみれば、この世の中、我々の生きている社会を見渡せ

ば、あらゆるものにランク(順位・階級)がついています。 




まず、動物や生物。

哺乳類であるサル・チンパンジー・ゴリラなどではボスを中心とした厳格な順位が決まっ

ていますし、犬はリーダーのもとで集団で狩りをした名残で、人間に飼われるようになっ

ても順位を見分けていることも周知の事実です。 鳥類では、ニワトリが順位づけのため

につつき合っていることが知られています。 昆虫類ではアリも女王バチを頂点としたピ

ラミッド型社会です。



ついで、人間社会。

国の組織にしてからが、首相・大臣・副大臣などの階級社会。 ‘影の総理’などどいう

人が時として現れ、‘表の総理’を押しのけて、目立つこともままあります。 

霞が関の官僚機構はランク付けの最たるもので、事務次官・局長・部長・課長・課長補

佐・係長等など。局長や部長・課長の中でもそれぞれ‘格付け’があります。 たとえ

ば、大臣官房の秘書課長・総務課長・会計課長は官房3課長と言われて、課長の中でも別

格扱いと聞いたことがあります。 

今注目を集めている検察組織は、最高検察庁(トップ:検事総長)、高等検察庁(トッ

プ:検事長)、地方検察庁(トップ:検事正)、区検察庁(トップ:上席検察官)。


なお、江戸幕府は、将軍・(大老)・老中・若年寄・奉行(勘定・寺社・町など)・

大目付・目付、などがありました。 物語の水戸黄門では最後に‘副将軍’として印籠を

出して悪代官などをひれ伏させて終わりになります。 所謂御三家のうち尾張家・紀伊家

は従二位大納言で将軍を出せますが、水戸家は従三位中納言で将軍を出せないが、江戸詰

を許されていたこともあり、一見、将軍後見役のような立場と勘違いされることもありま

すが、副将軍という職についていたわけではありませんし、副将軍なる職はありませんで

した。


地方自治体も知事・副知事・部長、以下平の担当者に至るまでまさに階級社会。 さら

に、自衛隊(軍隊)や警察・消防などは典型的な階級社会。

会社も社長以下平社員まで多くの階級があり、自治会や任意の団体も役職による階級があ

ります。会長・理事・書記・・・・・。

家庭では夫婦の微妙な力関係で、亭主関白とか、カカア天下などの順位が出来ています。 



次の格付けも知る人ぞ知るところでしょうか。


テレビや映画界:

出演者の順序。 要するに出演者の順序には格が反映される。 俳優・歌手は順序に目の

色を変えると週刊誌に書いてあったのを思い出します。



スポーツ界:

 全くの実力社会。 実力により明瞭な格付けが行われます。

・相撲:横綱、大関、関脇、小結、幕内、十両、三段目、序二段、序の口。

・プロ野球:日本では一軍と二軍。 巨人は3軍を設けると報道されていました。 

      アメリカではメジャーリーグとマイナーリーグ。

・プロサッカー:J1 と J2 。

・プロゴルフ、プロテニス、プロ卓球:世界ランキング。


宗教界:

・仏教では、僧侶は大僧正、権大僧正、僧都、権僧都、少僧都、他。 寺にも総本山、

  大本山、別格本山、末寺等の格付け(区別)があり。 

・キリスト教のカトリックではトップはローマ法王で、(枢機卿)、(大司教)、司教、

  助祭、司祭。 東方正教会ではトップは総主教で、主教、司祭、輔祭。  

  プロテスタントでは牧師。 

 (イスラム教には聖職者は教義上いないことになっている)



さらに世界には様々な格付け(ランキング)があることに気づきます。


1、フォーチュン誌が5年ごとに発表する世界企業の売上ランキング
 
  「 Fortune global  」 は有名です。 

2、レストランとホテルを格付けしているミシュランガイドはあまりにも有名です。 

  レストランは星の数が3個が最高で、東京でも毎年発表されていますし、つい先日

  関西版も発表されました。

3、ホテルには様々な格付けがあります。

  ・Travel & Leisure :世界のベストホテル100

  ・Conde Nast Traveler(コンデナスト・トラベラー):ゴールドリスト

  ・Institutional Investor:ベストホテルランキング

4、よく知られた格付けとして、国・自治体・企業などが発行する債券などの信用を格付

  けする機関があります。日本では、金融庁が5の指定格付け機関を定めています。

  ウ~オ は世界3大格付け機関と言われています。

  ア、格付投資情報センター(R&I)

  イ、日本格付研究所(JCR)

  ウ、ムーディーズ・インベスターズ・サービス・インク

  エ、スタンダード・アンド・プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)

  オ、スイッチレーティングスリミテッド.


(ムーディーズの格付け)

  Aaa  :最高位 (1,2,3、に区分) :
  
  Aa   :高位  (1,2,3、に区分) 
  
  A  :投資適格程度(1,2,3、に区分)
  
  Baa  :中程度のリスク(1,2,3、に区分)
  
  Ba   :投機的要素あり(1,2,3、に区分)
  
  B   :投機的であり、信用リスクが高い(1,2,3、に区分)
  

ちなみに、ムーディーズによれば、Aaa1はドイツ、フランス、カナダ、Aaa2は

アメリカ,、イギリスなど。 日本はAa2、 香港・台湾はAa3、 中国と韓国はA1、 

国家財政破綻したギリシアはA3です。.


日本では、歴史的に見ると、推古天皇13年(603年:聖徳太子が摂政)に「冠位12階の制

度」が定められ、飛鳥時代の文武天皇5年(701年)に大宝律令により位階制度が確立され

(30位階)、江戸時代まで続きました。 明治時代に新たな位階制度が作られ、16位階に

改められました(一位~八位まで正・従)。 現在は死亡者に贈られる叙位として存続さ

れています(例:「贈従四位」など)。

また、身分制度としては、江戸時代時に「士農工商」が定められ、明治になって、四民平

等となりましたが、爵位(公爵・侯爵、伯爵・子爵・男爵)を設け、華族という特権階級

が作られました。 いつの時代にも階級がついて回ります。




インドは、来年80年ぶりに全国民12億人に所属するカーストの聞き取り調査をすると報道

されていました。 実現すれば、英領インド時代の1931年以来のこととなるそうです。


カーストについて、インド人シャルマ氏の日本体験記のなかに興味深い部分があるので、

若干引用してみます。


「喪失の国日本 インド・ビジネスエリートの日本に日本体験記」(文春文庫)


『我々はたしかに、生まれながらにしてそれぞれの階級に属しているので、どうしても相

手の階級に関心がいってしまう。最近インドのある村で、自分たちのカースト順位を向上

させるべく、下層カーストの全員が完全菜食主義を取り入れたことが報じられた。これ

は、肉食が今もインド人にとって、どういうことを意味するかを端的に物語っている。

(略)

現在多くの日本人は「菜食」を新しい健康法として理解しており、インド人の食習慣が、

歴史的な出自に関わる差別に根ざしていることを知っている者はそれほど多くない。

(略)

日本の食におけるブルジョワ意識、あるいは幸福感を満足させるために、肉には百グラム

数十円から一万円ちかくまで、再分化された 「肉の身分(カースト)」がある。 その

構造は奇しくも、われわれのカースト構造とぴったり重なる代物だ。たとえば、われわれ

の四種姓(ヴァルナ)、つまり、「バラモン(僧侶)・クシャトリヤ(王族武士)・ヴァ

イシャ(商人)・シュートラ(農民・労働者)」などに相当する大枠を、日本人の獣肉に

対するランキングに当てはめると、上位から、「牛肉・豚肉・鶏肉・その他の肉」とな

る。

各ヴァルナ内部の、より細分化されたサブ・カースト、つまりジャーティ(出自)に関し

ては、豚肉ならば、「ヒレ・ロース・モモ・バラ・切り落とし」という肉の部位などに分

けられる。

(略)

インドの社会は生きた人間の分類によって身分に拘泥し、日本社会は死んだ肉の分類によ

って経済的優位に固執する。これは、肉だけに限らず、食の全体についても言えるのであ

る。例えば、「天丼」についても、「並み・上・特上」というクラス分けがあるし、定食

弁当については、「松・竹・梅」という上中下3段階のクラス分けがあって、それぞれに

明瞭な視覚的区別が図られている。このような肉の種類と部分との階級分けが、日本では

魚肉まで含めて数百分割されている。

(略)   

インドでは異カースト間はもちろん、同族間や親子の間でも対等の挨拶はない。百メート

ル先からでも、挨拶を見るだけで身分の違いを判別することが出来る。その意味で、

インドの挨拶は他の諸国と同様、サル社会における「順位付け行動」と同種のものであ

る。』




ヒトは全くの初対面の人に出会うと、直感的に・無意識的にその人を品定め(評価)して

います。 即ち、信用できそうか否か、自分に比べて器がどうか(格の上下)などなど。

どうやら ヒトは、順位づけしなければ生きていけないようです。 そもそも人類の祖先

が類人猿と言われていた頃にはもう、共同体内でボスを中心とした階級が出来ていたと思

われます。  正に、ヒトの歴史は順位付けと共に、と思います。




<M.K シャルマ著  「喪失の国、日本」 文春文庫  >






(2010年10月30日 ☆きらきら星☆)


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